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だけど一つだけ理解できたことがある。
それはこの街がかなり大きい都市であるということだ。
それこそ王都にも負けないくらいの規模はあるのではないだろうかと思ったほどだ。
そんなことを思いながら歩いているうちに、いつの間にか目的地に到着していたようだ。
中に入ると大勢の人で賑わっていたが特に気になるようなものはなかった。
とりあえず近くにいた人に声を掛けることにする。
「あの、すみません」
声をかけると驚いた表情でこちらを見てきたが、すぐに笑顔になって対応してくれた。
「いらっしゃい! 何が欲しいんだい?」
そう言われたので、俺は迷わずに薬草の名前を口にした。
「これと同じものを探しているんですがありますか?」
そう言って見せたのはアリアさんからもらった依頼書だった。
それを見た店員は不思議そうな顔をした後で言った。
「えっと、もしかしてお兄ちゃん一人かい?」
その言葉に頷くと、困ったような顔をされてしまった。
どうしたものかと思っていると、突然後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには見覚えのある顔があった。
それは昨日冒険者ギルドで出会ったアリアさんだった。
彼女は微笑みながら話しかけてくる。
その様子を見て安堵したが、同時に嫌な予感を覚えた。
なぜなら、彼女の服装が昨日のものとは全く違っていたからだ。
具体的には露出度が高くなっていて、胸元が大きく開いていたり、スカート丈が短かったりとセクシーな格好になっていたのだ。
正直言って目のやり場に困るほどだった。
そんなことを考えている間にも話は進んでいく。
どうやら彼女は俺の実力を知りたいようだ。
それなら丁度いい機会かもしれないと思い、承諾することにした。
こうして俺とアリアさんは模擬戦を行うことになったのだった。
お互いに武器を構えて向かい合うと、審判役のギルドマスターの合図と共に戦いが始まった。
まずは相手の出方を伺うために様子見することにした。
「はぁぁっ!!」
気合いの声と共に踏み込んできた彼女に反応して剣を構えると攻撃を受け止めた。
キンッという甲高い音と共に火花が飛び散る。
そのまま鍔迫り合いのような状態になり互いに睨み合うような形になったが、次の瞬間には後ろに飛び退いて距離を取った。
その後は再び正面からぶつかり合ったが、結果は引き分けに終わった。
その後は何度か打ち合っているうちに体力の限界を迎えたのか動けなくなってしまったため、そこで終了となった。
あれから数日が経過したある日のこと、俺達はある問題に直面していた。
というのも、
「お金が無い!」
そう叫んだのは俺だった。
俺達は旅の途中で魔物を討伐し、素材や魔石を売ることで生計を立てていたのだが、
ここ数日で稼いだ金額は合計で銀貨50枚程しかなかったのだ。
これでは宿暮らしを続けるのは厳しいだろう。
ちなみにこの世界の通貨の価値は以下の通りである。
銅貨<大銅貨<銀貨<金貨<白金貨となっており、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚となっている。
つまり、今の俺達には手が届かない額だということだ。
何か手っ取り早く稼げる方法はないものかと考えていると、ふと思いついたことがあったので試してみることにした。
早速行動に移すべく立ち上がると、受付嬢のところへ向かうことにした。
彼女は俺のことを覚えてくれていたようで笑顔で出迎えてくれた。
そんな彼女に対して俺は思い切って尋ねてみることにした。
「実は、最近冒険者になったばかりなんですが、依頼を受けたいんですけど何か良いものはありますか?」
そう尋ねると、彼女は少し考えた後で一枚の紙を差し出してきた。
その紙に書かれていた内容はこうだった。
「どれどれ……」
そう言いながら読み進めていくうちに段々と顔が青ざめていった。
何故ならそこに書かれていた内容があまりにも無茶なものばかりだったからだ。
例えばこんな感じである。
「スライム10匹の討伐」
報酬 100000G 内容 平原に生息するスライムを倒してください。
1体あたり500Gです。
備考 スライムは体内に核を持っており、それを破壊することで倒すことができます。
「森に出るゴブリン5体の討伐」
報酬 50000G 内容 森の中に現れるゴブリンを倒してください。
1体あたり1000Gです。
備考 ゴブリンは集団行動をするため、囲まれないように注意してください。
「盗賊団の殲滅」
報酬 30000G 内容 街道に出没する盗賊団を殲滅してください。
なお、アジトの位置は不明です。
「ワイバーンの卵採取」
報酬 45000G 内容 ドラゴンの巣から卵を盗んできてください。
数に制限はありません。ただし、他の冒険者と協力して行うことはできません。
また、持ち帰った卵の数に応じて追加報酬が出ます。
といった感じである。どれもこれも危険な依頼ばかりだが、今の俺達に選択肢はないと言ってもいいだろう。
覚悟を決めた俺は、受付嬢に礼を述べると掲示板の前に向かった。そして、その中から一枚の依頼書を手に取るとアリアさんに手渡した。
その内容はこうである。
「洞窟に住み着いたポイズンスパイダーの討伐」
報酬 25000G 内容 毒を持つ巨大な蜘蛛型の魔物、ポイズンスパイダーの群れの討伐を行ってください。
大きさは成人男性と同じくらいですが、糸を吐き出してくるため非常に厄介です。
罠を仕掛けてくることもあるため注意が必要です。
内容を読み終えたアリアさんは少し考える素振りを見せた後で頷くと、こちらに向かって微笑んでくれた。
どうやら引き受けてくれるようだ。
俺はお礼を言うと手続きを済ませるためにカウンターへと向かった。
それから書類を書き終えると、早速出発することになった。
それはこの街がかなり大きい都市であるということだ。
それこそ王都にも負けないくらいの規模はあるのではないだろうかと思ったほどだ。
そんなことを思いながら歩いているうちに、いつの間にか目的地に到着していたようだ。
中に入ると大勢の人で賑わっていたが特に気になるようなものはなかった。
とりあえず近くにいた人に声を掛けることにする。
「あの、すみません」
声をかけると驚いた表情でこちらを見てきたが、すぐに笑顔になって対応してくれた。
「いらっしゃい! 何が欲しいんだい?」
そう言われたので、俺は迷わずに薬草の名前を口にした。
「これと同じものを探しているんですがありますか?」
そう言って見せたのはアリアさんからもらった依頼書だった。
それを見た店員は不思議そうな顔をした後で言った。
「えっと、もしかしてお兄ちゃん一人かい?」
その言葉に頷くと、困ったような顔をされてしまった。
どうしたものかと思っていると、突然後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには見覚えのある顔があった。
それは昨日冒険者ギルドで出会ったアリアさんだった。
彼女は微笑みながら話しかけてくる。
その様子を見て安堵したが、同時に嫌な予感を覚えた。
なぜなら、彼女の服装が昨日のものとは全く違っていたからだ。
具体的には露出度が高くなっていて、胸元が大きく開いていたり、スカート丈が短かったりとセクシーな格好になっていたのだ。
正直言って目のやり場に困るほどだった。
そんなことを考えている間にも話は進んでいく。
どうやら彼女は俺の実力を知りたいようだ。
それなら丁度いい機会かもしれないと思い、承諾することにした。
こうして俺とアリアさんは模擬戦を行うことになったのだった。
お互いに武器を構えて向かい合うと、審判役のギルドマスターの合図と共に戦いが始まった。
まずは相手の出方を伺うために様子見することにした。
「はぁぁっ!!」
気合いの声と共に踏み込んできた彼女に反応して剣を構えると攻撃を受け止めた。
キンッという甲高い音と共に火花が飛び散る。
そのまま鍔迫り合いのような状態になり互いに睨み合うような形になったが、次の瞬間には後ろに飛び退いて距離を取った。
その後は再び正面からぶつかり合ったが、結果は引き分けに終わった。
その後は何度か打ち合っているうちに体力の限界を迎えたのか動けなくなってしまったため、そこで終了となった。
あれから数日が経過したある日のこと、俺達はある問題に直面していた。
というのも、
「お金が無い!」
そう叫んだのは俺だった。
俺達は旅の途中で魔物を討伐し、素材や魔石を売ることで生計を立てていたのだが、
ここ数日で稼いだ金額は合計で銀貨50枚程しかなかったのだ。
これでは宿暮らしを続けるのは厳しいだろう。
ちなみにこの世界の通貨の価値は以下の通りである。
銅貨<大銅貨<銀貨<金貨<白金貨となっており、銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚となっている。
つまり、今の俺達には手が届かない額だということだ。
何か手っ取り早く稼げる方法はないものかと考えていると、ふと思いついたことがあったので試してみることにした。
早速行動に移すべく立ち上がると、受付嬢のところへ向かうことにした。
彼女は俺のことを覚えてくれていたようで笑顔で出迎えてくれた。
そんな彼女に対して俺は思い切って尋ねてみることにした。
「実は、最近冒険者になったばかりなんですが、依頼を受けたいんですけど何か良いものはありますか?」
そう尋ねると、彼女は少し考えた後で一枚の紙を差し出してきた。
その紙に書かれていた内容はこうだった。
「どれどれ……」
そう言いながら読み進めていくうちに段々と顔が青ざめていった。
何故ならそこに書かれていた内容があまりにも無茶なものばかりだったからだ。
例えばこんな感じである。
「スライム10匹の討伐」
報酬 100000G 内容 平原に生息するスライムを倒してください。
1体あたり500Gです。
備考 スライムは体内に核を持っており、それを破壊することで倒すことができます。
「森に出るゴブリン5体の討伐」
報酬 50000G 内容 森の中に現れるゴブリンを倒してください。
1体あたり1000Gです。
備考 ゴブリンは集団行動をするため、囲まれないように注意してください。
「盗賊団の殲滅」
報酬 30000G 内容 街道に出没する盗賊団を殲滅してください。
なお、アジトの位置は不明です。
「ワイバーンの卵採取」
報酬 45000G 内容 ドラゴンの巣から卵を盗んできてください。
数に制限はありません。ただし、他の冒険者と協力して行うことはできません。
また、持ち帰った卵の数に応じて追加報酬が出ます。
といった感じである。どれもこれも危険な依頼ばかりだが、今の俺達に選択肢はないと言ってもいいだろう。
覚悟を決めた俺は、受付嬢に礼を述べると掲示板の前に向かった。そして、その中から一枚の依頼書を手に取るとアリアさんに手渡した。
その内容はこうである。
「洞窟に住み着いたポイズンスパイダーの討伐」
報酬 25000G 内容 毒を持つ巨大な蜘蛛型の魔物、ポイズンスパイダーの群れの討伐を行ってください。
大きさは成人男性と同じくらいですが、糸を吐き出してくるため非常に厄介です。
罠を仕掛けてくることもあるため注意が必要です。
内容を読み終えたアリアさんは少し考える素振りを見せた後で頷くと、こちらに向かって微笑んでくれた。
どうやら引き受けてくれるようだ。
俺はお礼を言うと手続きを済ませるためにカウンターへと向かった。
それから書類を書き終えると、早速出発することになった。
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