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その事実を知った時、俺は驚きを禁じ得なかった。
何せこの世界の住人なら絶対に知らないはずのことを知っていたのだから無理もないことだろう。
聞けば彼女達は別の世界の神によって召喚されたのだという。
そして、その目的は元の世界に帰る方法を探すことだったそうだ。
最初は戸惑っていたようだが、次第に慣れてくると楽しく過ごすようになっていったらしい。
だが、それも長くは続かなかった。
ある日のこと、突然この世界に連れて来られたかと思えば、
「私は、お前を勇者として認めていない。よってお前は今日からこの城から出ていけ!」
突然のことに頭が真っ白になったまま立ち尽くしていると、更に追い討ちをかけるように
告げられた言葉に目の前が真っ暗になるのを感じた。
(え……? 今なんて言ったんだ?)
一瞬理解できなかったが、すぐにその意味を理解することになる。
何故ならその直後、目の前に居た女性が不敵な笑みを浮かべながら
こちらに手をかざしてきたからだ。
すると次の瞬間、突如として視界が歪み始めたかと思うと、そのまま意識を失ってしまった……
気がつくとそこは見知らぬ部屋の中だった。
どうやらベッドに寝かされていたらしく身体を起こそうとしたが思うように動かないことに気付く。
それどころか手足の自由すら利かず、首を動かすことすら出来なかった。
「くっ……何だこれは……」
何とかして動こうと試みるも無駄に終わるだけだった。
それどころか余計に体力を使ってしまい息切れを起こしてしまう始末であった。
それでも諦めずに続けていくうちに段々と慣れてきたのかスムーズに動けるようになってきた気がした。
そこで今度はゆっくりと立ち上がってみることにする。
ふらつきながらもなんとか立ち上がることに成功した俺は周囲を見回してみたがやはり見覚えのない場所であることに変わりはなかった。
(ここはどこなんだ?)
そう思って考えていると不意に部屋の扉が開いた。
入ってきたのは一人の女性であった。
年齢は20代前半くらいだろうか?髪は金色で腰の辺りまで伸びているストレートヘアーをしており、
「あら、目が覚めたみたいね。良かったわ」
と言って微笑んでいる姿はとても美しく見えた。
だが同時にどこか懐かしい感じがするのは何故だろう?
そんなことを思っていると彼女が話しかけてきた。
「気分はどうかしら?どこか痛いところとかはない?」
そう言われて自分の身体を確認してみると、特に異常はなさそうだったので素直に答えることにした。
その後、いくつか質問をされたがどれも簡単なものばかりだったので問題なく答えることができたと思う。
すると安心したような表情を見せた後で言った。
「それなら大丈夫そうね」
そう言いながら俺の顔を覗き込んでくる彼女の瞳を見ていると吸い込まれそうな感覚を覚えたが、
そこで我に返った俺は慌てて視線を逸らすと話題を変えるために質問を投げかけた。
「ところで、あなたは誰なんですか?」
それを聞いた彼女は一瞬キョトンとした表情を浮かべた後でクスクスと笑った後、自己紹介を始めた。
「あぁ、ごめんなさいね。まだ名乗ってなかったわね。私の名前はアリアよ。よろしくね」
そう言って微笑む彼女に対して俺も名乗ろうとしたのだが、何故か名前が思い出せなかった。
仕方なく黙ったままでいると、それに気付いた彼女が不思議そうに首を傾げながら尋ねてくる。
「どうしたの?何かあったのかしら?」
その言葉にどう答えて良いか分からずにいると、それを見た彼女が何かを思いついたかのように手を叩いた後で言った。
「もしかして、名前を忘れちゃったの?」
図星を突かれて思わず黙り込んでしまう俺を見て、彼女は困ったような表情を浮かべると言った。
「参ったわね……どうしようかしら……」
困り果てている様子の彼女に申し訳なく思いながらもどうすることもできずにいると、不意に部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。
コンコンッ!その音を聞いてビクッと身体を震わせると、恐る恐る扉の方に目を向ける。
すると、扉の向こう側から声が聞こえてきた。
その声は女の声だった。
どうやらこの部屋に向かって呼びかけているようだが、
一体誰だろうか?
そう思っていると、アリアさんが代わりに答えてくれた。
「ちょっと待ってくださいね」
そう言って立ち上がると扉の方へと向かうと、鍵を開けてから扉を開いた。
そこには一人の女が立っていた。
その姿を見て驚いたのは俺だけではなく、アリアさんも同じだったようだ。
「えっ!? 嘘っ!?」
驚愕のあまり目を見開いて固まっている彼女をよそに俺は女に話しかけた。
それにしても随分と派手な格好をしているなと思ったものの口には出さないでおくことにした。
それよりも今は目の前の状況をどうにかする方が先決だと思ったからだ。
とりあえず落ち着いてもらうためにも部屋に入れて話をすることにしたのだが、
その際アリアさんにも一緒に来てもらおうとしたら断られたので渋々一人で戻ることになったのだった。
翌朝、朝食を済ませた後で出発する準備をしていたところに誰かが訪ねてきたようだ。
扉を開けるとそこには見覚えのある顔があった。
それは昨日会ったばかりの女騎士様だった。
何の用だろうかと思っていると、いきなり頭を下げられてしまったので面食らってしまった。
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