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それからというもの、行く先々で襲われ続け、心身ともに疲弊しきっていたところを、偶然通りかかった俺に拾われたというわけだ。
最初は警戒していたものの、優しく接してくれる俺を見ているうちに段々と心を開いてくれたようで、今ではすっかり懐かれてしまっている。
最近では毎日のように甘えてくるようになり、その度に理性を保つのに苦労するようになったほどだ。
今日もいつものように朝食の準備をしていると、突然後ろから抱きつかれた。驚いて振り向くと、そこには笑顔を浮かべる少女の姿があった。
「えへへ、おはようございます、ご主人様♪」
そう言って微笑む姿にドキッとしたが、平静を装って挨拶を返すと、台所へと戻っていった。
料理を作り終えると、テーブルの上に並べていく。今日のメニューはトーストに目玉焼き、サラダといった簡単なものだ。
それらを食べ終わる頃には出勤する時間になっていたので、鞄を持って玄関へと向かうことにする。
すると、後からパタパタと足音が聞こえてきたかと思うと、背中に何かがぶつかってきた感触があった。
振り返ると、そこには頬を膨らませて不機嫌そうな顔をしているフィリアがいたのだった。
どうしたのかと尋ねると、彼女は無言のまま抱きついてきた後、上目遣いで見つめてくると言った。
「あの……私も一緒に連れて行ってくれませんか?」
突然の申し出に驚いていると、さらに追い打ちをかけるように言ってきた。
「私、もっとご主人様のお役に立ちたいんです! だからお願いします!」
俺は悩んだ末に了承することにした。
断る理由もないし、何より彼女に悲しい思いをさせたくなかったからだ。
こうして俺達は三人で旅をすることになったわけだが、目的地は特に決めていなかったためどこに向かおうか迷っていたところ、
「魔王城に行きませんか」
と提案されたことで行き先が決定したのである。
そんなわけで今に至るわけだ。
道中では何度か魔物に襲われたりもしたが、どれも大した強さではなかったため難なく倒すことができた。
ただ、一つだけ気になることがあったのでそれについて尋ねてみることにしてみた。
というのも、先程からやけに距離が近い気がするのだ。
気のせいかもしれないが、こうも頻繁にくっつかれると気になって仕方がないというかなんというか、
まあ要するに落ち着かない気分になっているわけなのだが、当の本人は全く気にしていない様子だしどうしたものかと
思っているうちに目的の場所に到着したようだ。そこは大きな山の中腹にある洞窟だった。
中に入ると真っ暗だったので明かりをつけることにしたのだが、そこで思わぬ事態が発生した。
なんと、松明の火が消えてしまったのだ。
しかも、それだけではない。
壁や天井までもが崩れ始めてきたではないか!
このままでは生き埋めになってしまうと思い、出口を探すために走り出した。
幸いにも一本道だったため迷うことはなかったが、その間にもどんどん崩壊が進み、退路が塞がれていく一方であった。
このままではまずいと思ったその時、前方に光が見えた。
外の明かりだろうか?
そう思った瞬間、背後から轟音が聞こえたかと思うと、とうとう入り口が完全に塞がれてしまったようだ。
もはや逃げ場はないと思われたその時、目の前に巨大な影が現れた。
恐る恐る見上げると、そこには信じられない光景が広がっていた。
何と、そこにいたのはドラゴンだったのだ。
驚きのあまり声も出ないでいると、そのドラゴンはゆっくりとこちらを見下ろしながら話しかけてきた。
どうやら言葉は通じるようだ。
「ところでかあさんは」
自分の母アリアについてが知りたかった。
それを聞くと彼女は嬉しそうに微笑んだあとこう言った。
「あなたのお母さんなら無事よ、心配しないでいいわ」
俺はそれを聞いて安心した。
よかった、母は生きているようだ。
きっと父も同じだろう。
その後、俺達は互いのことを話し合った。
まずは俺から自分のことを話すことにした。
といっても大したことじゃない。
「魔王に育てられた後継者って事は現魔王か」
俺がそう呟くと、目の前の少女は頷いた。
なるほど、それならこの実力にも納得がいくというものだ。
だが、そうなると新たな疑問が生まれることになる。
どうしてこの子が一人でこんな場所にいるのかということだ。
もしかしたら何か事情があるのかもしれないと思って聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
なんでも、先代の魔王が死んでしまい、新しい魔王を決めることになったらしいのだが、それに反発する者達が反乱を起こしたという話だ。
その際に彼女は命を落としかけたところを、たまたま通りがかった今の魔王に助けられたのだという。
それ以来、彼女は彼の世話係として働いているそうだ。
しかし、そんな彼女は今現在、俺の目の前で土下座をしていたりするんだが、一体どういう状況なんだろうかこれは?
いや、なんとなく予想はつくけどさ。
どうせまたロクでもないことを考えているんだろうなぁと思いつつも一応聞いてみることにした。
すると案の定とんでもない答えが返ってきてしまった。
曰く、俺に弟子入りしたいらしいんだけれどこれって断った方がいいんだろうか?
正直言って面倒事に巻き込まれる予感しかないんだよなぁ、でもこのまま放っておくわけにもいかないし困ったもんだ。
「うーん、どうしようかな……」
しばらく悩んだ結果、とりあえず保留ということにしておいた。
彼女もいきなり言われても困るだろうし、俺も心の整理が必要だしな。
というわけで、その日は解散となった。
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