上 下
104 / 236

104.

しおりを挟む
「実は君に話があるんだ」
と言うと、不思議そうな顔をする彼女に向かって話を続けることにした。
俺は自分が別の世界から来たこと、そして帰る手段を探していることなどを説明することにした。
当然ながら信じてもらえるとは思っていなかったが、それでもできる限りのことはしようと考えていた。
その結果、彼女は黙り込んでしまった。
やはりダメかと思った次の瞬間、突然笑い始めたので何事かと思って見ていると、 涙を拭いながら謝られてしまった。
どうやらツボに入ったらしく、しばらくの間笑っていたが、ようやく落ち着いたところで話しかけてきた。
「あはは、ごめんね。あまりにも突拍子もない話でびっくりしたものだからつい笑っちゃったわ」
と言いつつ、まだ少し笑っているようだったが、 やがて落ち着きを取り戻すと続きを話し始めた。
「でも、あなたの言うことを信じるわ。だって、嘘をついているようには見えなかったもの」
そう言って微笑む彼女に感謝の言葉を述べると、今度はこちらから質問をしてみることにした。
君は何者なんだ?
どこから来たんだ?
もしかして、人間じゃないのか?
矢継ぎ早に繰り出される質問に対して、一つずつ丁寧に答えてくれる彼女。
曰く、自分は魔界と呼ばれる場所からやってきた魔族であり、元々はこの世界を支配するためにやって来たらしい。
ところが、当時の魔王と相討ちになり、命を落としてしまった。
その後、どういう訳かこの世界に転生してしまい、
それ以来ずっと生きてきたのだという。
ちなみに、彼女の見た目はどう見ても人間の少女にしか見えないのだが、それはあくまで魔法で姿を変えているだけであって、
本来の姿は全く違うらしい。
具体的に言うと、巨大なドラゴンの姿だというのだ。
それを聞いて驚く俺に、更に追い打ちをかけるように衝撃的な事実を告げる彼女。
何と、彼女は人間ではなく、本物の竜族なのだという。
その事実を知った俺は驚きのあまり言葉を失ってしまった。
だが、そんな俺に構わず話は続く。
どうやら、彼女が住む村では代々、竜の巫女を務めてきた一族の末裔で、その中でも特に強い力を持った者が次の竜王となる資格を得るのだという。
そして、現在その役目を担っているのが、目の前にいる彼女だという訳だ。
つまり、彼女は正真正銘のお姫様ということになる。
だが、そうなると疑問が残る。
何故、彼女はこんな所にいるのだろうか?
そもそも、どうやってここまで来たのだろうか?
様々な疑問が浮かぶ中、彼女は語り始める。
その話によると、彼女は魔族の国から逃げ出して来たということらしい。
理由は簡単で、仲間の裏切りにあったからだそうだ。
しかも、よりによってそれが実の父親だったというのだからタチが悪いとしか言いようがない。
(まさか……いや、そんなことはありえないよな……?)
そう思いながらも確認せずにはいられなかった俺は恐る恐る聞いてみた。
すると案の定というか何と言うか、返ってきた答えは予想通りのものだったのだのだった。
確かに言われてみればどことなく面影があるような気がするなと思ったりもしたのだが、
それよりも何よりも気になることがあったためそれどころではなかったのである。
というのも、彼女が身に着けていた下着というのが、いわゆる紐パンというやつだったからだ。
色は黒一色なのだが、妙に艶めかしく見えてしまい目のやり場に困ってしまうほどだったからである。
とはいえいつまでもこうしていても仕方がないと思い直し、意を決して話しかけることにした。
「……えっと、それで何の用かな?」
俺が問いかけると、彼女はハッとした様子で我に返ると、慌てて取り繕うように言ってきた。
「あ、あの、別にそういうつもりじゃなかったんですけど、結果的にそうなっちゃいました……」
恥ずかしそうに俯く姿が何とも可愛らしいと思ってしまうが、今はそんなことを考えてる場合じゃないと自分に言い聞かせて気を引き締める。
とりあえず話を聞こうと黙って待っていると、意を決したように顔を上げてこちらを見つめてくる。
その瞳からは強い意志のようなものが感じられた。
そこで俺は思わず息を呑んでしまった。
それほどまでに真剣な眼差しをしていたからだった。
そして、ゆっくりと口を開くと静かに語り始めた。
「私、あなたのことが好きなの!」
その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。一瞬何を言われたのか理解できなかったほどだ。
だが、すぐに正気に戻ると慌てて聞き返した。
「ごめん、無理、俺には魔王として妻がいるから」
そう答えると、彼女は悲しそうな顔をした後で俯いてしまった。
それを見て胸が痛むのを感じたが、こればかりはどうしようもないことだった。
それに、彼女にはもっと相応しい相手が見つかるはずだと思ったのだ。
だから、これでいいのだと自分に言い聞かせる。
その一方で、彼女は諦めきれない様子だった。
その後も何度かアプローチしてきたが、全て断ったことで諦めたようだ。
その後は何事もなかったかのように振る舞い、普段通りの生活に戻ったように見えたのだが、
時折見せる寂しそうな表情が印象に残った。
それからしばらくしてのことだった。
いつものようにダンジョン探索を終えて帰ってきた時のことだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

勇者パーティー追放された支援役、スキル「エンカウント操作」のチート覚醒をきっかけに戦闘力超爆速上昇中ですが、俺は天職の支援役であり続けます。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
支援役ロベル・モリスは、勇者パーティーに無能・役立たずと罵られ追放された。 お前のちっぽけな支援スキルなど必要ない、という理由で。 しかし直後、ロベルの所持スキル『エンカウント操作』がチート覚醒する。 『種類』も『数』も『瞬殺するか?』までも選んでモンスターを呼び寄せられる上に、『経験値』や『ドロップ・アイテム』などは入手可能。 スキルを使った爆速レベルアップをきっかけに、ロベルの戦闘力は急上昇していく。 そして勇者一行は、愚かにも気づいていなかった。 自分たちの実力が、ロベルの支援スキルのおかげで成り立っていたことに。 ロベル追放で化けの皮がはがれた勇者一行は、没落の道を歩んで破滅する。 一方のロベルは最強・無双・向かうところ敵なしだ。 手にした力を支援に注ぎ、3人の聖女のピンチを次々に救う。 小さい頃の幼馴染、エルフのプリンセス、実はロベルを溺愛していた元勇者パーティーメンバー。 彼女たち3聖女とハーレム・パーティーを結成したロベルは、王国を救い、人々から賞賛され、魔族四天王に圧勝。 ついには手にした聖剣で、魔王を滅ぼし世界を救うのだった。 これは目立つのが苦手なひとりの男が、最強でありながらも『支援役』にこだわり続け、結局世界を救ってしまう。そんな物語。 ※2022年12月12日(月)18時、【男性向けHOTランキング1位】をいただきました!  お読みいただいた皆さま、応援いただいた皆さま、  本当に本当にありがとうございました!

俺は5人の勇者の産みの親!!

王一歩
ファンタジー
リュートは突然、4人の美女達にえっちを迫られる!? その目的とは、子作りを行い、人類存亡の危機から救う次世代の勇者を誕生させることだった! 大学生活初日、巨乳黒髪ロング美女のカノンから突然告白される。 告白された理由は、リュートとエッチすることだった! 他にも、金髪小悪魔系お嬢様吸血鬼のアリア、赤髪ロリ系爆乳人狼のテル、青髪ヤンデレ系ちっぱい娘のアイネからもえっちを迫られる! クラシックの音楽をモチーフとしたキャラクターが織りなす、人類存亡を賭けた魔法攻防戦が今始まる!

処理中です...