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いや、違う、彼女じゃない、彼と言うべきか?
どちらにしても信じられない光景が広がっていた。
そこに映っていたのは俺と瓜二つの顔をした男だったのだから……。
あまりの展開に頭が追いつかないでいると、
さらに畳み掛けるかのように言葉が続けられる。
「びっくりしたかい? でも、もう大丈夫だよ、僕がいるからね、これからは僕に任せてくれれば大丈夫だから安心していいよ」
そう言われて頭を撫でられる感触を感じながら、
ようやく落ち着きを取り戻すことが出来たところで改めて質問を投げかけてみることにした。
そこで返ってきた答えは次のようなものだった。
「君はこれから僕と一緒に暮らすことになるんだよ、よろしくね」
その言葉を聞いた途端に背筋に冷たいものが走った。
気がしたが気のせいだと思うことにしてその場を
やり過ごすことに成功したのだった……。
そんなやり取りを終えたところでいよいよ出発の時を
迎えることになった俺達は準備を整えると、
早速旅立つことになった。
目指す場所は勿論、元居た街であるアリアドネだ。
そこなら冒険者ギルドもあるし情報集めにはうって
つけだろうということで行き先が決まったのである。
そうして出発した俺達だが、まずは最寄りの街に向かうことに
した。ここからだと一番近いのは隣街のアウステリア
という所になるがとりあえずそこまで行けばなんとか
なるだろうと踏んでの判断だった。
ちなみに現在歩いている道は一本道で、途中に分岐路などはないため迷う心配はない。
暫く進んだところで一度休憩することになったので、 その間に昼食を済ませることにしたのだが、その際にちょっとしたトラブルが起こってしまったんだ。
原因はフィリアの料理にあった。
彼女の作ったサンドイッチは見た目はとても美味しそう
だったのだが、実際に食べてみるとかなり辛かったようで、
水を飲む手が止まらなくなってしまったのだ。
しかもそれだけではなく喉がヒリヒリするような感じすらして、
苦しかったため、何度も咳き込む羽目になって、
しまったのである。
それを見たエルナ達はニヤニヤしながらこちらを見ているし、
フィリアに至っては心配そうに見つめてくる始末なので、
余計に恥ずかしく感じてしまう結果となってしまった。
そんな状態ではあったが、どうにか食べ終えることが
出来たので一安心したものの、
その後も歩く度に辛さが襲ってきたために結局最後まで
苦しみながら進むことになってしまったのだった。
道中で色々とあって大変な目に遭ったが、
何とか隣町まで辿り着いた俺達は早速宿を探すことにした。
「さて、それじゃあ今日のところはさっさと休んで明日に備えようか?」
俺が提案するとフィリアも賛成してくれたので、
ひとまず泊まる場所を確保することにすることに、
決めた俺達は、さっそく宿屋へと向かうことにしたんだ。
そして到着した先で受付を済ませると、
指定された部屋へ向かっていくことになったわけだが、
ここでもひと悶着あったのは言うまでもないことだろう。
というのも部屋割りで揉めてしまったのだ。
その結果として俺とフィリアが同じ部屋で寝ることになり、
エルナとマリアはそれぞれ別室で過ごすことになったわけだ。
「えへへ、二人きりですねっ」
そう言って嬉しそうに抱きついてくる彼女を受け止めて
やると頭を撫でてやった後で、そっと口づけを交わすことにした。
始終嬉しそうな彼女に俺も嬉しいなっと思っていたら、ほかのメンバーが
「海に行きませんか? 魔王・リュート様」
と提案してくるので、俺はそれを承諾することにした。
こうして次の目的地が決まった俺達は、旅支度を整えると、
馬車に乗って出発したのだった。
それから数日ほど経ったある日のこと、
遂に目的の場所にたどり着いた俺達は、
早速探索を開始することにしたんだ。
まずは周辺を一通り調べて回った後、近くの街で
情報収集を行うことに、決め、街へ向かうことに
したのだった。
そして、その日の夜の事、皆が眠りについていた頃、
ふと目が覚めた俺は、窓の外に浮かぶ月を眺めながら
物思いにふけっていた。
そんな時、不意に後ろから声をかけられたので
振り返って見ると、
「あら、釣れないわね」
そう呟かれて青ざめる、そこにいたのは紛れもない勇者パーティーの元仲間魔法使いのエリーだったからだ。
「声は出さないでね、起きてしまうでしょ?」
そう言われて黙り込むしかなかった。
俺はただ怯えることしかできなかった。
その時、彼女は突然何かを思い出したような素振りを見せた後、ニヤリと笑うと耳元で囁いた。
「大丈夫よ、殺したりしないから安心しなさいな」
と優しく言われたが、それが逆に不気味だった。
(どういうことだ?一体何が目的なんだ……?)
俺が混乱していると、彼女はさらに続けて言った。
「うふふ、不思議そうな顔してるね、教えてあげましょうか?」
そう言って笑う彼女の顔はとても美しかった。
思わず見惚れてしまいそうになるほどだ。
しかし、それと同時に恐ろしさを感じた。
まるで獲物を狙う肉食獣のような目だったからだ。
その瞳を見た瞬間、背筋がぞくりとした感覚に襲われるのでした。
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