上 下
46 / 236

46.

しおりを挟む
俺は、喜んで引き受けた。
それから、しばらくの間、二人きりで過ごした。
何をするわけでもなく、のんびりと過ごすだけの時間だったが、幸せだった。
だが、それも、そう長くは続かない。
ニーナがやってきて、俺に話しかけてきた。
どうやら、俺達を探していたようだ。
何の用だろうと思っていると、彼女はこう言った。
「実は、お願いがあるんです」
「何でしょうか」
聞き返すと、彼女は答える。
「私を、あなたの弟子にしてもらえませんか」
それを聞いて、俺は驚いた。
なぜ、そんなことを言い出したのか、理解できなかったからだ。
だが、詳しく話を聞いてみると、理由はわかった。
彼女は、強くなりたいそうだ。
そのための手段として、俺のところに来たらしい。
俺は迷った末に、了承することにした。
どうせ、断ることはできないのだから、受け入れた方が楽だと思ったからだ。
それに、もし、彼女が強くなってくれるのなら、それはそれで都合がいいと思った。
なぜなら、いずれは、彼女を倒さなければならないからだ。
そのためには、強くする必要があるし、ちょうどよかった。
そういうわけで、俺は、彼女に稽古をつけることにした。
まずは、基本的なことから教えていくことにする。
とはいえ、俺は素人なので、大したことはできないのだが。
とりあえず、最初に教えるのは、
「魔力をコントロールする練習から始めよう」
魔力というのは、生命エネルギーのようなものであると言われている。
それを操ることができれば、身体能力を強化することができるようになるというわけだ。
というわけで、早速試してみることにした。
まず、目を閉じて集中する。
すると、自分の体の中に、温かいものを感じることができた。
これが魔力なのだろう。
それを右手に集めるようにイメージしてみる。
すると、手のひらの上に光球が現れた。
それは徐々に大きくなっていき、やがてバスケットボールほどの大きさになる。
そこで一度止めると、今度は左手に意識を向ける。
同じようにやってみると、やはり同じくらいの大きさの光の玉ができた。
そのまま維持していると、しばらくして、少しずつ光が弱くなっていく。
完全に消えると、俺はその場に座り込んだ。
すると、クロードが俺の顔を覗き込んでくる。
「大丈夫?」
心配そうな表情を浮かべながら聞いてくる。
俺は大丈夫だと答えると、立ち上がった。
クロードの手を取ると、歩き出す。
彼女は嬉しそうに微笑んだ。
俺はそんな彼女の姿を見て、可愛いなと思うと同時に、申し訳ない気持ちになった。
なぜなら、彼女の正体は、あの恐ろしい魔王なのだから。
しかも、今は人間の少女の姿をしているが、その正体は巨大なドラゴンなのだ。
そんな相手と、俺はこれから一緒に暮らさなくてはならない。
そう考えると、不安で仕方がなかった。
(本当に大丈夫なのか?)
心の中で呟くが、答えてくれる者はいない。
(まあ、考えても仕方ないか)
そう思い直して、気持ちを切り替えることにした。
ひとまず、家の中を見て回ろう。そう思ったところで、あることに気づいた。
(そういえば、どこに行けばいいんだろう)
考えてみれば、この家のことについて何も知らないことに気づく。
どうしようか悩んでいると、不意に声をかけられた。
見ると、そこにはニーナがいた。
彼女はこちらを見て微笑むと、話しかけてくる。
「どうかなさいましたか?」
その言葉に戸惑いながらも返事をする。
「いや、なんでもないよ」
すると、彼女は首を傾げる。
そして、不思議そうな顔をしながら聞いてきた。
「そうですか……ところで、あなたは誰ですか?」
その質問に対して、どう答えるべきか迷う。
正直に答えるわけにはいかないが、かといって嘘をつくわけにもいかない。
悩んだ末、本当のことを話すことにした。
自分は人間ではなく、別の世界から来た存在であり、この世界を救うためにやってきたのだと説明する。
それを聞いた彼女は納得した様子で頷くと言った。
「なるほど……そういうことでしたか」
それから、改めて自己紹介をする。
「私の名前はクレハと申します」
「私はニーナです」
お互いに挨拶を交わすと、握手を交わした。
その後、色々と話をした後、夕食をご馳走になった。
食事を終えると、風呂に入り、寝室へと向かう。
そして、ベッドに横になると、眠りについた。
翌朝目を覚ますと、朝食を食べる。
その後は、出かける準備をして家を出た。
向かった先は冒険者ギルドだ。
中に入ると、受付に向かう。
そこで、依頼書を受け取った後で、外へ出た。
目的地までは歩いて向かう。
森が見えてきたので、そこを通り抜ける。
さらに進んでいくと、分かれ道に突き当たったので、右の道を進む。
分かれ道に突き当たったので、左の道を進む。
さらに歩いていくと、分かれ道に突き当たったので、右の道を進む。
分かれ道に突き当たったので、左の道を進む。
その後も何度か道を間違えつつも、なんとか目的の場所にたどり着いた。
そこは小さな村だった。
周囲を柵で覆われており、入り口には門番が立っていた。
俺はその人に話しかけると、中に入れてもらった。
村の中に入ると、周囲を見回す。
建物は木造で、二階建ての建物が多い。
通りを歩いている人々は皆、獣人族で、猫のような耳や尻尾を生やしている者が多かった。
また、髪の色も様々で、青や緑などカラフルな色をしている。
中にはエルフのような尖った耳を持つ者もいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

処理中です...