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からくり城奇譚

03 トゥエル山

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 トゥエル山は、城から北東の方角に二時間ほど馬を走らせた場所にあった。
 方角がよくねえよな、というのが占いもよくするというガイの意見だった。
 トゥエル山の周囲は山ばかりで、人家はほとんどなかったが、山のふもとに天幕を張った兵士の一団がいた。
 そこにガイが馬を寄せると、ざわめく兵士たちの間から屈強な中年男が進み出て、彼に向かって敬礼をした。

「これはマスター、ご苦労様です」

 ガイはその男に片手を上げると、身軽に馬から降りた。

「変化は?」
「ありません。いつものとおりです」
「ふうん。やっぱね」

 そう言って山を見やってから、まだ馬に乗ったままのノウトに向き直る。

「あんた、馬から降りて。こっからは徒歩! 馬が歩けるような道なんてないんだから」
「今からここを登るんですか?」

 身長はあるが体力にもあまり自信はない。ノウトはぞっとして前方の山を見上げた。
 山の頂上には何か黒い建築物が建っていた。たぶん、あれが例の城だろう。見るからに不吉そうな城だった。

「大丈夫、たいして急な山じゃないから。こいつらがつけた道もあるし。ぐずぐずしてると日が暮れる。ほら、急げ急げ」

 ノウトは仕方なく借り物の馬から降りた。が、先ほど敬礼をした男が驚いたようにガイを見た。周りの兵士たちも同様である。

「今からあの城へ行かれるのですか?」
「ああ。この男と一緒にね」

 にやにや笑ってノウトを親指で指す。

「では、我々も……」
「来なくていい、来なくていい」

 あわててガイは手を振った。

「ちょっと様子見てくるだけだから。それに、城の前には張り番がいるんだろ? それで充分」
「しかし、マスターに万が一のことがありましたら、陛下に申し訳が――」
「そんときゃそんとき。あんたらに責任を追及するほど、あの人もバカじゃないさ」

 そっけなくガイは言い、困惑しているノウトに笑いかけた。

「ほんじゃま、行きましょうか?」
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