DIVA LORE-伝承の歌姫-

Corvus corax

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123.高峰少佐

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冬休み明け、学園生活が再開したその日に全校生徒を集めて集会が行われた。
普通の学校であれば、校長が新学期も気を引き締めて授業に取り組むようにと話があったりするが、この学園は違う。
新年早々発生した魔物とメタルヒューマンの戦闘について、説明と共有がなされた。
ここで静羽達も初耳だったのが、事件が起きたのは富山だけではなかったという事だった。
静羽達が戦った相手5人のメタルヒューマン以外に、近隣の市にも発生していた事。
それだけでなく日本全国の主要都市にて計81人のメタルヒューマンの発生、消滅が確認された。
うち富山のみ2名が生還したが、その代わりに学園卒業OBと軍所属の二名が犠牲になってしまう。
富山のみ2名が生き残った事に関し、この学園の生徒が治療ができるように力を尽くしてくれた事が述べられる。
そして今年から相次ぐ魔物の出現とメタルヒューマンの対応を行うため、軍より5名派遣され戦闘要員の増強を行うことが決定となった。
Aクラス及びSクラスに関しては引き続き地下の遺跡で強化を使う事も可能だが、Bクラス以下においては今まで変身してからのサポートが心もとなかったため、Bクラスからの強化を行うことが含まれている。
そして軍が定期的に学園を訪れる事により、様々な機械や機器の開発、問題点の話し合いや改良もしやすくなるというメリットがある。
ただ連絡をしているだけよりも、実際に訪れて現場を見てもらったほうが相手もわかりやすいのだ。
百聞は一見に如かずである。
具体的な強化プログラムの説明がなされた後、それを執行するうえで派遣される5人が学園長の合図により入場、空気が変わった。
入って来た5人の隊員の間隔は均一で、行動に威厳があり動きも整っている。

「本日から学園にて指導を行うため派遣された5名を紹介する!」

喜多川 海(きたがわ かい) 2曹
馬場 幸弘(ばば ゆきひろ) 2曹
相川 弓弦(あいかわ ゆずる) 曹長
望月 奏歌(もちづき そうか) 中尉
高峰 優姫(たかみね ゆうき) 少佐

名前の紹介がされた後、少佐である高峰が生徒に対して激励の言葉を送った。

「我々は、近頃世の中で多発しているメタルヒューマンや魔物との戦闘員増強のためにここへ来た。諸君らは軍に所属はしていないが、国を守るための技術を、この学園にて学ぶために入学しているはずだ。一人一人がその自覚を持ち、我々が提供する訓練にもしっかりついてきてもらいたい。喜多川、馬場、相川は主に戦闘面を、望月は医学・音楽に対しての役割を、そして私は戦闘・情報や指揮の面での指導を行う。我々に普段の敬礼等は不要だ。それよりも一刻も早く国の戦力になれるよう日々鍛錬を怠るな。以上だ」

今までは真面目に学園生活を送って、たまに現れる魔物を倒したりしていれば生徒は進級も卒業もできた。
だが静羽が入学しようと準備を進めていたあたりから、魔物の活動が活発化し始め、出現頻度も増えている。
それに加えメタルヒューマンなどという、わけのわからない人間を使った生命体がDIVA教により生み出されてしまった。
国としては人手が足りなくなる前に手を打たなければならない。
学園の他にも一般人を臨時の隊員として迎え入れる対策や、新たに学校を建設しようとする案も出ている。
本格的な指導が入るということは、学生の中でも離脱者が増える事だろう。
だがそれを乗り越えてくれる人でないと、国を守るどころか自分を守ることですらできない。
今回の指導はそういった生徒を篩にかけ、これからの人材を育成していくうえで必要な事なのである。
集会が終わり、Sクラス以外の生徒が教室へと戻る。
静かになったアリーナでSクラスメンバーそして先生と高峰達が向かい合わせに立った。

「今ここに残っているお前たちに必要な情報の共有をしてもらいたい。学園内の施設や設備、遺跡や伝承、そして今一般には出回っていない情報があるはずだ。3グループに分かれそれぞれに役割を与える」

高峰の指示により、喜多川と馬場が学園内の施設や設備を見て回る事になり、相川と望月が遺跡や伝承について実際に地下へ、そして高峰が機密情報について聞くと言う。
特に高峰は機密情報について共有するように、静羽と白羽を名指しした。
その時点で静羽も白羽も、何かしら高峰に情報が伝わっている事を予測できた。
他メンバーも役割を与えられアリーナから去っていく。
3人になったアリーナは静まりかえっている。

「邪魔者がいなくなったとは言え、この場所で話す事は望ましくない。学園にも結界を張った部屋くらいは用意できるだろう。私を最善の部屋へと案内を頼む」
「はい。どうぞこちらへ」

Sクラスになったばかりの静羽にとっては、その場所を把握していないため白羽に高峰と一緒についていくしかなかった。
本当に大事な会議の時や、会話の内容が他人に知られたくない場合にのみ使う部屋や地下にあるのだという。
そしてその場所はそもそもSクラス以上の生徒及び教員と許可された人間しか入る事を許されていない。
案内され地下のその場所へ着くと、高峰は自分の分身を作り出し部屋の見張りをさせ結界を張った。
部屋にあったソファに座り、話を始める。

「さて、私より上位の立場にあるものが来なければこの結界が破られることはない。こちらで用意した質問に可能な限り答えてもらいたい」

その言葉に静羽と白羽は顔を一度見合わせた。
国のために協力する意思はあれど、こちらの情報を渡すことは静羽にとって不利になる可能性もある。

「一つ確認したい事があります、この内容は上に報告が前提ですか?」

静羽が不安そうにそう尋ねると、必要な事はそうするつもりであると返された。
そもそも高峰はどの程度自分の事を知っているのだろう?そう思った静羽は、今どの程度の情報を知っているのかを教えてほしいと高峰に言う。

「君が本当はこの地球上の人間じゃなかったことも、君の中に爆弾が眠っている事も報告は受けている。ただ、それは人伝に聞いたものだ。君自身の口から説明をしてほしい。ちなみに軍は君の事を要注意人物として扱っている。理由は…説明しなくともある程度予測は可能だろう」
「そう…ですね」
「まぁ…君自身というよりは中にいるだろう爆弾のほうだがな。しかし、君には同情するよ。自分の知らないところで自分の身体を好きにされるのは屈辱だろうからな…」

なりたくてなった訳ではない。
産まれた時からそう仕組まれ、両親は静羽の事を人として扱わずむしろ、死ぬことを願っているのだから。

「報告について、それが事実なのかを一番最初に聞こう」
「…、はい…事実です」

地下の遺跡に入り、水晶に昔の事や今の事を伝えられているうちに少しずつ記憶を取り戻し、その記憶の事も伝えた。
300年前の事、そして地球ではない星で過ごした日々の事も。

「桜川だけでなく白羽・クレーエもこの地球の人間ではなかったな?」
「そうなります。そもそも僕は人間じゃありませんでしたし…」
「不思議な話だ…。輪廻転生の話は古来より伝わる話だが、もしそれがあったとしても記憶をなくすはずなんだがな」
「実際忘れてはいましたが、この学園に入ってから様々な事が重なって徐々に思い出していきました」
「君たちが今ここに存在している事こそが、その歴史の証人なのだろう。一般人にはなかなか理解することも信じる事も難しい事ではあるが。ふむ…では次の質問に移ろう。桜川、君はこれからこの国のために自分ができる事はなんだと思う?」
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