DIVA LORE-伝承の歌姫-

Corvus corax

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57.観光

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「ねぇ楓真…」
「ん?」
「好きな人…いたりする?」

興味本意で楓がそう聞いたことがある。
楓真も楓真で答え方がふわっとしていたり、誰かに限定して答えたりする事が少ない。
この質問をした時も…

「ふふっ、白羽かなー」

なんて答えを返した。
もちろん楓真にとって白羽は特別なのだろう。
それは白羽だけでなく、徹も…そして楓も一緒なのだ。
『またそうやって…ちゃんと言わないんだから…』
そこで楓かなと答えられたとしても、特にドキッとしないし、またはぐらかされたと思うだけだ。
自分は楓真の事をどう思っているのだろう…。
いつも隣にいて、それが当然で、本当に兄妹のような存在で…。
家族と同じ立ち位置にいるような、特別で…大切な人ではある。
でももしその楓真に今後、好きな人ができて付き合ったとしたら、どう思うのだろう。
『応援…する…のかな』
まだその時になったことはない。
楓真のファンがいて、何度もプレゼントやラブレターらしきものを渡されていたのを見た事はある。
でもその度に、その後どうなったのか聞いても、断ったと返ってくるだけで付き合ったことはないのだ。

そんな昔の事を思い出しながら見ている重井沢の商店街にあった雑貨屋。
少しお高めのオルゴールがついた可愛い宝石箱がショーウィンドウに飾られており、じっと見つめていた。

「そのオルゴールの宝石箱、綺麗で素敵ですよね」

そう話かけてきたのは愛莉だった。
綺麗な紺色のそのオルゴールは、楓真の瞳の色と似ていた。

「なになに~?おぉ…綺麗な宝石箱!」
「本当だ、綺麗!」

続いて空と姫歌がやってきてショーウィンドウを眺めている。
他にもかわいいアクセサリーや小物、時計やぬいぐるみにつられて3人は中に入っていく。
もう一度その宝石箱を見て、楓は3人の後を追った。
しばらく中で商品を見ていると、美津子がやってきて、好きなものを1つ買ってあげるわと言ってくれた。
遠慮をすると逆に面倒臭い事を知っていた姫歌が、すこし遠慮しがちな3人に説明をし、好きなものを選ぶ事になった。
外のベンチで座って待っている男性陣は実はさっきカバンや靴、衣服を買ってもらっていた為、待機している。
好きなものを買って貰えるのに、楓はショーウィンドウに飾られていた宝石箱を選ぶ事は無かった。
流石に1万円を超える物を買ってくださいなんて言えなかったのだ。
選んだのは、その宝石箱と同じような色のクリスタルがついたキーホルダーだった。
美津子に本当にそれでいいの?と確認されるくらい値段は安い。
でも、楓真の目の色に宝石箱を除いて近いのはそれだった。
何となくその色を見ていると安心するから、それでいいのだ。

店を出てまた観光に向かう。
途中あったくじを引いたり、ソフトクリームを食べたりして回った。
陽も傾き、コテージに向かうにはいい時間だ。
バスに戻ろうと話をしていると、楓真と白羽がトイレに行きたいと言うので、先に他のメンバーは戻る事になる。
満足そうに乗り込み、10分ほど遅れて到着した白羽と楓真が揃ったところで、席のくじ引きがまた行われた。
そのまま長いくねくねした坂道を行き、一度道の駅で休憩をとって、コテージへ向かう。
チェックインを済ませて、8人用コテージと6人用コテージにそれぞれ男女で別れた。
荷物の整理をし、近くを少し散策していると、近くに温泉施設が見えた。
早めにみんなでバーベキューの準備をする。
野菜を切ったり、お鍋を温めたり、ごはんをたいたり。
人数が多いため準備は大変だが、人数がいれば手分けしてやることができるのが、とてもわいわいしていて楽しい。
そこでちょうど朋羽が、特大のクーラーボックスに入っていた高級な牛肉を取り出し、朴木に渡した。
A5ランクの有名牛のお肉が人数分あり、朴木は手際良く焼くとそれを、ヴァーグナー夫妻が切り分けて配る。
肉汁があふれ出し、口の中でとろけるほど柔らかいお肉は、そこにいた皆を幸せな気持ちにしていた。
だが、お肉ばっかりではなく野菜も新鮮で、なによりも執事二人とメイドが一人、完璧に教育された人が行う焼き加減、食感は申し分ない。
そんな楽しい食事をしながらだと会話も弾む。
今までの思い出や、新しい事を知るいい機会になった。
食事を終わらせ休憩をし、着替えを用意すると近くの温泉施設へ向かった。
券売機で必要なお金を払って、男女それぞれお風呂へ向かう。
美津子と朴木は別のお風呂があるらしく、そこを予約しているため、大浴場へ皆を送り出してくれた。
みんなでお風呂に入るのは初めてだ。
女子5人、それぞれロッカーを決め脱ぎ始める。
そこで見たのはノアがナイスバディであることと、148cmと小柄ながらFカップという大きな姫歌の胸だった。

「すごいノアさん、モデルさんみたい」
「そうですか?自分でも一応体型には気を使っている方ですが、実際にそう言われると照れくさいですね」
「姫歌…私よりおおきいのどうして…」
「えぇっ!?そんな事言われても…わかんないよ…」
「いいなぁ~!羨ましいです~!」
「愛莉先輩はこれからですって!」

そんなことを言いながら身体を洗い、大きなお風呂に入ったり、露天風呂に行ったり、サウナで我慢大会をしたりした。
実はノアはサウナが苦手で、暑いのも苦手らしい。
立ち振る舞いからはそんなことは全然感じ無いのだが、やはり人にはどこか苦手なところがあるものだ。
そんなキャッキャしている女子達より、男子はあまり長くお風呂を楽しむ感じではない。
それはもちろん湯にもつかるし、雑談をしたりもするが、女子よりは短いため先に温泉から上がっていた。
喉が渇いたので飲み物を買おうと、休憩室の近くにあった自販機に立ち寄る。

「あれは白羽…あと楓真」
「徹もいる…あと3人は…知らない人」

休憩室に白羽達を知っている人物がいた。
自販機の前で飲み物を買っている白羽達をじーっとみつめている。
その二人は立ち上がると、白羽達の近くに寄っていく。

「白羽…どうしてここにいる?」
「温泉入りにきたの?」
「…なんでお前らに会うんだ…」
「こんなところで会うとは奇遇だね」
「どちら様ですか?お知り合いの方です?」
「学園のSクラスの2位と3位だよ」

そう、彼女たちは同じ学園の2位と3位、錦織ひなたと古河美月。
いつも一緒にいることが多く、休日も一緒に過ごし、派遣も一緒に行く。
もうすでに家族のような存在で、同じようなゴスロリの衣装を身にまとっていて雰囲気も良く似ているため、双子に間違われる。
しかし2人はお互いにパートナーとして認識しており、一緒に助け合って生きていくと決めているらしい。

「2人とも観光?」
「違う、美月のおばあちゃん家がこの近く」
「なるほど、だからここに」
「白羽達は観光?」
「そうだ」
「ふーん、男だけで?」
「違う…」
「そうだよね、だって…楓真の横に楓がいないのおかしい」

そう、この2人にも認知されるほど、楓真と楓も一緒にいるのだ。
お風呂に入っていることを伝えると、じゃあここで待つと、女子組があがってくるまで白羽達と休憩室で待つことになった。
いつまでいるのか美月に聞くと、夏休みが終わるギリギリまで滞在しているようだ。
白羽達も明日もコテージを借りて、そこから観光に行くことを伝えると、夕飯だけ一緒に食べたいと言ってきたので、朋羽が許可した。
どうやらA5ランクの肉に釣られたらしい。
そこから待つこと30分、ようやく姫歌達がお風呂からあがってきた。
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