DIVA LORE-伝承の歌姫-

Corvus corax

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48. Cheering song

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徹はレオに物理攻撃と遠距離からの攻撃を繰り返していた。
本気モードになっているレオについていけるのは、今の徹が本気を出しているからだ。
それでも、もともと近距離戦闘が苦手な徹には分が悪い。
激しくぶつかり合う拳、直後レオからの蹴りをヒラっと避け、徹の周りを飛ぶ光が光線を放つ。

そんな光景を上空から眺めていた空は心を落ち着かせ口を開いた。
自分の想いを歌にして、徹に届けるために。


私に何ができるんだろう ずっと考えた
あなたの背中をいつも 見送るばかり

私は特別戦えなくて
あなたの隣で戦いたくても
それは許されていないから
だからどうかこの想い届いて

声に出して 心から
応援するよ あなたを

あなたは私の光だから
いつもキラキラ輝いてお星さまみたい
あなたは私の希望だから
私が迷わないように導いて


その歌を歌い始めてすぐ、ピリーが気をきかせ、大きなスピーカーへと接続する。
学園内に響き渡る、気持ちのこもった空の歌。
他の誰でもない、徹へとむけられた歌だ。
そしてその歌は、徹へと届く…。
声に反応して徹が振り向いた。
本気モードになった徹を、より一層掻き立て、戦闘力にバフがかかった。
それはその本気モードの倍以上にもなるだろう。

『空…気持ち…受け取った。ありがとう』

徹の目が光る。
今までにない程能力が上昇しているという証拠のように。
もう躊躇などいらない。
背中を押してくれる人がいる。
それも大好きな君が押してくれるのだから…。

徹の反撃が始まった。

「がぁっ…!」

響き渡る歌とそれに合わせてより一層素早くなった徹から、すごい勢いで繰り出される拳。
それは顔にめりこみ、レオ顔の形を変えてしまう。
歯が折れそれは地面に転がっていく。
吐血しながら倒れこむレオに容赦なく徹は攻撃する。
それもそうだ、やらなかったらこっちがやられてしまうのだから。
それでも尚、レオは歯を食いしばりながら立ち上がり徹の攻撃をかわし、応戦する。
激しくぶつかり合う二人を目で追う事が困難なほど、その移動速度は速くなっていた。

「空さまっ!徹さまに情報を!」

上空で見ていたピリーが空へと情報を見せる。
それは獣の弱点を攻撃せよというもの。
今の徹であればなんなくこなせるだろう。
上空から徹へ伝える方法、それは空が変身したときに一緒に身に着けるようになったら拡声器だろう。
キーボードの横に専用の置き場があり、そこから拡声器を取り出すと、空は徹に届くように拡声器に伝える先を打ち込んだ。

——————————————————

「先生、あと少しです!カニを生み出している本体は倒しました!あとはここに沸いているやつを倒すだけです!」

姫歌が校庭の上空から降り立ち、戦っている先生達に情報を伝える。
姫歌もカニを2体倒しながら。

「桜川さんここはいいわ!あとは私たちにまかせて!」
「さっき上からちまちま攻撃してた、水瓶女がいなくなった!おそらく屋上から攻撃してた矢がかすったんだ!」
「あなたはそっちへ!今ならまだ間に合うかもしれない!」
「わかりました!行きます!」

先生達からの情報で、姫歌はそれが山田なのだろうと悟った。
山田もAクラスだ、そう簡単にやられるはずはない。
それでも、相手が各上であれば危険だ。
早く探して合流しなければ…。
姫歌は素早くまた上空へ飛び、学園のどこかで戦っているだろう山田を探しに向かった。

——————————————————

「くそぉ…あいつめどこ行ったああぁ!!」

悔しそうにふわふわしながら山田を探すアクエリアス。
息を潜め、物陰から気配を消して、山田はアクエリアスに弓の照準を定める。
今のアクエリアスは殺気立っていて、その気配は誰にでもまるわかりなほどだ。
きっとここを通るだろう、そう過程して、弓を構える。
その予想は的中した。
その姿が見えると同時に矢を射る。
素早く飛んでいく矢は、頭を貫通した。
一瞬アクエリアスの身体が液体化し、地面にベシャっと音を立てながら広がった。
山田は状態を確認するために恐る恐る近づく。
そして、物陰から少しちらっと覗き込むように木の幹から顔を出した瞬間だった。

―ザクッ―

アクエリアスの爪が木の幹に刺さる。
一瞬だった…なんとか避けはしたが、山田の喉をかすり、少し切れて血が出る。

「くっ…」

一定の距離を取る山田に、それを見ながらニヤリと笑うアクエリアス。

「あんただって私の顔に傷をつけたじゃないの…でも、私の攻撃を避けたのは褒めてあげるわ」

首元を押さえながら山田が睨み返す。

「私はね、水なのよ。さっきの攻撃で傷ついたのは油断しただけ。本来ならさっきみたいにあんたが頭を矢で射ったところで、私にはなんのダメージも与えられないの。ふふ…さて、その情報を聞いたあんたは…どう戦闘するのかしらねっ!!」

会話を言い終わる前に、アクエリアスは山田をめがけて突っ込んでくる。
爪を構え振り下ろし、切り刻んでやろうというように。
咄嗟に山田も、自分の腰につけてあった一本の剣を抜くと、爪からの攻撃を防ぐように構えた。
だが一本で応戦するには二本の手の相手をするには厳しい。
何度も繰り返される攻撃に、山田はついて行くのがやっとだった。
そして…

「ぐあっ…!」

真正面から来ていた攻撃が横からに変わり、一瞬反応が遅れた。
その爪は剣をすり抜け、山田の腹部へと食い込む。

「ふふっ…きまったわ♪」

嬉しそうに微笑みその爪を引き抜くと、山田は蹲るようにしながら地面に転がる。
そしてさらに声を出して笑うアクエリアス。
山田が苦しそうにしている姿がとても嬉しいらしい。

「知ってた~?私の爪…毒塗ってあるのよぉ~。だからあんたは持っても5分…、息絶えるまで私がここで見てあげてもいいけど…」
「ぐ…あ…はあ…はぁ…」
「切り刻んで持って帰って…肉を調理するのも悪くないかなぁ…。人間の肉が好物って奴、結構いるのよねぇ…」

返す言葉のない山田を見下ろしながら、再びアクエリアスが爪を構えた。

「死ねえええぇ!!」

―ガキンッ―

振り下ろした瞬間、変な音がする。

「どこから…沸いた…」
「普通に正面です」

その鈍い金属音の正体は、Universe key(宇宙の鍵)だった。
姫歌は気づいたら目の前にいたのだ。
山田を殺そうと集中していたからか?
その状態を楽しんでいたからか?
だとしても正面から入ってきている相手を気付かないなどありえるのか?
そう言いたそうにアクエリアスが姫歌を見下ろしている。

「ふむ…何か言いたそうですね。大丈夫です、その答えはあなたが遅いからです」

『遅い??私が??』

「このままだと少し時間がないので、すみませんがちょっと消えててもらえますか?」

姫歌はそういうとアクエリアスの爪をいとも簡単に折り、躊躇なく身体を突き刺す。

「evaporation!」

そう呪文を唱えると直ぐにアクエリアスの身体は煮え立ち、気化していく。
身体が保てなくなった本体は一度、その場から姿を消した。
すぐさま姫歌は山田の近くに駆け寄る。
そして出血している個所から毒素を抜き取り、回復魔法をかけた。

「あり…がとう…」
「いえ、大丈夫です。大事に至らなくてよかった。あとは私に任せて、物陰で休んでいてください。時期に治ります」
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