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25.動き出す闇
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地球侵攻。
豊富な資源のある地球は、他の生物達にとっても魅力的である。
自分達が住んでいる場所が荒れ果てていれば尚更。
どうして荒れ果てているのかを忘れ、過去に学ばない愚かな生物達は戦争を繰り返す。
そしてそこに大きな力が眠っているという不確かな情報ですら、戦争を起こす生物達にはエサとなる。
ー失われし古の力地球に眠る。その古の力に認められし者こそ真の力を手にし、それは果ての果まで名を轟かせる事が出来るだろうー
今地球侵攻をしている魔物達はその言い伝えを知り、地球やその力を我がものにしようとしていた。
「なーんか最近上手くいかないなぁー?」
肘をつき、地球で採れた果物を食べながら愚痴を言うのは、年齢は若そうな魔物の大将だ。
1度地球には空間の扉を封印され、侵攻する事が出来なかった。
それを少しづつだが思考を重ね、小さな空間の穴を開け、人間を騙したり、潜入したりして積み上げてきたのだが、大きな成果にはなっていない。
この間のオークとゴブリンの侵攻は、一応の収穫はあったものの、犠牲が出た事でまたその人員を補充しなくてはならない。
「そりゃあさー、親父が戦争で死んじゃった都合上、俺が軍隊引き継ぐ事になったけどさぁ…、やる気が出ないって言うかぁー……」
「そんな事言われましたら、部下だって怒りますわよ、ヴィラル隊長」
暗闇からスっと現れたのは、ショッキングピンクの装いの若き女性の魔物だった。
肌が薄紫色で、黄色の瞳をしている。
少し奇抜な化粧をしており、セクシーな胸部分を強調する服が個性的だ。
「フェブラリー、面白い事なぁいー?」
「ヴィラル隊長の面白い事ってなんですの?」
「んー…人間を血祭りに…するのは飽きたしなぁー」
「人間にも面白い所はありましてよ?」
「例えばー?」
「人間の想像力や技術はなかなかな物がありますわ。機械を使って別の世界に行ったような気分になれる物とか、人間の言葉で言うとVRMMOって言うらしいですけれど、本体の損傷を気にすることなく戦争を体験できるらしいんですの」
「へぇー、本体が無事なら手軽じゃない。どこで手に入るの?」
「それは人間界ですわ。この間侵攻する時に開拓された基地にでも仕入れてお使いになっては?」
「なるほどー、よし基地見にいこうかなー」
だらけていた隊長がやる気を出して立ち上がる。
VRMMOという隊長にすれば未知の体験に心がわくわくしている。
富山市内某所。
地下20メートル付近に魔物達の小さな基地が存在する。
といってもまだ建設途中で、設備は整っていない。
地下の空間を広げるため、ヴィラルの部下達が交代制で、建築しているのだ。
小さな穴だが、魔界と人間界を繋ぎ、資材の搬入や土の運び出しなど、まだまだ基地と言うには粗末なものだった。
それでも人間界に常駐できるようになる見込みがある以上、大きな進展とも言える。
隊長自ら基地へ赴き、現場の状態を確認する。
「た、隊長!もう見に来られたんですか?!まだ何も無いですよ!」
「やぁオクトーバー、設計に関して少し訂正があってね、設計者はどこだい?」
隊長が基地にやってきたのは、進捗確認ではない。
自分用の部屋を追加してもらうためだ。
それも戦闘に必要なとか、愛人を連れ込むとかではなく、VRMMOのためだけの。
設計者に会い、部屋を3つほど増やすよう言い渡すと、部下に機械を揃えるよう命令を出す。
人間界の情報収集のためだと言って。
人間界でVRMMOをするための部屋とか言ったら、凄い!と、感動されるだろうが、魔物達は知らないのでなんのこっちゃである。
言われた通りにやるのが部下なので、近々素晴らしい基地になることだろう。
「隊長、お話したい事が」
そう言ってきたのは年齢や容姿は幼いが、一隊を率いる12分隊長の1人、ディセンバー。
濃い深緑色の髪と、ターコイズブルー色の目。
先祖が人間と魔物のハーフからきているので、少々血が純血ではない。
しかし、14歳と幼いながら情報収集能力と、分析、接敵した場合は確実に仕留めるなど、覚悟もきちんと出来ているため、分隊長をまかされている。
「どうしたのディセンバー」
「失われし古の力について、人間界に潜入し、調査をしたいと思っています。人間界での技術や知識の習得で、こちらに活かせる事もありましょう」
「なるほど、スパイになるってことか。で、どうやるの?」
「不思議な力を使っている人達がいるのはご存知だと思いますが、その不思議な力はとある場所にて入手できる可能性があります」
「ふむ」
「聖歌騎士育成学園という場所が存在します。この基地から遠くありません。そこの学生になれば、何か得られるかも知れません」
「もし学生になれたとして、君1人で大丈夫なの?」
「危険なら承知の上です。もし大変なのであれば、私が報告する時人員を要請します」
「そうか、分かったよ。でも、潜入するならいろいろ準備しないとね」
魔物側も着々と地下で地球侵攻の準備を進めていた。
それがどんな形であれ、整ってしまえば姫歌達の脅威となりえる。
魔物側もヴィラルの軍だけではないのだ。
世界中で、それぞれの軍隊が人間に見つからないよう、装置を設置しながら、地下の基地建設に勤しんでいる。
それは長年魔物達の先祖が発明してきた、人間に自分達の基地を分からせないための装置。
【トランスペアレンシー】
その装置を人間側で発見することはなかなかに困難だろう。
そして、ディセンバーも人間界へ潜入するために準備をしている。
今はまだ、嵐の前の静けさだ。
『僕の調査が正しければ、古の力には続きがあるはず…。それが何なのかを突き止めなければ……』
豊富な資源のある地球は、他の生物達にとっても魅力的である。
自分達が住んでいる場所が荒れ果てていれば尚更。
どうして荒れ果てているのかを忘れ、過去に学ばない愚かな生物達は戦争を繰り返す。
そしてそこに大きな力が眠っているという不確かな情報ですら、戦争を起こす生物達にはエサとなる。
ー失われし古の力地球に眠る。その古の力に認められし者こそ真の力を手にし、それは果ての果まで名を轟かせる事が出来るだろうー
今地球侵攻をしている魔物達はその言い伝えを知り、地球やその力を我がものにしようとしていた。
「なーんか最近上手くいかないなぁー?」
肘をつき、地球で採れた果物を食べながら愚痴を言うのは、年齢は若そうな魔物の大将だ。
1度地球には空間の扉を封印され、侵攻する事が出来なかった。
それを少しづつだが思考を重ね、小さな空間の穴を開け、人間を騙したり、潜入したりして積み上げてきたのだが、大きな成果にはなっていない。
この間のオークとゴブリンの侵攻は、一応の収穫はあったものの、犠牲が出た事でまたその人員を補充しなくてはならない。
「そりゃあさー、親父が戦争で死んじゃった都合上、俺が軍隊引き継ぐ事になったけどさぁ…、やる気が出ないって言うかぁー……」
「そんな事言われましたら、部下だって怒りますわよ、ヴィラル隊長」
暗闇からスっと現れたのは、ショッキングピンクの装いの若き女性の魔物だった。
肌が薄紫色で、黄色の瞳をしている。
少し奇抜な化粧をしており、セクシーな胸部分を強調する服が個性的だ。
「フェブラリー、面白い事なぁいー?」
「ヴィラル隊長の面白い事ってなんですの?」
「んー…人間を血祭りに…するのは飽きたしなぁー」
「人間にも面白い所はありましてよ?」
「例えばー?」
「人間の想像力や技術はなかなかな物がありますわ。機械を使って別の世界に行ったような気分になれる物とか、人間の言葉で言うとVRMMOって言うらしいですけれど、本体の損傷を気にすることなく戦争を体験できるらしいんですの」
「へぇー、本体が無事なら手軽じゃない。どこで手に入るの?」
「それは人間界ですわ。この間侵攻する時に開拓された基地にでも仕入れてお使いになっては?」
「なるほどー、よし基地見にいこうかなー」
だらけていた隊長がやる気を出して立ち上がる。
VRMMOという隊長にすれば未知の体験に心がわくわくしている。
富山市内某所。
地下20メートル付近に魔物達の小さな基地が存在する。
といってもまだ建設途中で、設備は整っていない。
地下の空間を広げるため、ヴィラルの部下達が交代制で、建築しているのだ。
小さな穴だが、魔界と人間界を繋ぎ、資材の搬入や土の運び出しなど、まだまだ基地と言うには粗末なものだった。
それでも人間界に常駐できるようになる見込みがある以上、大きな進展とも言える。
隊長自ら基地へ赴き、現場の状態を確認する。
「た、隊長!もう見に来られたんですか?!まだ何も無いですよ!」
「やぁオクトーバー、設計に関して少し訂正があってね、設計者はどこだい?」
隊長が基地にやってきたのは、進捗確認ではない。
自分用の部屋を追加してもらうためだ。
それも戦闘に必要なとか、愛人を連れ込むとかではなく、VRMMOのためだけの。
設計者に会い、部屋を3つほど増やすよう言い渡すと、部下に機械を揃えるよう命令を出す。
人間界の情報収集のためだと言って。
人間界でVRMMOをするための部屋とか言ったら、凄い!と、感動されるだろうが、魔物達は知らないのでなんのこっちゃである。
言われた通りにやるのが部下なので、近々素晴らしい基地になることだろう。
「隊長、お話したい事が」
そう言ってきたのは年齢や容姿は幼いが、一隊を率いる12分隊長の1人、ディセンバー。
濃い深緑色の髪と、ターコイズブルー色の目。
先祖が人間と魔物のハーフからきているので、少々血が純血ではない。
しかし、14歳と幼いながら情報収集能力と、分析、接敵した場合は確実に仕留めるなど、覚悟もきちんと出来ているため、分隊長をまかされている。
「どうしたのディセンバー」
「失われし古の力について、人間界に潜入し、調査をしたいと思っています。人間界での技術や知識の習得で、こちらに活かせる事もありましょう」
「なるほど、スパイになるってことか。で、どうやるの?」
「不思議な力を使っている人達がいるのはご存知だと思いますが、その不思議な力はとある場所にて入手できる可能性があります」
「ふむ」
「聖歌騎士育成学園という場所が存在します。この基地から遠くありません。そこの学生になれば、何か得られるかも知れません」
「もし学生になれたとして、君1人で大丈夫なの?」
「危険なら承知の上です。もし大変なのであれば、私が報告する時人員を要請します」
「そうか、分かったよ。でも、潜入するならいろいろ準備しないとね」
魔物側も着々と地下で地球侵攻の準備を進めていた。
それがどんな形であれ、整ってしまえば姫歌達の脅威となりえる。
魔物側もヴィラルの軍だけではないのだ。
世界中で、それぞれの軍隊が人間に見つからないよう、装置を設置しながら、地下の基地建設に勤しんでいる。
それは長年魔物達の先祖が発明してきた、人間に自分達の基地を分からせないための装置。
【トランスペアレンシー】
その装置を人間側で発見することはなかなかに困難だろう。
そして、ディセンバーも人間界へ潜入するために準備をしている。
今はまだ、嵐の前の静けさだ。
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