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4章 助けた少女とその後
第162話 夢の中の仏
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「尚(しょう)よ、遅いぞ?」
久しぶりに読経からの瞑想入りをした所、仏に振り返り姿勢で言われた。
京都に有る見返り仏のネタである。
「歩きながら読経する行やってる時ならともなく、これでは有って無いと思います。」
無情に突っ込みを入れてみる、これぐらいで仏罰を当てて来るような仏では無いので大丈夫だろう。
「最近、珍しいと評判だったようでな、少し嬉しくなってな?」
どうやら、元居た世界で特集でも組まれたらしい。
「こっちに流行は有りません。」
そもそも知りようが無い。
「そうだろうな、だが、不動明王と、鬼子母神の権能がそちらで無事増えた、其方の神とも無事集合した様だ、最初の仕事としては十分だ、良くやったな。」
意外と褒められた。
「遅いと怒られるのかと。」
「おぬしの国の弘法大師(こうぼうだいし)・空海(くうかい)も、広める際には、かなり手間取って居たからな、何もない所から広めたなら上出来だ、この調子で頼むぞ?」
「はい・・」
「おぬしの妻たちには、それぞれ鬼子母神が守り仏として付いて居る、安心するが良い・・・」
「もしかして、増えました?」
「お主も修行不足では有るが、仏門を志した時点で、末席の未熟者とは言え一種の仏だ、お主を信頼する妻なら、加護を与えるに値する。」
2人増えて居たりするのだろうか?
「仏と成るには未だ修行不足ですが・・・」
悟りを開いて仏に成るには未だ未練が有り過ぎる。
「おぬしは、知識の上では悟っている、後は精神で悟れば出来上がりだが、其処は修行不足だな。」
薄く笑われた。
「その通りです。」
「そして、そろそろ現世で妻が待って居るぞ?起きるがよい。」
しっかりと此方の状況は把握されているらしい。
しかし、妻と子供ほっぽり出して修行に出た仏陀様が妻の事を気にするのは不思議な感じもするが、多分、其処等はその場で合わせている類だろうか?丸くなったのだろうか?
「そなたの夫婦仲が良好な方が信徒が増えやすいだけだ。」
即物的にそう言う事らしい。どう連鎖するのかは気にしない事にしよう。
読まれているのは現実でも平常運転なので今更驚かない。
「では、またそのうち。」
そう言って、意識を覚醒させる、クリスが不安気に覗き込んでいた。
その後ろに灯にエリス、アカデさんと皆揃っていた。
「おはよう。」
「おはようございます。」
ほっとした様子でクリスが返事をする。
「涅槃(ねはん)入りするには早いですからね?」
灯がクリスの後ろから物騒な事を言う、因みに涅槃とは仏教用語で入滅、つまり死ぬ事だったりするので本気で物騒である。因みに行先は仏と成る、当然、悟ってからの話である。
「未だその予定は無いぞ。」
この通りだしと言うポーズで、一番近くにいたクリスを抱きしめる。
クリスは待ってましたと言うように、ぎゅうと抱き締め返して来た、どうやら慣れて来たらしい。
「次は私ですからね?」
灯が笑っている、エリスも次ですと言う様子でアピールしている、その様子を微笑ましいと言う様子でアカデさんも見ていた。
現状、少なくとも涅槃入りにはまだまだ早そうだ。
仏目線
天上世界の、蓮の葉の間から下界を覗いて居たが、無事山場を抜けたようだ。
ほう、と、安堵のため息を付く。
何気に、今回和尚を送り込むタイミングはギリギリだったのだ。
一緒に送り込まれた少女と合流、現地の少女を助け、森を抜け、村で信用を得て、有力者に働きかけ、村の守りを固め、大量発生した群を止める、其れが最適解だったが、どうやらその通りに成った様だ。
あの現地生物の群れをあの村で止められなかった場合、前回の群れの際に、村の防衛線を抜けた静かに生きて居た現地生物の群れが連鎖的に狂暴化、各地で人を襲い始め、最終的には人類の生息域が現在の半分以下に成ると言う結果が予想されて居たのだ。
その後は、戦いに成れた最前線の人間がいない状態で、改めて現地生物と闘わなければいかなくなる、そうなってしまっては、もう人類の復興はほぼ無くなってしまうため、かなり気を使ったのだ。
この現地生物、小鬼や餓鬼に近い物で、仏の権能で祓えない事も無いのだが、純粋な生き物としての側面が強い上、許可を得ているとは言え、他の神の領土、増して信徒が居ず、依り代の無い状態では仏の権能は直接使えない為、今回このような形になった、後は現地の反発が無い程度に仏の教えを広めてくれれば、和尚の仕事は無事果たした形となる、如来では無く、大自在天があの世界で神と集合し、現地では最高位の仏と成るだろうが、どの仏を崇めるか程度、大した違いは無い。
あ奴らのこれからの健やかな発展を祈るとしよう。
追伸
なんちゃって最終回、最後の仏目線は第二部、ゴブリン襲撃を終わらせた時に入れる予定だった物です、文章量微妙だったので寝かせてほったらかしでした。
自分の中でネタ切れ感も有りますが、もう一寸だけ続きます。
久しぶりに読経からの瞑想入りをした所、仏に振り返り姿勢で言われた。
京都に有る見返り仏のネタである。
「歩きながら読経する行やってる時ならともなく、これでは有って無いと思います。」
無情に突っ込みを入れてみる、これぐらいで仏罰を当てて来るような仏では無いので大丈夫だろう。
「最近、珍しいと評判だったようでな、少し嬉しくなってな?」
どうやら、元居た世界で特集でも組まれたらしい。
「こっちに流行は有りません。」
そもそも知りようが無い。
「そうだろうな、だが、不動明王と、鬼子母神の権能がそちらで無事増えた、其方の神とも無事集合した様だ、最初の仕事としては十分だ、良くやったな。」
意外と褒められた。
「遅いと怒られるのかと。」
「おぬしの国の弘法大師(こうぼうだいし)・空海(くうかい)も、広める際には、かなり手間取って居たからな、何もない所から広めたなら上出来だ、この調子で頼むぞ?」
「はい・・」
「おぬしの妻たちには、それぞれ鬼子母神が守り仏として付いて居る、安心するが良い・・・」
「もしかして、増えました?」
「お主も修行不足では有るが、仏門を志した時点で、末席の未熟者とは言え一種の仏だ、お主を信頼する妻なら、加護を与えるに値する。」
2人増えて居たりするのだろうか?
「仏と成るには未だ修行不足ですが・・・」
悟りを開いて仏に成るには未だ未練が有り過ぎる。
「おぬしは、知識の上では悟っている、後は精神で悟れば出来上がりだが、其処は修行不足だな。」
薄く笑われた。
「その通りです。」
「そして、そろそろ現世で妻が待って居るぞ?起きるがよい。」
しっかりと此方の状況は把握されているらしい。
しかし、妻と子供ほっぽり出して修行に出た仏陀様が妻の事を気にするのは不思議な感じもするが、多分、其処等はその場で合わせている類だろうか?丸くなったのだろうか?
「そなたの夫婦仲が良好な方が信徒が増えやすいだけだ。」
即物的にそう言う事らしい。どう連鎖するのかは気にしない事にしよう。
読まれているのは現実でも平常運転なので今更驚かない。
「では、またそのうち。」
そう言って、意識を覚醒させる、クリスが不安気に覗き込んでいた。
その後ろに灯にエリス、アカデさんと皆揃っていた。
「おはよう。」
「おはようございます。」
ほっとした様子でクリスが返事をする。
「涅槃(ねはん)入りするには早いですからね?」
灯がクリスの後ろから物騒な事を言う、因みに涅槃とは仏教用語で入滅、つまり死ぬ事だったりするので本気で物騒である。因みに行先は仏と成る、当然、悟ってからの話である。
「未だその予定は無いぞ。」
この通りだしと言うポーズで、一番近くにいたクリスを抱きしめる。
クリスは待ってましたと言うように、ぎゅうと抱き締め返して来た、どうやら慣れて来たらしい。
「次は私ですからね?」
灯が笑っている、エリスも次ですと言う様子でアピールしている、その様子を微笑ましいと言う様子でアカデさんも見ていた。
現状、少なくとも涅槃入りにはまだまだ早そうだ。
仏目線
天上世界の、蓮の葉の間から下界を覗いて居たが、無事山場を抜けたようだ。
ほう、と、安堵のため息を付く。
何気に、今回和尚を送り込むタイミングはギリギリだったのだ。
一緒に送り込まれた少女と合流、現地の少女を助け、森を抜け、村で信用を得て、有力者に働きかけ、村の守りを固め、大量発生した群を止める、其れが最適解だったが、どうやらその通りに成った様だ。
あの現地生物の群れをあの村で止められなかった場合、前回の群れの際に、村の防衛線を抜けた静かに生きて居た現地生物の群れが連鎖的に狂暴化、各地で人を襲い始め、最終的には人類の生息域が現在の半分以下に成ると言う結果が予想されて居たのだ。
その後は、戦いに成れた最前線の人間がいない状態で、改めて現地生物と闘わなければいかなくなる、そうなってしまっては、もう人類の復興はほぼ無くなってしまうため、かなり気を使ったのだ。
この現地生物、小鬼や餓鬼に近い物で、仏の権能で祓えない事も無いのだが、純粋な生き物としての側面が強い上、許可を得ているとは言え、他の神の領土、増して信徒が居ず、依り代の無い状態では仏の権能は直接使えない為、今回このような形になった、後は現地の反発が無い程度に仏の教えを広めてくれれば、和尚の仕事は無事果たした形となる、如来では無く、大自在天があの世界で神と集合し、現地では最高位の仏と成るだろうが、どの仏を崇めるか程度、大した違いは無い。
あ奴らのこれからの健やかな発展を祈るとしよう。
追伸
なんちゃって最終回、最後の仏目線は第二部、ゴブリン襲撃を終わらせた時に入れる予定だった物です、文章量微妙だったので寝かせてほったらかしでした。
自分の中でネタ切れ感も有りますが、もう一寸だけ続きます。
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