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4章 助けた少女とその後
第149話 精一杯優しい人
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「取り合えず、先に2人で会って見てくれ、初対面俺だと多分驚くから。」
部屋の前で一先ず、一歩下がる、目を覚まして真っ先に見る物がこの禿頭ではリアクションに困るだろう。廻された後のカウンセリングにおっさんが居るのは可笑しいと思うのだが。
「まあ、其れが一番ですね、様子を見て呼びますので。」
灯は納得した様子だ。
「そんなに驚きませんでしたよ?」
エリスはきょとんとした顔だ、意外と見慣れた顔だったのだろうか?
「其れはエリスちゃんだけだと思うので、平気そうだったら呼びましょう。」
意外と直ぐ呼ばれた、この世界の女の子は強いのだろうか?
お互いの自己紹介をしているところ、少女が自分の名前を言うくだりで、顔を曇らせた、どうやら自分の名前を言いたく無いらしい、何か理由が有るのだろうか?
まあ、この少女の過去とかは此方としては其れほど興味は無かったりするので、本名を知らない事に不都合は無いが、呼び名が無いのは不便だ。名前を決めようか。
結果として、灯の提案通り、クリスと決まった。
決まった瞬間は釈然として居ないが、ほっとした様子だった、どうやら其れで良いらしい。
エリスがクリスの今後如何したいのかを聞く、最終的に本人の希望次第で、かまわないで欲しいと言われれば、着の身着のままで放り出したり、教会に全て預けてしまう線も有るのだが、前回エリスが義父上に面倒を見ると啖呵を切った以上、色々世話する事に異論は無い、現状、財布の予算的な事も、前回の大群相手にたちまわった分が有るので、暫くは特に問題無い。それが無くてもこの世界、冒険者の稼ぎは実入りが良いので大丈夫だろう。
本人の希望を聞く前に、自分の身体が動かないことをしきりに気にした様子だった、其れはしょうがない。この世界でも、どの世界でも、自分自身の身体が資本だ、先ずは診察と治療をして見よう。
見る限りは身体が固まって身動きが取れないようだ、気に成って手を握って見たが、力が入って居ない、と言うか、力を入れようとしても手の方に力が入らない様子、意識と手が繋がって居ない。
手を触れている間、目に涙を浮かべて何とも言えない表情をしている。やせ我慢でもされたかな?
「嫌でしたか?」
その声に反応して、クリスの身体が力なくびくりと動く、神経が繋がって居ない訳では無いなと違う方向で安心する。泣きそうな顔でふるふると首を振っている。
「大丈夫です。」
「握って見て下さい。」
少しだけ握った手に力が伝わる、動かない訳では無いと、となると・・・
首回りと肩回りの関節と神経、気脈が潰れたか?
一瞬リンパの流れがと言うゲスネタがよぎったが、流石にアレは無い。
多少とはいえ動かせているので、潰れたにしても半分と言った所か、関節の位置を直して、針で気脈の流れを調整して行けばある程度は治せるだろう。
治療するから脱がせて欲しいと言った所、灯が其のままクリスを裸に剥いてしまったが、どうやら嫌がって居る訳では無いので、其のまま治療してしまおう。
診断としては、背骨と首と肩甲骨、肩関節辺りが、かなり嫌な体勢で固定されて居たらしい、どうにか血流が確保できて居た程度の関節状態だった。ついでに、足の部分も捕まって居る間、あまり動けなかったらしく、筋肉が衰えて居て歩くのもギリギリと言った状態だ、一旦全てほぐして関節を正常位置に直して、全身の筋肉を揉み返しの筋肉痛段階まで持って行けば、後は自分の回復能力次第と言った所か、最初に助けた時に薬師如来は使ったのだが、治し切れては居ない辺り、御仏の真言と言えども、万能とは行かないようだ。
さて、やるか。
凝り固まった関節を正常位置に戻し、衰えた筋肉をさすって解す、針を蝋燭の炎で消毒して、十分冷ましてから各部位のツボに刺して行く。
合谷(ごうこく)、手三里(てさんり)、足三里(あしさんり)、肩井(けんせい)、腰陽関(こしようかん)、風池(ふうち)、その他色々と・・・
色々刺して行ったが、気が付いたらクリスが寝てしまって居た様だ、緊張しすぎて脳内麻薬がパニックでも起こしたのだろうか?
「しかし、まるっきり裸だと雑念が増えて困るな・・・」
ちらちらどころか、ばっちり見えるし。
「その割に手元狂ったりしないんですね?」
治療を終えての呟きに灯がツッコミを入れる。
「何百人単位で刺してるからな、治療中は切り離せるさ。」
煩悩(ぼんのう)に飲まれるような者は、現代日本では職と信用を失う所か、警察を呼ばれるだけである。
美人局(つつもたせ)でヤクザを呼ばれた同業者の話も枚挙にいとまがない。
ついでに言うと、うっかり揉み返しが来るまでほぐすと、症状が悪化したと言ういちゃもんが付いて来て、裁判沙汰に成ったり、強く揉み過ぎて内出血した痕が残ったのでやっぱり裁判沙汰にされたりする事も有ったりもした、業界保険は必須である・・・
思い出してみると、意外と殺伐とした世界だった。
「さて、溜まってるなら私達が搾り取ってあげますから。」
灯が妖艶な笑みを浮かべてしな垂れかかって来る。
エリスはクリスの服手早く直して、もう片方の手に勢い良くしがみ付いた。
神父さんに断りを入れて帰路に就く、クリスの入院代と食事代として金貨一枚を喜捨(きしゃ)しておいた。
物陰で見ていた子供たちの顔が輝いて居たが、どの程度そっちに回るかな?
部屋の前で一先ず、一歩下がる、目を覚まして真っ先に見る物がこの禿頭ではリアクションに困るだろう。廻された後のカウンセリングにおっさんが居るのは可笑しいと思うのだが。
「まあ、其れが一番ですね、様子を見て呼びますので。」
灯は納得した様子だ。
「そんなに驚きませんでしたよ?」
エリスはきょとんとした顔だ、意外と見慣れた顔だったのだろうか?
「其れはエリスちゃんだけだと思うので、平気そうだったら呼びましょう。」
意外と直ぐ呼ばれた、この世界の女の子は強いのだろうか?
お互いの自己紹介をしているところ、少女が自分の名前を言うくだりで、顔を曇らせた、どうやら自分の名前を言いたく無いらしい、何か理由が有るのだろうか?
まあ、この少女の過去とかは此方としては其れほど興味は無かったりするので、本名を知らない事に不都合は無いが、呼び名が無いのは不便だ。名前を決めようか。
結果として、灯の提案通り、クリスと決まった。
決まった瞬間は釈然として居ないが、ほっとした様子だった、どうやら其れで良いらしい。
エリスがクリスの今後如何したいのかを聞く、最終的に本人の希望次第で、かまわないで欲しいと言われれば、着の身着のままで放り出したり、教会に全て預けてしまう線も有るのだが、前回エリスが義父上に面倒を見ると啖呵を切った以上、色々世話する事に異論は無い、現状、財布の予算的な事も、前回の大群相手にたちまわった分が有るので、暫くは特に問題無い。それが無くてもこの世界、冒険者の稼ぎは実入りが良いので大丈夫だろう。
本人の希望を聞く前に、自分の身体が動かないことをしきりに気にした様子だった、其れはしょうがない。この世界でも、どの世界でも、自分自身の身体が資本だ、先ずは診察と治療をして見よう。
見る限りは身体が固まって身動きが取れないようだ、気に成って手を握って見たが、力が入って居ない、と言うか、力を入れようとしても手の方に力が入らない様子、意識と手が繋がって居ない。
手を触れている間、目に涙を浮かべて何とも言えない表情をしている。やせ我慢でもされたかな?
「嫌でしたか?」
その声に反応して、クリスの身体が力なくびくりと動く、神経が繋がって居ない訳では無いなと違う方向で安心する。泣きそうな顔でふるふると首を振っている。
「大丈夫です。」
「握って見て下さい。」
少しだけ握った手に力が伝わる、動かない訳では無いと、となると・・・
首回りと肩回りの関節と神経、気脈が潰れたか?
一瞬リンパの流れがと言うゲスネタがよぎったが、流石にアレは無い。
多少とはいえ動かせているので、潰れたにしても半分と言った所か、関節の位置を直して、針で気脈の流れを調整して行けばある程度は治せるだろう。
治療するから脱がせて欲しいと言った所、灯が其のままクリスを裸に剥いてしまったが、どうやら嫌がって居る訳では無いので、其のまま治療してしまおう。
診断としては、背骨と首と肩甲骨、肩関節辺りが、かなり嫌な体勢で固定されて居たらしい、どうにか血流が確保できて居た程度の関節状態だった。ついでに、足の部分も捕まって居る間、あまり動けなかったらしく、筋肉が衰えて居て歩くのもギリギリと言った状態だ、一旦全てほぐして関節を正常位置に直して、全身の筋肉を揉み返しの筋肉痛段階まで持って行けば、後は自分の回復能力次第と言った所か、最初に助けた時に薬師如来は使ったのだが、治し切れては居ない辺り、御仏の真言と言えども、万能とは行かないようだ。
さて、やるか。
凝り固まった関節を正常位置に戻し、衰えた筋肉をさすって解す、針を蝋燭の炎で消毒して、十分冷ましてから各部位のツボに刺して行く。
合谷(ごうこく)、手三里(てさんり)、足三里(あしさんり)、肩井(けんせい)、腰陽関(こしようかん)、風池(ふうち)、その他色々と・・・
色々刺して行ったが、気が付いたらクリスが寝てしまって居た様だ、緊張しすぎて脳内麻薬がパニックでも起こしたのだろうか?
「しかし、まるっきり裸だと雑念が増えて困るな・・・」
ちらちらどころか、ばっちり見えるし。
「その割に手元狂ったりしないんですね?」
治療を終えての呟きに灯がツッコミを入れる。
「何百人単位で刺してるからな、治療中は切り離せるさ。」
煩悩(ぼんのう)に飲まれるような者は、現代日本では職と信用を失う所か、警察を呼ばれるだけである。
美人局(つつもたせ)でヤクザを呼ばれた同業者の話も枚挙にいとまがない。
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思い出してみると、意外と殺伐とした世界だった。
「さて、溜まってるなら私達が搾り取ってあげますから。」
灯が妖艶な笑みを浮かべてしな垂れかかって来る。
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