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3章 活躍する坊主

第95話 領主の任期と産婆視点

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 魔の森の近接地で開拓地の領主と言う物には任期がある、貴族としては末席扱いの男爵なので次代にそのままでは引き継げないのは当然なのだが。任期中何も無ければ当主が死亡までに何かしら功績を上げて、それが認められれば任命権が与えられ、承認されれば次代に引き継ぐことが出来る。
 実は他にもある、魔の森での大量発生等、大規模の被害が発生したようなとき。管轄領地の防衛戦を抜かれた場合、領地の運営責任と言うことで、責任を取ると言うことで首をとられる。
 前回の無能がその形だ。担当領地が魔物に埋め尽くされた時に真っ先に逃げ出したのだ。
 周囲には名誉の戦死と言う名目で通達されるので、遺されるのものの立場も一応補償される。当然平民落ちだが。
 今回のゴブリン、クイーンの発見と各地での発見報告は、時系列としては前回の領主の任期での出来事の延長線なのだが、若干変な騒ぎ方をしている者がいる。
 曰く。「現在領主をやっている者が義務としての防衛をサボって、戦いもせずに魔物に防衛線を抜かれたのを前任者の責任を擦り付けている。」と。
 多分前回の無能の残党とかの類なのかと思ったが、ただの椅子取りゲームとして、余った跡取り息子の行き先を確保する為、他の領主を蹴落せば自分の所が任命されると思っているらしい。
 と、産婆として呼ばれた中央の貴族のメイドや奥様方から噂を聞いた、産婆と言う仕事はお偉いさんの所にも行く事に成るので、こうしてあまり聞かない内部事情をお話し好きの奥様方やメイドたちはぽろぽろと漏らしてくれるので知る事が出来る。
 もっとも、下手に漏らすと色々と敵を作る事に成るし、信用問題にも関わるので、口止めされるような事は絶対に漏らせないのだが・・・

 そして、無事取り上げたら可及的速やかに現場を離脱する、お偉いさんの掌返しは怖いのだ・・・。
 御代は教会宛の喜捨、寄付と言う形で先払いされているので、自分で請求することは無い。

 ご依頼があったらしい
 私は教会付でお偉いさん専用の産婆をしている、自慢では無いが腕は良いと自負している。
 お偉いさんのご子息を取り上げる時には万が一があったら比喩無しに首が飛ぶのだ、腕が悪かったら廃業所か、生きてすら居ない。
 行き先は?魔の森の縁の開拓村の領主代行?実質貴族?まあ貴族としては末席扱いだから気にしなくて良い?領地付き男爵なら普通に貴族では?累代しないと貴族じゃない?なんですその特権意識?
 まあ、開拓村は実質的に非正規防衛軍みたいなものだ、補助金が出るが税金免除でも有るので、国に税金を納めない関係上、出世もしない貴族みたいな扱い、貴族としては領地付き男爵の身分だ。
 そして、重要な防衛拠点ではあるのだが、正規兵の軍は維持費が馬鹿にならないので、地方で置きっぱなしにする訳には行かない為、こうした場所では領地内のギルドが抱えている領地に居る冒険者を私兵として扱う事に成る、ギルドマスターと領主が懇意だったり兼任だったりするのはこの為だ。冒険者を如何に離さずに育て、抱え込めるかが、文字通り命運を握って居る。
 序に言うと、ギルドマスター単品でも領地無し男爵程度の身分は有る。冒険者に貴族階級が混じった場合、貴族以外の指示には従わないと言う馬鹿が居たりするので、襲名していなければ身分が上になるので、いざという時抑えられると言う訳だ。

 で、其の家で3人ほど生まれる予定だから、無事に取り上げてこいと。
 無事に産ませる仕事なら大歓迎だ、下衆なところだと産まれてはいけない祝福されない子供なのでと、内密に取り上げて処理する場合まである、下ろしたり堕胎するよりは産ませてしまった方が母胎が無事なので、今回は産ませるけど、子供は後腐れなく処理する何て話も王族貴族では有りなのだ。自分が取り上げた子供をその手で縊り殺すような仕事は正直したく無い。
 この世界ではこんな扱いなので迂闊に個人名等は名乗れない、有力者の不況を買ったら、名指しで殺し屋が飛んで来かねないので、職業名が外で名乗る名前だ。

 お産の場には、当人と産婆、付き添いたいと言った場合の旦那様、次に生まれる予定の奥様、そして監視役としてのメイドが一人、連れて行ければ助手がは入れれば良いのだが、この業界は人手が足りないので、今回は私一人だった。実際問題、赤ん坊を取り上げて祝福する仕事だと言うのに、教会の関係者は結婚を禁ずるなどと言う決まりが有るので、自分が祝福される側に成れないのだ、なり手が多い筈も無い。御給金はそこそこあるのだが、あっちこっちと移動ばかりで忙しすぎて使う場所が無い、ある程度溜まったら私も辞めてしまおうか・・・。

 無事一人目が産まれた、素晴らしい安産だ、旦那さんも立会人としては最高と言って良い連れ添い具合だった、他の旦那も見習ってほしい。
 しかも旦那さんは腕を奥さんに握りつぶされていた、普通はそんな事に成らないように棒なり端切れなりを持たせる物なのだが、あえて自分の手を差し出したのだろうか?
 骨まで折れて指が明後日の方向を向いて居る、痛い筈だが、それでも一切奥さんを責める様子が無い、もう一人の奥さんに治療術を使ってもらい治療して、出産で力尽きた奥さんの治療も行っていた、中からの出血も止まって居る?もしかして胞衣がはがれた部分も治療できていると?男の人はあの部分の構造は知らないので男の人が治療できると言うのは珍しいと言うか、内臓の部分なので治療できるのは出産の時に場数を踏んだ私達産婆ぐらいなのですが。

 奥さんに呼吸を指定しているリズムに切り替えると言う不思議な指示を出していたので、理由と方法、使い方を色々聞いた、成る程、これも安産の秘訣か。

 二人目、言うまでもないほどの安産、お産中に妊婦さんが眠りこけてしまうと言う、産婆の間では良くあることなのだが、普通の旦那さんは確実に慌てると言う状況下でも、何の問題もないのは知っていると言う様子で連れ添っていた。知識としてしって居るから大丈夫?それが出来れば苦労しないのです。知らないと言うだけでパニックになる馬鹿が多いのですから。

 奥さんが寝ているが私が寝る訳にも行かないので旦那さんを質問攻めにする、意外と何でも答えてくれる、思った以上に大物ですか?信託で有った救世の来客?何でこんな所に?中央で歓待する準備をしていましたよ?指名手配じみた通達でしたけど・・
 此処で奥さんが二人出来たから十分?無欲すぎませんか?十分?そうですか・・
 そういえば、貴方の仕える神は別なのですか?神に仕えて居ていても結婚できます?
 其処ら辺は緩いのでお咎めが無い?それは羨ましいです・・・

 それはそうとして、後でお話ししておきたい事が有りまして・・・、余り御目出度い事でもありませんが、小耳に挟む程度で良いので、直接どうなるって事では無い筈です。

 さあ、これで後一人だ、細かい事は無事取り上げてから考えよう。
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