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2章 いちゃつく坊主の冒険者

夜のお勤め

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 前回のオチとしては、やたらと苦かった・・・

 異世界のキッチンシステムが意外と快適で魔石と魔力で何とでもなるという状態だったので感心しつつ、魔石に魔力を通せば火が出る水が出ると、魔石周りの回路図がやたらと複雑で大規模化しないと使えないので携帯化は出来ないらしい。

 例の蕾を洗って、湯がいて、水にさらして、塩振って盛りつけたのだが、元の世界でのヤブカンゾウやニッコウキスゲの蕾は大した苦みも無くさっぱりと美味しく頂けるのだが、この世界のゲッコウキスゲの蕾はやたらと苦かった。

「毒ではないんで食べられないこともないんですけど、苦いんで一部の物好きしか食べないんです」

 味見で顔をしかめて固まっていた所でエリスが苦笑いを浮かべて補足説明をしてきた、なるほど、そりゃ食わんわ。

「どんなもんです?」

 灯がひょっこり横に出てきた、

「味見どうぞ。」

 皿に乗せたまま渡してみる。

「いただきます」

 そう言いながら一つ摘まんで口に入れる。入れた瞬間固まった。

「苦いです。」

 顔をしかめてしみじみと恨み言を言ってくる、

「苦いよなあ・・」

 フキノトウの苦み抜き失敗してやたらと苦いだけのが出来あがったような感じだ、慣れないと美味しいとは感じないだろう。もっともフキノトウの場合煮詰めてさらに苦くする変態が多いのだが・・・

「味付け工夫すれば酒のアテとか箸休めにならんこともない感じかもしれんが、失敗だな。」

 まあ責任もって食うけど。

「酷いです、夜だけでなく食事にまでこんな苦いものを・・」

「変な下ネタを仕込むな・・まだそのプレイはしてないぞ・・」

 灯が酷い下ネタを飛ばしてきて取り合えず突っ込みを入れる、エリスは通じていないようできょとんとしていた、通じなくていいわな・・



 そんな事をしているうちに義母上主導の鍋に放り込まれた肉は茹っていた、付け合わせに入っている野菜は玉ねぎニンニクセロリキャベツにハーブ類で塩ベースと・・・今夜もそのルートらしい。ほうっておくと本気で当たるまでやりかねないが、表面上ただの美味しいご飯なので突っ込みにくい。



 エリスは空いたもう一つのコンロで浅い鍋に油をひいて塩を振っておいた肉を入れて焼いて行く、横目で見ていた分にはちゃんと筋斬り包丁も入れていたので料理は出来るのだろう、音を聞く限り温度は低め、弱火でじっくり焼いているようだ、強火で焦げて中身生焼けやまるっきり生とかのオチは警戒しなくてよさそうだ。本当に料理がまともな世界でよかった。



 ちなみに、灯と俺は手が空いたので二人で風呂掃除をして戻るころには料理は出来上がっていた。



 丁度いい具合にギルマスが帰ってきたので夕食になった。

 肉もスープも美味しかった、義母上はこの肉はこの婿殿が採ってきたのだとギルマスに上機嫌で説明していた、多分ギルマスは報告で聞いてきているだろうけど、ちゃんと聞いていた。いい夫婦なのだろう。

 肉で疲れた舌をどうにかする分には苦い蕾は役に立った。



 夕食後

 今度は3人で風呂に入った、灯が酔いつぶれていた昨日はともかく、結婚して一週間は毎日一緒に居ろと言う村の風習があるらしい、下手に別行動すると義母上の視線が痛いので結局セット行動だ、まあ俺としては風習で親の処女権とか言い出す流れだったら反抗するが、この程度ならこっちに損は無いので嘘でも騙されておこう。村の風習と言うと新婚は覗かれるも有るかも知れないが、多分今更だ・・・。そっちの事は灯には想像できないだろうが、伝えても得は無さそうなので置いておこう。

 昨日酔いつぶれてしまって風呂に入りそびれた灯は久しぶりのちゃんとしたお風呂ではしゃいでいた、そういえば石鹸無いなこの風呂とエリスに確認したら石鹸は高級品で消耗品だから普通はどうしてもという時に灰汁を使うらしい、まあアルカリ系だから似たようなもんか、後でちゃんとした石鹸を作ろう。



 精力料理のおかげか元気が良かったので二人とも出来た。



 後日確認したら隣の部屋から覗けたらしい、身内限定らしいがもういいや・・・





 風呂上がりに軽くマッサージをしたら二人ともあっさり寝落ちしてしまった。

 寝るかとも思ったが目がさえてしまったので、ちょっと離れてお経をあげる、うるさいだろうと言われるかもしれないが隻手の音声な理屈で、声に出さなくても何もなくてもお経は上げられるのだ。一先ず脳内般若心経を上げ、瞑想に入る。修業時代と違い、何かが繋がる感触があった。



「やっと来たな未熟者」

 開口一番で怒られた、弥勒菩薩だ、後光が見える。世界救済担当は56億7000年ほど先の予定のはずだが、異世界にも出るのか?ちなみに悟りを開かない限り輪廻転生を延々と繰り返す未熟者である。

「すいません、遅くなりました?」

 一先ず謝罪しておく。

「まあ、我らは数千年どころか億年単位で何時でも待っているのだ、数日程度物の数ではない。」

 スケールの大きい懐具合だった。

「今回こちらにつながった理由は判っているのであろう?」

「御仏の教えを如何に伝えるかですか?」

「それも有るが、今回は現世での送り出しに不備があったようでな、改めて説明しておかなければと思い、こちらに繋げてくるのを待っていたのだ。最近の若者の流行りであろう?ちゅうとりあると言うものだ」

「それは有難いです、着のみ着のままでこちらに放り出されただけで迷っていました。」

「さもありなん、ではそなたの使命だが、そちらの世界では少々人類が魔物、こちらの世界での悪鬼や魑魅魍魎に負けが込んでいてな、このままでは人類が全滅してしまうと、そちらの世界の神に相談されてな、そちらの神は細かい調整が苦手なようで下手に手を出すと地殻を割ったり大陸を沈めたり海を干上がらせたりしてしまうそうなので、その方法ではあまりにも可哀そうだと言う事で、おぬしを派遣した。」

「無茶なことを言われている気がします。」

 流石に突っ込む。絶滅危惧種な人類を救済しろと言いたいらしい。

「なあに、やることは普通の坊主の仕事だ。」

「具体的には?」

「そもさんせっぱとやりたいところだが、手早く説明しよう。」

「お願いします。」

「周りの隣人を助け、徳を積み、世界の理を説き、御仏の教えを伝えれば良い。」

「確かに坊主の仕事ですが、こちらで広めて良いのですね?」

「そちらの神との話は済んでおる、いざという時は神託の準備も有るそうだ。」

 こちらの神は口しか出せないらしい。

「それでも私一人の手には余ります。」

「なあに、御仏の加護はある、真言は力を持ち、経典もそちらの世界の魔法と同じように使えるだろう、まだ足りぬか?」

「こちらの言葉と文字が分かりません、この世界の言葉が離せないままでは伝えることが出来ません」

 おや、と仏さまが固まる。

「おぬしの嫁が助けてくれるのであろう?」

「確かに助けてはくれますが頼りっぱなしにするわけにも行きません。」

 食い下がる、此処でそのままにされてしまうと現状翻訳担当エリスの負担が大きすぎる。

「写経して広めようにも口伝では意味が違ってしまいます。」

「わかったわかった、文殊菩薩に頼んで知恵と知識の加護をつけてやろう、言葉位はすぐ解るであろう」

「ありがとうございます、ですがまだあります。」

「まだあるか?」

「同郷の嫁の灯にも同じ加護をお願します。」

「まあそれぐらいなら一人も二人も変わらんから許可しよう。」

 思ったより雑だ。

「そうだな、ついでにおぬしの嫁たちに鬼子母神の加護も付けておこう。」

 子供の守護神だ、そろそろ出番があるだろうと?それと何かあったかなという様子で虚空仰ぐ、何でも知っている仏様とはいかないらしい。

「おぬしらは虚空菩薩の加護も付けておくので手彫りの仏を掘って各地に仏の教えと共に配りなさい。」

「ありがとうございます」

 思わず頭を下げる、虚空菩薩は芸術担当だ、確かに仏を掘るには必要だろう。

「虚空の担当だから虚空収納も使えるからな、流行りであろう?収納?」

「はい、ありがたいです。」

 これは嬉しい。

「では、これで良いな、今日はここまでだ。」

「ありがとうございました。」

 深々と頭を下げる。

「そうだ、おぬしらの加護の強さは写経の枚数で増えるからな、出来上がったら教会に供えるなりお焚き上げするなりしなさい。」

「はい。」

「ではまたな、おぬしの行き先に幸多からんことを。」

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