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2章 いちゃつく坊主の冒険者

依頼の処理

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 灯が震えて力が入らない状態から復活するまで暫くかかりそうだ。その内に仕留めたハイエナの首の動脈を斬って止め刺しと放血をしておく、しっかし、この辺の獣は逃げ足の速いことで・・・

「後はこれを担いで移動する体力勝負か・・・」

 普通に体長が1メーターサイズなので普通に重そうだ、3・40キロあるんだろうか?

「私よりは軽いから大丈夫じゃないですか?」

 灯が上体を起こして無責任なことを言い出した。

「女の子と動物の死骸じゃ俺のテンションが違う。」

「そこですか・・・」

 エリスも呆れ気味に突っ込みを入れてくる。

「まあ、この辺はネタだから本気にはしなくていいが、実際問題死後硬直で固まった動物の死体と自分で張り付いて固定されてくれる意識のある人間じゃ運びやすさが全然違う。」

「そうですか?」

「腕の中で逃げようと全力で暴れる子供と寝てるだけの子供、抱き着いてくる子供じゃ重さが違うだろ。持ち上げ中に暴れられたら腰が死ぬ。」

「それはそうですね。」

 納得したようだ。

 紐を出して放血の済んだハイエナを槍に括り付けて固定する、棒一本で肩に担ぐ形だ、引きずったら最終的にすり減って何もなくなってしまう。

「灯もそろそろ復活したか?」

 灯はにぎにぎと手を動かして震えを確認して立ち上がった。

「はい、大丈夫です」

「それじゃあ戻るか、どっちかそっちのリュックを頼む」

「はい。」

 エリスが先に担いだ。

「重かったら言ってくれ、灯の方に押し付けるから。」

 エリスが背負ったリュックの肩ひもの長さを調節しながら言う。

「どっちにしても最低一回は持ち替えですよね?」

 灯が突っ込む、

「まあそれが理想だが、その時次第だなっと」

 やたらと重くなった槍を肩に担ぐ、折れなきゃ良いけど。



 村に到着して一旦荷物を下ろしてストレッチをする。

「疲れた・・・」

 肩と背中が痛い、人のツボ押しなら効果はあるが自分で自分のでは大した効果が出ないので結局ダメージは溜まるのだ、そもそもツボ押しは気休めなのだから・・・

「お疲れ様です」

 結局二人で肩に乗せて交代しながら運んだ。

「次から台車でもつけるか?」

「獲物増えそうなときはそうしましょうか・・・」

 エリスも灯も肩が痛そうだ。

 これ以外獣出てこなくて助かった・・



「でっかいの獲ってきたな、ギルドまで運ぼうか?」

 門番してた人が手伝いを申し出てきた。

「はい、お願いします。」

 エリスが返事をする。

「大丈夫か?」

「門番さんはギルド管轄でそれも含めてお給料出てるんで大丈夫です。」

「なるほど。」

「孤児の子集まってお手伝いだったらお駄賃ですけどね。」

「そうなるわな。」

 財布の状態次第だが、ある意味喜捨に近いものになるかもしれない。ちゃんと運ばれるという前提あればだが。



 ギルド前までしっかり運んでくれた、運び終えると門番の人は門に戻っていく。

「これは結局中に入れるのか?」

「裏側の方に獣用と大物の査定場兼解体場があります、呼べば出て来るんで。」

 エリスがドアノッカーを叩く。

「すいませーん。」

 暫く待つと戸が開いて返り血まみれのエプロンを付けたおっさんが出てきた。

「査定と解体お願いします、肉を半分ぐらいこっちで、残りは納品で、PT名ガンダーラで。」

「あいよ。」

 立て板に水で喋るエリスと無口なおっさんの図だが問題無く進行しているらしい。

 エリスが木札を持って帰ってきた。

「こっちで受け付け終わるとこの番号入った木札渡されます、表の受付にこの木札出せば査定分お金貰えます、肉が欲しいって言ったときは一時間ぐらい待ってこの札持ってまた裏に来れば貰えます。」

「なるほど・・」

「自分で解体できなくても大丈夫なんですね?」

「むしろ下手な素人解体して持ち込むと怒られますし、査定下がります。」

「そらそうだな。」

「血抜き下手でも怒られますけどね。」

「果たして俺のは上手いのか下手なのか・・・」

「傷は少ないから悪くないはずです、表の受付で球根と蕾納品しますよ。」

「はいよ。」

「はーい。」

 そう言って改めて表からギルドに入った。

 相変わらず睨まれてる感があるな・・・

「PT名ガンダーラで朝受けたクエストの納品確認お願いします。」

 そう言ってリュックを開けて球根と蕾を袋のままカウンターに出す。

「それと採取地帯の近くで大型の獣が出たので狩りました、裏に預けて札これです。」

 札も一緒にカウンターに出す。

「わかりました、確認するのでしばらくお待ちください。」

 カウンターの中で計量が始まった、はかりで重さをはかって机に中身を広げてざっと見ている。

「あれぐらいだとあんまり時間かかりません、明らかに別の種類混ざってるとか水増ししてるとか極端に質が悪いとかだと受け取り拒否された挙句にブラックリスト入りするそうなので注意です。」

「そんな雑なのも居るんだな・・・」

「どう見ても直ぐバレますね・・・」

「職員も不正しないようにと見えるところで計量するようになってます、今みたいに。」

 此処で見てるのもその内らしい。

「意外と監視社会だ。」

「世知辛そうです。」

「見なくても良いですけど見てた方が安心ですよね?」

「そだね。」

「怖いですしね・・」

「見てなかった場合普通に呼ばれるんで外してても大丈夫です。」

「あ、それじゃあトイレ行きたいんですけど・・」

「良いですけど付いて行きます?」

「場所だけ教えてもらえれば。」

「あっちの突き当りを左です。」

「ありがと、じゃあ行ってきますね。」

「お気をつけてー。」



「終わりましたよ、薬草は特に問題ありませんでした、獣の方も頭と首の部分にダメージ有りますけど毛皮の査定は腹と背中がメインですから問題無いです、薬草採取で銀貨3枚、獣の肉と毛皮で金貨1枚で買い取ります、それと、昨日のゴブリンの報告で依頼の不備と言う事で見舞金として金貨1枚、キングの討伐と言う事で金貨4枚が出ます、全部で金貨6枚と銀貨3枚ですね。」

 相場が分からないが、そんなものだろうか?元の世界で死人が出たときの労災とみると安いようにも感じるが、死亡は自己責任な異世界なので何とも言えん。

「相場的にはどんなもん?」

 エリスに聞くがちょっと固まっていた。

「かなり良いです。」

「なら良かった。」

「大丈夫でしたら代表者のサインをお願いします。」

「エリス頼んだ。」

「はい。」

 エリスはカタカタ震えながらサインを書く。

「はい、確かに、ではこれをどうぞ。」

 受付の人がサインが書かれた紙、恐らく受領証を受け取り、カウンターに金貨6枚と銀貨30枚が出てくる。



「配分どうします?」

「3分割で良い。」

「良いんですか?」

「一人で管理だと逸れたときとか怖いから全員に分散した方が良い。」

「なるほど・・・そうですね・・」

 エリスが納得したらしい。

「三分割で収納お願いします、灯さんと和尚さんギルド証出してください。」

「収納?」

「ギルド証に入れておけます、魔力で紐付けしてあるので本人にしか出せません。」

「それは便利だな。」

「SU〇CAみたいなのあるんですね。」

 其処は魔法あるのか、便利だ・・

「持ち主が死んだ時に取り出すまで特殊な儀式と手続き有るんで、ギルドに持ち込まないと取り出せません、ギルド証の出金で本人以外が持ち込んだ場合手続きで念入りに調べられるんで下手に持ち込むと大騒ぎになります。」

「前回のアレは?」

 かなりごってり持ち込んだ、そういやゴブリン家探しの時にお金出てこなかったな。

「出金って言ってないので大丈夫です。私悪くありませんし、探られて痛いお腹なんて無いです。」

「それは何よりだ。」

 エリスがエッヘンと腰に手を当てて胸を張る。

「エリスさんは現状全科無しの優良駆け出し冒険者なのでで大丈夫ですよ?」

 ギルド証がカウンターに戻ってきた、ついでにギルド側からの援護も付いて来た。

「お待たせです、収納とクエストデータの記録完了できました。」

「はい、ありがとうございます。」

 ギルド証を受け取る、特に見た目は変わらないか、灯もぐるぐる回しながら変わりがないか確認している。

「見た目には変わりませんから。」

「中身の確認は?」

「魔力通すと裏側に浮かびます、二枚とも同期してるんでどっちでも大丈夫です。」

「魔力を通すと言われてもな。」

「やったこと無いんで何とも・・」

 灯も困り顔でギルド証を握りしめている。

「ちょっと失礼します。」

 エリスが背中から抱き着いて来た、背中から何かが流れ込んできて、それが指先を通ってギルド証に(210)と文字が浮かび上がる、

「ああ、なるほど・・」

「こんな感じです。」

 そう言うとエリスが手を離すと同じように灯に抱き着いて恐らく魔力を流し込んでいるのだろう、灯の手元でもギルド証に文字が浮かび上がる。

「この魔力の流れ覚えれば簡単な操作はできます、出ろと念じれば入れた分取り出せます」

 実際に取り出して見せる、厚みの無い金属板からお金が出てくる、こうしてみると手品っぽい。

「最初は開通手続き有るんで最初の依頼終わらせないと出来ないんです。」

「私たちが説明する必要なさそうで安心ですね。」

 受付の人が笑っている。

「今のうちに役に立つ所見せて置かないといけませんから。」

「今のうちですね。」



 表での手続き等を終えて裏に回ると解体は済んで立派な肉に成っていた、木札と交換で肉を受け取る、こうしてみるとただの肉である。肉を抱えて帰り道。

「そう言えば家賃的なものどうする?」

 何も入れずに居候と言うわけにも行かないだろう、こうして収入あったんだし。

「そもそもこのお金って幾ら位の価値ですか?」

 灯も気になっていたようだ。

「お金の話は外ではしない方が良いです、何が出るかわかりませんから」

「そうだな」

 治安悪いのかもしれない。



「ただいま帰りました、お土産です。」

 義母上に肉を取り出して預ける、結構重いはずだが軽々と受け取った。

「おかえりなさい、立派なお肉ね、それじゃあどう料理しましょうか?」

「普通にスープと塩焼きで良いと思う。」

「はいはい、切り分け手伝ってね?」

「はい。」

 リュックから蕾を取り出す。

「それと、ゲッコウキスゲの蕾料理してみたいそうだから鍋とコンロ使って良い?」

「物好きね、まあご自由にどうぞ?」

「じゃあお邪魔します。」
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