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2章 いちゃつく坊主の冒険者

飯と家

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 あとは飯だな、表の食堂でいいか?」

「其処で良いです、おかわりしても?」

「ほどほどに頼む」

 エリスが言質撮りましたとこっちに目配せしてくる、そういやまっすぐギルドに来てしまって順番待ちも無しに直ぐアレだったから昼飯食べてなかったな、今更腹が減ってきた。

「表の食堂にいる、何かあったらそっちに頼む」

 受付の職員にちゃんと断っている、割としっかりした男なのか。



「いらっしゃいませ、何名様です?」

 店に入った所でエプロンを付けたウエイトレスが案内してくる。

「4人だ」

「お好きな席にどうぞ」

 ギルマスがまっすぐ奥のテーブル席に座ったのでそれに続いて座る、エリスがギルマスの横、反対側に俺と灯だった、

「何を頼むんだ?」

 壁にメニューがぶら下がっているが俺と灯にはそもそも読めない。

「すまん、俺らは読めないからエリス頼む」

「えーと、肉と鳥、魚、野菜とパンとコメどれにします?」

「コメあるのか?」

「多分和尚さんのところとは別ですけどね。」

「そこはしゃあない、肉と魚とコメで頼む。」

「じゃあ鳥とパンでお願いします」

「決まったか?」

「はい、大丈夫です」

 ギルマスが手を挙げてウェイトレスを呼ぶ、ここらは万国共通なのか。

「塩焼の肉と魚と鳥、パン2個とコメでお願いします」

 割とそのまんまだな。塩はあるのか。

「俺は肉と酒で頼む」

 ギルマス昼間から飲むのか・・

「飲まんのか?」

「じゃあ頂きます、お酒3個追加で」

 エリスがこっちの確認を待たずに注文した、まあいいか、こっちの法律では問題無いのだし。

「灯は飲めるのか?」

「飲んだことはないですけど折角なので飲んでみたいです」

「止めはせんが無理すんなよ?」

「はーい」

 さて、何が出てくるのか?



 木の器に入った冷えた赤ワインが出てきた、ブドウ潰して置いて置けば酒になるから意外と作り易いか。魔法もあるから冷やせるのか?

「湿っぽいのは無しだ、お前らの無事と新しい出会いに乾杯」

「「「「乾杯」」」」

 軽く器をぶつける、一口入れてみる、少し薄いが悪くない、灯は渋みでちょっと顔をしかめている、慣れんとそうなるな。

「そういえば、ギルマスに報告してなかったですけど、私たち結婚しますので」

 ぶ、と少しギルマスが噴き出した。

「そりゃまたいきなりだな相手は?」

「当然ですが和尚さんです、私たち二人とも嫁ですので」

「そりゃまた・・・がんばれ」

 俺の方を見てちょっと遠い目をするギルマス、

「がんばります・・・」

 これはエリスは翻訳してないが多分通じている。



 丁度良いタイミングで料理の方が出てきた、結構量が多い。

「「「いただきます」」」

 ギルマスが不思議そうな顔で見ているが聞いては来なかった。

 料理の味付けは塩だけだったが、そんなに悪くなかった。疲れているせいもあるだろうが、美味しくいただけだ。灯の方も残してはいないので大丈夫だったらしい。

「ごちそうさま」

 食べ終えて一息つく。

「まだ食べますか?」

 エリスが聞いてくるが、

「いや、十分だ。美味かった。」

「それなら良かったです」



「一応親として言わせてもらうが、こいつを大事にしてやってくれ」

「あ、はい、わかりました」

「親?」

「はい、言ってなかったですけど、一応この人が養父と言う事になってます」

 それは先に言っておいてほしかった。

「一応とか言うな。」

 ギルマスがさびしそうな顔を浮かべる。

「だから、お義父さんに結婚の報告です。最低限俺より強いの連れてこいだったので大丈夫ですよね?」

 エリスはギルマスの寂しそうな文句を黙殺して続ける。

「ああ、そういう意味では問題無い・・・」

 苦虫をかみつぶしたような様子で言う。

「今夜二人を家に泊めても大丈夫ですか?」

「大丈夫だ・・あいつも喜ぶ、部屋も空いてる・・・」

「一部屋で良いですよ?」

「お義父さんが許しません・・」

「それじゃあ先に帰ってます、ご飯ありがとうございました、ちゃんと仕事してくださいね?」



 結構立派な家だった。

「これが我が家です、一応お風呂も有りますよ。」

「ああ、でもギルマスあの扱いで良いのか?」

「冒険者登録する前に見請け人誰も居なかったので書類上保護者だったんです。あんまりべたべたできません。」

「それだけでもなさそうだが・・」

「良いんです」

「ちょっとした反抗期だと思いますけど。和尚さんから見て辛いですか?」

「俺おっさんだから嫁もらう側なのにあげる側の気分になってる・・・」

「後でお義父さんの愚痴でも聞いてあげると良いのでは?」

「本当に聞いてるだけになるな・・・」

 言葉が一方通行な現状が恨めしい。



 ごんごんとエリスが戸を叩くと、一人の女性が出てきた。

「ただいま、お義母さん」

「おかえりなさい、エリス、無事でよかった」

 感極まった様子でエリスに抱き着く、丁度エリスの影に隠れていた俺たちと目が合う、

「どうも」

 二人そろって気まずげに軽く頭を下げた。



「何もないけど寛いで行って下さい」

 あれからエリスがさっくりと新しくPT組んだメンバーだとか結婚相手だとか説明するとそういうのは先に言いなさいと溜息を付いて中に通された。

「お口に合うかしら?」

 紅茶らしいお茶が出てきた、砂糖とお菓子は付いていない、そういうものなのだろうと飲む、元から甘かったらしい、結構な砂糖が溶けていた。意外とこの世界豊かなんだろうか?

 横目に灯の方を見ると思ったより甘かったらしく同じように固まっていた。気を取り直して飲みほす。こういう時に出された物はちゃんと飲み食いするのがマナーだ、飲まないのがマナーと言うビジネスマンは悔い改めろ。そもそも托鉢行中の坊主は拒否権無かったりもするがそれはそれで。



「クエストを受けて外に出たけど予定日超えても帰ってこなかったからどうしたのかと思ってあの人と一緒に心配していたのよ」

「心配かけてごめんなさい、こうして無事帰ってきました」

「帰ってきたと思ったら旦那様と第一夫人もつれてきたと」

「はい、そこら辺のいきさつはお義父さん帰ってきてからお願いします、ギルド寄ってきたので報告書は出てます。」

 明らかにギルマスより手ごわい様子だ、これは怖いがこっちからは口が出せないので見ているだけだ。

「そっちは後で読ませてもらいます」



「ただいまー」

 息を切らした様子でギルマスが帰ってきた、急いで帰ってきたらしい。

「おかえりさない、今日は早いですね?」

「ゆっくり仕事できる状態じゃないだろう?」

「そうですね」

 改めて視線がこっちを向いた。



「で、孫は何時ごろの予定で?」

「「ぶ」」

 俺とギルマスが噴き出した、そっちの話になるのか、大丈夫か?

「追々でお願いします」

 思わず返すが俺の発言はエリス任せだ。

「近いうちで良い?」

 エリスが俺の発言をスルーする形でそのまま爆弾を打ち返す。

「私たちも若くないから早めにね?」

「はーい」

「止めないのか?」

 ギルマスが何とも言えない表情で突っ込みを入れる。

「あなたが自分に勝てる男以外認めないとか言い出すからこの娘が行き遅れるんじゃないかと心配してたのよ、そっち先に顔を出したんだから貴方負けたんでしょう?」

 図星を刺されたギルマスががくりと肩を落とした。



「和尚さんと灯さん貴方達は今日から私たちの息子と娘になるのだからゆっくり寛いで行って下さいね」



 なんだかんだで無事?家族会議も終わり部屋に案内された。何もない板張りの部屋にベッドが二つ置いてある。上着と靴を脱いでぐったりとベッドに横になる、

「森の中にいるより疲れた」

「ですね」

「お疲れ様です・・・」

 両隣にエリスと灯がくっついている、ベッド二個あるのに何故そうなる・・エリスも自分の部屋有るんだろうと言ったら、二人きりはずるいと言われた、さよか・・

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