上 下
41 / 81

第39話 ツムギの長い一日(始まり)

しおりを挟む
 ガタンゴトン ガタンゴトン
(学校行きたくないなあ・・・・)
 通学中、朝の満員電車で席に着いて物思いにふけりながら、一人内心で後ろ向きな事を呟く、後10分もすれば学校最寄りの駅に到着だ、満員電車が苦手なので少し早目に出ているが、電車の中は其れなりに人が乗って居る。
(あれ? 陽希さん?)
 乗客の中にクラスの有名人の姿を見つける。席が埋まって居るので立ち乗りしているが。人ごみの中、吊革につかまりもせずリュックを前に抱きかかえて目を閉じている。
 何故かその立ち姿の時点で可愛らしい。
 立ち姿に男らしい雰囲気が無いのだ、同年代以上の男子に見られるガニ股や、つま先がハの字に開いて居ると言う事も無く、逆に内股気味で骨ばったり角ばったりしている感も無い、学期初めの自己紹介で男だと言われ無かったら女である私でも見分けが付かない。
 目を閉じて居るだけなのに何と言うか余裕が感じられる、睫毛も長い、何故か薄く笑って居る様で余計に可愛い。
 これは負ける・・・
 謎の敗北感を感じつつ、先程の後ろ向き思考の続きを再開する。
 高校生活が始まって早々に所属グループを間違えた感がある。
 今年の高校生活が始まって1週間程度なのだが、現グループは力関係のヒエラルキー構造が妙に強く、SNSでのグループでの発言権や、順番、返信速度、既読スルーはもとより未読スルーも袋叩き、序に一般人系のグループなのでオタク趣味に理解は無く、常に擬態を強いられている、中学の頃は諸々解放状態でオタクグループ。いや、腐女子の面々でつるんでいたのだが、男の影も無いモテないグループと言うのも辛いと言う事で、高校デビューを果たしてモテるらしい一般人グループに所属して青春を謳歌しようとして居たのだが、一般人の擬態が此処迄辛い物だと思わなかった。
 だがもうクラスのグループは出来上がっている、下手に動くと現グループの面々からの風当たりが怖いし、現グループはクラス内カースト的に強いので一寸勿体無い。
 そんな前に進まない堂々巡りの思考をしていると、少し眠くなってきた、後一駅は有るし、少しぐらい目を閉じても良いかな?
 そう思って軽く目を閉じたのだが。

 ガタンゴトン ガタンゴトン
 何処だろう此処?
 盛大に乗り過ごしたらしい、同じ制服の面々は電車の中に誰も居なくなっている、其れでも陽希さんは先程と同じ体勢で残って居た、もしかして眠ってる?
 スマホを取り出して時間を確認する。
(9時?! 遅刻だ!?)
 思わず目をむいた。
 それにメールとメッセージが溜まっている、未読スルーはグループ内のランクを下げるので困る! 返事をしなくては! と、ポチポチ始めようとした所で、圏外である事に絶望する。
 もう諦めて絶望顔でスマホから顔を上げると、丁度起きたらしい困り顔の陽希さんと目があった。
「おはよう、遅刻仲間?」
 いきなり変な挨拶だった。
「おはようございます」
 普通に挨拶を返す、これが私、紬(つむぎ)と陽希さんとの長い一日の始まりだった。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

無法の街-アストルムクロニカ-(挿し絵有り)

くまのこ
ファンタジー
かつて高度な魔法文明を誇り、その力で世界全てを手中に収めようとした「アルカナム魔導帝国」。 だが、ある時、一夜にして帝都は壊滅し、支配者を失った帝国の栄華は突然の終焉を迎えた。 瓦礫の山と化した帝都跡は長らく忌み地の如く放置されていた。 しかし、近年になって、帝都跡から発掘される、現代では再現不可能と言われる高度な魔法技術を用いた「魔導絡繰り」が、高値で取引されるようになっている。 物によっては黄金よりも価値があると言われる「魔導絡繰り」を求める者たちが、帝都跡周辺に集まり、やがて、そこには「街」が生まれた。 どの国の支配も受けない「街」は自由ではあったが、人々を守る「法」もまた存在しない「無法の街」でもあった。 そんな「無法の街」に降り立った一人の世間知らずな少年は、当然の如く有り金を毟られ空腹を抱えていた。 そこに現れた不思議な男女の助けを得て、彼は「無法の街」で生き抜く力を磨いていく。 ※「アストルムクロニカ-箱庭幻想譚-」の数世代後の時代を舞台にしています※ ※サブタイトルに「◆」が付いているものは、主人公以外のキャラクター視点のエピソードです※ ※この物語の舞台になっている惑星は、重力や大気の組成、気候条件、太陽にあたる恒星の周囲を公転しているとか月にあたる衛星があるなど、諸々が地球とほぼ同じと考えていただいて問題ありません。また、人間以外に生息している動植物なども、特に記載がない限り、地球上にいるものと同じだと思ってください※ ※固有名詞や人名などは、現代日本でも分かりやすいように翻訳したものもありますので御了承ください※ ※詳細なバトル描写などが出てくる可能性がある為、保険としてR-15設定しました※ ※あくまで御伽話です※ ※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様でも掲載しています※

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

処理中です...