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第148話 閑話 ヤタちゃん三日目 ヤタの拘りと、正しい翡翠の砕き方

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「さあて、今日はどうするかのう」
 何時もの離れで、ヤタちゃんが悪そうな笑みを浮かべる。
「普通で行きましょう、普通で」
 昨日のあれは男側としても困る。
「普通なあ……」
 そんな事を言いながら、ヤタちゃんがこちらの手を握る。
 それで終わりじゃないぞと、持ち方を変え、掌をくすぐり、指先をさすり、ゆっくり指とかを絡めて、肌と肌の密着具合を上げる。
 段々とお互いの手汗でじっとりとしてきて。

 ちゅ、ん………………
 いつの間にか唇が重なった。
 指先に神経が集中していて、まるっきりの不意打ちだった。 離れて。
 ちゅ、ん………………
 もう一度と、唇が重なる。
 今度は舌が出て来て、絡まる。
 ぴちゃぴちゃと水音が響く。


 どくんどくんどくんどくん

 小細工無しに、お腹の奥で搾り取られた。
「こんな感じじゃな? ご感想は?」
 得意気に言われた。
「気持ちよかったですけど、手際が良過ぎて、最早何が何やら」
 真似出来るかと言われると困る。
「伊達や酔狂で歳食ってないからな?」
 確かに、経験値の差がいかんともし難い。
「で、一番の問題は………………」
 ちょっと不満そうに語尾を濁す。
「問題は?」
「こう言う一方的なのは、どっちかと言うと搾精の領域でな? セックスとは言わんじゃろ?」
 確かに、今回はまるっきりこっちがマグロだった。
「指絡めてるのはラブラブ感あったと思いましたよ?」
 それ以降は、ただ待っているだけで、フィニッシュまでフルオートだ。
 手を出す隙がなかったとも言う。相手のターンに動けない童貞感も有る。
「対外的に、出せば、奥で受ければ、そもそも触れ合えれば十分って言われとるが、セックスは本来コミニュケーションじゃ、全身全霊でぶつかる肉体言語の極致、お互いの感情と本能と内面、極論魂まで剥き出しにして、ぶつかって踏み込んでなんぼじゃろう?」
「確かにその通りではありますね?」
 世の中の何人が、その領域まで行けるかどうかは、かなり疑問であるが。
 前の世界でも、いわゆるストイックなトップアスリートみたいなノリじゃないと、そこまで行けないと言われていた気がする。
「そういう意味で、昨日のお主は良かったんじゃ、本能剥き出しにして儂を求めたじゃろ?」
「お恥ずかしい限りで」
 意外と褒められてしまった、だがそうは言っても、本能に呑まれるのは大人としてどうなのだと思うのだ。
「そこじゃな?」
「そこ?」
「儂相手に取り繕うな、一歩引くな、踏み込め、求めろ、誰でもそうしろとは言わんし、言えん、だが、儂にはそうしろ、痛いと苦しい系以外は全部受け止めてやるから」
 思わず無茶言うなと言いたくなるが。
「事後のピロートークとしては重くありません?」
 そこで黙るなと言う事だろう。
「必要事項じゃ、ミサゴを筆頭とした、おぼこい連中を相手にする際は問題無いし、慣れるまでは優しく一歩引いて導いてやる必要があるが、儂とツグミとトキ相手なら、聞きかじりじゃが、元の世界のノリも含めて知っとる、お主がこちらで、どの程度の異物となるのかもな?」
「異物ですか」
「かなりな?」
 頷かれる。
「上手く出来てるつもりですが」
 場の雰囲気とノリに合わせて、それなりに楽しくやって居ると思う。
「お主がお主のままで有れば問題ない、女達から剥き出しの性欲を向けられて、笑って得した位の感覚で対応できているのならな?」
「実際得しかないのでは?」
 思ったまま、そのまま返す。日替わりで次から次に孕ませてくれと女の子が来る世界に不満なんか有る筈無い。
 種馬扱いは嫌だとほざく、どこぞのハーレム主人公な思春期ボーイじゃ無いのだ。
 ヤタちゃんが、にやりと笑みを浮かべた。
「それなら何よりじゃが、お主からの要求が薄いからな?」
「そんなもん、向こう産の男なんだから、食えて寝れて、ヤル相手が居て、白濁液が出せれば文句なんて無いんです。飯食わなくて、眠らなくて、白濁液が出無くなったら気を使わなきゃなりませんけど」
 コレが正直な所だと思う。
「わはははは」
 ヤタちゃんがお腹を抱えて笑った。
「じゃあ、大丈夫じゃな?」
「いくら絞られても泣きませんから」
 二人で吹き出すように笑う。
「二回戦行くとするか」
「頑張りましょう」
 中休みも十分であった。


 昨日の暴走ほどではないが、かなり注ぎ込んだ。
「昨日はぬかナインまで行ってたからな?」
 最初の発射の時よりは、かなり上機嫌だった。
「誰ですか、そんな事するバケモン」
 記憶にございませんと言うか、記憶がございません。
 酔っ払って暴走状態だと数えている余裕も何も無かったのだ。
 腰振って中に出すことしか考えていなかった。
「お前じゃい」
「次から、マジックで出した回数で正の字でも書くとしますか」
 文脈的に目指せ二桁とか無茶言うなと言う感じであるが。
「それが良いな?」
 二人で噴き出す様に笑った。
 距離感が、明らかに狭まったのを感じた。


「で、最後はコレじゃな?」
 最後に、例のファーストピアッサーキットが出て来た。
「やるんですか? 本気で?」
「本気じゃなきゃ、こんな所に持ち込まんわい」
 そんな事を言いながらヤタがぺりぺりバリバリと梱包を開ける。
 こっちも覚悟を決めなきゃならない様子だった。

「何時でも良いぞ?」
 ちょっとだけ強張り気味にゴーサインが出る。
「じゃあ、行きます」
 すうはあ・・・・・・
 深呼吸して落ち着かせて。
 パチン!
 意外と軽い音を立てて、針が耳たぶを貫通した。
 一瞬、ホチキスみたいな、ばね付き倍力機構越しでも、手元にまで皮と肉を貫通する針の感触とかが響いた気がする。
 恐る恐る手を開くと、奇麗に翡翠が付いた白金色のピアスが装着されていた。
 傷口から、少量だが血が垂れるのが見える。
「まあ、破瓜の代わりじゃな?」
 ぽたりと、下に敷かれた白いシーツに赤い染みが広がった。
「痛くありません?」
「痛くは有るが、そこまででも無いな?」
 痛いの終わったと言う開放感すら感じられる。
「そこまでして開ける意味は?」
「お主がコレを見るたびに、今日という日を思い出す」
 先程あけたピアスを指さしてアピールしつつ、ヒヒヒと笑われる。
「傷モノにした責任は、一生かけて儂等とバカップルを演じる事じゃ」
「ご褒美だと思うのですが?」
 むしろ喜んでと言って良いと思う。
「それなら問題なかろう!」
 価値観の一致じゃと笑われた、確かに、その通りであった。


 追伸
 気が付いたら意外と真面目な話に。
 石の翡翠は硬度7で劈開無いので、普通に叩くだけじゃ割れません。
 翡翠の強固な理性の壁と一歩引いた性格、ヤタちゃん意外だと砕けそうな人居なかったんです。
 コレをやることによって、皆への態度が多少砕ける筈。

翡翠「所で、昨日のアレが以外と良かったのは分かったけど、それだと失敗点は?」
ヤタ「最後の脱水状態とハンガーノック、摂りやすい位置に補給食も入れておくべきだった」
翡翠「さいですか」
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