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第59話 トキの評価と、ヤタの悪だくみ

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「んで? どうだった? 医者のお主から見て?」
 自室に戻って呑み直しつつ、トキに話題を振る。
「大体治ってますね? 喉の辺り、リンパ節の腫れもひいてましたから」
 外れているが、予想通りの返答だった。
 娘のトキに抱き着き癖が有るのは本当だが、医師歴が長いので、基本的に触った時点で大体の病気や体調不良は触診できるのだ。趣味と実益を兼ねた、では無く、仕事一辺倒な特殊能力であった。
「そりゃあ何よりじゃが、雄としては?」
「極めて優秀、私達女を忌避しない時点で、そうとしか言えないでしょう?」
「そりゃそうじゃな?」
 お互いの意見のすり合わせは良好だった。
「もうちょい呑むか?」
「もう限界です、水でも飲んでおきます」
 そんな事を言いながら、コップの水をちびちび飲んでいる。
「病み上がりでハチクマの相手するのも、躊躇しないからな?」 
「普通だったら怖がりますよ? あの娘の身長、190㎝あるんですから………」
 確かにハチクマはかなりデカイ、だが、身内の贔屓目を含めずとも、かなりの美人であるのだが。
「むしろ美人と見てくれるそうじゃぞ?」
「割れ鍋に綴じ蓋と言うか、蓼食う虫も好き好きと言うか、貝合せの蛤かしら……?」
 決まった相手以外は絶対に合わない系の慣用句がぼろぼろ出て来る、そこまで言わんでも。
「可愛いもんじゃろうが、アレで驚かせない様に気を遣う小心者じゃぞ?」
「あの娘、顔の造作も身体つきも一級品なんだから、もうちょっと堂々とした方が売れると思うのに」
「世の中の雄がアレの魅力に気づかんで良かった位じゃな? まったく見る目が無い節穴共め」
 写真では美人だと呼ばれるが、背が高過ぎての威圧感で負けたらしい。
「今あの人逃したら、それこそ壊れるでしょうね?」
「だからこそ、早目に攻めんと、こちらの価値観に染まって増長してからじゃ、幸せになれんじゃろ?」
 純粋なこっちの雄の酷さ加減は筆舌に尽くし難い。
 ツグミが蹴り出したのも止む無しと言ったところだ。
「そこら辺は、あの人の善性任せね?」
 以前の価値観を持ったまま、変わらない善人で有って欲しいが、其ればかりは神のみぞ知ると言うか、当人の資質と心構え、あとは周囲の環境次第だ、他の所に持ってかれた場合、馬鹿みたいに甘やかして、人間以下のクズを作りかねない。
「程よくガス抜きしつつ、コチラに愛着持たせるのがコツじゃ、上手く誘導できたら勝ちじゃな?」
 外部からの口出しやら干渉が有った場合、最終的には男性の自由意志が優先されるので、既成事実と愛着の積み重ねが重要になる。
「あの子達にそんな駆け引き出来ると?」
「出来んじゃろうなあ、幸いあやつ、翡翠の奴は精神的にはそこそこ良い歳じゃから、年下のミサゴ達は可愛く見えるようじゃ、そのまま甘え倒せば勝てるか?」
「まったく、行き当たりばったりな……」
 トキがため息をつく。
「まあ、暫くは儂が誘導しておくわい」
 そんな事を言いつつ、くいっと杯をあおる。
 仕事多くて大変だなあと思いつつ、口元がにやける。
 何だかんだ、既にミサゴはこれ以上無いほど幸せそうだし、良い調子だ。
「お母さんも大分浮かれてるよですね?」
 トキも釣られてか、楽しそうに笑みを浮かべている。
 何時もむっつりした真面目顔が大分綻んでいた。
「あやつ、儂にまで求婚してきおったからな? まったく物好きな」
 思い出すと、思わず顔がにやける。
「楽しそうで何よりです」
「おう、久しぶりに楽しくて寝てられんわい」
 二人で顔を合わせて、二人で噴き出すような笑みを浮かべた。



 追申
 友人に指摘されましたが、ヒロインズの思考、じっとりねっちょりし過ぎてないかと。
 だって翡翠逃がしたら、一生独り身確定ですので、そりゃあ必死にも成るだろうと言う事で、平常営業です。
 世界単位でハーレム推奨ですから、多少嫉妬はしても刺しては来ない世界ですから、ご安心を。



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