上 下
59 / 152

第59話 トキの評価と、ヤタの悪だくみ

しおりを挟む
「んで? どうだった? 医者のお主から見て?」
 自室に戻って呑み直しつつ、トキに話題を振る。
「大体治ってますね? 喉の辺り、リンパ節の腫れもひいてましたから」
 外れているが、予想通りの返答だった。
 娘のトキに抱き着き癖が有るのは本当だが、医師歴が長いので、基本的に触った時点で大体の病気や体調不良は触診できるのだ。趣味と実益を兼ねた、では無く、仕事一辺倒な特殊能力であった。
「そりゃあ何よりじゃが、雄としては?」
「極めて優秀、私達女を忌避しない時点で、そうとしか言えないでしょう?」
「そりゃそうじゃな?」
 お互いの意見のすり合わせは良好だった。
「もうちょい呑むか?」
「もう限界です、水でも飲んでおきます」
 そんな事を言いながら、コップの水をちびちび飲んでいる。
「病み上がりでハチクマの相手するのも、躊躇しないからな?」 
「普通だったら怖がりますよ? あの娘の身長、190㎝あるんですから………」
 確かにハチクマはかなりデカイ、だが、身内の贔屓目を含めずとも、かなりの美人であるのだが。
「むしろ美人と見てくれるそうじゃぞ?」
「割れ鍋に綴じ蓋と言うか、蓼食う虫も好き好きと言うか、貝合せの蛤かしら……?」
 決まった相手以外は絶対に合わない系の慣用句がぼろぼろ出て来る、そこまで言わんでも。
「可愛いもんじゃろうが、アレで驚かせない様に気を遣う小心者じゃぞ?」
「あの娘、顔の造作も身体つきも一級品なんだから、もうちょっと堂々とした方が売れると思うのに」
「世の中の雄がアレの魅力に気づかんで良かった位じゃな? まったく見る目が無い節穴共め」
 写真では美人だと呼ばれるが、背が高過ぎての威圧感で負けたらしい。
「今あの人逃したら、それこそ壊れるでしょうね?」
「だからこそ、早目に攻めんと、こちらの価値観に染まって増長してからじゃ、幸せになれんじゃろ?」
 純粋なこっちの雄の酷さ加減は筆舌に尽くし難い。
 ツグミが蹴り出したのも止む無しと言ったところだ。
「そこら辺は、あの人の善性任せね?」
 以前の価値観を持ったまま、変わらない善人で有って欲しいが、其ればかりは神のみぞ知ると言うか、当人の資質と心構え、あとは周囲の環境次第だ、他の所に持ってかれた場合、馬鹿みたいに甘やかして、人間以下のクズを作りかねない。
「程よくガス抜きしつつ、コチラに愛着持たせるのがコツじゃ、上手く誘導できたら勝ちじゃな?」
 外部からの口出しやら干渉が有った場合、最終的には男性の自由意志が優先されるので、既成事実と愛着の積み重ねが重要になる。
「あの子達にそんな駆け引き出来ると?」
「出来んじゃろうなあ、幸いあやつ、翡翠の奴は精神的にはそこそこ良い歳じゃから、年下のミサゴ達は可愛く見えるようじゃ、そのまま甘え倒せば勝てるか?」
「まったく、行き当たりばったりな……」
 トキがため息をつく。
「まあ、暫くは儂が誘導しておくわい」
 そんな事を言いつつ、くいっと杯をあおる。
 仕事多くて大変だなあと思いつつ、口元がにやける。
 何だかんだ、既にミサゴはこれ以上無いほど幸せそうだし、良い調子だ。
「お母さんも大分浮かれてるよですね?」
 トキも釣られてか、楽しそうに笑みを浮かべている。
 何時もむっつりした真面目顔が大分綻んでいた。
「あやつ、儂にまで求婚してきおったからな? まったく物好きな」
 思い出すと、思わず顔がにやける。
「楽しそうで何よりです」
「おう、久しぶりに楽しくて寝てられんわい」
 二人で顔を合わせて、二人で噴き出すような笑みを浮かべた。



 追申
 友人に指摘されましたが、ヒロインズの思考、じっとりねっちょりし過ぎてないかと。
 だって翡翠逃がしたら、一生独り身確定ですので、そりゃあ必死にも成るだろうと言う事で、平常営業です。
 世界単位でハーレム推奨ですから、多少嫉妬はしても刺しては来ない世界ですから、ご安心を。



 良かったら「感想」とか「いいね」とか「お気に入り登録」とか【次世代ファンタジーカップの投票】とか、ご協力お願いします。
しおりを挟む
感想 159

あなたにおすすめの小説

異世界辺境村スモーレルでスローライフ

滝川 海老郎
ファンタジー
ブランダン10歳。やっぱり石につまずいて異世界転生を思い出す。エルフと猫耳族の美少女二人と一緒に裏街道にある峠村の〈スモーレル〉地区でスローライフ!ユニークスキル「器用貧乏」に目覚めて蜂蜜ジャムを作ったり、カタバミやタンポポを食べる。ニワトリを飼ったり、地球知識の遊び「三並べ」「竹馬」などを販売したり、そんなのんびり生活。 #2024/9/28 0時 男性向けHOTランキング 1位 ありがとうございます!!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。

朱本来未
ファンタジー
 魔術師の大家であるレッドグレイヴ家に生を受けたヒイロは、15歳を迎えて受けた成人の儀で盗賊の天職を授けられた。  天職が王家からの心象が悪い盗賊になってしまったヒイロは、廃嫡されてレッドグレイヴ領からの追放されることとなった。  ヒイロは以前から魔術師以外の天職に可能性を感じていたこともあり、追放処分を抵抗することなく受け入れ、レッドグレイヴ領から出奔するのだった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...