上 下
43 / 134

第43話 ハチクマ内面

しおりを挟む
(小さいなあ)
 彼を見た瞬間、思わず内心でそう呟いた。



 私は山野ハチクマ、今は男性護衛官のようなものをしている。
 様な物と言うのは理由が有って、護衛官の資格と職業は有るのだが、護衛官としての仕事がない状態だったからだ。
 護衛官と言う仕事は基本的に、誰かの護衛につかないと護衛官とは名乗れないのだ。
 待機中は予備役扱いだ、持ち前の無駄に大きいこの身体で、自衛隊にスカウトされたは良いが、女しかいない職場に嫌気がさし、職歴を生かした転職、尚且つ男性が 居る華の有る仕事だと、候補的に男性護衛官が手っ取り早かったので、頑張って難関と言われる試験を突破して護衛官となったのだが。
「君の大き過ぎる身体では、護衛対象である男性に圧迫感を与えるため、出番がないかもしれないよ?」
  最終面接官の、そんな身も蓋も無い一言にもめげずに、頑張った、とにかく頑張ったのだが。

「デカい、怖い」
 初めての現場での顔合わせ、護衛対象の男性から発せられた、その一言で崩れ落ちた。

 いや、自覚はあったのだ、学生時代も、部活でも、自衛隊とかでも頭一つ大きかったし、ガタイの良いのが多い中でも、押し負けないし。
【基本的に、圧迫感を与えないために、護衛対象の男性よりも小さいほうが人気が有る】
 職業適性テキストのそんな一文は、いや、大きさによる頼りがいなんかも大事だからと言う気休めの言葉にすがって意図的に見えていなかった。
 のだが、現場の男性から第一声でのそれは、流石に応えた
 その時は男性に見苦しい所を見せる訳にも行かず、物陰で崩れ落ちた。
 幸か不幸か、その男性の所には、結局採用されなかった。


 自棄になってストレス解消といっぱい食べた、一緒に来た面々がドン引きするぐらいに。
  で、其処から嘔吐でプラマイゼロにする何て行儀が悪い概念は無かったので、釣り合うぐらいには運動した。
 それを繰り返して一年ぐらいで、胸とか尻とか、何故か身長まで、一回りでっかくなった。
  学生時代は180位だったはずなの身長が、何故か社会人になってから190位まで行ってしまった、流石に成長期終われと頭を抱えたが、伸びた身長は戻らない。

 それ以降、何度か顔合わせには呼ばれるが、採用されず。
 タダの予備役待機では不味いと言う事で、ひたすら裏方の書類仕事に回されるようになった。
 で、そんな不完全燃焼の日々の中、護衛官として呼ばれた、何処の物好きだと思ったら、実家の本家だった。
 懐いて来ていた妹分のミサゴとか、真面目だけど悪だくみ担当のスズメとか、懐かしいなあとか書類を見ながらしみじみ思う。
 本家元締めのヤタ祖母さんとか未だあの容姿なのだろうか?
 でも、男性何て何処から捕まえて来たんだろ? 国から男性が派遣何て事も無いだろうし、あの辺は本当に空白地帯なのだ、前の代で男性を追い出してしまった関係上、フリーの男性が派遣される様な事もほぼ無い。 それが嫌で、婿探しだと私は外に出たのだし。
 ロクに成果上がってないけど!
 悲しい成果に思わず目をそらす。

 で、久しぶりに帰ってきた地元は、相変わらず寂れていた。
 地域に男性が居ない所は、女性にも活気が無いのだ、表立って外にいる男性が居ないと、ワンチャン有るんじゃないかと着飾る意味も無いので、色々と経済とか停滞するのだ。女同士でマウントしても悲しいだけなのだから。
 そんなどんよりした、見覚えのある通りを、仕事仲間の男性保護局の面々と歩く。
 学生時代、この限界集落一歩手前の、どんよりした閉塞感が嫌で飛び出したんだよなあと、あの頃の感情を思い出して、内心で溜息をついた。
 きよらは無駄に燃えているっぽい、推定有罪で張り切っている。
 琴理さんはあくまで無罪前提で、事務処理のためにと言っている。
 まあ、私はあくまで護衛である、自分で判断する権限は無いので、その時々、指示待ちで成るようになれだ。


(あれ? 華やかだ?)
 見覚えのある温泉旅館に一歩踏み入れると、見覚えのある面々が浮足立っていた、何処となく浮かれていて、笑顔とか見える、良いことが有ったのだと一目で判る。 あまり仲良くは無いが、腹違いの姉妹とか親戚の面々の顔も明るい。
 で、入り口で琴理さんが仲居さんを捕まえてちょっと話すと、そこの奥の影ですと指さされた。
 私にも目が合って(あ、懐かし) そんな感情が浮かんでいたのに気が付く、小さく目礼と手振りで返事だけする、一応未だ仕事中なのだ、公私混同とかあんまりよくない。

 で、真っ先に突っかかって行ったきよらは本家の妖怪ロリババア、ヤタ祖母ちゃんに、見事に返り討ちに会い。
 何だか無駄に浮かれたヤタ祖母ちゃんとのラブラブ具合を見せつけられ。
 改めてと、翡翠さんと話させてもらっても、有罪に出来るような材料は見つからず。
 琴理さんは淡々と手続きを進める。
 私はと言うと、その男性、翡翠さんに目を奪われていた、今回はご指名なので、もしかすると私にも春とか有るのだろうか?
 内心で浮かれつつ、展開を見守る。

 最早怨嗟の「羨ましい」という言葉をうわ言の様に繰り返すきよらに絆されてか、ハグしても良いと翡翠さんが席を立ち、一人で手を広げた。


 追伸
 一般兵士に戦争する権限とかは有りませんから、と言う訳でも無いですが、ハチクマさんは割と受け身。
 社会人になるまでお腹いっぱいに成るまで食べるとかあんまり経験なかったので、目いっぱい食べたら残ってた成長期が来ちゃったタイプ。
 少子化対策とかで自衛隊でもお見合いぱーてーとかは有りますが、ハチクマは男性よりも、男っぽい女を探す同性婚狙いの女にモテるタイプです。
 残念ながら当人はノーマルなので辛いだけ。
 因みに、作者的には大きくても小さくても貴賤は無い派です、彼女とか嫁とかフレンズとか募集中ですと寝言を言ってみます。
 価値観はあくまでもこの世界でのお話ですので。フィクションですから!


 ハチクマさんはこんな感じのAIイメージと成ります、手足は長くてすらっと筋肉質、もうちょっと太くても良いです。
 鳥の方はAIが認識してくれないと言うマイナー加減ですのでお察しです。

 良かったら「感想」とか「いいね」とか「お気に入り登録」とか、【次世代ファンタジーカップの投票】とか、ご協力お願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国

てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』  女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

裏アカ男子

やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。 転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。 そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。 ―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

七星点灯
ファンタジー
俺は屋上から飛び降りた。いつからか始まった、凄惨たるイジメの被害者だったから。 天国でゆっくり休もう。そう思って飛び降りたのだが── 俺は赤子に転生した。そしてとあるお爺さんに拾われるのだった。 ──数年後 自由に動けるようになった俺に対して、お爺さんは『指導』を行うようになる。 それは過酷で、辛くて、もしかしたらイジメられていた頃の方が楽だったかもと思ってしまうくらい。 だけど、俺は強くなりたかった。 イジメられて、それに負けて自殺した自分を変えたかった。 だから死にたくなっても踏ん張った。 俺は次第に、拾ってくれたおじいさんのことを『師匠』と呼ぶようになり、厳しい指導にも喰らいつけるようになってゆく。 ドラゴンとの戦いや、クロコダイルとの戦いは日常茶飯事だった。 ──更に数年後 師匠は死んだ。寿命だった。 結局俺は、師匠が生きているうちに、師匠に勝つことができなかった。 師匠は最後に、こんな言葉を遺した。 「──外の世界には、ワシより強い奴がうじゃうじゃいる。どれ、ワシが居なくなっても、お前はまだまだ強くなれるぞ」 俺はまだ、強くなれる! 外の世界には、師匠よりも強い人がうじゃうじゃいる! ──俺はその言葉を聞いて、外の世界へ出る決意を固めた。 だけど、この時の俺は知らなかった。 まさか師匠が、『かつて最強と呼ばれた冒険者』だったなんて。

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで

あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。

 女を肉便器にするのに飽きた男、若返って生意気な女達を落とす悦びを求める【R18】

m t
ファンタジー
どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。 その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする

処理中です...