上 下
33 / 113

第33話 翡翠の指輪

しおりを挟む
「どうせだからこれもやっとけ?」
 悪戯っぽい笑みを浮かべ、あまり響かない様に小声でそんな事を言いながらヤタちゃんが何かを取り出した。
 翡翠の指輪だった、材質が翡翠の石だけで構成されるシンプルなヤツだ、中国とか台湾土産に見かける感じがする。白と緑、青や紫のグラデーションする色調、共に透明感が有って、とても綺麗だ。
 硬度7で劈開が無い特異な性質を持つ翡翠たからこそ成立する、シンプルな構造美だった。
(これが、これで?)
 と言う感じに目立たない様に小さく人差し指と親指で指さして確認する。
 ミサコは先ほどから仲居さん達にもみくちゃにされていてこちらを向いていない。
(うむ)
 得意気に声を上げずに頷き、やっちまいなYOって感じにヤタちゃんが笑顔で親指を立てた。
 仕込まれた通りにやるのはどうなのだ? と言う頭の中の童貞と、やっちまってどんなリアクション取られるか見てみたいな? と言う芸人根性が一瞬拮抗した。
「ミサゴさんやーい?」
「はい?」
 ミサゴがこちらを向く
「お手を拝借?」
「はい?」
 右手が出て来た。
「そっちじゃ無い、こっち」
 ぺいっと右手を下げさせて、左手を掴む。
「え?」
「指伸ばして? パーで」
 呟くように指示しつつ、指先を掴んで指先の姿勢を固定する。
(入るかな?)
 そもそもサイズどうなんだ?
 そんな内心のツッコミをさておいて。
 誂えた様に指輪はスルッと左手薬指に収まった。
「おーーー」
 周囲から感嘆の声? が漏れた。
 ミサゴがパクパクと口を動かす。目からは涙が滲んで来ている気がする。
「駄目だったら外して良いよ?」
 その反応がどっちだか判らず、駄目だったかな? と言う感じに予防線を張ってみる。
 …… 
 ………
 ……………
 しばらくの間、無音が続いた、滑ったかな? 回収にかかるべきだろうか。
「や!」
 反応悪いので回収ですよーと指輪に触れると、物凄い勢いで逃げられた。
 ふしゃーっと威嚇する猫を彷彿とさせる動き。と言うか一緒に同じ威嚇のポーズをとる猫がミサゴの横に居た、いつの間に?
 咄嗟に目線がそちらの猫に滑る、目つきの悪いキジトラと、目が大きいちょび髭の三毛猫だった。
「一生外しませんから!」
 いやそっちじゃないこっちだとミサゴから反応が返って来た。
「それは何より、大事にしてくださいね?」
 にっこり笑っておいた。
 何だか後ろで胸を押さえて悶えてるのがいっぱい居た。
 胸やけかな? 医者でも進めるべきだろうか?


 その後、お手付き後は翡翠にアクセサリーを装着させてもらうのが流行ったのは言うまでも無い。

 追申
 猫の名前、目つきの悪い方、ちんぴらさん。
 ちょび髭、部長さん。
 共に接客担当の看板猫。さんを含め無いと返事しません。
 因みに、このくりぬき翡翠の指輪のお値段は国内産のそこそこで市販価格は一個10万程、多色系なのでレアリティ上がって相場は多分もっと上、材料費的には一話のアレみたいに毎日ミサゴが浜辺で拾ってきてたアレですので、ミサゴの時給と加工賃考えなければお土産として儲けが割と美味しいブツ。帳簿的には例の白濁液の一時買取価格で相殺、ヤタちゃんは抜け目ないのでタダ働きはしません。
 ミサゴにとってこの指輪自体はかなり見覚えのある物だけど、翡翠に直で送られて装着されたという行動でプライスレス。ミサゴ的には捨てられないお祭りの玩具の指輪みたいなお話、原産地なので価値観がバグってます。
 良かったら感想とかとかお気に入り登録とかハート連打とか、ご協力お願いします
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移した俺のスキルが【マスター◯―ション】だった件 (新版)

スイーツ阿修羅
ファンタジー
「オ◯ニーのフィニッシュ後、10分間のあいだ。ステータス上昇し、賢者となる」  こんな恥ずかしいスキルを持ってるだなんて、誰にも知られる訳にはいけない!  クラスメイトがボスと戦ってる最中に、オ○ニーなんて恥ずかしくてできない!    主人公ーー万波行宗は、羞恥心のあまり、クラスメイトに自分のスキルを隠そうとするが……  クラスメイトがピンチに陥り、彼はついに恥を捨て戦う決意をする。  恋愛✕ギャグ✕下ネタ✕異世界✕伏線✕バトル✕冒険✕衝撃展開✕シリアス展開 ★★★★★  カクヨム、ハーメルンにて旧版を配信中!  これはアルファポリスの小説賞用に書き直した(新版)です。

神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。 賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!? フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。 タイトル変えました。 旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~ ※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。 あまりシリアスにするつもりもありません。 またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。 感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。 よろしくお願いします。 想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。 ※カクヨムさんでも連載はじめました。

異世界転移したら~彼女の"王位争い"を手助けすることになった件~最強スキル《精霊使い》を駆使して無双します~

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ とある大陸にあるローレスト王国 剣術や魔法、そして軍事力にも長けており隙の無い王国として知られていた。 だが王太子の座が決まっておらず、国王の子供たちが次々と勢力を広げていき王位を争っていた。 そんな中、主人公である『タツキ』は異世界に転移してしまう。 「俺は確か家に帰ってたはずなんだけど......ここどこだ?」 タツキは元々理系大学の工学部にいた普通の大学生だが、異世界では《精霊使い》という最強スキルに恵まれる。 異世界に転移してからタツキは冒険者になり、優雅に暮らしていくはずだったが...... ローレスト王国の第三王女である『ソフィア』に異世界転移してから色々助けてもらったので、彼女の"王位争い"を手助けする事にしました。

処理中です...