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第四章

36 記憶を閉じて ※TS男子化×男

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 私がこのお屋敷に来てもう一月経っていた。
毎日が恙無く過ぎて行く。
唯一つ問題があるとすれば、私自身だ。
レイジェス様とこんなに離れているのは初めてで、体が疼く。
幼い私がこんな事を思っていて凄く恥ずかしいんだけど、レイジェス様としていた事が気持ち良すぎて、気が付かない内に快感に慣らされていたっぽい。
こんな展開が待っているとは……快感恐るべしだよ~~。

 でも悲しいかな、この世界のレイジェス様は4歳だし、えろい事は当然だめですよねー。仕方無いから自分で自分を慰めるかぁ……。
私は今、公爵様の書斎に一人でいる。ここのリラックスチェアがふかふかし過ぎて私のお気に入りになってしまったから、ここには良く来る。で、このリラックスチェアでお昼寝とかもしちゃう。
この椅子はあれだ、『人をダメにする椅子』だと思う。
へな~ってなってぐぅぐぅ寝れる。
このお気に入りの椅子の肘掛に両脚を掛けてお股を開いた私はそっと手をショーツの中に滑らせた。

 正直、一人で致したのは今までに二回しかない。
一回目は、レイジェス様に自慰を見せてと迫って、見せる代わりに見せろと言われて、見せた。
二回目は男子化して監禁されていた時に、ユリウス様に弄られて出したくなって我慢出来ずに自分で弄って出した。
上手く出来るかどうか分からないけどやってみよっと。
ショーツの中に手を入れると少しぬるっとしていた。
一体私は何を考えていたのか? ……何も考えて無かったのにお股が濡れているとはどういう事なんだっ!
いかんいかん、さっさと気持ち良くなって達しよう! ……それには余計な事を考えないのが一番良い。
集中集中……。 何に? ……あれだ! 私には『おかず』が必要だ!
取り合えずレイジェス様の××××な所や××××なシーンや×××××な所を妄想してみた。……いかん、恥ずかしすぎる!
色々妄想して照れた。
女の子で達するのが難しいかも? と考えた私は、神呪で男子化した。

「男の子なら擦れば出ちゃうもんね~」

 私はまた両脚を椅子の肘掛に乗せてお股の橘を擦り始めた。
目を瞑って自分の橘に神経を集中させていると顔の辺りにふぅ~っと風が吹いた。
え? と思って目を開くと公爵様が目の前にたっていた。

「き、君は一人で何ていうことをやってるんだ……!? それに、何故橘が付いている? 君は男の子だったのか!?」
「公爵様、ごめんなさい、今途中なので達してからでいいですか?」
「はぁああ!? 私に君の痴態を見ていろと言うのか?」
「目を逸らしてくれてて構わないですし、お部屋から出てもいいですよ?」
「見ていてもいいのか?」
「ん~……」

 いつもアリアチャンネルで数多の神々にえろい所を見られてしまっている私は感覚が麻痺してしまったのかも知れない。

「見ていても構わないですけど、……触らないでね? あと、ミドルキュア、途中で自分に掛けて下さいね」
「……分かった」

 公爵様は壁際に置いてあった小さな丸椅子を持って来て私の目の前に座った。
私はまた目を瞑って橘を擦り始めた。亀頭を親指で円を描くようにくちゅくちゅと撫で回すと吐息が漏れた。

「ふぁっ、んんっ」

 先から液が滴って茎に垂れて行く。その液で滑りが良くなった茎をこしこしと上下に擦りあげて段々気持ち良くなってきた。

「うぅ……っ」

 レイジェス様の低い声が聞こえて、思わず目を見開いてしまった。
そこには紅潮した顔の公爵様が自分の一物を扱いていた。レイジェス様の声だと思ったそれは公爵様の喘ぎ声だった。
私の視線に気付いた公爵様が口を開いた。

「私を見るな!」

 ええっ? 人のを見ておいて自分は見るなとか、おかしくないですか?
私がそう言われても見ていたせいか、公爵様は前のめりに俯いてしまった。おかげで私の股間に荒い息が当たる位、公爵様の顔がそこに近くなってしまった。
咥えられていないのに視覚的には咥えられている様に見えている。
顔を俯いて隠してしまうとその姿はレイジェス様を彷彿とさせた。骨格が似ているからだと思うけど、あれを致す時のレイジェス様にそっくりだった。
途端に自分のそれは極みに向かって感覚が走り出した。

「あっ、あっ、出ちゃう、でちゃぅうう!」

 その瞬間だった、私のそこをぬるぬるとした生暖かい物が包んで、私はそこに射精した。驚いて目を見開くと、それは公爵様の口の中だった事が分かった。
公爵様は私のそれを口に含んだまま自分も達して、その液が出る瞬間立ち上がり私にかけた。

「フェリシアン……!?」
「ああ~気持ち良かった……。つい君にかけたくなって、やってしまった」
「ついじゃないですよ! 酷いです! 触らないって言ったのに!」
「すまんすまん」

『アクアウォッシュ』

 公爵様は悪びれた風も無く、アクアウォッシュで自分と私を洗浄した。

「しかし、君が男の子だったとは……」
「わたくしは男の子じゃないです! っていうか、わたくしこそ公爵様が幼女だけじゃなくて、男もいける男色家だなんて知ってびっくりですよ!」
「は? 何を言ってるんだ、私は男色家ではない」
「え、だってさっきわたくしの橘を口に……」
「あれは……何で出来たんだろうな? 男の物を口に入れるなど初めてしたぞ。まぁ物が付いていようが付いて無かろうが君に変わりは無いからな」

 何だかレイジェス様みたいな事を言っている。

「まぁ、これで私達は恋人同士だな!」

 公爵様が満面の笑みでそう言うけど、そんなわけない!

「どうしてそうなるの!?」
「二人で厭らしい事をしたら、それはもう恋人同士だろう?」
「私が自慰していた所に貴方が来て私のを咥えただけじゃないですか……。合意も何も無いですよ! どこが恋人同士ですか……!?」

 公爵様は眉間に皺を寄せた。

「子供の君を丸め込んで私の物にしようとしたが、やっぱり無理か~。君は年齢の割りに賢すぎる」
「フェリシアンは油断も隙もないですね、まったく!」

 私達二人は声を出して笑った。
私が笑っていると公爵様は座っていた丸椅子を私に近づけて座りなおした。
二人の距離が縮まって、肘掛に置いていた自分の手が大きな手に包まれた。
私の笑いはいつの間にか消えていた。
私を見つめる澄んだ青い瞳。
私は吸い込まれそうになって無意識に体が前に傾いた。公爵様の右手はまだ私の手を握っている。
私がその手を気にして見ていると今度は左手を私の頬に伸ばした。親指の先で上下に優しく頬を撫で回す。

「……すべすべして触り心地が良いな」
「言い方が変態っぽいですよ?」
「変態と、私の事を言う割りに逃げないんだな……」
「……」

 公爵様が私に顔を近づけて唇同士が軽く触れた。
私の気持を探る様にもう一度唇が重ねられ、私は唇を開いて公爵様の舌を受け入れた。

「……!?」

 公爵様は驚いて私から唇を離した。

「どうしてそんなに驚いた顔をするの?」
「……君が、私の舌を受け入れたから……」
「……受け入れたわけじゃないわ!」
「じゃあ何故? 君は唯一人の愛する人を大事にすると言ってなかったか? もしかして……私に心を寄せてくれたのか!?」
「違うわ……!!」

 私の唯一人の人はレイジェス様、大好き。
……なのに、どうして? 最近公爵様の事をよく考える。
この感情は好きってわけじゃない、絶対違う。
何度も否定するけど、じゃあこの気持は何なのか? と考えてみても思い当たる言葉が浮かばない。
そんな中途半端な気持なのに、私はキスする事を許してしまった。
レイジェス様のお父様なのに、橘を咥えられて達した挙句、キスまでしてしまった。
許されないよ、こんな事。
馬鹿だ、何やってるんだろう……? こんな状態じゃ元の時代に戻っても、レイジェス様に顔向け出来ないよ……。
考えていたらドツボに嵌って涙が出て来た。

「……アリア?」
「……許されない。こんな風にレイジェス様のお父様である公爵様と……キスだけじゃなく、自慰を見せた上、あんな事まで……」
「君は何も悪く無い、悪いのはレイジェスと私だ」

 どうしてそうなるのか? 私が悪いのに……意味が分からなかった。

「……どうして?」
「君に快感を教えたのはレイジェスだろ? 奴が教えなきゃ君は何も知らなかったはずだ。一人で致してたのは体が寂しくなったからだろう? 教えるのが早すぎたんだよ……。それに、君の寂しさに私は付け込んでいる、卑怯で最悪な男だ。だから君が罪悪感を感じる事も泣く必要も無い」
「だって……わたくしは……」
「今あった事は忘れなさい、じゃないと……君は罪悪感で押し潰される。そのままじゃ……レイジェスとは向き合えないだろう?」
「……」

 その通りだった。
今このままレイジェス様の所に戻っても、以前のままの私ではいられない。
一緒にはいられない……。

「でも、忘れろって言われても……忘れられないよ! 私が悪いの! レイジェス様も公爵様も悪くなんて無い! 私が……愚かだから! ……馬鹿だから、自分が悪いの!」

 公爵様は動揺している私の両肩をがっちりと掴んだ。

「何度も言うが……君は悪くない。……アリア、私の瞳を見てごらん?」

 真っ直ぐに私を見つめる青い瞳。

『いいかい、よくお聞き。君と私の間には何も無かった。後悔する様な事も罪悪感を感じる事も……何も無かった』
『私と公爵様の間には……何も無かった……?』
『ああ、そうだ。何も無い。ただ、君と楽しく遊んで過ごした、それだけだ』
『わたくしと楽しく遊んで過ごした……ただそれだけ?』
『ああ、君は何も悪い事などしていない』

 公爵様の声が私の頭の中で朦朧と響いた。
大きな手が私の瞼を閉じてそのまま乗せられている。
私は意識が遠くなって、公爵様の声が幽かに何か言っているのが聞こえた。

『……ているよ……アリア』





 気が付くと私はリラックスチェアにだらしない格好で寝ていた。
ふと見ると、公爵様は机で絵を描いている。
私はあくびをひとつした。

「ふぁあああ~」

 両腕を大きく上に伸ばして、体ごとぴーんと伸ばす。

「ああ、起きたのか」
「寝ちゃったみたいですいません」
「君の寝顔を描くのは楽しかったよ」
「ええ? わたくしアバヤを着てるのに寝顔なんて見えないでしょ?」
「私は想像力が豊かだからね」

 私が公爵様の描いた絵を確認しに行くとくすくす笑われた。
そこには布の塊りな私がリラックスチェアにだらしなく伸びていた。

「ぱっと見ると何だか分からないよね?」

 と言ってくっくっと笑う。

「笑うなんて酷いです、フェリシアン! ……あっ! 申し訳ございません公爵様! どうしてわたくし公爵様のお名前を呼び捨てにしたのかしら……?」
「君に呼び捨てにされるのは凄く嬉しいな、そのまま『フェリシアン』と呼んでくれて構わないよ? いや、……そう呼んで欲しいな」
「……いいの?」
「ああ」
「フェリシアン、何だか不思議……公爵様なのに、呼び捨てにしてはいけない方なのに……呼び慣れた様に呼びやすい気がするわ? 変なの?」
「もう夕食の時間だから食堂に行きなさい、私はここを片付けてから行くから、先に行きなさい」
「は~い」

 私がドアを開いて行こうとすると、公爵様は私を呼び止めた。
私は振り向いて公爵様を見た。
書斎机の前に立ち、背後にある窓の外の風景は夕焼けが闇に包まれつつあった。
少し薄暗くなった書斎で公爵様は少し悲しそうな顔をしている様に見えた。

「アリア、君が私の事を忘れてしまっても、私はずっと君の事を忘れない」
「……?」
「いや、何でもない。さぁ、早くお行き」
「フェリシアンもすぐ来てね?」
「ああ」

 私はそのまま食堂へ行った。

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