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第三章

11事後裁定

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眠っていると口の中に生なましい感触があった。それは舌で、口の中を蠢くように這いずっている。レイジェス様? あれ? 戻ってきたの? あ、でもさっきの唇の感触はレンブラント様の物だった。この舌もレイジェス様の物じゃないのかもしれない、浅い眠りだった私は重い瞼を開いた。
目の前にいたのはレイジェス様だった。

「気持ちよく寝ている所悪いが、リアに聞きたいことがある」

 レイジェス様に言われて辺りを見る。ここは北の棟、秋桜の間。私とレイジェス様の部屋だ。寝室の応接セットの個人椅子にレンブラント様とユリウス様が座っている。アーリン、セバスはレイジェス様の後ろに立っている
それでわかった、日中の件でお話するのか。

 時計をみると夕の4の刻だった。
私は欠伸をした。まだ眠くて頭がすっきりしていない、レイジェス様が抱き上げて応接セットの長椅子に座り私を膝にのせる、心地良くてうとうとする。

「リア、君はレンブラントに何をされた?」

 そう聞かれてレンブラント様を見る。私から目を逸らすレンブラント様。

「ここに本人がいるのだから、わざわざわたくしを起こして聞かなくても良いかと思うのですが」
「レンブラントが話さない」

 レイジェス様は渋い顔をして言った。

「ユリウスが君のドレスに手を入れていたと証言している。それだけか?」

 レイジェス様が私に確認する。

「わたくし……最初寝ていたのです、だからあまりよく分からなくて……唇に感触がありました。レイジェス様かと思って目が覚めたので、それは覚えています」
「舌は入っていたのか?」

 レイジェス様が私の頬を触る。

「入っていませんでした」
「それから、ドレスの上から股をなぞられて、その後はユリウス様のおっしゃる通りドレスの中に手を入れられて、ショーツの上からお尻をまさぐられました」

 そう言うと何故かユリウス様が少し赤くなっていた。

「アーリンは花摘みだったのだな?」
「申し訳ございません!!」

 アーリンが目一杯頭を下げて謝る。

「いや、いい、アランもこれに付けることにした。護衛が一人で足りないのは私も分かっている」
「で、レンブラント、私はアリアを連れて来いなどと言っていない。どこに連れて行く気だった?」
「それは……その……」

 レンブラント様がはっきりしない。
ユリウス様がそれを見てイライラする。

「はっきり言え! お前はアリア様に魅了されて懸想してるんだろうが! そのお体をどうにかしたいと企んだのだろう!?」
「落ち着け、ユリウス」
「これが落ち着けますか? こいつは私の妹の蜜花を散らしたのですよ!? その上、アリア様の蜜花まで散らす気かっ!? この……ろくでなしめっ!」
「はっ?」

 レイジェス様が驚いている。レンブラント様がそこにいる全員から顔を逸らす。

「婚約者がある身でありながら、妹に言い寄り、蜜花を奪ってその挙句逃げて、妹かヒューイットのどちらも選べず、アリア様に走った。とんでもない男です!」

 ユリウス様は立ち上がって力説した。
私はレンブラント様がクロエ様と関係があったことに衝撃を受けた。
二人がそんな仲にまったく見えなかったからだ。
そして私は疑問に思った。

「レンブラント様はヒューイット様のことをお好きだと思ってました……違うのですか?」

 私が言うとレンブラント様が怒ったように言った。

「今の私がお慕いしてるのはあなたです!! アリア様!!」

 私は目を丸くした。そして、どうしたものかとレイジェス様を見る。

「そんな状態であれば……ヒューイットと仲直りなど無理であろうが。何故婚約を解消しない?」

 レンブラント様ははははと乾いた笑いをして言った。

「一体婚約解消の違約金にいくらかかるとお思いですか? 8000万ギルですよ? 我が子爵家ではそんな大金出せません」

 婚約解消するのにそんなにお金がかかるんだ? じゃレイジェス様もお金を払ったって事だよね? とレイジェス様を見ているとセバスが耳元で囁いた。

「旦那様はエメラダ様に3億ギルの違約金を支払われました」

 はっ!? そんなに?

「そんなにお金を支払わなければいけないなんて、婚約を躊躇いますね」

 と私が言うとアーリンが言った。

「姫様、不思議と恋人達はうまくいっている時ほど自分達は別れない、永遠の関係だと思い込みます、だから婚約する時は別れる事など全く考えていないのですよ」
「確かにそうですね。わたくしもレイジェス様と別れる事など考えてもいないですわ」

 と言うとレイジェス様の機嫌が良くなった。

「レイジェス様はレンブラント様をどうするおつもりなのですか?」
「う~ん今までの付き合いもあるからな? 殺すつもりは無かったがリアに危害を加えるなら消してしまった方がいい」

 と真顔で言うから怖い。

「でも、わたくし、少し布の上から触られただけで危害は加えられてません」

 そう言うとユリウス様が怒った。

「それは私が、あなたが攫われる所に居合わせたからですよ! 私がいなかったらアリア様は攫われてその蜜花を散らしていたのかも知れないのですよ? 優しいのも大概にしてください!」

 レイジェス様がぎゅっと私を抱きしめた。

「うむ、ユリウスには感謝している」
「ヒューイット様はレンブラント様がわたくしに魅了されているって知らないのですよね?」

 とレンブラント様に聞くと

「たぶん、私がヒューイットをまだ愛してると思っているはずです」

 レンブラント様がそう言ったあと、私はレンブラント様には言いにくい事を言う。

「ヒューイット様も、レンブラント様を愛していないように思うのです。どちらかというとレイジェス様に懸想しているように思うのですが? 何故ヒューイット様は婚約を解消されないのでしょうか?」
「ヒューイットも私と同じで婚約解消の違約金が払えないのでしょう」
「レイジェス様の事がお好きなのは誰の目から見ても明白なのに、何故レンブラント様を愛してる振りをするのです? 凄く疑問です」

 と私が言うとレンブラント様は自虐的にフッと鼻で笑った。

「師長様に愛を告げれば、師長様はヒューイットを遠ざけますからね。愛の告白をしても断られると分かってるんです。私と繋がっていればこうして師長様のお城にも誘っていただけるわけですから……私は利用されてるだけに過ぎません」
「悲しくて辛い恋愛ね」

 と私は言った。レイジェス様は私を見た。

「リア、情けを掛けようとしているな?」

 私はユリウス様を見た。ユリウス様もレンブラント様に良い印象はない。
クロエ様のことがあるからだろう。

「アリア様、自分を攫おうとした男ですよ? よく考えてください」

 そうユリウス様が言う。この裁定を私がする流れになっているのは気が重い。
私は言った。

「私には近寄らないで欲しいけど、それ以外は今まで通りでいいのでは?」

 レイジェス様が怒る。

「リアを攫おうとしたのだぞ?」
「ええ、だから近づけないで欲しいと思ってます。アランとアーリンが私の護衛に付くなら、それは大丈夫かと思います」
「今まで通りでは罰にならない! アリア様、考え直して下さい」

 ユリウス様が声を荒げて言った。

「十分な罰じゃないですか? だって、レンブラント様はわたくしの事が好きなんでしょ?」

 私はレンブラント様に微笑んだ。
レンブラント様は光を見つけたように私に微笑む。

「だけど、愛してもいないヒューイット様と婚約を続けてその内結婚するんでしょ? 愛する者がいるのに、別の者と結婚なんて辛いんじゃなくて? 十分すぎる罰よ」

 と私は言った。
レンブラント様はそれを聞いて地獄に落とされたように絶望した顔になった。
レイジェス様は私の首筋にキスをした。レンブラント様に見せつけるように。

「ふむ、こんな姿も黙って見なければいけないのは辛いかもな?」

 とレイジェス様はご満悦だ。
ユリウス様は渋々ながら納得したようだった。

「ヒューイット様には、レンブラント様がわたくしの事を愛しているとは絶対知られないようにして欲しいです。わたくしは今でも憎まれている気がするので」

 ユリウス様が頷いて言う。

「確かに、ヒューイットがアリア様を見る目は憎しみが篭っていた」
「では、そのことはヒューイットに悟られぬようにし、今までと変らず過ごす。それでいいな? レンブラント」

 レイジェス様がレンブラント様に確認した。
レンブラント様は頷いてから頭を垂れた。私達が話し合っていると時刻は夜の6の刻を過ぎていた。



 私とレイジェス様は小さいほうのお風呂にいた。クッションシートの床マットがある西の棟のお風呂だ。珍しく私がレイジェス様の体を洗っている。床マットがあるので、レイジェス様に横になってもらい、手と体を使って洗っている。

「リアに洗って貰うのは久々だ」
「洗わせて? って言ってもいつも時間が掛かるからいい、っておっしゃってるのはレイジェス様ですよ?」

 私は股でレイジェス様の腕を挟んで洗いながらお喋りしている。

「リアはすべすべだな。洗ってもらっていて凄く気持ちがいい」
「うふふ、お湯がいいのでしょうね? 毎日入っていますから」
「まぁ、リアは前からすべすべだがな?」

 私は反対の腕に歩いていき股に挟んで腰を動かして洗う。レイジェス様と目が合ったので軽くちゅっとキスをした。洗っている最中の右手で私のお股を弄り始めるレイジェス様。

「そんな風にすると洗えないじゃないですか」

 私はその手を止めてレイジェス様の足首まで歩いていき足首を股に挟んで洗いだす。石鹸の泡が足りなくなってきたので近くに置いておいた石鹸を手に擦り付けて泡立てる。そして股やレイジェス様の足に泡を付けて洗い進める。反対の足も足首から股に挟んで同じように洗う。

「しかし、リアの裁定は本当にあれで良かったのか? と私は思う。優しすぎないかと」

 私はレイジェス様の胸の辺りを跨いで立った。きっと下からは私のあそこは丸見えだと思う。そして石鹸で手を泡立てて股に付けてからレイジェス様の胸に腰を下ろす。股でレイジェス様の胸を腰を動かしながら洗う。

「知っている人でなければ、もっと冷たい裁定になったかも知れません。以前から知っているだけに、冷たい裁定が出来なかったというのもあります。でも、優しすぎるなんて思ってないです」

 私は胸からおなか、レイジェス様の物の上まで洗い進める。

「だって、レイジェス様がわたくしの事を凄く好きだとして、他の者と婚約したり、結婚したいと思います?」

レイジェス様は即答した。

「まったく思わない。リアしかいらない。他の女など、どうでもいい」

 私がレイジェス様の物の上で洗う為に腰を動かしているとそれは段々むくりと起き上がってきた。

「きっと、レンブラント様もレイジェス様と同じように考えてます。わたくしに触れたくても触れられず、どうでもいい女と……言っては失礼ですが……結婚しなければいけないのです。自分の身に置き換えてみてください? どうですか?」
「……地獄だな」

 私はふふっと笑った。レイジェス様の物が私の下で勢いよく跳ね上がる。
それに驚いてびくんとなる私。

「きゃ!」
「うっ!」

 レイジェス様も同じように私が動いてびくんとしている。

「リアが腰を動かしすぎる」
「動かした方が気持ちが良いかと思ったのですがダメでした?」

 と聞くと顔を赤らめている。

「いや、ダメじゃない、むしろ良い」
「後ろを洗いますからうつ伏せになってくださいませ」
「え? もう前は終わりなのか? もっとして欲しかったが……」
「それはあとで寝台で、ではダメですか?」
「いや、全然ダメじゃない」

 レイジェス様はうつ伏せになり、私はまた同じように泡を立てて股につけ、腕から股に挟んで洗っていく。反対の腕、両足も、そしてレイジェス様のお尻に顔を埋めて匂いを嗅いだ。

「こら、リア! 何をやっている!」
「レイジェス様のお尻が大好きなのです。こうして匂いを嗅いでみたかったのです」
「リアは変っているな?」

私はレイジェス様のお尻の肉を割れ目から両手で広げ、その綺麗な菊を見た。そして舌先でつんつんする。

「こら! リア! そこは汚い! やめなさい!」
「洗っているんだから汚くないですよ?」

 私は菊を舐めながらレイジェス様に聞いた。

「もし、わたくしがレイジェス様のここを欲しいと言ったらどうしますか?」
「欲しいって……?」
「わたくしの橘を入れたいということですよ」

 レイジェス様は背中に乗っている私を振り返って信じられないようなものを見るような目で見た。

「お嫌ですか?」
「い、いや、考えた事が無かったのでわからない。確かに、リアは性別を変えれるのだから、男になって愛したいとも思うのかも知れんな。けれど、私の中のリアは女だし……たしかに両性体の橘付きのリアも愛したが……自分が愛されるのが……正直、想像できない。もしするとしたら……心の準備が必要だ」

 と真面目に答えてくれるレイジェス様。

「しかし……私の菊を使うのなら、リアの菊も使わせろ。それなら……許してもいい」

 そこで私は疑問に思った。蜜花は法律に触れる犯罪だ。では菊は?

「レイジェス様? わたくし疑問に思ったことがございます。もしかして菊は法律に触れないのですか?」

 と聞くとレイジェス様が鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてから頷いた。

「そういえば、菊に関しては未成年だからダメとか聞いたこともないな」
「では、菊でならレイジェス様とひとつになれるのですね?」

 私は喜んだ。
けれどレイジェス様は険しい顔で私を見つめて言った。

「それはそうかも知れないが……本気で言っているのか?」

 私は目をぱちぱちする。

「本気ですけど、どうしてそんな険しいお顔をなさるのです?」
「いや、リア、君は今どちらの菊での話をしている? 私か? リアか?」
「え? わたくしの菊で考えていましたけど……」
「無理だろう」

 とレイジェス様は言う。

「どうしてですか?」

レイジェス様が恥ずかしそうに言った。

「私の、……あれが大き過ぎてリアの菊に入らないと思う」

 あ、そうだった。レイジェス様のは太くて大きかった。

「逆なら入るだろうな? 私の菊にリアの橘を入れる。これだったら私もさほど痛くはない、恥ずかしいがな」

 むぅ、それって私の橘が小さいと言いたいのか? 確かに小さいけど。

「わたくしの橘だって、きっと入れたら痛くてひぃひぃ言いますよ? レイジェス様は!」

 むきになって言ってみた。

「あ、いや、すまぬ。そういうつもりではなかった」
「次、レイジェス様の番ですからね? 私の体、洗ってください?」

 私はごろんと横になった。

「手じゃなくて、ちゃんと体を使ってくださいませ?」

 と拗ねた。

「う? こんな小さい体を私の体で洗えと?」
「ええ、お股でお願いしますね?」

 と私は微笑んだ。レイジェス様は自分の股に石鹸を泡立てて私の体を洗った。
面積が小さいからすぐ終わってしまった。つまんないの。
初めてレイジェス様のお股で洗って貰った感想は意外に良かった。玉袋が泡でつるりと滑って気持ちがいいし、竿は柔らかい時はあたるとふにゃっとして気持ちいい。硬くなると引っかかるのが難ではある。
体を湯で流して貰ったあと頭をがしがし洗われた。リンスを持って来てなかったのできしきしする。頭を湯で流した後お風呂に一緒に入った。

「ふぅ~、いい湯ですねぇ? レイジェス様」
「うむ、いい湯だ。リアは攫われそうになったのに随分呑気だなぁ。こちらの気が抜ける」
「連れて行かれる時にね?」
「うん?」
「レイジェス様にお連れしろ! って言われたとレンブラント様が言うのですよ。わたくしそれが本当なのかどうなのか? よく分からなくて、あれはちょっと怖かったです」

 レイジェス様は私を抱き上げて膝に乗せた。

「私は他人にリアを呼ばせない。呼ぶ位なら自分で行く、だから他人が、私が呼んだと言うならそれは嘘だ。信じるな、分かったな?」

 レイジェス様が私の瞳をじっと見つめるので私は頷いた。
レイジェス様はいつも私を心配してくれている、レイジェス様とひとつになりたい。
蜜花はダメでも菊でひとつになれるなら、少しくらい痛い思いをしてもいいのではないかと思う。少しくらい? いや、レイジェス様の物の大きさを考えると、裂けちゃうかも知れない……。痛くない菊の愛し方ってないのかな? と考えてみてアランを思い出した。
男色ってそもそも菊を使うじゃない!
じゃ、アランなら痛くない菊の愛し方を知ってるかもしれない。
そうだ、アランに聞こう!

「ん?」
「どうしました? レイジェス様」
「なんだか、リアが良からぬ事を企んでいるような気がした」

 え? 良い事なら考えてましたけど、良からぬ事なんて考えてなかったですよ?

「気のせいですよ~! やだぁ~!」

私はレイジェス様の肩をぽんぽんと叩いた。

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