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第二章

37閑話 北の飛び地の視察 前編

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 今日はレイジェス様はいない。
終春節で行き来しやすいように領地にプレイスマークを付けに行く、とシリルに乗って行ってしまった。領地のお城までシリルに乗っても二日ほどかかるそうで、帰りはゲートを使うから早く帰れると言っていたけど、いなくて寂しい。
しかも寝室が新しくなって広いからぽつんと一人でいる。

 寝ようと思っても眠れない。
いつもレイジェス様に抱きしめられて眠っていたから人の温もりがあって当たり前みたいになっていた。
眠れないので私は食堂に行くとセバスが部屋着でお茶を飲んでいた。

「おや、どうしました? 眠れませんか?」

 私は頷く。

「なんだか一人きりで落ち着かなくて、ほっとしたくてミルクティを飲みに」
「では入れましょうか」

 セバスは厨房からティーセットとお湯をトレーに乗せて持ってきた。
そして食堂のテーブルでお茶を入れる。すうっと私の前にティーカップが差し出された。

「姫様には、熱いと思いますから、少し時間を置いた方が良いかと思います」
「ええ、ありがとう」
「明日、旦那様が戻られましたら、すぐに北の飛び地の領地に視察に行くことになると思います」
「え? またいなくなってしまうのですか?」
「いえ、今回の北の領地の視察は姫様も一緒にという話でした」
「わたくしもですか?」

 私は少し驚いた。視察ってお仕事でしょ? いいのかな?
私が付いていって……。

「ええ、ですから明日は起きたら四日程度の旅行の準備をされていたら良いかと思います。旦那様が戻って来られましたらすぐ旅立つ事ができるでしょう」

 私は頷いた。ミルクティを飲んで、ふぅと一息付く。
椅子を降りるとセバスが私に近づいてきた。私が見上げるとセバスが言った。

「失礼ですが、姫様を抱き上げても良いでしょうか?」

 セバスはいつも私に確認を取ってから触れる。

「はい」

 セバスは私を抱き上げて微笑んだ。
眼鏡越しに優しい赤い瞳がきらきらと輝いている。
私は何か、言わなくてはと思いつつも何も言葉が浮かばなくて。黙って抱き上げられていた。するとセバスが子守唄を歌いだして、背中をぽんぽんとリズム良く優しく叩く。

 私はその心地よさにセバスの首に両腕を絡ませ、がっしりと抱きついた。
その間も子守唄は続いて背中をぽんぽんするのは止まらない。
私はだんだんうとうとし始め、ついには眠ってしまった。
眠った私をそのまま抱えてセバスは私を寝室につれていき、布団を捲ってそこにそっと置いた。室内履きのモカシンを脱がされて体を寝台にまっすぐにして寝かせられる。それから布団を掛けて、セバスは私のおでこに軽く口付けをした。

「お休みなさいませ、姫様。良い夢を……」

そう言って寝室を出て行った。



 目覚めると9の刻だった。
昨日眠るのが遅かったから起きるのが遅くなってしまった。
私は昨日の事を思い出し自分のおでこを触る。寝台に寝かされた時に眠りが浅くなってセバスが私のおでこに口付けをした気がしたからだ。
まぁ、おでこだし、唇じゃないし、外国人が挨拶でほっぺにちゅってするような物だよね? きっと。
深い意味なんてないない。と思いつつもレイジェス様の言葉が頭を過ぎった。

『セバスは君に魅了されているんだからな?』

 言葉と一緒にレイジェス様の心配して怒った怖い顔も思い出してしまった。
私は頭を振った。別に襲われた訳でも、愛の告白をされたわけでもない。
今色々考えてもどうしようもないじゃない。何かあってから悩んだほうが効率的だ。
私は起きて寝巻きのまま旅行の準備をしようと思ったが旅行鞄がどこにあるか分からない。

 結局インターホンで着替えと旅行の準備をしたいというと、セバスが出てリリーを部屋に寄越すと言った。
インターホン越しのセバスの声はいつもと変らなくて、私は自分が色々考えていたことが馬鹿らしくなってちょっと拍子抜けした。暫くしてリリーが来て着替えから先に致しましょうと速攻で着替えさせえられた。そして鞄を別の部屋から持って来てこれに詰めて下さいと言われる。
結構大きい鞄が二つ出された。

「二つも?」
「四日程分と言われましたよね? ドレスだと嵩があるのでそれくらい必要かと」
「そうでしたね、ドレスって膨らみますものね」

 と私は言ったけど、これ空間収納にドレスだけ入れてしまえばいいように思う。
私はピラトール侯爵から貰ったうさちゃんを空間収納に入れた。

「姫様? 近しい人の前では良いのですが、空間収納はなるべく一般の方に見せないほうがよろしいのです」
「え? どうしてですの?」
「空間収納を使える方は少ないのです。便利なので、悪い人に見つかると攫われます! そして犯罪に利用されます。だから安全の為にも鞄で出し入れした方が良いです」
「知らなかったです……ありがとうリリー」
「初めて行く領地ですから、どのような方がいるかわかりませんからね」

 リリーは私の事を心配した。

「アーリンも行くのかしら?」

 リリーが私に聞くがそれは何も聞いてないからわからない。
荷物の準備ができた所で昼食に行きましょうとリリーに手を引かれた。
昼食を取っていると食堂のドアがバンと開かれてレイジェス様が現れた。私がそちらの方を見るとレイジェス様はつかつかと私の所に来て椅子から私を抱き上げてぎゅううううと痛いくらい抱きしめた。

「はぁ~リアの良い匂いがする」

そう言うレイジェス様にセレネは呆れて言った。

「姫様はまだお食事中ですよ? 旦那様」
「ん? あ、すまない、つい」

 私を椅子に座らせ傍に立っているレイジェス様。

「さぁ、食べなさい」

 まだ突っ立って私を見ている。この状態で食べろって、落ち着かないんですが。セレネはこめかみを押さえている。

「わたくし、もうお腹が一杯ですし、レイジェス様、お部屋に行きます?」

 レイジェス様は頷いて私を抱き上げてスタスタと部屋に行った。そして、私の部屋の旅行鞄二つを見て用意がいいなと言った。

「セバスに用意したらすぐ行けますよ ?って言われたので」
「うむ、行く前にリアを少し楽しみたい」

 私は寝台に座らせられた。目の前にレイジェス様の物がローブの上からでも膨らんでいるのが分かる。鍵を掛けてないんじゃ? と思ってるとレイジェス様がそれに気付いて指をすっと動かすと私の部屋とレイジェス様の部屋のドアが同時にカチッと音を立てた。

「今のは?」
「魔法で鍵をかけた。ドアまで行く時間が惜しい」
「そんな事もできるのですね」
「これは私のスキルを応用した魔法だから私以外の者には出来ないかもしれん」
「へ~」

 レイジェス様は跪いて私の室内履きを脱がして、揃えて寝台の下に置いた。そして寝台に座っている私に口付けをする。レイジェス様の物の辺りの洋服が盛り上がるのが分かり、私はそこをさする。

「ここから物を出せる場所があればいいのに」

 と呟くと、そんな洋服は想像ができないという。今度デザインして着衣の神呪で着せてあげようかと思った。レイジェス様は面倒臭そうにローブを脱いだ。そして下着も脱いで寝台に上る。何故か私は脱がされない。

「わたくしはいいのですか?」

 と聞くと、良いと言う。私がドレスを着るのに側仕えに手伝って貰わなければいけないとレイジェス様は考えているのだと分かった。着衣の神呪を使えばあっという間なんだけど、まぁいいいか。
レイジェス様はドレスの裾から手を突っ込みショーツの紐をほどき始めて、私はそれをやり易いようにドレスの裾を捲し上げた。レイジェス様は脱がせたショーツを横にぽいと放る。そして私の太ももを閉じて股にその熱い物を挿入した。私の股でレイジェス様の物が動き出すとぬるぬるした感触が股や下腹に伝わる。

「今は、ぁあ、時間がないから、ふぅ、私だけ達してしまう……すまぬ」

 息も絶え絶えに目を閉じながら話すレイジェス様。
私はレイジェス様が早く達するように自分のドレスのスカート部分を除けてレイジェス様の物を弄る。指先にねっとりした液が纏わり付く。
丁寧に優しく弄るとレイジェス様はうっとりした顔をした。そして腰を早く動かすと、うっ、と言って白濁の液が私のドレスに飛び散った。レイジェス様はすぐさま私をアクアウォッシュした。

 力が抜けたレイジェス様はそのまま寝台にどたっと横になり、私の頭を撫でた。
私はまだ落ち着かないで立っているレイジェス様の物の先、亀頭から液がたらりと垂れるのを見て舌で舐め上げた。もう液が出ないか先を吸う。それからアクアウォッシュを掛けてあげた。

「リアと離れているのが辛かった」

そう言って私の頭を撫でた。レイジェス様は暫く目を閉じて休んだあと、よし、と立ち上がった。
レイジェス様はさっと服を着てインターホンからセバスにアーリンも連れて行くと言った。
レイジェス様は私の鞄をレイジェス様の空間収納に入れて私を抱き上げた。

「レイジェス様!」
「ん? どうした?」
「……わたくしショーツを履いていません」

 私は顔が真っ赤になった。それを見て笑う。

「ああ、そうだったな。私はこのままでもいいが」

 と意地悪い事を言う。なので私も意地悪く言う。

「このままの状態で何かあれば、わたくしの蜜花は散らされてしまうんですね。レイジェス様以外の人に」

 そう言うと慌てたようで、さっき放り投げたショーツを拾って手早く私に履かせた。そして玄関に行くとアーリンが待っていた。外に出ると大きな竜がいた。シリルより少し大きいか。

「この竜は?」

私が言うとアーリンが

「私の召喚獣の風竜で名前はフライ。竜種はワイバーンです」

と言った。アーリンは長距離移動の時はフライで行くと言った。アーリンと話しているとレイジェス様がシリルの鞍を一人用から一人半用に変えた。この一人半用の鞍は特注らしい。二人乗り用の鞍は既製品でもあるけれど子供と一緒に乗る一人半用の鞍はないそうだ。

 なんだか、私、レイジェス様に凄くお金を貢がせているような気がする。あの商会の建物だけで3億6000万ギルだし、部屋の家具とかも全部新しくなっていた。寝室の改築や家具でいくら掛かったんだろう……あとでセバスに聞こう。
レイジェス様がアーリンの荷物を空間収納に入れたあと私を先にシリルに乗せた。シリルの毛をなでなでする私。

『これ、こそばゆいぞ』

 シリルが牙を出して、にひひっと笑う。狼が笑うって変なの。
レイジェス様がシリルに乗って、私とレイジェス様を一緒に皮ベルトで纏めて留める。

「さぁ、行くぞ! アーリン、私について来い!」
「はっ!」

 シリルとフライは勢い良く飛び立った。
地上ではセバスとリリーが手を振っている。
ひゅーっと風を切って空を走るシリル。横を見ると竜に乗っているアーリンと目が合って、アーリンは私に手を振った。私も手を振る。
空を竜と飛ぶなんて、まるでファンタジーの世界にいるみたいだった。
レイジェス様を見上げるとレイジェス様は微笑んでいた。レイジェス様の私を支えている左手が抱きしめるようにぐっと力が入ったのが分かった。
ずっと空を駆けていると段々と夕日が暗闇に包まれてきた。

「あともう少しで今日泊まる屋敷に着く、そこも私の領地の屋敷だ。領地の屋敷はカントリーハウスとも呼ばれている」
「神殿長の領地を貰ったと言ってたうちの一つですか?」
「そうだ、そこからもっと北に行った所に視察をしに行く」
「はい」

 辺りが薄っすら暗くなって星が見えてきた時、地上に一際明るい場所があるのに気付いた。良く見ると大きなお屋敷だった。
そこの前庭にレイジェス様は降り立った。使用人が待ち構えている。
レイジェス様が皮ベルトを外して先に降りて、私を降ろそうとしていると後ろから声がした。

「お初にお目にかかります! 奥様!」

 執事らしき人がアーリンに声をかけて挨拶している。
アーリンはむっとして言った。

「私は奥様ではない!」

 執事は何故アーリンが怒っているのかわからず戸惑っている。
それを見てレイジェス様はくすりと笑っている。
レイジェス様は私を降ろしてからシリルを『入れ』と言って自分の影に入らせた。
そして執事に言った。

「夕食の準備は出来ているか? 私の妻は神饌でなければ食せない。用意してあるんだろうな?」

 執事はばつが悪そうに言った。

「トウミしか用意できませんでした」

トウミがあればいいじゃない、と私は思ったけれどレイジェス様は笑い始めた。

「くくくっはははは! 可笑しいな? ここはプリストン王国の中でも神への信奉厚い神殿長の屋敷だったというのに、神饌が1つしか用意できないだと? 冗談だよな?まぁいい、案内いたせ」
「はっ」

 食堂だと行って案内された所は王様の謁見の間を想像させるような造りで二つの王座があってその王座の前にテーブルが置かれて食事が置かれている。

「ささ、どうぞ奥様」

 とアーリンが引っ張って連れて行かれて、その王座の椅子に座らせられる。

「ささ、アルフォード公爵様も」

 レイジェス様も連れて行かれて座らせられた。私はレイジェス様に抱きかかえられたままなのでそのまま膝の上で抱きかかえられている。
執事がレイジェス様の左で跪いて、一段低い所に両脇に跪いている6人の使用人達に右手を上げて合図すると、綺麗な女の人達がぞろぞろと10名ほど入ってきた。
執事が言う。

「本日の宴に呼びました、踊り子達でございます。これから踊りをごらんに入れます」

 お行儀が悪いかな? と思った私はレイジェス様の膝に座りなおして、拍手をぱちぱちとした。
色っぽいお姉さん達が踊りだす。
レイジェス様は私を見て渋い顔をした。
アーリンがレイジェス様に小声で話しかける。

「アルフォード公爵様、私はこの位置にいるのがおこがましいのですが?」

 アーリンも渋い顔だ。

「面白いからそのままでいろ、他に席もないし食せるだけ食すが良い」

 とレイジェス様も小声で言う。アーリンが普通に食事をしていると、アーリンの右に控えていた使用人が言った。

「奥様、神饌以外も食べれるではありませんか!」

 使用人が怒っている。使用人は怒っちゃダメでしょ。
態度悪いなぁと思っていると、レイジェス様が小口切りにしたトウミを私の口に持ってきた。あ~んと口を開ける私の中に突っ込む。
もぐもぐ、むしゃむしゃ、うん、うちのトウミの方が美味しい。

 食べてると口の端からトウミの汁が垂れてレイジェス様がぺろっと舐めた。
使用人達だけでなく、踊り子さんにまでぎょっとして見られた。
踊り子さん達の衣装は胸を隠すブラと腰で履く生地の薄いスリット入りのスカート。胸の下からへそまで見える、ベリーダンスの衣装っぽいのを着ている。
曲もオリエンタルで、体をくねくねさせて、腰を振る。もうこれはベリーダンスと言い切っていいでしょう。

「踊りが格好良いですね。私もあんな風に踊ってみたいです」

 というとレイジェス様が眉に皺を寄せた。

「あの踊りがリアには格好良く見えるのか?」
「はい」

理解しかねる! という顔をレイジェス様はしていた。
レイジェス様が自分で食事を取りつつ、私にもトウミを食べさせているとさすがに左で控えて今も跪いている執事も怪しく思って私を見つめだした。
あんまり見るので私は微笑んだのだけど、顔を赤くして目を逸らされた。
ベリーダンスは終了して、次はポールダンスになった。ブラとショーツの女の人がポールを持って股を広げて見せたりする。踊りとしては微妙だった。
私はレイジェス様を見た。ポールダンスのお姉さんを見ているかと思ったら私を見てた。
そして私に頬ずりして聞く。

「この踊りはリア的にはどうなんだ? 格好いいのか?」
「もっとうまい人だったら格好良いかも知れませんが、踊り手さんが慣れてないように思います」

 と言うと、ふむ。と頷いた。
お股おっぴろげな踊り子さんを見て

「あられもない格好だな」

 レイジェス様に私は言った。

「仕方ないですよ、お仕事ですもん」

 アーリンは使用人にしきりに酒を勧められている。飲みませんよ、と断っているのに、しつこい使用人だ。ちなみに使用人は男の人でちょっといやらしい目でアーリンを見ている。
これ、放っておくと危ないのでは? まぁ、アーリンは腕が立つし、大丈夫か。

 レイジェス様は食事を終え、執事からお酒を注がれて飲んでいる。
トウミを食べてお腹が一杯になったせいか眠くなってきてレイジェス様の膝の上でくるっと向きを変えてレイジェス様と対面するように移動した。

 足が大また開きになるけど、裾がふわっと広がるドレスだから私が大股開きになってるのはレイジェス様しかわからない。
ぎゅっと抱きしめて寄りかかる。
ドレスの裾が乱れているのをレイジェス様が直してくれた。とうとう執事が気になって聞いた。

「アルフォード公爵様、先程から膝に乗せているその幼女様は?」
「これが私の嫁だ」
「はっ!? ではそちらに座っている女性は?」
「嫁の護衛騎士の女だが?」

 そう言ってくすりと笑う。

「騙したのですね!?」

 と執事が怒り出す。私はかなりうとうとしてきていた。

「こらこら、大きな声をだすな。リアが起きてしまうだろうが。騙していたと言うが、お前が先に勘違いしたのだぞ? まぁ、訂正しなかったのは悪かったがな? これだけの屋敷を管理する者だ、諜報の者くらい雇って情報を得ていると思っていた。王都ではそれが常識だ。使えぬ者はいらぬ、使える者になれ」

 執事ははっとしたように頭を下げた。

「申し訳ございませんでした!」
「風呂に入ろうと思っていたが、もう寝る。寝室はどこだ? 案内しろ」

 執事が先導して歩いた。
アーリンは使用人に膝を触られてぶっ叩いていた。

「貴様! 殺す!!」




 寝室に運び込まれた私は髪留めを外され、ドレスを脱がされた。うつ伏せにされて後ろのファスナーをすっとおろされる。そこで浅く目が覚めた。

「あれ? ここは……?」
「もう寝る、寝室だ」
「……ん」

 レイジェス様が、今日は自分だけしかしてないから君にしたかったのに、と拗ねていた。
でもごめんなさい。眠りが深くて起きれません。いつものように眠っている私を弄って我慢してね、と思いながらぐぅぐぅ寝た。
でも、その日はどろどろになった感覚もなくちゃんと朝まで眠れた。




 朝起きると装飾下着を着ていた。ということは致してないのか。
いつも致すと朝は裸のままだから。
レイジェス様はまだ寝ていて、私はその顔を両肘で頬杖を付いて見ていた。
眉間に皺が寄っている。あ、皺がなくなった。睫がぴくぴくしている、頬も。
今度は微笑んだ……。寝てるのに表情が忙しい、大の大人なんだけど、可愛らしく思えてきた。私はその頬にちゅっとしようと近づいて、ぎゅっと抱きしめられた。

「あっ!」
「捕まえた!」

 レイジェス様が笑う。

「びっくりしたぁ」

 心臓がどきどきしている。

「どれ」

 レイジェス様が装飾下着の下から胸をさわる。

「鼓動が早いな。薬を飲むか?」

 私は首を振って、じっとしていれば治ると言った。

「着替えの手伝いを呼ぶか?」

 言われて私は首を振る。

「レイジェス様、忘れてません? わたくし着衣の神呪が使えますから」
「あ、そうだったな。じゃあ、自分で着替えなさい」

 そう言って自分も着替えだす。私は神呪でレイジェス様と以前素材を取りに行った時の冒険服に着替えた。

「朝食を取ったらすぐ出発するつもりでいる」
「私は紅茶だけでいいです」
「ふむ」

 レイジェス様は着替え終わり私を抱き上げて寝室を出た。廊下を歩いていくが人がいない。
部屋には呼び鈴も無かったし。不便なお屋敷だ。

「誰か! おらぬか! 誰か!」

 レイジェス様が叫ぶと執事が現れた。まだ寝巻き姿だ。
主より起きるのが遅いとは……。
ここにセバスがいたら、怒って鞭で打つのではないだろうか?

「ど、どうされました?」
「どうされました? じゃない、なぜ使用人がおらぬ? 昨日はいたよな?」

 レイジェス様が言うと執事は私を見て言った。

「お子様がいる前では言えぬ理由でございます」

 レイジェス様は私を降ろしてちょっとあっちに行っていなさいと追い払う。
仕方が無いから、廊下から遠い階段まで行ってうろうろしていた。
執事としばらく話したあと、レイジェス様は激怒していた。

「この屋敷には改革が必要だな! 人員を全て入れ替える! お前もだ!!」

 酷く怒鳴り散らしている。どうやら朝食の用意はされてなかったようだ。
アーリンも起きて来て怒っている。
深夜に使用人に部屋に入られて襲われそうになったらしい。
切り捨てたと言っていた。
アーリンて怖い……。殺す! とか言ってたけど、まさか本当に殺すとは……。
でも、アーリンが切り捨てても正当防衛なので罪にはならない様なので良かった。
レイジェス様が私のいる階段に歩いて来た。

「何を怒っているのです? レイジェス様」

 レイジェス様は顎に手をやり私を見て言った。

「昨日来ていた踊り子達と使用人達全員が、閨事をしていて寝坊したらしい」
「はっ? 主が来ているのに?」
「前の神殿長の時は神殿長が踊り子の中から何人か選び寝室に連れて行き、残りの女を使用人達で分け合ったそうだ」
「うわ~……」

と私が言い、「有り得ませんね!」とアーリンが言う。

「切り捨てた死体の始末をしろと使用人に言ったか?」
「一応言いましたよ! 誰も出てこないから部屋をぶち破ったら、使用人と踊り子が致してる最中だったので、どうしようかと思いましたけどね。ちゃんと言いました」
「ならいいか」

レイジェス様が事も無げに言う。いいんかホントに。

「朝食はどうしますか?」

 アーリンが聞いて、レイジェス様がこの屋敷の麓に食事処があったはずだと言うので三人で行く事になった。歩いてそんなに長い距離ではないけれど、私にはきついだろうとレイジェス様に抱っこして貰っている。
麓にいくと何件か食事処を発見。その一軒からいい匂いがした。
時代劇にでも出てきそうなぼろぼろの日本家屋で、窓には縦に木の棒が何本か挟まっているだけだった。その隙間から店の中がちらっと見えるし、良い匂いが漂って来た。

「レイジェス様! とても良い匂いがします! あっちです!」

 レイジェス様にあっちに行って~とお願いする私。外から中の料理している所が見える。棒に指した魚を焼いている。……これは!

「鮎です!! レイジェス様! 鮎があります!」
「ん? 紅茶で良いとか言っていたが食べる気になったか?」
「はい! あれが食べたいです」

 私は焼いている鮎を指さした。レイジェス様が戸をガラッと開ける。
それにアーリンが続いて入る。店の中は何故か和風で板張りの小上がりがあった。

 私は小上がりに座らせられ靴を自分で脱いだ。編み上げのブーツなので面倒くさい。脱いだら空間収納に入れた。靴はあとで着衣の神呪で作ろう。
レイジェス様と私が隣り合い座ってテーブルを挟んでアーリンが座ると店の主がきた。

「何にします?」
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