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第二章

11私と先生達

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 私は体が気だるい中、目が覚めた。まだうつらうつらしている。
すぅすぅと寝息が聞こえて、ああレイジェス様がいるんだと安心感で一杯になる。
また眠くなって、眠っちゃだめ、起きて、と自分に話しかける。
お見送りしたい。眠っちゃだめ!

「はっ!」

 私は飛び起きた。
レイジェス様がまだ眠っていてほっとする。まだ朝の6の刻だった。
そっと寝台から降りて部屋を出る。ギィとドアの音がしてどきっとした。
でもレイジェス様は起きなかった。寝巻きのまま廊下を歩いてたらセバスがいた。

「おはよう、セバス。わたくしのお部屋でドレスが着たいです」
「おはようございます、姫様。お帰り大変嬉しく思います。リリーとサーシャを行かせますね」
「ありがとう」

 私はぺこりと会釈をしてお部屋にたたたたっと走って行った。レイジェス様はいつもぎりぎりまで寝てるくせに身支度が早い。私が見送るにはさっさっと仕度をしないと。
部屋に入ってリリーとサーシャを待っているとセバスがミルクティを持ってきてくれた。

「ありがとう」
「姫様の光が眩しく感じるのですが、気のせいですか?」
「わたくしの顔は見えますか?」

 と聞くとセバスが顔を近づけてきて、この場所くらいなら見えます。と言われた。
それは10センチ位の距離だった。近すぎない? 眼鏡の度が合ってないのでは?

「天界にいる時間が長くなると光が強くなるそうです。下界にずっといると光が弱まるみたいなので暫くは眩しいかもです」

 にこっと笑ってみる。セバスも微笑んだ。リリーとサーシャがやってきてドレスを選び始めたのでセバスは退出した。
私はちょっと冷めたミルクティをごくごく飲んだ。

「お久しぶりです、姫様お帰りなさいませ。天界は楽しかったですか?」
「すっごく楽しかったです。父神様も優しくて、ちょっと離れたく無くなっちゃった」
「姫様はまだお小さいですからね、父神様が恋しくなるのも当然です。帰れるのならたまに遊びに行かれるのも良いかもですね」

 とリリーが言った。

「リリー、わたくしリリーに謝らなければ。あの時、リリーは出てくるなって言ったのに……わたくし、リリーが酷い目にあっているのに何も出来なくて……ごめんなさい」

 リリーは頭を振った。

「わたくしは姫様の側仕えですから。姫様を守るのは仕事なのです。守りきれなくて悔しく思っています。もっと強くなりたい、あの件でそう思いました」
「リリーは護衛騎士ではないですよ?」
「護衛騎士が姫様には付いておりません。だから決まるまででも良いのです。わたくしが、ただ姫様を守りたいだけです。旦那様にこの気持ちをお伝えしたら、剣を教えてくれる方を雇うと言ってくれました。わたくし、次こそは不埒な輩をやっつけます! この命に代えても!!」
「命になんて代えないで下さい!! リリーは一人しかいないのですから!」
「リリーは姫様が大事なのですよ」

 ぼそりとサーシャが言った。
でも危険な目にあって欲しくない……。
あのリリーの血まみれのシーンが思い出されて身震いがした。
私も強くならなきゃだ。
強くないと周りの人を危険に晒す。私を守る為にみんな危険な目に会う。
そんなこと絶対させない。剣を教えてくれる人が来るなら私も一緒に教わろう。

「出来ましたよ」

 今日の髪型はハーフアップで髪飾りに紫の生花が挿されてる。
あとダイヤのピンが散りばめられてる。首には何もしてない。
ダイヤのチョーカーは神殿長の事件を思い出すのでしたくない。ピアスはGPS装置なので、いつもつけたままにしている。
ドレスはエンパイアドレス。薄い紫色。鏡を見てくるっと廻ってみる。
うん、可愛い。これでお見送りしようっと。

「ありがとう」

 といって部屋をでた。ととととっと廊下を小走りしレイジェス様の部屋に行くと私を見てダッシュしてきて抱き上げた。

「起きていたのか。どこに消えたかと焦ったぞ」

 と言われた。

「お見送りしたくて、身支度をしてました」

 私を上から下までじーっと見て、『うむ』と言う。

「君はいつも美しくて可愛らしいな」

 とか言う。いや、綺麗なのはあなたのアメシストのような瞳ですよ。

「もう起きましたね。仕度します? セバスを呼びましょうか?」
「よいよい、あれはもうすぐ来る」

 と言ってたら本当に来た。レイジェス様が着替えるので私は食堂に行く事にした。

「食堂でお茶を飲んでまいります」

 食堂に行くとオーティスがいたのでお茶をだしてもらった。普通の紅茶。
なんか眠かったので目が覚めるかな~とか思って。やっぱ紅茶飲むと微妙に目が覚める。

「姫様がお帰りになって皆喜んでます」

 とオーティスが言う。

「あ、オーティス、料理長さんにわたくしが、料理の心遣い、ありがとうと感謝していた事を伝えてください」
「はい。伝えておきます。彼も喜ぶでしょう」

 お茶を飲んでまったりしてたらレイジェス様が仕度を終えてブラウンテイを飲みにきた。飲んだら出仕するとのこと。

「おはようございます。レイジェス様」
「うむ、おはようリア」
「んん?」
「どうしたマヌケな顔をして」
「リアって?」
「君の愛称だろ」
「あ、そっか」
「前からそう呼びたかった。……ダメか?」
「いえ、あの、呼ばれ慣れてなかったから、ちょっとどきっとしただけで、……嬉しいです」

 ふにゃりと笑った。
セバスがもう時間ですよ~って合図してきたので、すたたたっと玄関に行く。
他の使用人達もセバスも並んでる。
レイジェス様がゆったりと師長のローブで現れた。

「では行って来る」
「いってらっしゃいませ」

 と私は元気に言って笑った。
レイジェス様を見送ったあとセバスにお話がありますので談話室にお越し下さいと言われた。
なので談話室に行く。もう2月も終わりに近いので暖炉はつけていない。
結構室内も暖かい。しばらくするとセバスがお皿の上に綺麗に皮を剥かれて切られている果物を持ってきた。紅茶も持って来ている。

「どうぞ食べながらお話を聞いてくださいませ」
「はい」

 私は早速果物をフォークにさして食べてみた。何これ? しゃりしゃりして美味しい!! 水みずしいし。美味しくてがつがつ食べてお皿がからっぽになってしまった。それを見てセバスがくすくすと笑う。

「そんなに美味しかったですか?」
「ええ! トウミとは違ったおいしさでさっぱりしてます!」
「それはナージェの実です。春に採れる神饌です」
「レイジェス様がわたくしの食生活を充実させるって言ってたのは本気だったんですね」
「ええ」

 とセバスが言う。

「話というのはこれからの予定です」
「ええ?」
「まず、本日音楽の先生とマナー教養の先生が来ます。どちらも女性なので魅了的な問題はないと思いますが、何かあったらすぐ言って下さい」
「はい」
「次にピレーネの夕べをまた開きます。今回国王になったガブリエル様を国王に推薦したのは旦那様なのです。旦那様が後ろ盾になったのと、引き上げてくれたお礼だと思うのですが、ガブリエル様は旦那様に対してトウミ園や神殿長の廃爵した領地を下賜しました。これは他の貴族達からすれば有り得ない事で、羨望や嫉妬の元となります。それを音楽で和らげ、こちらの身の内に取り込んでしまいたいという考えでおります」
「敵ではなく味方を増やすようにしたいということですね?」
「そうです」
「責任重大じゃないですか……」
「まぁ、気楽に行きましょう。練習だけしておけば、姫様なら大丈夫です」

 私は苦笑いした。

「そういえば、剣を教えてくれる人を雇うって話を聞いたのですが、私も習いたいです」
「姫様が?」
「わたくしこれでも天界でレベル上げをしたんですよ? 父神様にもっとレベル上げを頑張れって言われてるのです」
「ほぅ」
「なのでリリーと一緒にわたくしも習います」
「旦那様に聞いてみませんと、なんとも言えませんね」

 お茶を飲んでいるとオーティスがノックをして入ってきた。
学習室に先生二人を通したとのこと。で、学習室にセバスと私が行く。
セバスはお茶の用意をする。学習机を挟んで3人が座る。私がテーブルの端で両脇に左が音楽の先生のダイアナ=ローズ28歳既婚。と右がマナーの先生でハンナ=プライマス21歳独身。一応身上書を見たので名前と年齢くらいはわかる。

「まぁ、今日は顔合わせですから、皆さんリラックスしてください」

 とセバスが言う。

「ごきげんよう、アリア=アズライル8歳です。どうぞよろしく」
「ごきげんよう、アリア様、わたくしはマナーの教師のハンナ=プライマス、21歳でございます。どうぞよろしくお願い致します」
「ごきげんよう、アリア様、わたくしは音楽の教師のダイアナ=ローズ、28歳、既婚者です」

 挨拶をしたはいいものの何を話したらいいのか分からない。黙っていたらしーんとしてしまった。そしてダイアナ先生が話を振ってくれる。

「アリア様はマティオン様を呼び寄せる程素晴らしい音楽を演奏されるとお聞きしました。なのに何故教師を? 必要ないのでは?」
「わたくし、昨日まで天界にいたのですけれど、実は父神様に歌とピレーネの女神の任を与えられましたの。でも、楽譜にはうといのです。私が知ってる天界の楽譜は人の世界の楽譜とはどうやら違うようで、ダイアナ先生には楽譜の書き方を教えて頂きたいと思っております」
「まぁ、そうでしたか。女神の任おめでとうございます。私で力になるのであれば努力したいと存じます。どうぞよろしくお願い致します」

 とダイアナ先生は微笑んだ。

「わたくしも質問してよろしいですか?」
「はい、ハンナ先生」
「アリア様は何故マナーを習いたいと思ったのです?」
「わたくしは先程も言ったように天界育ちなのです。下界の生活の決まりや規則に慣れておりません。アルフォード公爵様の婚約者となり、社交の場に出るとなると自分のしている行動が正しいのか正しくないのかよくわからなくて、困ったりする事が多々あるのです。ですから、マナーを学び旦那様の恥とならぬように努めたいと存じております。どうぞよろしくお願い致します」
「素晴らしいお考えですわ。アリア様」
「ええ、まだこんなにお小さいのに考えがしっかりしてらっしゃいますね」

「ありがとう存じます」

 と私が言うとハンナ先生の眉がぴくりと動いた。

「アリア様、今のお言葉使いは間違ってらっしゃいます」
「ええっ? どこでしょう?」
「【ありがとう存じます】という言葉遣いでございます」
「この言葉は【謙譲語】なのです。【目上の方】に使う言葉遣いであり、【目下の者】や【同じ立場】の者に使う言葉遣いではございません。わたくしはマナーの教師と言っても公爵様に雇われていますし、神籍を持つアリア様からすれば殆どの者が【目下の者】になります。ですから今の使い方は間違っているのです」
「そ、そうだったのですね。わたくし知りませんでした。わたくしずっと【ありがとう存じます】って言っていましたわ? 恥ずかしい……」

 ハンナ先生は微笑んだ。

「これから直せばいいのです。癖になっている可能性がございますので、なるべく意識をするように心がけると良いでしょう」
「でもハンナ先生【ありがとう】だけだとさっくりしすぎる気がするのですが?」
「そう思うのでしたら【ありがとうございます】とおっしゃると良いかと存じます【ございます】は丁寧語ですから。感謝の言葉を丁寧に伝えている印象になるでしょう」
「そうでしたか。ありがとうございます。ハンナ先生」

 ハンナ先生は目を瞬かせてにっこり笑った。

「指導されてすぐ心がけて行動に出すのは良い事です。素晴らしいですわ。アリア様」
「アリア様は素直でいらっしゃいますね。向上心もございますし、とても良い生徒です」

 二人の先生に褒められた。むふふ。
私は褒められると伸びる子なのです! えへへ。

「あの、アリア様? わたくしアリア様のピレーネが聴きたいのですが、不躾ですが弾いていただけませんか?」
「わたくしも聴いてみたいですわ」

 とハンナ先生も言う。私はちらりとセバスを見た。セバスが頷く。

「では皆さん、小広間に行きましょう。付いてきてください」

 とセバスが言い私と二人の先生は小広間へ。
セバスが丸椅子を二つ壁際から持ってきてピレーネの前に置いた。

「では、挨拶のお辞儀はわたくしがチェックいたします」

 とハンナ先生が言う。
私はピレーネの前にすすっと出てスカートの裾を持って少し屈んでお辞儀した。

「少し直しますね」
「まず、スカートを持つ時の小指はぴんと伸ばしてくださいませ」

 といって小指を優しく触って伸ばす。

「そうそう、そんな感じです」
「そして屈むまでは上半身を曲げないで動かさないように屈むのです」

 わたくしがやりますので見ていてくださいね。と言われ見る。見事に上半身がぶれてなくて綺麗に優雅に見える。

「やってみましょうか」

 といわれてやる。見ているのとやるのは大違いでぶれてしまう。

「わたくしが体を少しおさえますね? もう一度頑張ってみてください」

 と言われぷるぷるしながらだけど出来た。

「良く出来ました。補助が無くてもできるようになると美しい挨拶ができるようになります。頑張りましょうね?」
「はい!」

 挨拶の練習が終わったので次はピレーネを弾く。何を弾こうか?
ふと思ったのはベートーヴェンのピアノソナタ14番。月光の第三楽章。
そんなに不快な気持ちは溜まってないけど、なんだか発散したくなったから。

 手をにぎにぎして一呼吸。ふっと息を軽く吐いて弾きだす。
出だしっから素早く大胆に丁寧に。同じフレーズが繰り返される。
つい音楽に合わせてふんふん鼻歌を口ずさむ。軽快に迫るリズム。高音で響く鍵盤のきらきらした音。うずうずして体が一緒に音に合わせて動き出す。気が付いたら頭を振ってる。なんか自分じゃなくて別の私になったような気分。ふんふんしてると指の間からきらきらした物が零れていった。目を瞑って静かに弾いて我に返って、強いフレーズに意識が飛ぶ。音の渦に巻き込まれて戻れなくなってきてる。
このまま最後まで抗わず流れてみようか? その方が楽だ。
もうそこからは自分の意識がなくなって、知らない誰かに取り付かれたみたいに弾いていた。
光がふわふわ、上から花がひらひら、なんだかお神酒を飲んだように自分もふわふわしていた。
かすかにピレーネの音が聞こえる。私ちゃんと弾いてたんだ?
最後に鍵盤をだん! だん! だん! と弾いて終了した。

 弾き終わってどっと疲れた。最後の挨拶はさっきのを踏まえて小指をぴんと張って上半身を動かさずに華麗にお辞儀。まだふらふらする。
お辞儀をしたらぱちぱちぱちと先生二人とセバスが拍手してくれた。
私は微笑んだ。
先生の所に行こうとしたら花が邪魔だったので蹴る! キック! キック!
ハンナ先生が「そういうことはしなくてよろしいかと?」とぎろっと睨んだ。
意外と怖い先生だ。

「とても素晴らしかったです! わたくし、教えることがないですわ? むしろわたくしが教えて頂きたいのですが……?」

 と言われた。褒められて嬉しい。てへへへ。




 先生二人は帰って私は昼食のために食堂へ。
そしたら何故かレイジェス様がいた。

「何故いるのです?」

 と私。

「ここは私の屋敷だ。いて当たり前だろうが」
「そういうお話ではなくてですね……」
「昼休憩だから君を見に来た」
「もう食べました?」
「いや、これからだ」
「わたくしもです」

 お昼はピレトスフロッグの塩から揚げだ。レシピを父神様からもらって料理長さんに頼んだ。お肉はいっぱいあるのでレイジェス様の分もそのから揚げになるはず……。
私にはサーシャが給仕してくれて、レイジェス様にはリリーが給仕した。やっぱ塩から揚げだ!

「なんだこれは?」

 とレイジェス様が言うのでえっへんと鼻息荒く言ってみる。

「それはわたくしがレベル上げでやっつけたカエルの肉です!」
「カエル? ……そのような物を食すのか?」
「すっごく美味しいんですよ? わたくしがやっつけたんだから食べて下さいませ」

 レイジェス様は暫くお肉を睨んでいたけれど、思い切って食べた。

「じゅーしぃな味わい……何だこれはっ!? 旨すぎる!!」
「でしょ! えへへー。わたくしのステータスも見てくださいませ? ほら、レベルが上がってるでしょ?」
「おお、本当だ」
「天界で、父神様にこのままじゃうさぎに蹴られて死ぬからレベルをあげろ! って言われまして、レベル上げを頑張ったんですよ?」
「いくらなんでもうさぎで死なないだろう?」
「それが、天界のうさぎは強いらしいのです。宮殿にもたまに迷い込んでくると言ってました。ああ怖い怖い」
「うさぎは可愛いものだろうが」
「わたくし天界のうさぎは見たことがないのでわかりませんが、わたくしが一蹴りで死んでしまう位強いのですよ? きっと凶暴な顔してます! こんなです! 牙もこんなです!」

 と身振り手振りで伝えると、鼻で笑われた。
レイジェス様も昼食が終わりお城に戻った。私はなんだか眠くなってしまって。レイジェス様の部屋から私が使っているクッションを持って、談話室の長椅子に向かった。
いい感じに枕になるように合わせて寝る。すぐにうつらうつらとした。談話室の扉が開いているせいか廊下の使用人達の話声が聞こえた。

「ここの姫様って本当に女神なの? なんか愛妾にしか見えないんだけど?」
「夜になるとあんあん言ってる声が聞こえるわよね? あれ、姫様でしょ?」
「女神って言うより魔性よね? 今まで女に興味のなかった公爵様を誑かすんだから」
「本当はどこの馬の骨だか分からないけど、あんなちびっ子が公爵夫人よ?」
「やるわよね~。あたしもあやかりたいモンだわ?」
「あんたのそのなりじゃ無理よ! ブスだもの」
「言ったわねぇ? ああ、そうそうそういえばね?」
「何々?」
「ここだけの話よ?」
「何もったいぶってんのよ! 早く言いなさいよ!」
「ここで勤めてた執事いたじゃない? 旦那様に横恋慕してた男色執事!」
「ああ、いたいた。姫様に意地悪してたわよね!」
「そうそう、旦那様にばれて領地の城に移動されてやめちゃったみたいよ? 仕事」
「えええ? 今何してるの? どこかの貴族の屋敷にいるのかしら?」
「……それが、最近死体で見つかったそうよ?」
「ええ!?」
「なんでも死後1ヶ月くらいだったとか……」
「それって、戴冠式があった後くらいよね?」
「何か事件に巻き込まれたのかしらね?」
「後ろから刺されて、川べりに放置されていたって聞いたわ」
「え、なんであんたがそこまで詳しく知ってるのよ? 怪しくない?」
「ほら、私の彼、番所に勤めてるから! 色々聞けちゃうのよね」
「なるほど~」
「あ、セレネ様に呼ばれたわ行かなきゃ!」
「私もだわ、仕事しないと怒られちゃう」

 使用人の女達は走って行った。

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