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第一部
29 にっこと僕
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4月、僕は小学校1年生になった。
歩いて5分位の所にある、鳴宮第一小学校に入学した。
入学式には遼と真紀さんが来てくれた。
皆の前ではお父さん、お母さんと呼んでいる。
家では遼、真紀さんて呼んでるけどね。
七海ちゃんは以前いた学校が遠かったので転校した。
鳴宮私立大附属中学校の3年生になった。転校するのに試験があったらしいけど、凄く良い成績でパスしたっぽい。
七海ちゃんは優しくて綺麗なだけじゃなく、頭も良かった。
あれから、伯父さんは逮捕されて起訴された。そして裁判になり懲役5年の判決を受けた。伯父さんは暫く刑務所に入るけど、僕が11歳になる頃には刑務所から出てくると遼に言われた。ちょっと怖かった。
でも、5年は安心出来るからそれはそれでほっとした。
ちなみに、火事の件は伯父さんがやったと立件出来なかった。
お姉ちゃんの行方は分かっていない。日本から出国した塩見さんはそのまま海外で行方を晦ました。日本の警察はそれ以上追えなかった。
生きてるか死んでるか、それも分からない。
けど、僕には何の感情も湧かなかった。
僕の手首には傷跡がある。お姉ちゃんが気に入らないからという理由だけで、僕に五寸釘をグサリと刺した跡だ。
あの時は凄く痛かった。泣かなかったけど。
お姉ちゃんは僕が悲しんだり、痛がったりすると嬉しくなるみたいで、泣いたら喜ぶと思って我慢した。
そんなお姉ちゃんだったから、別に居なくなってもなんとも思わなかった。
一応僕は伯父さんの所に行くのは止めたほうが良いって、あの雪の日に言った。
なのに物欲に負けて、釣られて行っちゃったんだから。
可哀想とは思うけど、テレビで悲しいニュースを見るくらいの感覚しか無かった。
伯母さんは、その後東京湾で死体で浮かんでいたのが見つかった。
ニュースで出てた。酔ったまま車を運転してて、そのまま落ちて事故死とアナウンサーは言ってたけど、白木さんが伯母さんの人身売買の件で『シマを荒らされた』って怒ってたから、多分白木さんの長谷部組って所の人がやったのかも知れない。
ヤクザって悪い事をする人達の集まりらしいから。
人も殺しちゃうんだ。
施設の園長先生は結局逮捕された。
僕だけじゃなく、他の子達にも性的虐待をしていたらしい。園長先生の逮捕もニュースで出てた。テレビに出てた園長先生の顔はトドに似ていた。
ミケは相変わらず行方が分かってない。
真紀さんが知り合いの刑事さんを通して消防署の方に聞いてくれたけど、火災現場に猫の死体は無かったとの事だった。
ミケは自分の子供も産んで放置して、どこかに行っちゃうようなお気楽にゃんこだから、きっとどこかで元気に暮らしてるのかも知れない。
そして僕と遼は仲良くしてると思う。ケンカもしてない。
今日は週末で、食事を終えたら4階で皆で映画を見ようって事になった。
真紀さん達の住む4階のリビングにはプロジェクターがあって大画面で映画が見れる。ちょっと低めの位置にスクリーンがあるのは、コの字型のフロアソファーで寝転がりながら見る為だ。
ふっくらした背もたれにクッションを挟んで枕代わりにする。体を寝かせる部分もふわふわと厚みのあるクッションで出来ててまるでお布団みたいだった。
映画は七海ちゃんが選んで、何を見るんだろう~って思ったら恋愛物だった。
スクリーンが良く見えるように室内の電気は消して暗くしてある。
だから、映画のキスシーンを見て僕の顔が赤くなってても誰にも気付かれないと思うけど……、こういうのって子供って見ちゃダメなんじゃないの?
そういう決まりがあった様な気がするんだけど……。
くちゅくちゅって水音が聞こえて真紀さんの方を見てびっくりした。
真紀さんと七海ちゃんがキスしてた……。
僕は思わず遼の袖を引っ張った。
「どうした?」
「二人が……」
僕が言うと遼は二人を見てから小声で僕に言った。
「あの二人は特別な好き同士だから……」
「そうだったんだ」
遼は僕に右腕で腕枕をしたまま、左手で僕の髪を撫でた。
「桂斗にはこの映画の内容はちょっと早かったかもな」
「どうして?」
「キスシーンがあるし、レーティングは付いてないけど、桂斗は見ちゃダメなやつだ」
「じゃあ、3人で見るの? 僕、仲間外れになっちゃうよ?」
「今度はお子様用のアニメでも見るか」
「僕、キスシーンがあっても平気だよ? だってキスなんて何回もしたことあるもん」
「俺とは4回しかしてないけどな」
遼が拗ねた。
「怒ったの?」
「怒ってねぇよ」
「僕、遼が特別に好きだよ?」
「う、桂斗急にどうした?」
「お互いが特別な好き同士だったらキスしてもいいんでしょ? 遼が4回しか僕とキスしてないって言うなら、これから一杯すればいいんじゃないかな? って思ったんだけど?」
「お互いが特別な好き同士でも、大人と子供がキスしちゃいけません」
「どうして?」
「法律で決まってるから。俺が捕まる」
「僕が勝手に遼にしたらどうなるの?」
「お前は平気だけど、俺は捕まる」
「……そんなのおかしくない?」
「子供はちゃんと考えて判断する能力が無いから、大人に責任があるんだよ」
「……僕、ちゃんと考えられるよ?」
「大抵の大人はそう考えない」
僕は遼に舌を入れるキスをした。遼の舌と僕の舌がくっついた。
そのあとすぐ唇を離した。
「……な、なっ、こらっ、桂斗! 俺の話、ちゃんと聞いてたか?」
遼は僕を叱りながらも、ちょっと嬉しそうにしていた。
「僕は自分の猫にちゅってしただけだもん。遼は僕のにっこでしょ?」
「……まぁ、……ご主人様には逆らえないよな、うん」
僕が笑うと遼は『ぶみゃ~』と鳴いた。
歩いて5分位の所にある、鳴宮第一小学校に入学した。
入学式には遼と真紀さんが来てくれた。
皆の前ではお父さん、お母さんと呼んでいる。
家では遼、真紀さんて呼んでるけどね。
七海ちゃんは以前いた学校が遠かったので転校した。
鳴宮私立大附属中学校の3年生になった。転校するのに試験があったらしいけど、凄く良い成績でパスしたっぽい。
七海ちゃんは優しくて綺麗なだけじゃなく、頭も良かった。
あれから、伯父さんは逮捕されて起訴された。そして裁判になり懲役5年の判決を受けた。伯父さんは暫く刑務所に入るけど、僕が11歳になる頃には刑務所から出てくると遼に言われた。ちょっと怖かった。
でも、5年は安心出来るからそれはそれでほっとした。
ちなみに、火事の件は伯父さんがやったと立件出来なかった。
お姉ちゃんの行方は分かっていない。日本から出国した塩見さんはそのまま海外で行方を晦ました。日本の警察はそれ以上追えなかった。
生きてるか死んでるか、それも分からない。
けど、僕には何の感情も湧かなかった。
僕の手首には傷跡がある。お姉ちゃんが気に入らないからという理由だけで、僕に五寸釘をグサリと刺した跡だ。
あの時は凄く痛かった。泣かなかったけど。
お姉ちゃんは僕が悲しんだり、痛がったりすると嬉しくなるみたいで、泣いたら喜ぶと思って我慢した。
そんなお姉ちゃんだったから、別に居なくなってもなんとも思わなかった。
一応僕は伯父さんの所に行くのは止めたほうが良いって、あの雪の日に言った。
なのに物欲に負けて、釣られて行っちゃったんだから。
可哀想とは思うけど、テレビで悲しいニュースを見るくらいの感覚しか無かった。
伯母さんは、その後東京湾で死体で浮かんでいたのが見つかった。
ニュースで出てた。酔ったまま車を運転してて、そのまま落ちて事故死とアナウンサーは言ってたけど、白木さんが伯母さんの人身売買の件で『シマを荒らされた』って怒ってたから、多分白木さんの長谷部組って所の人がやったのかも知れない。
ヤクザって悪い事をする人達の集まりらしいから。
人も殺しちゃうんだ。
施設の園長先生は結局逮捕された。
僕だけじゃなく、他の子達にも性的虐待をしていたらしい。園長先生の逮捕もニュースで出てた。テレビに出てた園長先生の顔はトドに似ていた。
ミケは相変わらず行方が分かってない。
真紀さんが知り合いの刑事さんを通して消防署の方に聞いてくれたけど、火災現場に猫の死体は無かったとの事だった。
ミケは自分の子供も産んで放置して、どこかに行っちゃうようなお気楽にゃんこだから、きっとどこかで元気に暮らしてるのかも知れない。
そして僕と遼は仲良くしてると思う。ケンカもしてない。
今日は週末で、食事を終えたら4階で皆で映画を見ようって事になった。
真紀さん達の住む4階のリビングにはプロジェクターがあって大画面で映画が見れる。ちょっと低めの位置にスクリーンがあるのは、コの字型のフロアソファーで寝転がりながら見る為だ。
ふっくらした背もたれにクッションを挟んで枕代わりにする。体を寝かせる部分もふわふわと厚みのあるクッションで出来ててまるでお布団みたいだった。
映画は七海ちゃんが選んで、何を見るんだろう~って思ったら恋愛物だった。
スクリーンが良く見えるように室内の電気は消して暗くしてある。
だから、映画のキスシーンを見て僕の顔が赤くなってても誰にも気付かれないと思うけど……、こういうのって子供って見ちゃダメなんじゃないの?
そういう決まりがあった様な気がするんだけど……。
くちゅくちゅって水音が聞こえて真紀さんの方を見てびっくりした。
真紀さんと七海ちゃんがキスしてた……。
僕は思わず遼の袖を引っ張った。
「どうした?」
「二人が……」
僕が言うと遼は二人を見てから小声で僕に言った。
「あの二人は特別な好き同士だから……」
「そうだったんだ」
遼は僕に右腕で腕枕をしたまま、左手で僕の髪を撫でた。
「桂斗にはこの映画の内容はちょっと早かったかもな」
「どうして?」
「キスシーンがあるし、レーティングは付いてないけど、桂斗は見ちゃダメなやつだ」
「じゃあ、3人で見るの? 僕、仲間外れになっちゃうよ?」
「今度はお子様用のアニメでも見るか」
「僕、キスシーンがあっても平気だよ? だってキスなんて何回もしたことあるもん」
「俺とは4回しかしてないけどな」
遼が拗ねた。
「怒ったの?」
「怒ってねぇよ」
「僕、遼が特別に好きだよ?」
「う、桂斗急にどうした?」
「お互いが特別な好き同士だったらキスしてもいいんでしょ? 遼が4回しか僕とキスしてないって言うなら、これから一杯すればいいんじゃないかな? って思ったんだけど?」
「お互いが特別な好き同士でも、大人と子供がキスしちゃいけません」
「どうして?」
「法律で決まってるから。俺が捕まる」
「僕が勝手に遼にしたらどうなるの?」
「お前は平気だけど、俺は捕まる」
「……そんなのおかしくない?」
「子供はちゃんと考えて判断する能力が無いから、大人に責任があるんだよ」
「……僕、ちゃんと考えられるよ?」
「大抵の大人はそう考えない」
僕は遼に舌を入れるキスをした。遼の舌と僕の舌がくっついた。
そのあとすぐ唇を離した。
「……な、なっ、こらっ、桂斗! 俺の話、ちゃんと聞いてたか?」
遼は僕を叱りながらも、ちょっと嬉しそうにしていた。
「僕は自分の猫にちゅってしただけだもん。遼は僕のにっこでしょ?」
「……まぁ、……ご主人様には逆らえないよな、うん」
僕が笑うと遼は『ぶみゃ~』と鳴いた。
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