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第一部
26 特別な好き
しおりを挟むバン! とドアを開けて入って来たのは菱田さんだった。
びっくりした。僕が助けて! って考えてたら助けに来てくれたから。
菱田さんは、また僕の縛られた格好を見て完全にキレてた。
お相撲さんみたいな体型の園長先生を、僕から引っ剥がして投げ飛ばした。
菱田さんは僕の口からガムテープを取って、縛られてる僕の縄を外してくれた。
「菱田さん……ううっ!」
僕は菱田さんにぎゅっと抱きついて泣いた。
菱田さんは何も言わず僕を抱きしめた。
「園長先生? 桂斗君は私達が連れて行きます。書類は整っているので問題無いですよね? 訴訟は当然しますからね? ……震えて眠れ、クソジジイ!」
真紀さんが僕の部屋の入り口で園長先生に怒っていた。
騒々しかったから、ドアが開いてた僕の部屋には他の部屋の子達が見に来てしまった。一成さんもその中にいた。
僕は菱田さんに手際よく下着とパジャマのズボンを穿かされて、毛布で包まれて抱きかかえられて車に乗せられた。
僕が施設から持って来たのは、菱田さんがくれたクマちゃんだけだった。
真紀さんも早足で車に乗った。運転してるのは白木さんだった。
「ほんとに桂斗は男に酷い目に合う事が多いな。襲われ体質なのかね」
「「可愛いから」」
白木さんの言葉に真紀さんと菱田さんが被った。
菱田さんが心配そうに僕を見る。
「……桂斗」
「怖かった……」
「もう大丈夫だから、着くまでゆっくり寝てろ」
「……うん」
僕は菱田さんに抱きかかえられて安心して眠った。
僕が安心できる場所は、菱田さんの近くだけだった。
菱田さんの家に着くと白木さんと並木さんは行ってしまった。
新居はまだ買った建物を改造している途中らしくて、工事が終わってないらしい。
そこが出来るまでは菱田さんとここに二人で住むって言われた。
工事が終わるのは3週間後と菱田さんは言っていた。
僕はダイニングテーブルで菱田さんとホットココアを飲んだ。
「これからは一緒にいられるから」
「うん」
「「……」」
二人で黙ってしまった。
何だか緊張してうまく話せない。
どうしたんだろう? いつもは普通に話せたのに?
「どうして急に助けに来たの? 菱田さんは超能力者なの?」
「たまたまだ。書類が整ったから真紀さんと園長室に行ったら、先生はいないし、だから桂斗の部屋に行ったらあんな状態で……焦った」
「どうして僕、こんな事されるんだろう? 伯父さんにも園長先生にもあんな事されて、やっぱり僕がどこかおかしいのかな? 僕が悪い子だからこうなるのかな?」
「桂斗はどこも悪くない! おかしいのはあいつらだ」
「……」
歯を磨いてから菱田さんと一緒にベッドに入った。
僕は施設で過ごした一週間にあったことを話した。
一成さんが優しくしてくれた事も話した。
菱田さんは、うんうんと頷きながら僕の話を聞いてくれた。
「おでこに唇を当てるのもキスのうちに入るの?」
「あ? まぁ、はいるな」
「どうして一成さんは僕にキスしたんだろ? お礼されるような事してないのに」
「ちょっと待て桂斗、キスはお礼でするもんじゃないぞ?」
「え? でも、菱田さん、前に僕に『お礼はベロチューでいいぞ』って言ってたよね?」
「あ……、くそっ、俺の馬鹿!」
菱田さんは自分で自分の頭を叩いてた。
どうしたんだろ?
「えっとな、キスは好きな奴同士でするんだ。あの時……、俺は桂斗が好きだったんだよ。でも好き同士じゃないから……お前とキスしたくて、お礼はベロチューでいいって言ったんだ。……分かったか?」
「分かった~」
「ほんとに分かったのかよ……」
「キスは好きな人同士でするんでしょ?」
「そうだ」
「じゃあ、僕と菱田さんがしても問題無いね。……でも、一成さんが僕にキスしたのも僕を好きだからだよね? 僕も一成さんを好きだから……一成さんとキスしても問題無いのか……」
「ちょっと待て、桂斗。お父さんは許しませんよ?」
「え?」
菱田さんが自分の事をお父さんとか言い出した。まぁ、養子になったのでそうなるんだけど……。
「キスをする好きな人同士ってのは『特別な好き同士』の事を言うんだ。だから友達みたいな『好き』でキスはするもんじゃない」
「……」
それって菱田さんが僕を特別に好きって言ってるのと一緒だった。
凄く恥ずかしくて顔が熱くなった。
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