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93【番外編】俺の気持ち1 セドリック視点
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俺は小さい頃から兄さんが大好きだった。
その始まりは何歳からだったか、もう忘れた。
俺が6歳の時、兄さんに言った事がある。
「僕、大きくなったら兄さんとケツコンしる!」
「……ケツコン? 結婚の事かな? セドリック、兄弟は結婚できないんだよ?」
「どうして?」
「ほうりつで決まってるから」
ほうりつって何だ? よく分からないけど、世の中の決まり事で兄さんとは結婚できないと、その時初めて知った。その夜はショックのあまり布団で泣いた。
兄さんは何度も『どうしたの? 何かあったの?』と俺に聞いていたけど、理由を言うのは恥ずかしかった。
でもいつも不思議に思ってた。
兄さんと俺は全然似てない。兄さんは女顔で目がぱっちりしててアーモンド型の瞳は紺碧色だ。それは俺よりもずっと深くて濃い青い色。髪は緩いウェーブが掛かってる、少しくすんだ黄緑色を帯びたような黄色の金髪。父上は兄さんの髪色を『承和色』と言っていた。金髪でも珍しい種類の色で綺麗だった。
ちなみに俺の髪色は白金色で、強い巻き毛の癖がある。瞳は薄い青。
顔立ちもしっかり男の顔だった。
兄さんと俺は全然似てない。
兄弟なのに、どうして似ていないんだろうと思った。
でも、良く考えたら兄さんは父上とも母上とも似てなかった。
だから密かに思ってた。
兄さんが本当の兄さんじゃなかったら……結婚出来るんじゃないかって……。
(俺はその頃まだ小さくて、男同士が結婚出来ないと知らなかった)
9歳のある日、庭のカフェテーブルでお茶を飲んでいた父上に聞いてみた。
「父上、兄さんと僕はどうして似てないの?」
「それは……」
父上は言い淀んでいた。どうやら大人が答えるには困った質問をしたようなので、追加で言った。
「もしかして、兄さんは貰われた子なの?」
「!! それはちがうよ! セドリック! ……そうだね、いつかは二人のうちどちらかが聞いてくるとは思ってたけど、思ったより早かったな……」
「兄さんには内緒にするので教えて下さい、父上!」
「……ルイスは間違いなく私の子供だ。私達は再婚夫婦なんだよ。セドリックの母上は早くに旦那様を亡くし、私は早くに妻を亡くしていたんだ。友人の紹介で出会ったんだが、お互い愛した者を亡くした同士、心の傷を癒しあう内にいつの間にか愛し合っていた。ルイスが3歳、セドリックが2歳の時に私達は二度目の結婚をしたんだよ。ルイスは私の亡き妻にそっくりなんだ。だから誰とも似てなく感じるのかもな」
「じゃあ、父上は僕の本当のお父さんじゃないってこと?」
「……そうだよ。だけど、私はセドリックもルイスも同じくらい愛してる。それは分かってくれるね?」
「うん! 僕、父上も母上も兄さんも大好き!」
「私も皆を愛しているよ」
父上が本当の事を言ってくれたので、スッキリした。
そして自分の本当の父がどういう人だったのか気になってしまった。なので母上に聞いた。母上は庭弄りの好きな方で、その時も庭の花壇に花を植えていた。
「母上、僕の本当の父上って、どんな方だったんですか? どうして死んじゃったの?」
「!! とうとう知ってしまったのね」
母上は悲しそうな顔をした。
「あなたの父上はロッシアーニ帝国とプリストン王国の間にある監視塔勤務だったの。今は平和だけど、数年前までは小競り合いが沢山あってね、その時の小競り合いの戦いでロッシアーニ帝国の兵隊に殺されたの」
「戦ったんだ……」
「監視塔が占拠されればあっと言う間に攻め入れられる。あなたの父上は国を守るために戦ったの。素晴らしい人だった」
「僕の髪の色も父上似?」
「ええ、白金色の強い巻き毛で、背が凄く高くて筋肉隆々な人だったわ」
「じゃあ僕も背が高くなるかな?」
「なるわよきっと」
「わ~い」
母上はちゃんと俺に教えてくれた。父上も。
父上は『自然に気付くまでルイスには言わないで欲しい』と言った。
父上は兄さんがショックを受けるんじゃないかと、心配してそういう風に俺に言ったんだと思う。兄さんは見かけは女の子みたいで繊細に見えるけど、意外と大雑把な人で、しかも人の事ばかり気に掛ける人だったから、『絶対自然になんて気が付かない』と俺は思ってた……。
それから一年後。
俺が10歳、兄さんが11歳の時だった。
父上がいきなり番所の衛兵に取り立てられ連れて行かれた。殺人事件の容疑者としての逮捕だった。母上も兄さんも父上の無罪を番所の衛兵に訴えたが、次々と証拠が出てきて、目撃者まで出てしまい、結局有罪、処刑となった。
父上が連れて行かれた日も、処刑の日も雨が降っていた。
俺も母上や兄さんが思うように父上は無罪だと思った。だけど、何も出来なかった。
それから母上が『魔力枯渇症』で倒れ、母上は遠くの療養所に入院する事になった。
兄さんはそのあと、荘園と屋敷を売ったお金で平民街の中級地に小さな家を買った。
それまで、金の事など気にも掛けた事の無い兄さんが、わずか11歳でお金のことをやりくりしていた。だから、俺は荘園と屋敷が凄く高く売れたんだと思ってた。
でも実際はそうでもなくて、兄さんは貴族学校の3年に上がったばかりの時には、学校側から退学を勧められていた。
そんな事を俺は全然知らなかった。
貴族じゃなくなって、母上も近くにいなくて、ただ二人きりで過ごせる、好きなだけ兄さんにくっついて、淫靡な妄想で兄さんを汚しまくる毎日が楽しくてしょうがなかった。
夜中兄さんが眠ったのを見計らって、兄さんの唇に俺のを扱いて出て来た汁を垂らした事もあった。
兄さんは俺の事を心配して真面目に精通の話をしてくれたのに、俺はもうとっくに精通なんかやっちゃってたのに、兄さんに『まだした事が無い』とか嘘ついた。
もしかしたら、兄さんがしてくれるかも!
と思ったけど、やっぱそれは無かった。
ただ、『見ていてあげる』と言われて興奮した。
俺が兄さんを想って、そこを擦って汁を溢れさせるのを兄さんが見てる?
ただ見られるだけなのに凄く興奮して、心臓がどきどきした。
その件から俺はどんどん兄さんに触りまくった。兄さんは俺に甘い。
舌を入れるキスをしなければ、割りと何でも許してくれる。
でも、二度目の終春節が終わって久しぶりに家に帰って来た兄さんを見て、愕然とした。
兄さんの首筋にキスマークが付いていた。
そう言えば、兄さんは休みになると仕事だと言って侯爵様のお屋敷に出掛けるけど、その度にお風呂に入って来て、石鹸のいい匂いをさせていた。
俺は『もしかして……』と思って兄さんを風呂場につれてって洋服を脱がした。
嫌がってたけど、真実が知りたかった。
脱がした兄さんの大事な穴を初めて見た。そこには明らかに男の物を受け入れた跡があって、ぐじゅぐじゅに赤く腫れていた。
足の内側の付け根にも、赤い花びらの様に吸った跡が残ってた。
ショックと怒りで俺の頭は一杯になった。
兄さんの初めてが奪われた! 誰だ!? 侯爵様?
……こんな事になるなら、さっさと自分の物にしておくんだった!
俺が兄さんに怒りをぶつけると、兄さんはもっと俺が驚くような事を言い出した。
侯爵様と『愛人契約』をしていると言う。
前の年の終春節から。しかも、お金が無くてその為に愛人契約をしたと言っている。
兄さんは前から俺に言ってた。良い所に就職出来るように、ちゃんと学校は卒業しろと。
もしかして、兄さんが体を売るような真似をしてるのは、俺の為?
しかも、兄さんを俺が犯そうとすると契約違反になって『兄さんは死ぬ』と言う。
ありえない! 俺はずっと兄さんが好きで、大好きで、兄さんだけをずっと見つめて生きて来たのに、ぽっと出の侯爵様に兄さんの初めてを持って行かれた挙句、俺が手出しも出来ないようになってるなんて……信じられなかった。
泣きそうになったけど……納得するしか無い。
俺がエロい事を考えてる間、兄さんは生活の事を考えて体を売ってた。
俺が飯を食えるのも、学校行けるのも皆兄さんのおかげで、俺は何も考えて無かった。お金が自然に湧く物だとは思ってない。
でも、うちにはまだ財産があるから、俺と兄さんは学校に通えてるんだと思ってた。
だから、俺が凄く嫌でも愛人契約の解約は出来ないと言われたし、兄さんが解約しないと言うなら俺にはどうにも出来ない。
ちなみに解約は契約した側(侯爵様)から希望すればいつでも解約出来るが、受けた側は1週間以内に拒否しないと、契約してから一週間以降は解約金を相手に支払わないと解約出来ない。解約金は契約金の1年分と後で知った。
兄さんは年間で2200万ギル稼ぐと言ってたから……解約金は2200万ギルだ。
それを一括でなんて支払えるわけが無い。
でも、俺の能天気さは全然変わらなくて、ついうとうとしながら兄さんを弄ってたら素股してた。
途中で目覚めて本気で素股やってたら、兄さんが目を覚まして『やめろ!』って凄く怒られた。
だけど俺はめげない! 兄さんは俺の涙と『お願い』に弱い。
お願いお願いと、お願いしまくって素股の許可ゲット!
兄さんが俺を振り払えないのを分かってて、それでも兄さんの股を楽しんだ。
でも、兄さんは基本真面目な人なので、俺とのこんな関係をきっと疎ましく思ってるはずだ。
そんな日が続いて、兄さんに話があると居間に呼ばれた。
兄さんは絶対こんな関係止めようって言うと思ってた。案の定その話だった。
「ちゃんとセドリックに言わなきゃと思ってさ。なぁなぁにしてたけど、やっぱり良くないよ。素股とか、キスとか。もう二人でこんな風に性行為をするのはよそう?」
「侯爵様の所に行って、裏切ってるって罪悪感に目覚めちゃったの?」
「そういう訳じゃないよ。ただ、お前といやらしいことをするより、侯爵様と致してる方が気楽ではある。彼は血も繋がってないし、愛人契約してお金を貰ってるからね、仕事だって割り切れる」
俺は腹が立った。生活するのに金が必要なのは分かる。
でも、俺といやらしい事をするより、侯爵様との方が『気楽』? 『お金を貰ってるから仕事だって割り切れる』? 冗談じゃない!
俺が何年兄さんを好きでいると思ってるんだ!?
ぽっと出て来た、そんな奴に気楽とか、仕事だから割り切れるとか言って抱かれるくらいなら、俺が兄さんを抱いてやる! 初めて兄さんへ激しい怒りを感じた。
俺は内緒でバイトして貯めたお金を兄さんに袋ごと放り投げた。
そして一緒にこの苛立ちをぶつけた。
「じゃあ、どうしたら兄さんを自分の物に出来るんだよ! 金払ってんだから抱かせろ! 穴も使ってないのに!」
酷い言葉だ。兄さんは初めて俺を殴った。
……そして出て行けと言われた。
ショックだった。俺が酷い事を言ったから……だから、俺が悪いんだ。
だけど、あまりにも兄さんにあっさりと『出てけ!』と言われて怖くなった。
もしかして兄さんは、俺の事を前から放り出したかったんじゃないか?
俺がいなければ体なんて売って愛人契約なんかしなくて良かったんだ。
俺が邪魔なんじゃないか? 俺はいつか兄さんに捨てられる……!?
いや、兄さんはそんな事しない! 俺の事を可愛がってくれてる!
……弟として。
でも、本当は俺達は兄弟じゃない。
それがばれたら兄さんは……俺を捨てるかも知れない。
兄さんはまだ俺達が血が繋がってないって知らない。だったらこのまま兄弟でいた方がまだ捨てられる確立が低いと思った。
兄さんが金で困ってるなら、俺もバイトしよう。ちょこちょこと建設商会でバイトしていたら同じクラスのレイフ=ベクトル(次期侯爵様)と建設現場で会った。
彼の父上が経営している建設商会がそこの現場を仕切っていて、後学の為見学に来ていた所だった。
俺はそれからレイフと親しくなり、他の友人の所を渡り歩いていたが、レイフの屋敷に泊めて貰う事になった。
レイフは見かけが派手な割りに真面目で、性格も穏やかで何かと話が会った。
俺が血の繋がらない兄が好きだと言うと、『自分も実は男色家』だと告白してくれた。俺、もしかして、そういうのが目当てで泊まれと言われたのかと思ったが、レイフも俺もタチ(攻め)側で、普通に友人として屋敷に誘ってくれただけだった。
安心した。
「で、お前童貞なの?」
「当たり前だろ? 兄さん以外とする気ないよ」
「じゃあ、お兄さんと出来ないと一生童貞か……」
「はっ!? いやいやいや、俺は絶対兄さんと致すし、一生童貞とかありえないんですが!?」
「でも、お兄さん、話を聞く限り真面目だし、血の繋がってる兄弟だと思ってるなら絶対やらないよ。俺でもやらないよ?」
「ってか、レイフはタチじゃん、ウケの気持ちなんか分からないだろ?」
「いやいやいや、普通の人の感性で話をしてるんだよ。そこにタチとかウケとか関係無いから! そういう所、セドリックは常識が無いよな……?」
「はいはい、どうせ俺は非常識ですよ」
俺は学校に行きながらバイトした。そして『建国記念の一週間のお祭り休み』の間もずっと寝る間を惜しんで働いた。
小さい頃からずっと眠る時は兄さんが一緒で、いるのが当たり前だった。
でも、兄さんが近くにいない。寂しくて堪らなかった。
学校に行くと夜仕事をしているせいか眠くて仕方無い。板書を変わりにしてくれる可愛い女の子がいた。でも、顔面偏差値では遥かに兄さんに劣る。
それに、兄さんだったら『板書は自分でしなきゃダメだよ!』ってぷりぷり怒ってたと思う。
その女の子から呼び出しされて、何かと思ったら告られた。
即行断った。
そんな感じで無理してバイトして貯めた金は100万ギルになった。
これだけあれば兄さんを愛人契約から解放してあげられる!
その時の俺は本当にそう思ってた。
俺は家に帰って兄さんに謝った。
許してもらえないと兄さんと一緒にいられない! 必死だった。
玄関の床に頭を擦り付けて何度も謝った。もういやらしい事もしないと誓った。
(俺的には愛人契約が終了するまではしないと言う意味ですが)
何度も謝ってると兄さんは許してくれた。
兄さんは俺が稼いだ金で自由になってくれる……そう思ってた。
けど、現実は厳しかった。
100万ギルじゃ……学費一人分にも満たなかった。そしてそれは貯金しろと言われて銀行に口座を作らされた。
前回兄さんに渡したお金と合わせて135万ギル貯金した。
俺は兄さんに日々生活する為のお金がいくらかかるかを聞いて驚いた。母上の入院治療費がそんなに掛かると思ってなかったし、俺達二人だけの生活で20万も掛かると思わなかった。それは主に食費と被服代に掛かっていた。
兄さんは小食であまり食べない。めっちゃ食ってるのは俺だ。
俺の食費と被服代がかなり家計を圧迫していた。
そりゃそうか、いきなりでかくなって(当時200センチ超え)制服を3回程短期間に買い換えた。制服は一着8万ギル……3着で24万ギルもする。
俺の馬鹿! 何でこんなに大きくなった!?
うううぅ……。
それから半年程経って、療養所から学校に通信連絡があった。母上がかなりやばいとの知らせだった。俺と兄さんは風竜で飛んで駆けつけた。
行くのに二日も掛かるから、正直死に目に会えないかとひやひやしてたけど、ちゃんと間に合った。死に目に会えた。
けど……兄さんは激しいショックを受けていた。
『大事な物がみんな手のひらから零れて行く』
兄さんはそう言って泣いた。
俺の胸で声を上げ、堰を切ったように涙を流した兄さんを、俺は守りたいと思った。
もし、兄さんの手のひらから皆零れてしまうなら、俺がそれを掬ってまた兄さんの手のひらに戻してやる。
背は兄さんの方が小さい。でもいつも俺より大きく見えたその姿が、その日に限って小さく儚く見えた。
これからは俺が兄さんを守る。俺はそう心に決めた。
母上が亡くなったあと、叔父さんが金の無心に来た。それだけなら問題無かったけど、俺がバイトから帰ると兄さんが叔父さんに襲われていた。
綺麗な顔が殴られて血だらけで、鼻の骨も折れていた。俺は叔父さんをぼこぼこにぶん殴った。許せない! 死ねばいいのに!
兄さんにすぐに回復魔法を掛けると、兄さんは叔父さんの借用書を破いて、金は持って行っていいから、もう二度とうちへ来るなと言って追い出した。
兄さんは綺麗だ。だから実の叔父さんまでその色香に血迷う。
兄さんはずっと父上の冤罪事件の事を調べていて、叔父さんを疑っていた。
けど、ずっと調べていたのに、暫く調査するのを止めた。
僕は兄さんと父上の冤罪事件についてあまり話さない。何故かと言うと、俺はもう死んでしまった人の名誉なんて回復してもなんの意味も無いと思ってるからだ。
生きているならともかく。
兄さんは誤解されたままじゃ天国に行きたくても行けないじゃないか! と怒っていた。そんな中、証拠を取りに(俺はそれが何だか知らなかった)行きたいから叔父さんの屋敷に付いて来てくれと言われて行ったら。
荘園はぼろぼろで小作人はいなく、屋敷は門に鍵と封印を掛けられていて借金取りが入れないようになっていた。
こんな状態じゃ、借金なんて返せるわけない。
俺達が訪れたその日の夜に、叔父さんは酷く酔っ払ってうちに来た。
叔父さんの屋敷に行った時は会えなかったので証拠は取れなかった。兄さんが欲しがってたのは叔父さんの唾液だった。と言うとちょっとエロいが、変な意味じゃなく、グラスに付いた唾液を検査したいとか言ってて、さっそくグラスを出すと割られた。2回目にそれとなくグラスを出すと飲んで貰えた。
結局叔父さんは兄さんに荘園経営の事で説教されて、怒って出て行ってしまった。
でも兄さんは『証拠をゲットできた~~~!』と大喜びだった。
兄さん可愛い!
その始まりは何歳からだったか、もう忘れた。
俺が6歳の時、兄さんに言った事がある。
「僕、大きくなったら兄さんとケツコンしる!」
「……ケツコン? 結婚の事かな? セドリック、兄弟は結婚できないんだよ?」
「どうして?」
「ほうりつで決まってるから」
ほうりつって何だ? よく分からないけど、世の中の決まり事で兄さんとは結婚できないと、その時初めて知った。その夜はショックのあまり布団で泣いた。
兄さんは何度も『どうしたの? 何かあったの?』と俺に聞いていたけど、理由を言うのは恥ずかしかった。
でもいつも不思議に思ってた。
兄さんと俺は全然似てない。兄さんは女顔で目がぱっちりしててアーモンド型の瞳は紺碧色だ。それは俺よりもずっと深くて濃い青い色。髪は緩いウェーブが掛かってる、少しくすんだ黄緑色を帯びたような黄色の金髪。父上は兄さんの髪色を『承和色』と言っていた。金髪でも珍しい種類の色で綺麗だった。
ちなみに俺の髪色は白金色で、強い巻き毛の癖がある。瞳は薄い青。
顔立ちもしっかり男の顔だった。
兄さんと俺は全然似てない。
兄弟なのに、どうして似ていないんだろうと思った。
でも、良く考えたら兄さんは父上とも母上とも似てなかった。
だから密かに思ってた。
兄さんが本当の兄さんじゃなかったら……結婚出来るんじゃないかって……。
(俺はその頃まだ小さくて、男同士が結婚出来ないと知らなかった)
9歳のある日、庭のカフェテーブルでお茶を飲んでいた父上に聞いてみた。
「父上、兄さんと僕はどうして似てないの?」
「それは……」
父上は言い淀んでいた。どうやら大人が答えるには困った質問をしたようなので、追加で言った。
「もしかして、兄さんは貰われた子なの?」
「!! それはちがうよ! セドリック! ……そうだね、いつかは二人のうちどちらかが聞いてくるとは思ってたけど、思ったより早かったな……」
「兄さんには内緒にするので教えて下さい、父上!」
「……ルイスは間違いなく私の子供だ。私達は再婚夫婦なんだよ。セドリックの母上は早くに旦那様を亡くし、私は早くに妻を亡くしていたんだ。友人の紹介で出会ったんだが、お互い愛した者を亡くした同士、心の傷を癒しあう内にいつの間にか愛し合っていた。ルイスが3歳、セドリックが2歳の時に私達は二度目の結婚をしたんだよ。ルイスは私の亡き妻にそっくりなんだ。だから誰とも似てなく感じるのかもな」
「じゃあ、父上は僕の本当のお父さんじゃないってこと?」
「……そうだよ。だけど、私はセドリックもルイスも同じくらい愛してる。それは分かってくれるね?」
「うん! 僕、父上も母上も兄さんも大好き!」
「私も皆を愛しているよ」
父上が本当の事を言ってくれたので、スッキリした。
そして自分の本当の父がどういう人だったのか気になってしまった。なので母上に聞いた。母上は庭弄りの好きな方で、その時も庭の花壇に花を植えていた。
「母上、僕の本当の父上って、どんな方だったんですか? どうして死んじゃったの?」
「!! とうとう知ってしまったのね」
母上は悲しそうな顔をした。
「あなたの父上はロッシアーニ帝国とプリストン王国の間にある監視塔勤務だったの。今は平和だけど、数年前までは小競り合いが沢山あってね、その時の小競り合いの戦いでロッシアーニ帝国の兵隊に殺されたの」
「戦ったんだ……」
「監視塔が占拠されればあっと言う間に攻め入れられる。あなたの父上は国を守るために戦ったの。素晴らしい人だった」
「僕の髪の色も父上似?」
「ええ、白金色の強い巻き毛で、背が凄く高くて筋肉隆々な人だったわ」
「じゃあ僕も背が高くなるかな?」
「なるわよきっと」
「わ~い」
母上はちゃんと俺に教えてくれた。父上も。
父上は『自然に気付くまでルイスには言わないで欲しい』と言った。
父上は兄さんがショックを受けるんじゃないかと、心配してそういう風に俺に言ったんだと思う。兄さんは見かけは女の子みたいで繊細に見えるけど、意外と大雑把な人で、しかも人の事ばかり気に掛ける人だったから、『絶対自然になんて気が付かない』と俺は思ってた……。
それから一年後。
俺が10歳、兄さんが11歳の時だった。
父上がいきなり番所の衛兵に取り立てられ連れて行かれた。殺人事件の容疑者としての逮捕だった。母上も兄さんも父上の無罪を番所の衛兵に訴えたが、次々と証拠が出てきて、目撃者まで出てしまい、結局有罪、処刑となった。
父上が連れて行かれた日も、処刑の日も雨が降っていた。
俺も母上や兄さんが思うように父上は無罪だと思った。だけど、何も出来なかった。
それから母上が『魔力枯渇症』で倒れ、母上は遠くの療養所に入院する事になった。
兄さんはそのあと、荘園と屋敷を売ったお金で平民街の中級地に小さな家を買った。
それまで、金の事など気にも掛けた事の無い兄さんが、わずか11歳でお金のことをやりくりしていた。だから、俺は荘園と屋敷が凄く高く売れたんだと思ってた。
でも実際はそうでもなくて、兄さんは貴族学校の3年に上がったばかりの時には、学校側から退学を勧められていた。
そんな事を俺は全然知らなかった。
貴族じゃなくなって、母上も近くにいなくて、ただ二人きりで過ごせる、好きなだけ兄さんにくっついて、淫靡な妄想で兄さんを汚しまくる毎日が楽しくてしょうがなかった。
夜中兄さんが眠ったのを見計らって、兄さんの唇に俺のを扱いて出て来た汁を垂らした事もあった。
兄さんは俺の事を心配して真面目に精通の話をしてくれたのに、俺はもうとっくに精通なんかやっちゃってたのに、兄さんに『まだした事が無い』とか嘘ついた。
もしかしたら、兄さんがしてくれるかも!
と思ったけど、やっぱそれは無かった。
ただ、『見ていてあげる』と言われて興奮した。
俺が兄さんを想って、そこを擦って汁を溢れさせるのを兄さんが見てる?
ただ見られるだけなのに凄く興奮して、心臓がどきどきした。
その件から俺はどんどん兄さんに触りまくった。兄さんは俺に甘い。
舌を入れるキスをしなければ、割りと何でも許してくれる。
でも、二度目の終春節が終わって久しぶりに家に帰って来た兄さんを見て、愕然とした。
兄さんの首筋にキスマークが付いていた。
そう言えば、兄さんは休みになると仕事だと言って侯爵様のお屋敷に出掛けるけど、その度にお風呂に入って来て、石鹸のいい匂いをさせていた。
俺は『もしかして……』と思って兄さんを風呂場につれてって洋服を脱がした。
嫌がってたけど、真実が知りたかった。
脱がした兄さんの大事な穴を初めて見た。そこには明らかに男の物を受け入れた跡があって、ぐじゅぐじゅに赤く腫れていた。
足の内側の付け根にも、赤い花びらの様に吸った跡が残ってた。
ショックと怒りで俺の頭は一杯になった。
兄さんの初めてが奪われた! 誰だ!? 侯爵様?
……こんな事になるなら、さっさと自分の物にしておくんだった!
俺が兄さんに怒りをぶつけると、兄さんはもっと俺が驚くような事を言い出した。
侯爵様と『愛人契約』をしていると言う。
前の年の終春節から。しかも、お金が無くてその為に愛人契約をしたと言っている。
兄さんは前から俺に言ってた。良い所に就職出来るように、ちゃんと学校は卒業しろと。
もしかして、兄さんが体を売るような真似をしてるのは、俺の為?
しかも、兄さんを俺が犯そうとすると契約違反になって『兄さんは死ぬ』と言う。
ありえない! 俺はずっと兄さんが好きで、大好きで、兄さんだけをずっと見つめて生きて来たのに、ぽっと出の侯爵様に兄さんの初めてを持って行かれた挙句、俺が手出しも出来ないようになってるなんて……信じられなかった。
泣きそうになったけど……納得するしか無い。
俺がエロい事を考えてる間、兄さんは生活の事を考えて体を売ってた。
俺が飯を食えるのも、学校行けるのも皆兄さんのおかげで、俺は何も考えて無かった。お金が自然に湧く物だとは思ってない。
でも、うちにはまだ財産があるから、俺と兄さんは学校に通えてるんだと思ってた。
だから、俺が凄く嫌でも愛人契約の解約は出来ないと言われたし、兄さんが解約しないと言うなら俺にはどうにも出来ない。
ちなみに解約は契約した側(侯爵様)から希望すればいつでも解約出来るが、受けた側は1週間以内に拒否しないと、契約してから一週間以降は解約金を相手に支払わないと解約出来ない。解約金は契約金の1年分と後で知った。
兄さんは年間で2200万ギル稼ぐと言ってたから……解約金は2200万ギルだ。
それを一括でなんて支払えるわけが無い。
でも、俺の能天気さは全然変わらなくて、ついうとうとしながら兄さんを弄ってたら素股してた。
途中で目覚めて本気で素股やってたら、兄さんが目を覚まして『やめろ!』って凄く怒られた。
だけど俺はめげない! 兄さんは俺の涙と『お願い』に弱い。
お願いお願いと、お願いしまくって素股の許可ゲット!
兄さんが俺を振り払えないのを分かってて、それでも兄さんの股を楽しんだ。
でも、兄さんは基本真面目な人なので、俺とのこんな関係をきっと疎ましく思ってるはずだ。
そんな日が続いて、兄さんに話があると居間に呼ばれた。
兄さんは絶対こんな関係止めようって言うと思ってた。案の定その話だった。
「ちゃんとセドリックに言わなきゃと思ってさ。なぁなぁにしてたけど、やっぱり良くないよ。素股とか、キスとか。もう二人でこんな風に性行為をするのはよそう?」
「侯爵様の所に行って、裏切ってるって罪悪感に目覚めちゃったの?」
「そういう訳じゃないよ。ただ、お前といやらしいことをするより、侯爵様と致してる方が気楽ではある。彼は血も繋がってないし、愛人契約してお金を貰ってるからね、仕事だって割り切れる」
俺は腹が立った。生活するのに金が必要なのは分かる。
でも、俺といやらしい事をするより、侯爵様との方が『気楽』? 『お金を貰ってるから仕事だって割り切れる』? 冗談じゃない!
俺が何年兄さんを好きでいると思ってるんだ!?
ぽっと出て来た、そんな奴に気楽とか、仕事だから割り切れるとか言って抱かれるくらいなら、俺が兄さんを抱いてやる! 初めて兄さんへ激しい怒りを感じた。
俺は内緒でバイトして貯めたお金を兄さんに袋ごと放り投げた。
そして一緒にこの苛立ちをぶつけた。
「じゃあ、どうしたら兄さんを自分の物に出来るんだよ! 金払ってんだから抱かせろ! 穴も使ってないのに!」
酷い言葉だ。兄さんは初めて俺を殴った。
……そして出て行けと言われた。
ショックだった。俺が酷い事を言ったから……だから、俺が悪いんだ。
だけど、あまりにも兄さんにあっさりと『出てけ!』と言われて怖くなった。
もしかして兄さんは、俺の事を前から放り出したかったんじゃないか?
俺がいなければ体なんて売って愛人契約なんかしなくて良かったんだ。
俺が邪魔なんじゃないか? 俺はいつか兄さんに捨てられる……!?
いや、兄さんはそんな事しない! 俺の事を可愛がってくれてる!
……弟として。
でも、本当は俺達は兄弟じゃない。
それがばれたら兄さんは……俺を捨てるかも知れない。
兄さんはまだ俺達が血が繋がってないって知らない。だったらこのまま兄弟でいた方がまだ捨てられる確立が低いと思った。
兄さんが金で困ってるなら、俺もバイトしよう。ちょこちょこと建設商会でバイトしていたら同じクラスのレイフ=ベクトル(次期侯爵様)と建設現場で会った。
彼の父上が経営している建設商会がそこの現場を仕切っていて、後学の為見学に来ていた所だった。
俺はそれからレイフと親しくなり、他の友人の所を渡り歩いていたが、レイフの屋敷に泊めて貰う事になった。
レイフは見かけが派手な割りに真面目で、性格も穏やかで何かと話が会った。
俺が血の繋がらない兄が好きだと言うと、『自分も実は男色家』だと告白してくれた。俺、もしかして、そういうのが目当てで泊まれと言われたのかと思ったが、レイフも俺もタチ(攻め)側で、普通に友人として屋敷に誘ってくれただけだった。
安心した。
「で、お前童貞なの?」
「当たり前だろ? 兄さん以外とする気ないよ」
「じゃあ、お兄さんと出来ないと一生童貞か……」
「はっ!? いやいやいや、俺は絶対兄さんと致すし、一生童貞とかありえないんですが!?」
「でも、お兄さん、話を聞く限り真面目だし、血の繋がってる兄弟だと思ってるなら絶対やらないよ。俺でもやらないよ?」
「ってか、レイフはタチじゃん、ウケの気持ちなんか分からないだろ?」
「いやいやいや、普通の人の感性で話をしてるんだよ。そこにタチとかウケとか関係無いから! そういう所、セドリックは常識が無いよな……?」
「はいはい、どうせ俺は非常識ですよ」
俺は学校に行きながらバイトした。そして『建国記念の一週間のお祭り休み』の間もずっと寝る間を惜しんで働いた。
小さい頃からずっと眠る時は兄さんが一緒で、いるのが当たり前だった。
でも、兄さんが近くにいない。寂しくて堪らなかった。
学校に行くと夜仕事をしているせいか眠くて仕方無い。板書を変わりにしてくれる可愛い女の子がいた。でも、顔面偏差値では遥かに兄さんに劣る。
それに、兄さんだったら『板書は自分でしなきゃダメだよ!』ってぷりぷり怒ってたと思う。
その女の子から呼び出しされて、何かと思ったら告られた。
即行断った。
そんな感じで無理してバイトして貯めた金は100万ギルになった。
これだけあれば兄さんを愛人契約から解放してあげられる!
その時の俺は本当にそう思ってた。
俺は家に帰って兄さんに謝った。
許してもらえないと兄さんと一緒にいられない! 必死だった。
玄関の床に頭を擦り付けて何度も謝った。もういやらしい事もしないと誓った。
(俺的には愛人契約が終了するまではしないと言う意味ですが)
何度も謝ってると兄さんは許してくれた。
兄さんは俺が稼いだ金で自由になってくれる……そう思ってた。
けど、現実は厳しかった。
100万ギルじゃ……学費一人分にも満たなかった。そしてそれは貯金しろと言われて銀行に口座を作らされた。
前回兄さんに渡したお金と合わせて135万ギル貯金した。
俺は兄さんに日々生活する為のお金がいくらかかるかを聞いて驚いた。母上の入院治療費がそんなに掛かると思ってなかったし、俺達二人だけの生活で20万も掛かると思わなかった。それは主に食費と被服代に掛かっていた。
兄さんは小食であまり食べない。めっちゃ食ってるのは俺だ。
俺の食費と被服代がかなり家計を圧迫していた。
そりゃそうか、いきなりでかくなって(当時200センチ超え)制服を3回程短期間に買い換えた。制服は一着8万ギル……3着で24万ギルもする。
俺の馬鹿! 何でこんなに大きくなった!?
うううぅ……。
それから半年程経って、療養所から学校に通信連絡があった。母上がかなりやばいとの知らせだった。俺と兄さんは風竜で飛んで駆けつけた。
行くのに二日も掛かるから、正直死に目に会えないかとひやひやしてたけど、ちゃんと間に合った。死に目に会えた。
けど……兄さんは激しいショックを受けていた。
『大事な物がみんな手のひらから零れて行く』
兄さんはそう言って泣いた。
俺の胸で声を上げ、堰を切ったように涙を流した兄さんを、俺は守りたいと思った。
もし、兄さんの手のひらから皆零れてしまうなら、俺がそれを掬ってまた兄さんの手のひらに戻してやる。
背は兄さんの方が小さい。でもいつも俺より大きく見えたその姿が、その日に限って小さく儚く見えた。
これからは俺が兄さんを守る。俺はそう心に決めた。
母上が亡くなったあと、叔父さんが金の無心に来た。それだけなら問題無かったけど、俺がバイトから帰ると兄さんが叔父さんに襲われていた。
綺麗な顔が殴られて血だらけで、鼻の骨も折れていた。俺は叔父さんをぼこぼこにぶん殴った。許せない! 死ねばいいのに!
兄さんにすぐに回復魔法を掛けると、兄さんは叔父さんの借用書を破いて、金は持って行っていいから、もう二度とうちへ来るなと言って追い出した。
兄さんは綺麗だ。だから実の叔父さんまでその色香に血迷う。
兄さんはずっと父上の冤罪事件の事を調べていて、叔父さんを疑っていた。
けど、ずっと調べていたのに、暫く調査するのを止めた。
僕は兄さんと父上の冤罪事件についてあまり話さない。何故かと言うと、俺はもう死んでしまった人の名誉なんて回復してもなんの意味も無いと思ってるからだ。
生きているならともかく。
兄さんは誤解されたままじゃ天国に行きたくても行けないじゃないか! と怒っていた。そんな中、証拠を取りに(俺はそれが何だか知らなかった)行きたいから叔父さんの屋敷に付いて来てくれと言われて行ったら。
荘園はぼろぼろで小作人はいなく、屋敷は門に鍵と封印を掛けられていて借金取りが入れないようになっていた。
こんな状態じゃ、借金なんて返せるわけない。
俺達が訪れたその日の夜に、叔父さんは酷く酔っ払ってうちに来た。
叔父さんの屋敷に行った時は会えなかったので証拠は取れなかった。兄さんが欲しがってたのは叔父さんの唾液だった。と言うとちょっとエロいが、変な意味じゃなく、グラスに付いた唾液を検査したいとか言ってて、さっそくグラスを出すと割られた。2回目にそれとなくグラスを出すと飲んで貰えた。
結局叔父さんは兄さんに荘園経営の事で説教されて、怒って出て行ってしまった。
でも兄さんは『証拠をゲットできた~~~!』と大喜びだった。
兄さん可愛い!
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