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62 叔父の告白
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季節は冬になり、12月も下旬だ。
明日から学校も休みで年末年始の一週間のお休みに入る。
結局、エルズバーグさんからはあの後、12月の中旬に学校に通信で連絡が入った。
唾液はダイアンさん事件のカップの唾液と一致した。
僕は叔父さんにその事を追及したかったけど、叔父さんは屋敷も荘園も売り払って姿をくらました。僕もあちこち探したけど、どこにいるのか全く分からなかった。
何の手掛かりも無く、忽然と人が消えるなんてあるわけない。
僕はシャノン商会の危ない連中を思い出した。
もしかして、借金の取立屋に捕まって、どこかで働かせられてるのかも知れないと思った。
窓から外を見ると雪が降っていた。
暖炉の前の長椅子に座ると、隣で毛布に包まっていた弟が僕を抱き寄せる。
「寒いでしょ? 兄さん、もっと近くに来ていいんだよ?」
「お前といるとあったかいんだけどさ、身の危険を感じるんだよね」
「大丈夫、何もしないから。ぎゅってするだけ」
僕は弟の体に背を預けた。ぎゅっと抱きついてくると暖かかった。
毛布でも一緒に包まれる。
「兄さん良い匂いがする」
人の首筋の匂いをくんくん嗅ぐから、鼻息が首に当たってくすぐったい。
「さっき風呂入ったから、石鹸の匂いでしょ」
「俺一緒に入ってない」
「僕だってたまに一人でゆっくり入りたいよ」
「許さない、兄さんは僕と一緒に入らなきゃだめだから!」
僕は細い目をしてセドリックを見上げた。
すると玄関チャイムが鳴った。
僕のうちの玄関チャイムを鳴らすなんて一人しかいない。
「叔父さんかもしれない!」
「こんな雪の日に? 今まで姿をくらませてた叔父さんが来るかな?」
僕は走って玄関ドアを開けに行った。弟もその後を追ってきた。
ドアを開くとそこにいたのは叔父さんだった。見るからに痩せこけて、髭はもじゃもじゃに伸び、酷い体臭がした。手首には太い赤い跡が付いていた。
「な、……何か食わせてくれ!」
キッチンのテーブルで叔父さんに残り物のスープを出した。
それをスプーンも使わずに皿ごとごくごく飲みつくした叔父さんは、僕に言った。
「……私がこうなったのは、何もかもお前のせいだ! ルイス!!」
「……は?」
いきなりそんな事を言われて、何の事だ? と理解出来ない。
「食い物貰っといて、いきなりその言い方は無いだろ!」
セドリックが半分ぶちキレている。
「というか、叔父さん今までどこに隠れてたの? 僕、聞きたい事があってずっと探してたんだよ?」
「私は隠れてたんじゃない! 監禁されていたんだ! この手首の跡を見ろ! 鉄の手枷をされて真っ赤だ! 足首もだ! 皆お前のせいだ、ルイス!」
叔父さんがズボンの裾を捲った右足にも、手首と同じように太い赤い跡が出来ていた。
「何の事だか分からないよ叔父さん……。僕が何したってのさ? 監禁されたって、誰にだよ?」
「私を監禁したのはフィンク侯爵だ! お前のせいで、私の人生は滅茶苦茶だ!」
侯爵様が叔父さんを監禁した? 何がどうなってそうなったんだ?
「順を追って説明してよ、僕のせいだって言われても何が何だか分からない」
「……そうだな、もう私には何も無いしな! 屋敷も荘園も借金の形に取られて、私にはもう何も無い!」
「それは自分のせいだろうが!」
セドリックが吐き捨てる様に言ったのを叔父さんが睨んだ。
「お前が兄貴と一緒に神殿に来た時、私はフィンク侯爵と一緒にその姿を見ていた。侯爵様は私の為に祈るお前を見て言ったんだ。『あの子が欲しい、自分の物にしたい』ってな。だから、……私はそうなるように動いた。侯爵様だけだったんだ、私の事を兄貴と比べずに……私自身の心配をしてくれたのは」
「……そうなるように動いた?」
「あの時は丁度ハノーバー伯爵様に私は借金してたからな、あいつをぶっ殺して、兄貴のせいにすれば、借金も無くなるし、お前らは『貴族落ち』だ。一石二鳥だろ? 年端も行かない子供が生きて行くには、体を売る位しか無い。まぁ、屋敷も荘園も売っ払って暫くは持ったが、兄貴の嫁の療養費が思ったより嵩んで、すぐ金は飛んだな。私の考えていた通りになった。だから愛人契約の話をお前に持って行ったんだ」
侯爵様が言った一言で、叔父さんはそうした? 理解出来ない。
でも一連の事件が叔父さんに仕組まれたって事は、僕にも分かった。
明日から学校も休みで年末年始の一週間のお休みに入る。
結局、エルズバーグさんからはあの後、12月の中旬に学校に通信で連絡が入った。
唾液はダイアンさん事件のカップの唾液と一致した。
僕は叔父さんにその事を追及したかったけど、叔父さんは屋敷も荘園も売り払って姿をくらました。僕もあちこち探したけど、どこにいるのか全く分からなかった。
何の手掛かりも無く、忽然と人が消えるなんてあるわけない。
僕はシャノン商会の危ない連中を思い出した。
もしかして、借金の取立屋に捕まって、どこかで働かせられてるのかも知れないと思った。
窓から外を見ると雪が降っていた。
暖炉の前の長椅子に座ると、隣で毛布に包まっていた弟が僕を抱き寄せる。
「寒いでしょ? 兄さん、もっと近くに来ていいんだよ?」
「お前といるとあったかいんだけどさ、身の危険を感じるんだよね」
「大丈夫、何もしないから。ぎゅってするだけ」
僕は弟の体に背を預けた。ぎゅっと抱きついてくると暖かかった。
毛布でも一緒に包まれる。
「兄さん良い匂いがする」
人の首筋の匂いをくんくん嗅ぐから、鼻息が首に当たってくすぐったい。
「さっき風呂入ったから、石鹸の匂いでしょ」
「俺一緒に入ってない」
「僕だってたまに一人でゆっくり入りたいよ」
「許さない、兄さんは僕と一緒に入らなきゃだめだから!」
僕は細い目をしてセドリックを見上げた。
すると玄関チャイムが鳴った。
僕のうちの玄関チャイムを鳴らすなんて一人しかいない。
「叔父さんかもしれない!」
「こんな雪の日に? 今まで姿をくらませてた叔父さんが来るかな?」
僕は走って玄関ドアを開けに行った。弟もその後を追ってきた。
ドアを開くとそこにいたのは叔父さんだった。見るからに痩せこけて、髭はもじゃもじゃに伸び、酷い体臭がした。手首には太い赤い跡が付いていた。
「な、……何か食わせてくれ!」
キッチンのテーブルで叔父さんに残り物のスープを出した。
それをスプーンも使わずに皿ごとごくごく飲みつくした叔父さんは、僕に言った。
「……私がこうなったのは、何もかもお前のせいだ! ルイス!!」
「……は?」
いきなりそんな事を言われて、何の事だ? と理解出来ない。
「食い物貰っといて、いきなりその言い方は無いだろ!」
セドリックが半分ぶちキレている。
「というか、叔父さん今までどこに隠れてたの? 僕、聞きたい事があってずっと探してたんだよ?」
「私は隠れてたんじゃない! 監禁されていたんだ! この手首の跡を見ろ! 鉄の手枷をされて真っ赤だ! 足首もだ! 皆お前のせいだ、ルイス!」
叔父さんがズボンの裾を捲った右足にも、手首と同じように太い赤い跡が出来ていた。
「何の事だか分からないよ叔父さん……。僕が何したってのさ? 監禁されたって、誰にだよ?」
「私を監禁したのはフィンク侯爵だ! お前のせいで、私の人生は滅茶苦茶だ!」
侯爵様が叔父さんを監禁した? 何がどうなってそうなったんだ?
「順を追って説明してよ、僕のせいだって言われても何が何だか分からない」
「……そうだな、もう私には何も無いしな! 屋敷も荘園も借金の形に取られて、私にはもう何も無い!」
「それは自分のせいだろうが!」
セドリックが吐き捨てる様に言ったのを叔父さんが睨んだ。
「お前が兄貴と一緒に神殿に来た時、私はフィンク侯爵と一緒にその姿を見ていた。侯爵様は私の為に祈るお前を見て言ったんだ。『あの子が欲しい、自分の物にしたい』ってな。だから、……私はそうなるように動いた。侯爵様だけだったんだ、私の事を兄貴と比べずに……私自身の心配をしてくれたのは」
「……そうなるように動いた?」
「あの時は丁度ハノーバー伯爵様に私は借金してたからな、あいつをぶっ殺して、兄貴のせいにすれば、借金も無くなるし、お前らは『貴族落ち』だ。一石二鳥だろ? 年端も行かない子供が生きて行くには、体を売る位しか無い。まぁ、屋敷も荘園も売っ払って暫くは持ったが、兄貴の嫁の療養費が思ったより嵩んで、すぐ金は飛んだな。私の考えていた通りになった。だから愛人契約の話をお前に持って行ったんだ」
侯爵様が言った一言で、叔父さんはそうした? 理解出来ない。
でも一連の事件が叔父さんに仕組まれたって事は、僕にも分かった。
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