44 / 94
44 現実
しおりを挟む
侯爵様の所には泊まらず、自宅に帰った。
夜遅かったので馬車を出してくれた。侯爵様は僕の事を本当に心配してるようだった。そんな風に接せられると、自分が愛されてると勘違いしてしまいそうになる。
侯爵様とはお金を含んだ身体の関係だ。そこに愛は無い。
自分に言い聞かせて納得した。
少し寄りかかりたかっただけ。甘えたかっただけ。
それだけだ。
家のドアを開けようと鍵を取り出してもぞもぞしていると、ドアが勝手に開いた。
ドアを開けたのは弟だった。
「何でここにいるんだ? 出てけって言って、お前は出て行ったはずだろ?」
「兄さん、ごめん。本当にごめん!」
弟は玄関の床で土下座して謝りだした。
「こんな所でそんな風にしたら、服が汚れるよ……」
「……毎日兄さんがいる生活が普通だった。兄さんがいない生活なんて、俺耐えられないよ! 俺が悪かったから、謝るから! もう兄さんにいやらしい事もしない! だから……兄さんの傍に俺を置いて! お願いだから……! お願いだから……!!」
僕の足に縋りついて訴える弟。また嘘泣きじゃないだろうな?
今回は一応涙まで出てるけど、何回も騙されたからなぁ……。
「わかったよ、許してあげる」
僕が許すと弟はキッチンテーブルにあった布袋を僕の前にズッと出した。
「これ、受け取って、兄さん」
その袋の中を見ると、大金貨10枚が入っていた。金額に換算すると100万ギルだ。
ちょっとした大金だ。
「ど、どうしたんだよっ!? こんな大金!」
「働いたバイト代だよ」
「友達が言ってた、お前、最近不良と付き合ってるって。何か悪い事したお金じゃなくて? 正直に言って」
「不良っていうか、彼らはそう見えるだけで、建設商会のお坊ちゃま達だよ。働きたかったから、バイト紹介してもらった。重い荷物運ぶくらいしか、俺出来ないからさ、建材関係が楽で賃金も良くて、そういうの選んで働いてた」
「やましいことして稼いだ金じゃないんだな?」
「うん。これだけあったら、愛人契約も解除しても大丈夫だよね? 兄さん」
弟が甘い考えを言ってて吐き気がした。
「セドリック、学校の授業料、年払いなんだけど、いくらかかるか知ってて言ってるの?」
「一人50万ギルで二人で100万ギルくらい?」
「甘いよ……。一人300万ギルで二人で600万ギルね」
「ええっ!? ……そんなに掛かるのっ!?」
「じゃあ、母さんの月の療養費、いくらか知ってる?」
「……10万ギルくらい?」
「ブー。60万ギル。ついでに僕らの生活費で20万ギル。僕を愛人契約してる侯爵様は月いくら僕に払ってるか分かる?」
「50万ギルくらい?」
「ちょっと惜しい。年間のお手当てが1000万ギルに、月のお手当てが本当は80万ギルなんだけど、きりがいいからって100万ギルにしてくれてる。僕がこの身体で稼ぐ金は年間で2200万ギルなんだよ」
「……」
「お前が稼いでくれる気持ちはありがたいし、分かるんだけど、それなら学校できちんと勉強を頑張ってくれるほうが、僕は嬉しい。ちゃんと卒業して、きちんとした所に勤めて欲しいと思ってるから。今回は長期連休があったから、その時に沢山バイトを入れたんだろうと思うけど、学校にちゃんと通いながらその金額をずっと稼ぐのは難しいだろ?」
「うん……連休中も睡眠時間削って働いてた」
「それに、いくら友人の所に泊めて貰ってたとはいえ、いくらか金は入れないと。人が生活するにはお金が掛かるんだよ? お前の事だからそんな事もしてないで、ただ飯食らってたんだろう?」
「……」
「全てにおいて甘いんだよ。生活にいくら掛かるかも分かっちゃいない、考えてもいない、知ろうともしない。そんなんじゃ、僕がお前を頼りになんて出来るわけ無い。せめて、甘え過ぎない程度には使える男になって?」
僕がそう言うと、弟はまた泣き出した。
「兄さん、本当にごめんなさい、俺、兄さんに頼られるような男になる……。そうなるから見捨てないで!」
「見捨てはしないけどさ、本当に頑張ってな?」
「うん……」
夜遅かったので馬車を出してくれた。侯爵様は僕の事を本当に心配してるようだった。そんな風に接せられると、自分が愛されてると勘違いしてしまいそうになる。
侯爵様とはお金を含んだ身体の関係だ。そこに愛は無い。
自分に言い聞かせて納得した。
少し寄りかかりたかっただけ。甘えたかっただけ。
それだけだ。
家のドアを開けようと鍵を取り出してもぞもぞしていると、ドアが勝手に開いた。
ドアを開けたのは弟だった。
「何でここにいるんだ? 出てけって言って、お前は出て行ったはずだろ?」
「兄さん、ごめん。本当にごめん!」
弟は玄関の床で土下座して謝りだした。
「こんな所でそんな風にしたら、服が汚れるよ……」
「……毎日兄さんがいる生活が普通だった。兄さんがいない生活なんて、俺耐えられないよ! 俺が悪かったから、謝るから! もう兄さんにいやらしい事もしない! だから……兄さんの傍に俺を置いて! お願いだから……! お願いだから……!!」
僕の足に縋りついて訴える弟。また嘘泣きじゃないだろうな?
今回は一応涙まで出てるけど、何回も騙されたからなぁ……。
「わかったよ、許してあげる」
僕が許すと弟はキッチンテーブルにあった布袋を僕の前にズッと出した。
「これ、受け取って、兄さん」
その袋の中を見ると、大金貨10枚が入っていた。金額に換算すると100万ギルだ。
ちょっとした大金だ。
「ど、どうしたんだよっ!? こんな大金!」
「働いたバイト代だよ」
「友達が言ってた、お前、最近不良と付き合ってるって。何か悪い事したお金じゃなくて? 正直に言って」
「不良っていうか、彼らはそう見えるだけで、建設商会のお坊ちゃま達だよ。働きたかったから、バイト紹介してもらった。重い荷物運ぶくらいしか、俺出来ないからさ、建材関係が楽で賃金も良くて、そういうの選んで働いてた」
「やましいことして稼いだ金じゃないんだな?」
「うん。これだけあったら、愛人契約も解除しても大丈夫だよね? 兄さん」
弟が甘い考えを言ってて吐き気がした。
「セドリック、学校の授業料、年払いなんだけど、いくらかかるか知ってて言ってるの?」
「一人50万ギルで二人で100万ギルくらい?」
「甘いよ……。一人300万ギルで二人で600万ギルね」
「ええっ!? ……そんなに掛かるのっ!?」
「じゃあ、母さんの月の療養費、いくらか知ってる?」
「……10万ギルくらい?」
「ブー。60万ギル。ついでに僕らの生活費で20万ギル。僕を愛人契約してる侯爵様は月いくら僕に払ってるか分かる?」
「50万ギルくらい?」
「ちょっと惜しい。年間のお手当てが1000万ギルに、月のお手当てが本当は80万ギルなんだけど、きりがいいからって100万ギルにしてくれてる。僕がこの身体で稼ぐ金は年間で2200万ギルなんだよ」
「……」
「お前が稼いでくれる気持ちはありがたいし、分かるんだけど、それなら学校できちんと勉強を頑張ってくれるほうが、僕は嬉しい。ちゃんと卒業して、きちんとした所に勤めて欲しいと思ってるから。今回は長期連休があったから、その時に沢山バイトを入れたんだろうと思うけど、学校にちゃんと通いながらその金額をずっと稼ぐのは難しいだろ?」
「うん……連休中も睡眠時間削って働いてた」
「それに、いくら友人の所に泊めて貰ってたとはいえ、いくらか金は入れないと。人が生活するにはお金が掛かるんだよ? お前の事だからそんな事もしてないで、ただ飯食らってたんだろう?」
「……」
「全てにおいて甘いんだよ。生活にいくら掛かるかも分かっちゃいない、考えてもいない、知ろうともしない。そんなんじゃ、僕がお前を頼りになんて出来るわけ無い。せめて、甘え過ぎない程度には使える男になって?」
僕がそう言うと、弟はまた泣き出した。
「兄さん、本当にごめんなさい、俺、兄さんに頼られるような男になる……。そうなるから見捨てないで!」
「見捨てはしないけどさ、本当に頑張ってな?」
「うん……」
0
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる