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42 神様は僕に冷たい
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あの後、本当にセドリックは家から出て行ってしまった。
何でも友達の家を渡り歩いているらしい。
僕の友達のビクトルにも一つ年下の弟がいて、色々情報をくれる。
「ルイス、もう弟さんを許してあげたら? もう喧嘩して一月近くになるんでしょ? 弟さん、最近は悪い奴らとつるんでるみたいだよ? うちの弟情報では」
「知らないよ、そんな奴らと付き合うなんて馬鹿なのか? あいつ」
「一応学校にはちゃんと来てるみたいだけどさぁ……」
「知らない。もう自分で何でも考えれて遣れる年齢だよ? 僕がいちいち口出すことじゃない」
「意外と冷たいんだな。ルイスはもうちょっと弟に甘い奴だと思ってた」
「甘くしてたから酷い目に合ったんだよ。僕はもう甘くしない」
「でも、……反省して謝って来たら許してやりなよ? ……二人きりの兄弟なんだからさ。何があったか知らないけど」
「そんなことより、次は体育の授業だよ? 急がないと時間に遅れる」
「そうだった」
僕達は体育館へ行った。
僕は9月の『建国記念の一週間のお祭り休み』で侯爵様に休暇を貰った。
母上のお見舞いに暫く行ってなかったので行きたいと言ったら、快く休暇をくれた。
母上が入院している療養所は王都のずっと南の方、凄く田舎にある。
空気の良い所でストレスの無い生活をするのが『魔力枯渇症』には一番良いらしい。
覚えたばかりの召喚獣を自分で出して、乗った。
僕の召喚獣は風竜で、名前を『イレイン』と付けた。一応雌で大人しい。
途中で野宿をして、二日掛かって母上のいる療養所に着いた。
母上の所に行く前に、主治医の所にお邪魔した。
「お久しぶりです、メイキス先生」
「おお、久しぶり、ルイス君、少し大きくなったね」
「ほんの少しですけどね、ははっ」
「君の母上の事なんだが……状態が思わしくない」
「というと?」
「魔力枯渇症が悪化して……病状が進んでいる」
「……えっ、空気が良い所でストレス無く過ごせば……良くなるんじゃなかったんですか?」
「普通はな。……ただ、彼女の場合、ショックの度合いが大きすぎたんだ。心が耐えられなかったんだろう。こちらに来ても症状は良くなる所か酷くなって行った。……言いにくいが、彼女の命は……もってあと半年くらいだ」
「……そんな馬鹿な。 母上はまだ40歳にもなっていない。まだ若いのに……」
「魔力枯渇症には薬が無い。与えるとしてもMPポーションくらいだ。それも飲んだ先から霧散する……」
「どうにかならないんですか? メイキス先生の力でどうにか……」
「私は医者であって、神じゃない。出来る事にも限りがあるんだ。すまん……」
僕は院長室を出て、母上の病室に行った。
母上は目を閉じて眠っていた。寝顔には気のせいか微笑みが浮かんでいる。
僕には母上が幸せそうな顔をして眠っているように見えた。
看護師の女の人がやってきて母上の様子を見たあと僕に言った。
「レジーナさんは眠っている時は幸せそうなんですけどね……起きてる間は身体がきついのでしょう、見ていられないくらい辛そうです」
そう言って母上の脈を測ってから病室を出て行った。
僕は足早に療養所を出た。療養所の脇にある庭のベンチで一人俯いて泣いた。
暫く母上の所には来れなかった。だけど、母上は空気の良い所で回復してると思っていた。それが……あと半年の命? 母上が死ぬ?
頭の中が朦朧として、くらくらした。
僕達はこれから幸せになるんだと思っていたのに。
ショックが大きくて涙が止まらない。
どうしてだ……? どうして神様は僕から何もかも奪おうとするんだ……!?
僕が何をしたっていうんだよ!!
神様に八つ当たりしてもしょうがないのは分かってるのに。
ただ、どうしようもなくて、心の中がチリチリして焼けそうだった。
何でも友達の家を渡り歩いているらしい。
僕の友達のビクトルにも一つ年下の弟がいて、色々情報をくれる。
「ルイス、もう弟さんを許してあげたら? もう喧嘩して一月近くになるんでしょ? 弟さん、最近は悪い奴らとつるんでるみたいだよ? うちの弟情報では」
「知らないよ、そんな奴らと付き合うなんて馬鹿なのか? あいつ」
「一応学校にはちゃんと来てるみたいだけどさぁ……」
「知らない。もう自分で何でも考えれて遣れる年齢だよ? 僕がいちいち口出すことじゃない」
「意外と冷たいんだな。ルイスはもうちょっと弟に甘い奴だと思ってた」
「甘くしてたから酷い目に合ったんだよ。僕はもう甘くしない」
「でも、……反省して謝って来たら許してやりなよ? ……二人きりの兄弟なんだからさ。何があったか知らないけど」
「そんなことより、次は体育の授業だよ? 急がないと時間に遅れる」
「そうだった」
僕達は体育館へ行った。
僕は9月の『建国記念の一週間のお祭り休み』で侯爵様に休暇を貰った。
母上のお見舞いに暫く行ってなかったので行きたいと言ったら、快く休暇をくれた。
母上が入院している療養所は王都のずっと南の方、凄く田舎にある。
空気の良い所でストレスの無い生活をするのが『魔力枯渇症』には一番良いらしい。
覚えたばかりの召喚獣を自分で出して、乗った。
僕の召喚獣は風竜で、名前を『イレイン』と付けた。一応雌で大人しい。
途中で野宿をして、二日掛かって母上のいる療養所に着いた。
母上の所に行く前に、主治医の所にお邪魔した。
「お久しぶりです、メイキス先生」
「おお、久しぶり、ルイス君、少し大きくなったね」
「ほんの少しですけどね、ははっ」
「君の母上の事なんだが……状態が思わしくない」
「というと?」
「魔力枯渇症が悪化して……病状が進んでいる」
「……えっ、空気が良い所でストレス無く過ごせば……良くなるんじゃなかったんですか?」
「普通はな。……ただ、彼女の場合、ショックの度合いが大きすぎたんだ。心が耐えられなかったんだろう。こちらに来ても症状は良くなる所か酷くなって行った。……言いにくいが、彼女の命は……もってあと半年くらいだ」
「……そんな馬鹿な。 母上はまだ40歳にもなっていない。まだ若いのに……」
「魔力枯渇症には薬が無い。与えるとしてもMPポーションくらいだ。それも飲んだ先から霧散する……」
「どうにかならないんですか? メイキス先生の力でどうにか……」
「私は医者であって、神じゃない。出来る事にも限りがあるんだ。すまん……」
僕は院長室を出て、母上の病室に行った。
母上は目を閉じて眠っていた。寝顔には気のせいか微笑みが浮かんでいる。
僕には母上が幸せそうな顔をして眠っているように見えた。
看護師の女の人がやってきて母上の様子を見たあと僕に言った。
「レジーナさんは眠っている時は幸せそうなんですけどね……起きてる間は身体がきついのでしょう、見ていられないくらい辛そうです」
そう言って母上の脈を測ってから病室を出て行った。
僕は足早に療養所を出た。療養所の脇にある庭のベンチで一人俯いて泣いた。
暫く母上の所には来れなかった。だけど、母上は空気の良い所で回復してると思っていた。それが……あと半年の命? 母上が死ぬ?
頭の中が朦朧として、くらくらした。
僕達はこれから幸せになるんだと思っていたのに。
ショックが大きくて涙が止まらない。
どうしてだ……? どうして神様は僕から何もかも奪おうとするんだ……!?
僕が何をしたっていうんだよ!!
神様に八つ当たりしてもしょうがないのは分かってるのに。
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