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36 手掛かり

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 昨夜はイッたあと二人で風呂に入った。
まぁ、弟はいつもと変わらず僕にべたべた引っ付いてたけど、膝に乗っけられると、また弟のあれが大きくなってきて、何とも言えない気持ちになった。

 でも不思議だ。アルトマイヤー先生にはキスをされるのも乳首を舐めるのも、凄く厭な感じがしたのに、セドリックに対してはそんな事ひとつも思わなかった。
ただ、兄弟だからこんなことしちゃ良くない、って気持ちが有っただけだ。
侯爵様に関してもそうだった。全然厭じゃない。

 良く考えると、僕のクラスの友達はもう皆彼女がいる。
そんな中で彼女がいないのは、僕と友人のビクトル位か。ちなみにビクトルは他のクラスに好きな女の子がいる。要するに片思い中だ。
だけど僕は?

 ……恐ろしい事に気付いた。
僕は女の子をまだ好きになった事が無かった。
まず、クラスの女子に話しかけられても、男として見られてないし……。
休み時間にぼーっとしてると髪を編まれる始末。
顔が女顔だからか女子として扱われてる気がする……。

 はぁ~。こんな現実に気付きたくなかった。
女の子に恋もしないうちに男と肉体関係があるなんて……。しかも二人も。
その内ひとりは実の弟……。
考えると滅入って来た。

 うだうだ考えても仕方ないので起き上がるとセドリックの姿が無かった。

「またバイトに行ってるのかな?」

 僕は朝食を食べて出掛ける準備をした。
昨日のダイアンさんの証言を聞いて、犯人は父上じゃない事が分かった。
父上には僕達と一緒にいたというアリバイがある。だけど、当時番所にも母上はそれを訴えていたけど、家族の証言だということで無視された。

 次はどこを調べるべきか……考えた結果、ハノーバー伯爵家の事件が起きた現場を見たいと思った。何かしらの痕跡が残ってないか確認したかった。
ハノーバー伯爵には確か息子さんが一人いたはずだ。伯爵夫人も以前病気で亡くなっているから、今は一人であの屋敷で暮らしているんじゃないかと思う。
あれ? 息子さんて、年齢いくつだっけ? 成人してたよな? じゃあ、もう結婚してるかも知れない。

 でも、何て言って屋敷内に入ろうか。殺人事件を調べてるなんてのこのこ行っても相手にされなさそうだ。
ああ! いいこと考えた。ミステリー小説を書いてるって事にして、取材しよう!
僕は新人ミステリー作家って設定だ!
これなら屋敷の中に通してくれるかな? いや、待てよそれは甘い考えだ。
見ず知らずの男を取材だからと言って屋敷に入れてくれるわけもない。

 僕は暫く考えた結果、ある事をすることにした。そして簡易ではあるがミステリー作家の名刺を作る。偽名は適当に考えた『ミレリア=ステディオ』という名前にした。





 僕はハノーバー伯爵家の門前にいた。呼び鈴を鳴らすと、インターホンらしき物から音声が聞こえた。

『はい、どちらさまで?』
『すいません、わたくし、ミレリア=ステディオと申します。ミステリー小説を書いているんですけど、こちらで起こった殺人事件の取材をしたくて……。お忙しい所申し訳ございませんが、御当主様からのお話を聞きたいのですが……』
『少々お待ち下さい』

執事らしき男が出て待てというので待った。本人に直接言えなかったのが微妙だ。話を通してくれるかどうか分からない。

『お待たせしました。当家の主人が会うと申しました。中へどうぞ』

 ガシャーンと門の鍵が自動で開いて、鉄柱で出来た門が開いた。
僕はそこを進んで屋敷に行った。
屋敷に入ると執事に談話室に案内された。多分、ここが事件が起きた談話室なんじゃないかと思った。痕跡調査をしようと思ったけど、すぐに人が来た。

「初めまして、私が現伯爵のポール=ハノーバーです」

 僕がお辞儀をして顔を上げるとハノーバー伯爵ははっとした顔をして言った。

「……いや、……これは、……なんと美しい少女だ」

 すいません、少女じゃなくて男です。だけど、伯爵様が僕を女の子と間違えたのも無理が無い。僕は女装してスカートを穿いていた。
僕が化けたのは、新人女流ミステリー作家『ミレリア=ステディオ』だった。
もちろんそんな人はいない。架空の人物だ。

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