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アッキーラ・エンサィオ021『魁 梶山季之 氏』

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   黒のニーソックスの脹ら脛の部分に、真っ赤な紐がクロスで編み上がったデコレーション。
 ・・・プププッ、これって丸ごと「女王様ブーツ」じゃない?
 実はこれ、目の前を歩いてた女の子の足元ファッションなんだけど、自分のお仕事ユニホームを思い出してついニヤり。
 私なんかが、お仕事でしか使わないような精液まみれのビザールファッションも、味付け一つで日常の中に潜り込ませる事が出来るんだなぁって。

 目立つって事は、薔薇の花みたいに、綺麗さの中にちょと痛い毒があるってことなんだよね。
    で、「この漢字書ける?の代名詞」なのが「薔薇」。キーボード依存症の私なんて、まったく書けない字ですが。
 でも「薔薇」って漢字は好きです。
     画数とか姿形自体がバラそのものだし、花びらの重なり具合とか、棘とかに字の雰囲気が似てるでしょ。

 ところで私のマンション近くにある公園横に、密かに薔薇屋敷って呼んでるお屋敷があるの。
 お屋敷の庭に、毎年この時期になると綺麗な薔薇が沢山咲くのね。
 お散歩の時とか凄く楽しみにしてたんだけど、それがこの前通ったら、玄関越しに小さな立て看板が見えて「お庭の薔薇を見ながらお茶しませんか。紅茶800円」って書いてあるわけ。

 このお屋敷、フェンスが結構重厚で、庭の中で咲き誇ってる薔薇の総てが眺められるわけじゃないので、中に入ったらいいだろうなとは確かに思うんだけど「素人さんが商売かよ~」って(笑)。
 薔薇が似合う深窓の令嬢がサービスしてくれるならまだしも、私が時々見かけるこの屋敷のご主人は、結構庶民的な香りのする老年夫婦だし、、。

 この時期だけ頼み込んで昼間のバイトしちゃおうかしら「薔薇のニューハーフメイドカフェ」なんちて。
 でも丹誠込めて育てられた薔薇ってやっぱり綺麗。
 薔薇って、綺麗に咲くために生まれてきたって感じで、、いいなぁ。

  話は、全然かわるけど、ずーっと前から読みたいなぁって思ってた梶山季之さんの「男を飼う」の切れ端(蛇と刺青の章 - ぴくつく鼻 -)をネットで見つけたのでテキストに復元してみました。

 私が、この方面に本気になり始めた頃、それなりに悩んで心理学方面のも含めて、ありとあらゆる性倒錯関連の書籍を読みあさったんだけど、その中で結構強いインパクトを受けたのが梶山さんの「苦い旋律」。

 男のくせに女になりたい自分が病気なんじゃないかと悩みながら、一方で「苦い旋律」に登場するヤンエグの渋い青年が、スーパーモデル級の美女に女装変身しちゃう設定に相当憧れた記憶があります。

 あの頃の私は、男モードの時も若干なよってて、切り替わりの激しいスィッチオン変身じゃない事に内心引け目を感じてたりして(女になりたい癖にオカマと呼ばれたくない都合良さは若さゆえ?)、「苦い旋律」に登場する青年社長の全能感にすごく憧れてました。

 この話、企業サスペンスが基調なんだけど、見方を変えると、ハンサムガイが、スーパーマンみたく社長室でストッキングとランジェリーつけたら途端にトップファッションモデルに変身するみたいな話だから(笑)。
 アイドルの○○君のぶっといチンポぶらさげた□□ちゃんって感じ。
 誰よ、そんな子がいたら、ずーっと□□ちゃんのチンポしゃぶってたいって言ってるの?ここに私がいるじゃん(笑)。

 ……で、この辺りから梶山さんって作家はメジャーな癖に、その本質が結構怪しいなっとずーっと思ってたんですよね。
 結果、調べてみると、やっぱり「男を飼う」みたいな小説を書いておられたんですけど、梶山さんが活躍した時代で、ラバーフェチをメジャー作家が取り上げるなんて凄いことだったりするんじゃないかなぁ。
   うーんと前置きが長かったですね。 
    ・・じゃ楽しんで。

     ………………………………………………

【   彼女の頭の中では、いつしか、ゴムとセックスとが結びつくようになる。
 恋人と別れたが、ゴムの手術用の手袋をみると、なぜだか胸が疼いた。
 誘惑に耐え切れなくなって、手術用手袋を使った。
 しまいには、それだけでは満足できなくなり、日本製のスポンジ・コケシを使った。
 ゴムの匂い、締めつける感触が、女医を虜にして行く。
 彼女は、生ゴムを買って来ては、いろいろと自分の遊び道具を考案した。
 生ゴムのパンティの内側に、スポンジ・コケシを接着剤で貼りつけたものなど、傑作中の傑作である。
 しかし、他人にはわからない。
 その上にパンティ・コルセットを穿き、スカートを着ければ、誰の目にも普通の服装としか見えないのである。
 だが、彼女が歩くたびに、それが刺激するのだった。
 あるとき、その新考案の下着をつけて、ダンス・パーティに出席し、太股まで漏らしたことがある。 それ以来、外出には使わないが、アンネ用に考案した下着などいろいろあった。
 夏などは、流石に蒸れる。
 それが嬉しい。
    すえたような、なんともいいようのない悪臭。
 それが彼女の目を細めさせるのである。
 個室に入ると、彼女は、ドアの鍵をかけて衣類を自ら剥いだ。
 黒いゴムのビキニ製パンティ。
 寝室に入る。
 健康人には耐えられないような、ゴムの匂いが立ちこめていた。
 床は、ゴム・タイルである。
    スポンジのマットレスに、ゴムのシーツをかけたベッド。
 枕は、ゴムを詰めて作った。
 壁紙は、ゴム引きのレインコート地を貼りつめてある。
 彼女は戸棚をあけた。
 彼女が考案した、透明ゴムを使った、イリガートル式の浣腸器がある。
    彼女は、薬液を満たして浴室へ入った。
 この新式の器具だと、ゴム氷嚢みたいな袋から、液薬が減っていくのがよく見え、被虐的な快感を増すのだった。
 彼女は、手術用のゴム手袋をはめ、生ゴムのブラジャーで巨大な乳房を覆った。
 浴室の床に、ゴムのシーツを敷く。アクアラングに使うゴム製のズボンと上衣をつける。
 足には、レイン・シューズを履いた。
目と鼻と口だけをだすようになった、頭からすっぽり包むゴムの帽子をかぶる。
 そのものものしい姿で、シュトラウスは浴室のゴム・シーツの上に俯けに寝るのであった。 ・・一体、なにが始まるのか?
    女医は、そのままの姿勢で、じいーっとしていた。彼女は、待っていたのだ。
 ある訪れを・・・。彼女は、やがて低く呻いた。
 「ああ・・・・苦しいわ」
 女医は目を閉じる。
     薄いゴム手袋の右手が、腹部を圧迫してゆく。
 「ああ・・・苦しい」 
   「苦しいから、いいの・・・」女医は口走った。
 彼女は、左手に握っていたスポンジ製の玩具を、鼻に押しつけ、やがて口に頬張って、息を荒くした。
 恍惚の一瞬。
 だが、次の瞬間・・・浴室の中には、異臭が立ちこめ始めたのだ。
 しかし女医は、ぐったりと動かず、鼻をぴくつさせている・・・。】


    エロと中間小説の融合って意外と難しいー、特に同じエロといっても性倒錯とか扱うとね。
 でこの分野での先人といえるのが梶山季之氏でもあると思ってます。

 氏の場合は中間小説が「大なり」で倒錯性描写は「小なり」ですが、もしかして本当は梶山季之氏も倒錯性描写を目一杯書きたかったんじゃないかと私は推測してます。
 だって氏の書かれる例えば女装者の感覚なんて、ご本人にその趣味かなければなかなか文章化出来ないと思うんですよ。

 恥ずかしながら自作品に登場するオトコノコキャラが周囲の男性に示す仄かな恋愛感情だって、まだ私自身がおぼこかった頃、年上の男性に抱いていた恋愛感情をベースにしてますから(笑)。

 私がこの道に目覚め始めた頃読んだ梶山季之氏の「苦い旋律」は、今でも自分が文章書くときにその影響が出てるなーと思います。

 主人公の曄道征四郎は、外資系女性下着メーカーの若き社長。で勿論、女装者です。
 もう一人の登場人物であるマルーセル佐紀は言わずもがなのニューハーフ、曄道のガールフレンドです。
 AVでもこの時代区分だと「女装子専用、立ちんぼニューハーフ」とゆービデオシリーズがあったりしますね。
    立ちんぼですよ、立ちんぼ(笑)。
 私なんかはこの言い回しでゆーと「女装子占領、ニューハーフSM女王様」って所でしょうか?
 このマルーセル佐紀、名前からすると当然、そのモデルはカルーセル麻紀姉さんでしょうね。

 下にちょこっとご紹介するのは曄道が初めて女装して外出するクライマックスシーンです。


【   三面鏡の前に、バス・タオルを腰にまとった、一個の男性が坐っていた。
 曄道征四郎である。
 彼は、すでに顔に白い化粧をほどこし、目ぼりを入れ、ルージュを塗っているところであった。
 青いアイシャドーが、彫りの深い顔立ちを、更に引き立たせている。
 マルセール・佐紀は、すでに化粧や着つけを終えて、高い踵の靴を穿き、ジュータンを敷きつめた床の上を、踊り子よろしく歩き廻っている。
「あなた・・今夜は、どのカツラになさる?」
 佐紀はきいた。
「平凡なのがよくない?」
 曄道は答えながら、上手に唇を塗りわけてゆく。
 化粧が済むと、彼は、ベッドの上に、佐紀が並べた女性の下着をとって、手際よく身にまとうのだった。
 今夜は、ブルーに統一してあるらしく、パンティも、ブラジャーも、すべて水色である。
 曄道は、それを着ながら、
「佐紀...。そんな網目のストッキングや、そんな十五センチのヒールを穿いて、外は歩けないわよ...」
とたしなめている。
「わかっているわ」
と、マルーセル・佐紀。
 シームレス・ストッキングをつけ、水色のスリップを頭からかぶって、曄道は上品なスーツをとりだす。
 ――ああ。
 曄道征四郎は、この札幌の街で、大胆にも女装して、外を出歩こうという気持ちらしいのである。
 そして恐らく、その目的のために、半女性ともいうべきマルセール・佐紀は、札幌へ呼ばれたのであろうか。
 女装して、夜の街を歩く。
 それは、〃女装マニア〃と呼ばれる人々にとっては、一種の願望なのだそうであった。
 そして、女性と間違えられ、「お茶でも飲まない?」と、同性から誘われたりすると、最高のエクスタシー状態になると云う。
 実に奇妙な心理であるが、曄道は、東京では果せないその願望を、この異郷の地で試みようと、しているのではあった...。
 平凡な、セットされたカツラを、二人はかぶり、ヘアピンで留め合った。
 そして、コートを着、ハンドバッグを手にする。
 曄道は水色のハイヒール、佐紀は真紅のハイヒールを履いた。
 どこからみても、二人は 〃女性〃だった。いや、女性そのものだった。
「部屋の鍵を、忘れないでね?」
 曄道は、そう云いながら、佐紀を抱いて接吻し、
「あたし、サポーターをつけないと、興奮して駄目みたい.....」
と囁く。
「コートがあるから、大丈夫よ....」
 佐紀は微笑した。
「だって、喫茶店に入ったときは?」
「バッグを腿のところに、載せておけば大丈夫」
「本当に、いいかしら?」
「心配しなくても、誰も、男だとは思わないわ」
「胸が、どきどきよ?」
「それは、そうでしょうね......」
 佐紀は、曄道の唇を吸って、
「あたしだって、凄いわよ?」
と云う。
「ホテルの人に、怪しまれないかしら?」
「佐紀が万事、うまくやるわ」
「頼むわね...」
「あまり長く散歩しないで、一時間くらいで帰って来ましょうよ」
「ええ、わかったわ」
 曄道征四郎は、すでに女になり切った、低い声音である。
「街で、声をかけられても、澄ましていること。これが秘訣なの....」
「わかったわ」
「では、行きましょうか.....」
 佐紀は、先輩らしく振舞い、先に部屋を出て、左右を見廻し、
「いいわよ、あなた・・・・・・」
と低く叫んだ。(中略)

 曄道征四郎は、生まれてはじめての体験に、異常な興奮を覚えていた。
 エレベーターから降り、フロントを横切ってゆく時の、あの妖しい、息苦しい胸の鼓動といったらなかった。
 ハイヒールの細い踵が、ジュータンに喰い入り、歩き辛い。
 ブラジャーで胸を、ぐっと絞めつけられている。その感触が、また、彼には、たまらないのだ。
 ホテルの前で、タクシーを持つ。
 ボーイが、佐紀と彼とを見較べ、
 <ほう、美人だなあ....>
というような顔をしている。
 タクシーに乗るとき、彼は佐紅を真似して、尻の方から先に座席へ入れた。
 そうして脚を揃えて、車内へすーっと引き入れるのだ。
「行き先は?」
 運転手がきいた。
「薄野よ」
 マルーセル・佐紀はそう云って曄道に微笑みかけるのだった。
 そして、ハンドバックから長い婦人用のパイプをとりだし、器用に煙草をつけて、ライターを鳴らすのである。

 曄道は緊張していた。
 コンパクトをとりだして、そっと鏡の中を覗いてみる。
 女の顔があった。
<大丈夫かしら......>
 彼は、そう、女のように心に呟く。
 間もなく薄野の盛り場へ着いて、二人はタクシーを降りねばならなかった。
「いよいよ、本番よ.....」
 マルセール・佐紀は微笑して、ゆっくり彼の腕をとった。

 映画館の並んでいる、明るい大通りは、流石に気がひける。
二人は電車通りをさけて、裏通りを歩いてグリーン・ベルトのある大通りへ出た。
「どう? はじめて、外出した気分は」
 佐紀は、悪戯っぽく云うのだ。
「まだ、胸がどきどきしてるわ」
 曄道は、俯き加減に、水色のハイヒールの尖端を見ながら、歩いている。
「ほら、みんな、私たちを振り返って、みてるわよ......」
 佐紀は、いちいち報告する。
 曄道は、なかなか顔を上げられなかったが、やっと暗がりに来たので顔をあげた。
「もっと、堂々としなきゃ駄目!」
「だって、怖いのよ.....」
「みんな、あなたが男だとは、思ってないわよ....。平気でいなさい.....」
「そうかしら?」
「喫茶店へ、入ってみない?」
 佐紀は揶揄するように云うのである。

 手術をうけて、半女性となった佐紀は、女装が板についているから平気だが、密かに女装を愉しんでいた彼には、外を歩くということが、物凄い 〃大冒険〃 のように、感じられたのである。
    酔った男たちが、通りがかりに、「よう、お嬢さん! お茶でも飲まないかい?」と声をかけたり、中年の紳士が、立ちはだかって、「つきあってくれない?」と、執拗にからんて来たりした時には、流石にひやひやしたが、マルセール・佐紀は手馴れたもので、「約束があるから、だめ!」と、ピシリと撥ねつけるのだ。
 そして、男から声をかけられるのを、密かに愉しんでいる風情であった。

 三十分くらい歩くと、曄道は疲労を感じた。
    ハイヒールが窮屈なのと、緊張のためである。
「もう、帰ろう.....」 
   彼はそう告げて、タクシーに手を上げた。
と.......その時である。
 先刻からニ人を、尾行していた浮浪者風の少年が、いきなり女装した曄道に体当りをくれためであった。
「あツ!」
 不意を喰って、彼はよろけた。
 その次の瞬間、少年は、彼の手から離れて地面に転がったハンドバックをつかむと、狸小路の方へ駆けだしたのだ.....。
 タクシーは、急停車し、運転手が、「大丈夫ですか?」と窓から声をかけてくれた。
 曄道は、自分の足の捻挫よりも、カツラのずれの方が心配である。
「かっぱらいだア! つかまえてくれえー!」
 運転手は、大声で叫んだ。
 曄道は、これには慌てた。
「佐紀! 逃げよう!」
 彼は、ささやいた。
「そうね」
 マルセール・佐紀は、タクシーの運転手に、「怪我したらしいわ。ハンドバッグはよいから、ホテルへ連れてって!」と云った。
「えッ、いいんですかい?」
    運転手は、吃驚したような声をだして、それでも痛そうな彼の顔をみると、
「病院へ行った方がいい」と告げた。
 病院へ行ったり、警察へ行かされたりしたら、女装の秘密が表沙汰になる。
「ホテルの医者がいいの」
 佐紀は、狼狽しながらそう運転手を、制止したのであった......。】


 どうです?
 『曄道は、自分の足の捻挫よりも、カツラのずれの方が心配である。』なんて台詞は、普通に書けるように見えて実は体験者でないとその心理がなかなか言葉に出来ないって思うんですよねー。

 それに多作で有名だった梶山季之氏の作品の中には、この「苦い旋律」以外にも性倒錯ピープルやその描写がわんさか登場します。
 例えば日本列島を襲った石油ショックを背景にしてその危機を救おうと石油開発事業に情熱を注ぐ三星商事の社長広崎皎介を中心に描かれた作品「血と油と運河」には、主人公を刺そうとするユダ役の女装趣味男性が登場するんです。

【   木島宏は、肉色のパンティ・ストッキングを穿きはじめた。
    彼は、ストッキングを穿いた時、はじめて自分が 〃女〃 に変身したと云う実感を味わうのだった。
 しなやかな、ナイロンの感触。
 爪先だとか、陣などのシームの汚れ。
 肉色に、すっぽり蔽ってしまうパンストの魔力。
<ああ、女になれるんだわ>と、彼は思う。
 木島は、その時、すべてのことを、忘れていた。
 三星商事が、危機にさらされていることも、そして自分の妻が、不貞を働いていることも--。
 そこには、男でありながら、女の服装をして、アベックで(本来、アベックとは、一緒にと云う意味である。
    むろん、男女のカップルでなくてもよい。
    日本人には、誤解されている外国語があって、アベックとは、男女のカップルだと思い込んでいる。
 なにも男と女でなくても、女と女でも、アベックなのであるこカクテル・パーティと云うのは、カクテルを飲むパーティではなくて、呉越同舟--つまり、敵も味方もー緒にカクテルになるから、そう呼ぶのである)横浜を散歩することに、ワクワクしている不可思議な姿があったのだ...。

 横浜の中華街で、食事をしている時、木島の男性自身は、怒張し切っていた。
 なまじっか、高級な中華レストランを選んだばっかりに、ボーイは、金髪のカツラとも知らず、
外人だと思い込んで、「マダム、マグム……」と連発する。
「メイ・アイ・イントルデュース・マイセルフ?」などと、下手な英語で、自己紹介をしたがる。
 木島宏は、そのたびに、痛いほど、怒張を覚えた。
 今日は、コルセットを締めず、ナイロン・パンティ一枚である。
 だから、昂奮するたびに、スカートが、むくむくッ揺れる。
 それを隠そうとして、ストッキングの脚を組む。
 すると、股の間で、熱い火柱が揺れ動くのであった。
 みんな、女として見ている。
   しかも、外国の女に--だ。
 それだから、余計に昂奮する。
 ゾクリ、ゾクリとする。
 股のあいだに喰い込んでいる、ナイロン・パンティの感触。
 ストッキングの、ゆるやかな緊縛感。
 化粧のすべての羞らい。
 ぎゅッ、と締めつけるような、ハイヒールの痛さ。
 ない乳房を、糊塗しているブラジャーの中のスポンジ・ケーキ。
 金髪のカツラの重さ。
 マニキュアざれた爪の朱さ。
 ・・・すべてが、彼にとっては、恍惚の対象である。
 それを身に、しっかと纏い、変身して、食事している妖しい楽しさ。
 彼は、たまらなくなった。
 食事の途中で、オナニーに立とうかと思った位である。
 ニ人は、食事のあと、山下公園を散歩して、モーテルに戻った。
 その散策の時の、なんと云ったらよいか、快よい思い出と云ったら!
 彼は、それを考えただけで、ゾクゾクして来る。
 ハイヒールで闇歩する。
 スカートの内側では、ピサの斜塔みたいなものが、揺れ動いている。
「おッ! いい女だなァ」
 なんて、通行人がすれ違いざまに呟く。
 これが、こたえられない。
 みんな白人の女だと、思い込んでいる。

『スカートの内側では、ピサの斜塔みたいなものが、揺れ動いている。
「おッ! いい女だなァ」
なんて、通行人がすれ違いざまに呟く。
これが、こたえられない。』】


「ピサの斜塔みたいなもの」の言い回し、それに「これが、こたえられない。」の言い切り、勉強になりますわん(笑)。



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