もう一つの小学校

ゆきもと けい

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4章 それぞれの始まり

もう一つの小学校

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 全員が小阪君に促されるままにドアの外に出た。ドアはすぐに閉まり、同時に消えてしまった。小阪君の姿はここにはない。

 出た場所は廊下の一番端のようだ。真っすぐに伸びた廊下は同じだが、建物はコンクリート製で近代的な感じがわかる。教室が右側に並んでいるのも同じだ。だが、クーラーがしっかり効いているようで、暑さを感じない。
 廊下の少し先には教室と教室の間に2階へ上がる階段があるようだ。
 どうやらこの学校は2階建てかもしれない。
 それに多くの生徒たちが廊下を行き交っている。パッと見ただけでも、学年がバラバラなのがわかる。
 誰もこちらのことを気にかけていない様子だ。

「なんだよ、ここは?これが本当にあの俺たちの学校なのか?」

 岩本 蓮君が、きょろきょろしながら驚いて声を上げる。

 6人は横並びで並んでいる。

「確かにね・・・こんなに近代的な建物になっているとはね・・・」

 一番端の沙織先生もきょろきょろしながら答える。
 左側の窓から見える山の景色が同じなので、小阪君の言葉が正しいことがわかる。

「それよりさぁ、本当に帰れるよね、元の世界に・・・」

 岩瀬 日葵ちゃんが不安そうに 横に立っている大橋 陽翔君に訊く。

「アイツの言ったことは間違いないと思うよ」

「なんでわかるの?」

「だって、アイツの言ってることが間違っていたら、アイツ自身がパラレルワールドの漂流者になってしまうかもしれない。だからさ・・・」

 陽翔君の言葉には妙な説得力がある。

「なるほどね」

 日葵ちゃんも何となく納得する。他の生徒も何となく頷く。

「それにしてもさぁ先生、夏休みだっていうのに、生徒の数、多くないですか?」

 沙織先生と真反対に立っていた花岡 渉君が沙織先生の方へ近寄り言った。
 横並びのバランスが崩れる。

「そうね・・・確かに・・・
もしかしたら、こちらの世界では夏休みではないのかもね」

「これからどうするの?先生?」

 結奈ちゃんが尋ねる。

「とりあえず、この世界の学校や私たちがどうなっているのか、知りたいわよね。
もしみんながバラバラになったら、それはそれで仕方ないわね・・・
どうせ6時間後にはみんな元の世界で一緒になるんだから・・・」

 2階から2人の女の生徒が降りて来た。6年生くらいだろうか。田舎には相応しくないようなしゃれた服を着ている。
 当たり前だが、この2人を誰も知らない。

 2人の生徒はこちらに気づくと、走って近寄ってきた。
 一人の女子生徒が、

「集落の人で集まってたの?」

 問いかけてきた。

(集落の人???)

 全員が心の中で思う。

「和仁さんが突然いなくなっちゃったからびっくりしちゃった・・・
ああ、洋服を着替えていたの?」

 それは恐らく、元々のここの和仁さんのことだろうと、推測がつく。そして洋服が違うのも、しごく自然の在り方だ。

「でも先生、岩本君が和仁さんたちと一緒にいても大丈夫なの?他の先生に怒られるんじゃないの?」

「えっ?」

 沙織先生に限らず、全員が何を言ってるのか意味不明だった。

(えっ?俺が?何で???)

 特に蓮君はきょとんとした。

「他の先生には黙っててあげるね。それより和仁さん、結果が張り出されたから見に行こう・・・大橋君も行くでしょ・・・」

(結果・・・? 何の・・・?)

 そう言うと、女子生徒は結奈ちゃんと陽翔君を引っ張るかのようにして、2階へ連れて行ってしまった。

 先生を含め、4人が残った・・・


  4章 それぞれの始まり 完 続く
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