上 下
6 / 42

しおりを挟む
 だから武装バッチリの大人を2人連れていたのか!
「待て待て、俺は今の両親を愛しているんだ。急に親が代わるのは困る」
「そっか。じゃあ、私がこっちに生まれて君の両親は王様とお妃様ってことにしよ」
「バカを言うな。そんなことしたら目立ってしまうではないか。せめてメインキャラ達に関われないような立場にしたまえ」
「分かった。7ヶ国の内5ヶ国を牛耳る貿易会社にしよう。私達一家が裏で支配してると言っても過言ではない影響力で。怒らせたら怖いから王様でも下手に手が出せないよ」
「貴様凄い事考えるな」
 呆れていれば、パチンと指が鳴らされて、ゴゴゴゴゴゴゴと地響きが鳴り出す。地面も落ちるように縦に揺れ、神にしがみつく。
「オイそれ以上力を込めてみろ、貴様の股間を破壊してやる」
「自分でくっついてきたくせに。破壊しくれても構わない」
「先に抱き締めてきたのは貴様だ。……そうだな、姉なら不自然に感じないかもな」
 膝をぶつけてやろうと思ったが、触れたら大変なことになりそうなのでやめた。神の息が荒い、怖い、やはり悪魔だこいつは。
 室内も窓の外の景色も変わっていく。緑一色だった面白みのない景色が、やがて天へと上るように見下ろす形へ変り、木々は建物に変化して、その他は青い海へと変わった。
 水面に姿を浮かべ、燦々と照り輝く太陽が眩しい。
 外の景色に気を取られていれば、地響きも止み、内装もガラリと変わっている。
 石造りだった壁は美しい模様を描く壁紙が貼られ、シンプルだったアンティーク調のシャンデリアが、クリスタルを多く散りばめた自分より大きなシャンデリアに。ランプや蝋台、カーテンに窓枠、クローゼットも明らかな高級品であるし、何より1番変化したのは一人用のベッドである。元からあったものも質の良いベッドだったが、今では天蓋付きのキングサイズベッドが置いてあった。
 部屋も以前の2倍は大きくなっていた。
「ここまで来ると落ち着かないな」
「お兄ちゃんが一緒に寝てあげようか?」
「…………去れ、悪魔め」
「オイ。冗談に決まってるだろ間にウケるな。悪魔に戻すなよ」
 なら冷や汗を流すな。
「神は汗を流しませーん」
「神がこんな巫山戯た奴で溜まるか。これほどの力があるなら早く俺を転生させろ」
「嫌だよやっと俺の弟にしたのに。一生傍に置くから」
 しまった! ゾッコン設定が裏目に出た!
「くそ、やはり自分で転生するしかない! 今ならこの窓から飛び下りれば確実に転生出来るぞ!」
 んん!? 窓に格子が現れたぞ!? 何かしたな!?
 フン、こんなもので転生を食い止められると思うなよ、こうなったら出来てるだろうバルコニーから飛び下りてやる!
「希望入れてきたな。まあ作ってあるけどさ。でも無理だよ」
 格子を鳥籠状に広げて阻止する気か!
「具体的だな、自分で案だしてどうすんだよ。そんなの折角の景色が台無しじゃないか。そうじゃなくて、例え1階でもあんなに思いっきり頭を打ち付ければ命が危ないだろ。君は子供なんだし、普通なら重症だよ。でも君は生きてたし無傷だ。何でだと思う?」
 そう言われれば何故だ、俺は悪役令嬢ではないのに。――はッ!!
 悪役令嬢の加護か……ッ!!
「違うッ! 君は悪役令嬢をなんだと思ってるんだ……。君が転生とかバカなこと言って死のうとするから私が君を頑丈にしたんだよ。簡単には死ねないから。だから俺の傍に一生置くって言ってるじゃん」
「やはり貴様は悪魔だ! 意地悪!」
「可愛いな」
「去れええええええええッ!?」
 抱き竦めてくる悪魔から避難して、ベッドの中に潜り込む。
「誘ってるの? ねえ誘ってるの? 可愛いなぁ。……私もこの部屋で生活しようかなぁ。キリバイエとシルベリウスの部屋って扉に付けとこうよ。ね、そうしよ」
「頼む建前を保ってくれ。おぞましい寒気と吐き気に襲われているんだ」
「は? 何言ってんだこいつ。俺は正常だし」
 布団が捲られてしまった。
「本音がダダ漏れだと言っているんだ気色の悪い悪魔め。誰が同じ部屋になんかなるか。ここに貴様が住み着くなら俺は庭の木に暮らす」
「オイ縄を置け。どこから出した」
「こいつは俺を転生の扉の前に立たせてくれるキーなんだ、そう簡単に渡せるものか」
「燃えろ」
「ああああああッ!! 指パチンなんて卑怯だ! 神の力を私欲に使うな!」
「悪いなこれは魔法だ。指パチンは1日3回までしか使えない。君の言う通り、神の力を私欲に使うことがいけないってことは重々承知してるよ。……――って、指パチンって何だやめろよ」
 1日3パチン――となると、1パチンは複数作品の融合と王太子への転生する世界観の変化、2パチンは俺の家族関係と家系の改変、3パチンは格子か。
「それ程の影響力を持つなら何故俺を悪役令嬢にしない!?」
「だから一生傍に置くって言ってるじゃん」
「去れ悪魔め! 俺が貴様に構ってやっていたのは悪役令嬢にしてくれそうだったからだぞ!」
「いつも断ってたろうが」
「兎にも角にもどう書くにもだ、俺は絶対諦めないぞ、だってずっと願って望んで念を送ってきたのだからな! 前世でだって悪役令嬢になりたくて飛び降りたのに!」
「お前マジか!?」
「いや冗談だ。俺の記憶によると飛び降りた後入院して――」
「飛び降りてんじゃねえか」
「――ノーパソで乙女ゲーしてたら没収されて駄々を捏ねてベッドの上でゴロンゴロンしたら落ちて頭を打って死んだ」
「何だその死に様、ダサ」
「バカを言え。最後の最後まで悪役令嬢を愛する姿勢、前世の俺には感服するばかりだ」
「こんだけイカれてたら前世もイカれてて無理はないな」
「よし取り敢えず女装しよう」
「急になんなんだ。君の思考回路はぶっ飛び過ぎて分からん。今特に何も考えてなかったじゃないか。でも可愛いだろうな」
 思考を読むな悪魔め。
「仕方ないじゃん。神の力を持って転生しちゃったんだから」
「俺以外の心も読めるのか?」
 心が読める力と言うのは大変だと知っているぞ。
「心配してくれてるのか? 平気だよ。他はシャットアウトしてるから」
 なら俺の思考もシャットアウトしろ。
「お前嫌い」
「俺もお前なんか嫌いだ。超可愛い」
 だからさっきからずっと漏れてるって。
 ぼおっと天蓋を眺める。
「皇太子様に惚れて貰って婚約して、悪役令嬢になるんだ俺は」
「は? 何言ってんの? は? お兄ちゃんと結婚するよね? ね? ねえ?」
「怖っ!?」
「冗談だ。真に受けないでくれよ」
 顔を引き攣らせるな。
「神は常に笑顔でーす」
 散々眉間に皺を寄せていた癖に何を言うか。その間抜けな顔やめろ。
 ああ。どうしたものか。取り敢えず召使いを呼んでドレスとウィッグを用意させよう。
「ウィッグなんて面倒な。髪を伸ばしてみたら? 明日になったら髪伸ばしてあげようか?」
「女の子にしてくんない?」
「は? 男の子だから可愛いんだろ」
「怖っ!?」
「ふふふ。ドレスも沢山用意してあげるからね」
 髪を両手でわしゃわしゃ掻き回されて、ぞわぞわと鳥肌が立つ。こいつ……目が据わっているぞ。
 ベッドに上がり込んできてむぎっと抱き締められる。折角逃げたのに。力がめちゃくちゃ強い、下手したらメドゥーサより強いかもしれない。
「んふふふ。女装か。んふふ。女装かあ。いいこと考えついた。んふふふふふ」
「ひえ……」
 神様なんか信じない。悪役令嬢様、俺をこの悪魔から助けて。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...