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第伍章

90話 後悔させてやる

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 俺の知ってる博士は確か26歳……もっとおっさんかと思っていたら、ウォルズが前作の攻略本のキャラクター紹介に載っていたと豪語した。俺だって攻略本読み更けっていたのに。悔しい。

 そして俺が今19歳。

 この世界の博士は13歳以上だろう。つまり、6歳の俺が存在している世界になる。

 真っ赤な髪真っ赤な瞳、どう思われるんだろう。あ、そうか。そうだ、これは博士の記憶なんだから、他の人物の記憶に残るなんてことは……

 あれ、でも。

「……記憶なら何故ここまではっきりと把握されているんだ」
「はい?」

 自分の屋敷なら未だしも、この膨大な学園都市を、細部まで記憶していることなんて、例え博士でも無理じゃないか?

「……学園都市の全貌、見えるところない? 町には出られる?」
「は、はあ。まあ。学園内ではないですが、町中に立つ塔からなら全貌とまでは行きませんが見渡せますよ」
「案内してくれない? お忍びだから兵士にも見つかりたくないんだ。君しか頼めない。お願い」

 両手を握って真剣な眼差しをその瞳に向けると、またもや瞳が大きく見開かれる。

「…………私は、学生とは言え忙しい身なんですけど」
「そ、そこを何とか! 君しかいな——あ、いや、一人いるか」

 少年の顔がピタリと止まる。

「は?」
「テイガイアに頼んでみるよ。じゃあなディオン。また会ったら話そうな」

 名前を出した途端に食って掛かるように見上げられたが、手が頭を撫でる方が早かった。一瞬びっくりしたが、行動は起きないようだ。

 撫でる手をぼうっと見つめている。手を離せば、睨み付けられた。

「グラディオン・バークレイですから」
「ん? 何の呪文だ? あ、そうだ。テイガイア。……またな! ディオン」
「ちょ、だから、この俺は——」

 何か言っていた気がするが、博士は大分前に行ってしまった。急がないと追いつけるか分からない。

 それに学園内は広そうだし、見つかるかなぁ。迷わなきゃいいんだけど。




.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+.。.:✽・゜+





「……何なんだ、あいつ」

 グラディオンは小さな声で呟いた。

「この俺の頭を撫でる等……両親にだって撫でられたことないのに。……後悔させてやる。」

 激しい憎悪で表情が歪み切った。


「バン、この俺よりテイガイアを選んだこと、絶対に後悔させてやる……!」




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