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最強転入生と強そうに見えるポーズ
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空き教室。
最早、何も言うまい。
当然のような割れ窓と落書き。
荒れきっている。
照明の類も全て破壊され、窓から差し込む自然光だけが部屋を照らしている。
俺が椅子に座ると、彼女は目の前の机に正座した。
「モモちゃんの隣に立ちたいなら、聡明でなければなりません」
「はぁ」
「なので、私の悩みを聞いてくれたら認めましょう」
つまり悩み相談だな。
解決すれば自由の身か。これは逃げるより相談に乗ったほうが良さそうだ。
「見ての通り私は純血エルフ、ちっこいです」
「まあな」
「めっちゃ舐められるんですけど、良い案はありませんか? 先程も馬鹿にされて」
なるほど、だから苛ついていたのか。
つまり彼女は、小さいことがコンプレックスと。まあ妖精族はあまり成長しないからな。
経験則から解決策を探る。
低身長の人間がやっていた策でうまく行っていたもの、何かあったか?
……そうだ。
脳に閃きが走った。
「ちょっと飛んでみてくれ」
「え? わかりました?」
俺の言うまま、彼女はその場で浮遊した。
可愛らしい。だがこれでは威厳が足りない。
「足を閉じて、腕を組んでくれ」
「はい」
「そのまま、片足だけ軽く曲げてみろ」
「は、はい」
「背筋伸ばして顎引いて」
「なんか注文多くないですか?」
「いいから」
偉そうなポーズを取らせて観察する。
これは以前、俺を蹴落とそうとしていた背の低い同級生がやっていた格好だ。多少の差はあるが。
奴もそうだったが、小さくてもこれだけで威厳というものが少し出てくる。
落ちていた手鏡に彼女の姿を映す。
「どうだ?」
「す、すごい。大人っぽいかも」
瞳を輝かせて満足げだ。
あとは微調整を加える。可愛いらしい声は少し低く、視線は鋭く。
これは即日できるものでもないだろう。
練習あるのみ、だな。
「あと、これは周りに仲の良い誰かがいる時にやれ」
「何故です?」
「虎の威を借る何とやら、だ」
「な、なるほど?」
本当にわかっているのだろうか。
さて、これで解決だ。
授業も近いしそろそろ戻ろう。
「待ってください」
「何だ?」
「あの、早速試したいのですが」
……ああ、そういう事か。
ここまで付き合った仲だ。協力しよう。
俺が歩き出すと、後ろから少しだけ大人びた彼女がついて来る。
「そう言えばお名前は?」
「アップル・シードだ。お前は」
「バナーニャ・パルフェです。美化委員やってます」
「この学園の美化委員か、大変そうだな」
「そうなんですよ! 聞いてくださいよこの間も——」
初めての昼休み。
俺はちっこい少女に懐かれた。
最早、何も言うまい。
当然のような割れ窓と落書き。
荒れきっている。
照明の類も全て破壊され、窓から差し込む自然光だけが部屋を照らしている。
俺が椅子に座ると、彼女は目の前の机に正座した。
「モモちゃんの隣に立ちたいなら、聡明でなければなりません」
「はぁ」
「なので、私の悩みを聞いてくれたら認めましょう」
つまり悩み相談だな。
解決すれば自由の身か。これは逃げるより相談に乗ったほうが良さそうだ。
「見ての通り私は純血エルフ、ちっこいです」
「まあな」
「めっちゃ舐められるんですけど、良い案はありませんか? 先程も馬鹿にされて」
なるほど、だから苛ついていたのか。
つまり彼女は、小さいことがコンプレックスと。まあ妖精族はあまり成長しないからな。
経験則から解決策を探る。
低身長の人間がやっていた策でうまく行っていたもの、何かあったか?
……そうだ。
脳に閃きが走った。
「ちょっと飛んでみてくれ」
「え? わかりました?」
俺の言うまま、彼女はその場で浮遊した。
可愛らしい。だがこれでは威厳が足りない。
「足を閉じて、腕を組んでくれ」
「はい」
「そのまま、片足だけ軽く曲げてみろ」
「は、はい」
「背筋伸ばして顎引いて」
「なんか注文多くないですか?」
「いいから」
偉そうなポーズを取らせて観察する。
これは以前、俺を蹴落とそうとしていた背の低い同級生がやっていた格好だ。多少の差はあるが。
奴もそうだったが、小さくてもこれだけで威厳というものが少し出てくる。
落ちていた手鏡に彼女の姿を映す。
「どうだ?」
「す、すごい。大人っぽいかも」
瞳を輝かせて満足げだ。
あとは微調整を加える。可愛いらしい声は少し低く、視線は鋭く。
これは即日できるものでもないだろう。
練習あるのみ、だな。
「あと、これは周りに仲の良い誰かがいる時にやれ」
「何故です?」
「虎の威を借る何とやら、だ」
「な、なるほど?」
本当にわかっているのだろうか。
さて、これで解決だ。
授業も近いしそろそろ戻ろう。
「待ってください」
「何だ?」
「あの、早速試したいのですが」
……ああ、そういう事か。
ここまで付き合った仲だ。協力しよう。
俺が歩き出すと、後ろから少しだけ大人びた彼女がついて来る。
「そう言えばお名前は?」
「アップル・シードだ。お前は」
「バナーニャ・パルフェです。美化委員やってます」
「この学園の美化委員か、大変そうだな」
「そうなんですよ! 聞いてくださいよこの間も——」
初めての昼休み。
俺はちっこい少女に懐かれた。
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