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18話「歪んだ愛」
しおりを挟むその光景には、モンスターどころか周囲の戦士まで恐れおののいた。
そして彼女は真紅の瞳を輝かせ、モンスターを睨みつけ唱える。
「『ブラック・プレッシャー』……!」
呪文と共に、マナの闇が一斉にモンスターへ襲い掛かる。
その恐ろしい光景に巨大なモンスターは一瞬白目をむくと、「きゃいん」とその体躯に似合わぬ情けない声を上げ逃げ出した。
マナの闇はそれを追跡しようとするが、その前にアウラは術を解除する。
闇が晴れ、静けさに満ちる周囲。
アウラはそれを確認すると、改めてフォルテへと振り返った。
以前のような気品は薄れ、おどろおどろしい雰囲気のアウラ。
しかしその中にもかつての美しさはあり、それがフォルテを確信させ、彼女に話しかけようとした。
しかしそれよりも早く、彼女はしゃがみ込みフォルテを抱きしめた。
その行動にフォルテは驚き思わず声を上げた。
「あ、アウラ!?」
「フォルテ様……! 本当にフォルテ様なのですね……っ!」
慌てるフォルテに対し、一方的に語りかけるアウラ。
そのまま彼女は、ため込んでいた心情をゆっくりと吐露しはじめた。
「800余年……コリュートの遺した言葉を信じ、ずっと、ずっと、あなたの復活をお待ちしておりました……っ」
「……そうか、待たせたな」
彼女の言葉から全てを察したフォルテは、小さな体で優しく抱きしめかえす。
忠臣としてフォルテの死後も彼に仕えていたアウラの孤独や苦悩は、長く彼女と共にいた彼にも全てはわかり得ない。
だからこそ、最大限のねぎらいとして彼女の言葉を受け入れたのだった。
……しかしそんな彼の気も知らず、アウラの鼻息は荒かった。
彼女が変化したのは、決して外見だけではなかった。
フォルテへの《愛の形》も、800年の時を経て変化していたのだ。
(ああ、フォルテ様の匂い……フォルテ様の温もり……柔らかな髪の感触……遺品だけでは感じられなかった、生のフォルテ様の実感……幼い頃、出会ったばかりの頃を思い出すようで……)
(とても、そそります……♡)
――それはもう歪に、偏愛的に変容していた。
★☆★☆★
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