不自由な織田信長
織田信長はお忍びで森蘭丸と共に相撲見物に出かけ、そこで己の生き様と価値観とについて豪放に語る。
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江戸時代にはたくさんの随筆が書かれました。
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そういったものを選んで、小説としてお届けしたく思います。
同じ江戸時代を生きていても、その暮らしぶり、境遇、ライフコース、そして考え方には、たいへんな幅、違いがあったことでしょう。
しかし、夕焼けがみなにひとしく差し込んでくるような、そんな目線であの時代の人々を描ければと存じます。
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国家の侵略とは謀略である。気づいた時には敵国が自国の中枢にくい込んで相互不信におちいり内部分裂をおこす。この謀略に長けた国が日本を虎視眈々と狙っていたことを知る人は少ない。タイトルにある|赤蝦夷風説《あかえぞふうせつ》の赤蝦夷とは江戸時代のロシアの呼び名である。そのロシアが無断で蝦夷地(北海道)に上陸してアイヌの人々と交易をはじめたのは江戸時代中期のことだとされている。当時の日本は鎖国を行っていたため急速に極東アジアに侵攻するロシアのことをほとんど知らなかった。そのため北海道のはるか北にあるカムチャッカ半島をロシアと誤認してカムチャッカ半島の呼び名である赤蝦夷をロシアの国名としていた。
18世紀のはじめロシアはモスクワ周辺の小国の一つだった。そこから周辺国との戦いに勝利して約200年の間に世界最大の国土を有する帝国となった。ロシアの歴史は侵略と内紛を繰り返してきたことから未だに周辺国との緊張関係や秘密警察の動きがみられる。
18世紀後半、ロシアは中国(清国)との国境紛争を30年以上も続けながらカムチャッカ半島を越えて北太平洋に至った。そして日本に向けて南下を開始したのが、かの有名な田沼意次の時代だった。すなわちアメリカが開国を迫った100年以上も前に日本に通商を持ちかけたのである。そのときすでにロシアは日本侵略をもくろみ松前藩の領地に拠点をつくりアイヌに密貿易をもちかけて日本の出方をみていた。この強圧で微妙なロシアの動きに対して外交上の駆け引きを田沼意次の下でだれが担ったかは謎である。一説には幕府の財政再建のために田沼意次がロシア交易に前向きだったとされているが一方でロシアの脅威を調べさせていたことなどが残されている。
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