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第3話 妻を疑う夫、後宮に未練のある妻
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雹華は、元々は先代皇帝の妃として後宮入りした。成り上がった父親が浮かれて、娘をゴリ押しした形である。
しかし、それからたった一年半ほどで、先代は急病に斃れてしまった。
本来なら、皇帝が身罷ると、妃嬪たちは若い身空で尼寺に入るしかない。
十五歳で新しく立った今上皇帝は、彼女らに同情した。幼い頃に母皇后を亡くし、後宮の妃嬪たちに可愛がられて育った皇帝には、彼女らを尊重したいという思いがあった。
そして、父皇帝が手をつけていなかった妃嬪に限り、形だけ後宮を出してから、自らの妃嬪として呼び戻すと決めたのである。
これはかなり異例のことだったし、尼寺に入る方を潔しとして後宮を離れた妃嬪もいた。
しかし、戻った妃嬪もいた。
雹華は、戻った方の一人である。例によってあの父親が、一人娘の彼女を惜しんだのだ。
「たった一年とちょっとでは、先帝陛下の目に留まらなかったのは、まあ仕方ない。お前は一人しかいない実の娘だし、せっかく美人なんだし、尼寺にやるのはもったいない! 後宮に残り、次の機会に賭けるのだ!」
……というわけである。
しかし、新皇帝のその対処により、後宮内の勢力図は一変した。
雹華のような妃嬪たちは「お下がり」「人数合わせ」、そして新たに後宮入りした妃嬪たちは、自分たちこそ「正しい妃嬪」である、という雰囲気になったのである。
「正しい」組がそこここで、「お下がり」組の妃嬪たちを「お姉様」と嫌みったらしく呼ぶ光景が見られるようになった。
皇帝が妃嬪に同情しすぎるのも、考えものである。
とにかくそんなわけで、父の言いつけで残ったとはいえ、雹華はかなり肩身の狭い思いをした。
(そもそも、主上は私たちを、恐れながら母や姉の代わりのように思って心配して下さった。だから、お父様が期待するようなことは起こりようがないのよ)
ため息しか出なかった雹華である。
(でも、だからこそ、春燕を侍女にしたのに)
春燕は、後宮入りする前に雹華が教わっていた家庭教師の、孫娘だった。侍女になりたいというので、一年ほど前に、雹華が後宮に呼び寄せたのだ。
(なのに、彼女は主上の目にとまってしまった。彼女を置いて、私は後宮を出なくてはならなくなった……)
先帝から今上皇帝に。そして今回、さらに銘軒に下賜された雹華。
「お下がりのお下がり」になった上に、凶状のおまけつき。
いよいよ、父は怒るはずである。
さすがにそこまで詳しくは言えず、口ごもる雹華を銘軒はじろじろと見ていたが、やがて言った。
「とにかく、ご両親が婚礼のために都に出て来られるには、時間がかかるだろ。日取りは余裕を見て決める。まあ、一ヶ月後くらいだろうな」
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
お礼を言う雹華に、銘軒はさらりと言った。
「婚礼までは、独り身を楽しめばいい。俺も暇じゃないんでね」
「……はい」
食事を終えると、彼は立ち上がった。
「じゃ、出かけてくる」
「え、あっ」
雹華は一瞬腰を浮かせたが、彼はさっさと出て行ってしまった。
「雹華様」
背後で低い声がして「ひゃっ」と振り向くと、鈴玉が茶碗を乗せた盆を手にしたまま、額に青筋を立てている。
「何なんですか旦那様は! 妻を迎えた夜に一人で出かけるとか! 一応、もう今日から夫婦なんじゃないんですか!?」
雹華は彼女をなだめた。
「鈴玉、旦那様はおそらく、婚礼までは夫婦ではないとお考えなのよ」
鈴玉は盆を卓子に置きながら、つけつけと言う。
「雹華様も怒る時は怒らないと!」
「あのね鈴玉。旦那様はまだ、私を疑ってもいらっしゃるんだと思うの。しょうがないわ、こちらも証明できないのだし」
雹華は説明する。
「旦那様の立場になってみて。妙な噂のある女を家に置くのよ、不気味でしょ。こうして一緒に食事して下さっただけ、主上から贈られた妻として尊重して下さってる方だと思うわ。ありがたいことじゃない?」
鈴玉は口をひん曲げた。
「うぅ……ごもっともですけどぉ……」
「せめて婚礼までに、私の人となりを知っていただいて、それから夫婦になる方がいいと思わない? そう考えると、時間があってホッとするわ」
雹華は微笑んで見せた。
「今日は緊張して疲れたわ。せっかくだから、早めに休みましょう」
銘軒は外に出ると、通い慣れた道をぶらぶらと歩いていった。坊里の門は日没とともに閉まっているが、すぐ近くに行きつけの屋台がある。
同僚たちは高級料亭などにも出入りしているようだが、彼は庶民向けの店が多いごちゃごちゃした場所で過ごす方が落ち着いた。子どもの頃、そんな場所で暮らしていたせいかもしれない。
今の家も、そういう場所に行きやすい坊里を選んでいた。
「いらっしゃい。あれ、銘軒さん。いいんですか、少卿様がこんなところに来てて」
なじみの店主はそんなふうに言いながらも、いつもの酒の瓶をすぐに出してきた。
少卿、というのはつまり、彼が勤めている衛尉寺という役所の次官である。
妃を下賜されるのと同時に、彼には辞令が降り、少卿に昇進した。
「形だけの名誉職さ、仕事の中身は全然変わらないんだぞ。いいじゃないか」
銘軒はへらへら笑いながら、杯を受け取る。
(彼女は美人で、飾っとく分には目の保養なんだがな。さすがにいきなり初日から、毒を盛るような女とひとつの臥牀じゃ寝られねぇわ)
彼はそれで、しばらく外で時間を潰すことにしたのである。
夜半過ぎ。
帰ってきた銘軒は、家の中に入る前にふと、中院に回った。
(さすがに、もう休んだか)
雹華の部屋がある二階を見上げてみる。
灯りはついていない。
踵を返そうとした時、何か動いた気がして、銘軒はもう一度目を凝らした。
二階の格子窓が、開いているようだ。
夜の闇の中、張り出した縁に、人影がふわりと腰かけた。
(雹華?)
彼女は欄干にもたれ、夜空を見上げていた。
白い寝間着がぼんやりと浮かび上がり、まるで月世界の仙女のようだ。
わずかに身動きした雹華の頬で、何かがちらりと、光を反射する。
泣いているのだ。
(あっちは、宮城の方角……)
銘軒は、その様子を見つめながら思った。
(後宮に、思いを馳せているのか)
しばらくして、ふっ、と雹華の姿は見えなくなった。臥牀に戻ったのだろう。
銘軒もそっと後ずさり、自分の部屋へ向かう。
(何だあれは。後宮に、未練たっぷりじゃないか! ……しかし、あれだな、主上を本気でお慕いしていたとしたら)
若き新皇帝は、民想いの上に容姿端麗。繊細で芸事にも優れ、人気が高い。
(真逆の俺のような、繊細さのかけらもない男のところに下げ渡されたわけか。完っ全に、罰だな、これは)
彼は考える。
(てことはやっぱり、本当にやらかしたってことか? ……しかしそうなると、諦めきれずにブチ切れてもおかしくはない。一度はやってるってことだから)
銘軒は軽く身震いする。
(おー怖っ。やっぱり、家宝として大切にはするにしても、あまり深く関わりたくないな。向こうもその方が幸せだろう)
しかし、関わらないも何も、夫婦になるのだ。
(さっさと、心の内を晒け出させてやりたいもんだ。普段、あんなに取り澄ましていられたんじゃ、どんな人間かさっぱりわからない)
しかし、それからたった一年半ほどで、先代は急病に斃れてしまった。
本来なら、皇帝が身罷ると、妃嬪たちは若い身空で尼寺に入るしかない。
十五歳で新しく立った今上皇帝は、彼女らに同情した。幼い頃に母皇后を亡くし、後宮の妃嬪たちに可愛がられて育った皇帝には、彼女らを尊重したいという思いがあった。
そして、父皇帝が手をつけていなかった妃嬪に限り、形だけ後宮を出してから、自らの妃嬪として呼び戻すと決めたのである。
これはかなり異例のことだったし、尼寺に入る方を潔しとして後宮を離れた妃嬪もいた。
しかし、戻った妃嬪もいた。
雹華は、戻った方の一人である。例によってあの父親が、一人娘の彼女を惜しんだのだ。
「たった一年とちょっとでは、先帝陛下の目に留まらなかったのは、まあ仕方ない。お前は一人しかいない実の娘だし、せっかく美人なんだし、尼寺にやるのはもったいない! 後宮に残り、次の機会に賭けるのだ!」
……というわけである。
しかし、新皇帝のその対処により、後宮内の勢力図は一変した。
雹華のような妃嬪たちは「お下がり」「人数合わせ」、そして新たに後宮入りした妃嬪たちは、自分たちこそ「正しい妃嬪」である、という雰囲気になったのである。
「正しい」組がそこここで、「お下がり」組の妃嬪たちを「お姉様」と嫌みったらしく呼ぶ光景が見られるようになった。
皇帝が妃嬪に同情しすぎるのも、考えものである。
とにかくそんなわけで、父の言いつけで残ったとはいえ、雹華はかなり肩身の狭い思いをした。
(そもそも、主上は私たちを、恐れながら母や姉の代わりのように思って心配して下さった。だから、お父様が期待するようなことは起こりようがないのよ)
ため息しか出なかった雹華である。
(でも、だからこそ、春燕を侍女にしたのに)
春燕は、後宮入りする前に雹華が教わっていた家庭教師の、孫娘だった。侍女になりたいというので、一年ほど前に、雹華が後宮に呼び寄せたのだ。
(なのに、彼女は主上の目にとまってしまった。彼女を置いて、私は後宮を出なくてはならなくなった……)
先帝から今上皇帝に。そして今回、さらに銘軒に下賜された雹華。
「お下がりのお下がり」になった上に、凶状のおまけつき。
いよいよ、父は怒るはずである。
さすがにそこまで詳しくは言えず、口ごもる雹華を銘軒はじろじろと見ていたが、やがて言った。
「とにかく、ご両親が婚礼のために都に出て来られるには、時間がかかるだろ。日取りは余裕を見て決める。まあ、一ヶ月後くらいだろうな」
「はい。お気遣い、ありがとうございます」
お礼を言う雹華に、銘軒はさらりと言った。
「婚礼までは、独り身を楽しめばいい。俺も暇じゃないんでね」
「……はい」
食事を終えると、彼は立ち上がった。
「じゃ、出かけてくる」
「え、あっ」
雹華は一瞬腰を浮かせたが、彼はさっさと出て行ってしまった。
「雹華様」
背後で低い声がして「ひゃっ」と振り向くと、鈴玉が茶碗を乗せた盆を手にしたまま、額に青筋を立てている。
「何なんですか旦那様は! 妻を迎えた夜に一人で出かけるとか! 一応、もう今日から夫婦なんじゃないんですか!?」
雹華は彼女をなだめた。
「鈴玉、旦那様はおそらく、婚礼までは夫婦ではないとお考えなのよ」
鈴玉は盆を卓子に置きながら、つけつけと言う。
「雹華様も怒る時は怒らないと!」
「あのね鈴玉。旦那様はまだ、私を疑ってもいらっしゃるんだと思うの。しょうがないわ、こちらも証明できないのだし」
雹華は説明する。
「旦那様の立場になってみて。妙な噂のある女を家に置くのよ、不気味でしょ。こうして一緒に食事して下さっただけ、主上から贈られた妻として尊重して下さってる方だと思うわ。ありがたいことじゃない?」
鈴玉は口をひん曲げた。
「うぅ……ごもっともですけどぉ……」
「せめて婚礼までに、私の人となりを知っていただいて、それから夫婦になる方がいいと思わない? そう考えると、時間があってホッとするわ」
雹華は微笑んで見せた。
「今日は緊張して疲れたわ。せっかくだから、早めに休みましょう」
銘軒は外に出ると、通い慣れた道をぶらぶらと歩いていった。坊里の門は日没とともに閉まっているが、すぐ近くに行きつけの屋台がある。
同僚たちは高級料亭などにも出入りしているようだが、彼は庶民向けの店が多いごちゃごちゃした場所で過ごす方が落ち着いた。子どもの頃、そんな場所で暮らしていたせいかもしれない。
今の家も、そういう場所に行きやすい坊里を選んでいた。
「いらっしゃい。あれ、銘軒さん。いいんですか、少卿様がこんなところに来てて」
なじみの店主はそんなふうに言いながらも、いつもの酒の瓶をすぐに出してきた。
少卿、というのはつまり、彼が勤めている衛尉寺という役所の次官である。
妃を下賜されるのと同時に、彼には辞令が降り、少卿に昇進した。
「形だけの名誉職さ、仕事の中身は全然変わらないんだぞ。いいじゃないか」
銘軒はへらへら笑いながら、杯を受け取る。
(彼女は美人で、飾っとく分には目の保養なんだがな。さすがにいきなり初日から、毒を盛るような女とひとつの臥牀じゃ寝られねぇわ)
彼はそれで、しばらく外で時間を潰すことにしたのである。
夜半過ぎ。
帰ってきた銘軒は、家の中に入る前にふと、中院に回った。
(さすがに、もう休んだか)
雹華の部屋がある二階を見上げてみる。
灯りはついていない。
踵を返そうとした時、何か動いた気がして、銘軒はもう一度目を凝らした。
二階の格子窓が、開いているようだ。
夜の闇の中、張り出した縁に、人影がふわりと腰かけた。
(雹華?)
彼女は欄干にもたれ、夜空を見上げていた。
白い寝間着がぼんやりと浮かび上がり、まるで月世界の仙女のようだ。
わずかに身動きした雹華の頬で、何かがちらりと、光を反射する。
泣いているのだ。
(あっちは、宮城の方角……)
銘軒は、その様子を見つめながら思った。
(後宮に、思いを馳せているのか)
しばらくして、ふっ、と雹華の姿は見えなくなった。臥牀に戻ったのだろう。
銘軒もそっと後ずさり、自分の部屋へ向かう。
(何だあれは。後宮に、未練たっぷりじゃないか! ……しかし、あれだな、主上を本気でお慕いしていたとしたら)
若き新皇帝は、民想いの上に容姿端麗。繊細で芸事にも優れ、人気が高い。
(真逆の俺のような、繊細さのかけらもない男のところに下げ渡されたわけか。完っ全に、罰だな、これは)
彼は考える。
(てことはやっぱり、本当にやらかしたってことか? ……しかしそうなると、諦めきれずにブチ切れてもおかしくはない。一度はやってるってことだから)
銘軒は軽く身震いする。
(おー怖っ。やっぱり、家宝として大切にはするにしても、あまり深く関わりたくないな。向こうもその方が幸せだろう)
しかし、関わらないも何も、夫婦になるのだ。
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