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Episode 31 unforgettable blue
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元の世界に戻って来て、1週間が過ぎた。
私が泣き叫んだことで、両親が驚いて、酷く心配していたけれども、時も過ぎれば普通の日常に戻っていった。
不思議なんだけれども、私が異世界に行った日と、同じ日時に帰って来ていた。だから、戻って来た時は夜だった。そのまま、朝まで泣き続けて、翌日から学校を休んだ。
体調不良ということにして、1週間休んだ。その間、私は、本当に何もしなかった。
携帯電話をチラッと見たけれども、興味が湧かずに、ただボーーーーっとした。
夕陽を見ると、ジャンを思い出してしまうので、カーテンを閉めきった。
7日たってから、これ以上は両親を心配させられないと思いなおし、今日から学校に行くことにした。
「瑠奈ー!インフルエンザだった?大丈夫?」
久しぶりの友達。どこか頭がボーーッとしながらも、時間は過ぎていき、放課後まで一緒にいると、体も心も元に戻ってくるもので・・。
「ねぇ、卒業旅行とかってするの?」
「え~。なんだかんだ忙しくて難しくない?」
「あたし、近場なら行ける~♪」
「あ、ちょっと瑠奈!SNS放置しすぎ!」
「あ~ゴメン!これから見るね。」
友人に催促されて、SNSをチェックする。
学校の門を出て、みんなで駅まで歩きながら、私は、ある事に気がつく。
打ち込んだままで、返信していない文章。
その文面を見て、立ち止まる。
『How do you take such beautiful pictures?』
どうやったらこんなに素敵な写真が撮れるの?
『There is someone special in my life』
私の人生には特別な人がいる
『Who is the most important person in your life?』
あなたの人生で大切な人は誰ですか?
その質問は、私の心を抉った。
前は、この文章を見ても、何とも思わなかった。だけど、今は違う。痛いほどに突き刺さる。誰かを心から、愛したこともなかった私には、解らなかった感情。
何かを見て、思い出す人がいる。
美しいものを見て、見せたいと思う人がいる。
あなたがいれば、何もかもが何倍も美しく世界が輝いて見えた。
「瑠奈?どうした?」
友達の1人が気がついて振り返る。
「え?どうしたの?具合悪い?お腹痛い?」
必死で、涙を止めようとした。だけど、どうすることも出来ずに、涙が零れ落ちる。
私は、みんなに頭痛と腹痛がすると言い訳した。
最寄り駅まで友人が送ってくれて、改札を出て、近くの公園のベンチに座る。
「はぁ~っ。もうダメ。どうしたらいいの?」
大きな独り言を呟いて、空を見上げる。
心が痛くて苦しくて、どうにかなりそうだよ。
自分の体が、自分の思い通りにならない。
辛くて叫び出しそうになる。
もう、日が暮れ始めていて、空は薄い紫と桃色に染まって、世界中包まれていくみたい。こんなに綺麗な夕日を見せないで欲しい。
ジャンと一緒に見た、あの日の夕日のように綺麗で、胸を締め付けられてしまうから。
あの日、好きだって、何度も言ってくれた。私が先に死ぬのだとしても一緒にいたいと言ってくれた。あのままなら、ジャンが味わっていた苦しみだ。私が、あなたを愛していたという、証。
もう1度、会いたいよ。
どうしようもなく、あなたの声が聞きたいよ。
もう、2度と会えないって解っているのに、そう、自分に何度も言い聞かせれば言い聞かせる程に、会いたくなるの。
息が出来ない程に苦しくて、なんとか息をしようと、空を見上げて深呼吸をする。
夕焼けはどんどん変化していって、とばりの降りる藍色に変わっていく。
その藍色が、青い竜の色に見えてくる。
「・・・綺麗。」
もう、どうしようもなく、勝手に流れ落ちる涙は、放っておくことにして、とばりの降りる瞬間を携帯電話で写真に残した。
「ジャンの色だ」
そう思うと、なんだか嬉しくなった。
そのまま、SNSに写真を載せて、一言添えた。
unforgettable blue…
I want to see you again.
忘れられない青。もう一度、会いたい。
もう、届かない想い。言うことすら叶わないから、自分の心の内をSNSで吐き出す。
そのせいなのか、少しだけ、心が落ち着いてきた。
すると、UPした写真にコメントがつく。
Jean-Claude:『Did you remember?』
「・・・え?」
思わず、2度見する。
Jean-Claude
ジャン・クロード?
SNSのアイコンをタップして、確認する。年齢は23歳。アメリカ国籍。・・・いや、まさか・・・解ってる。違うってことは、解ってる。だけど、だけどだけど。同じ名前だなんて。
必死になって、この人のSNSを端っこから見ていく。
ナイアガラの滝、ケベック州、ロッキー山脈、オーロラ、など、様々な写真をUPしている。けれど、人が写っているものは無い。
写真には、いつも「Everything is going to be OK.」全て上手く行く。と、言葉が添えられている。異世界に行く前から、SNSで繋がっている人だ。どうして、今まで気がつかなかったの?同姓同名だったなんて。
SNSの最初の最初の写真は、メープルの葉っぱだった。葉っぱを持つ手が一緒に写っている。・・・これだけじゃ分からない。どんな人なのか、さっぱりだ。
私は、この人にメッセージを送ることにした。
Jean-Claude:『Did you remember? 』
コメントの言葉を、もう1度見返す。Did you remember?「 思い出した?」って、どうゆう意味?
Luna:『What does it mean?』どうゆう意味?
Luna:『what is your real name?』あなたの本当の名前は何?
Luna:『I have a friend with the same name as you.』私には、あなたと同じ名前の友人がいる。
ついつい、立て続けに質問攻めにしてしまう。
暫く待っても、返信が無かったので、とりあえず家に帰る。
お風呂に入って、ボーっとする。同姓同名の別人。そんなことは解っている。だけど、同じ名前だなんて、親近感しか湧かない。もっと、知りたい。もっと、話をしたい。
思い出した?ってどうゆう意味?
SNSは、知り合いしかフォロワーにしてない。この人とも会った事があるはずなんだ。うっすら記憶があるのは、カナダの祖母の家に行った時だ。確か・・・空港で?声をかけられたのだと思う。
よく知りもしない人と連絡先の交換なんてしない。だけど、この人とはSNSの交換をしたんだ。どうして?・・・わらかならい。そして、顔が思い出せない。
SNSの名前なんて見ていなかった。カメラのアイコンの人。そんなふうに思っていた。時々、素敵な写真をUPして、カメラマンを目指していて、最近カメラマンになったとSNSで報告していた人。
不思議だ。
どうして、同じ名前だと思うだけで、ジャンの生まれ変わりのような気持ちになってしまうのだろう?
その日、夜中まで待っていても、返信が無かった。
私が泣き叫んだことで、両親が驚いて、酷く心配していたけれども、時も過ぎれば普通の日常に戻っていった。
不思議なんだけれども、私が異世界に行った日と、同じ日時に帰って来ていた。だから、戻って来た時は夜だった。そのまま、朝まで泣き続けて、翌日から学校を休んだ。
体調不良ということにして、1週間休んだ。その間、私は、本当に何もしなかった。
携帯電話をチラッと見たけれども、興味が湧かずに、ただボーーーーっとした。
夕陽を見ると、ジャンを思い出してしまうので、カーテンを閉めきった。
7日たってから、これ以上は両親を心配させられないと思いなおし、今日から学校に行くことにした。
「瑠奈ー!インフルエンザだった?大丈夫?」
久しぶりの友達。どこか頭がボーーッとしながらも、時間は過ぎていき、放課後まで一緒にいると、体も心も元に戻ってくるもので・・。
「ねぇ、卒業旅行とかってするの?」
「え~。なんだかんだ忙しくて難しくない?」
「あたし、近場なら行ける~♪」
「あ、ちょっと瑠奈!SNS放置しすぎ!」
「あ~ゴメン!これから見るね。」
友人に催促されて、SNSをチェックする。
学校の門を出て、みんなで駅まで歩きながら、私は、ある事に気がつく。
打ち込んだままで、返信していない文章。
その文面を見て、立ち止まる。
『How do you take such beautiful pictures?』
どうやったらこんなに素敵な写真が撮れるの?
『There is someone special in my life』
私の人生には特別な人がいる
『Who is the most important person in your life?』
あなたの人生で大切な人は誰ですか?
その質問は、私の心を抉った。
前は、この文章を見ても、何とも思わなかった。だけど、今は違う。痛いほどに突き刺さる。誰かを心から、愛したこともなかった私には、解らなかった感情。
何かを見て、思い出す人がいる。
美しいものを見て、見せたいと思う人がいる。
あなたがいれば、何もかもが何倍も美しく世界が輝いて見えた。
「瑠奈?どうした?」
友達の1人が気がついて振り返る。
「え?どうしたの?具合悪い?お腹痛い?」
必死で、涙を止めようとした。だけど、どうすることも出来ずに、涙が零れ落ちる。
私は、みんなに頭痛と腹痛がすると言い訳した。
最寄り駅まで友人が送ってくれて、改札を出て、近くの公園のベンチに座る。
「はぁ~っ。もうダメ。どうしたらいいの?」
大きな独り言を呟いて、空を見上げる。
心が痛くて苦しくて、どうにかなりそうだよ。
自分の体が、自分の思い通りにならない。
辛くて叫び出しそうになる。
もう、日が暮れ始めていて、空は薄い紫と桃色に染まって、世界中包まれていくみたい。こんなに綺麗な夕日を見せないで欲しい。
ジャンと一緒に見た、あの日の夕日のように綺麗で、胸を締め付けられてしまうから。
あの日、好きだって、何度も言ってくれた。私が先に死ぬのだとしても一緒にいたいと言ってくれた。あのままなら、ジャンが味わっていた苦しみだ。私が、あなたを愛していたという、証。
もう1度、会いたいよ。
どうしようもなく、あなたの声が聞きたいよ。
もう、2度と会えないって解っているのに、そう、自分に何度も言い聞かせれば言い聞かせる程に、会いたくなるの。
息が出来ない程に苦しくて、なんとか息をしようと、空を見上げて深呼吸をする。
夕焼けはどんどん変化していって、とばりの降りる藍色に変わっていく。
その藍色が、青い竜の色に見えてくる。
「・・・綺麗。」
もう、どうしようもなく、勝手に流れ落ちる涙は、放っておくことにして、とばりの降りる瞬間を携帯電話で写真に残した。
「ジャンの色だ」
そう思うと、なんだか嬉しくなった。
そのまま、SNSに写真を載せて、一言添えた。
unforgettable blue…
I want to see you again.
忘れられない青。もう一度、会いたい。
もう、届かない想い。言うことすら叶わないから、自分の心の内をSNSで吐き出す。
そのせいなのか、少しだけ、心が落ち着いてきた。
すると、UPした写真にコメントがつく。
Jean-Claude:『Did you remember?』
「・・・え?」
思わず、2度見する。
Jean-Claude
ジャン・クロード?
SNSのアイコンをタップして、確認する。年齢は23歳。アメリカ国籍。・・・いや、まさか・・・解ってる。違うってことは、解ってる。だけど、だけどだけど。同じ名前だなんて。
必死になって、この人のSNSを端っこから見ていく。
ナイアガラの滝、ケベック州、ロッキー山脈、オーロラ、など、様々な写真をUPしている。けれど、人が写っているものは無い。
写真には、いつも「Everything is going to be OK.」全て上手く行く。と、言葉が添えられている。異世界に行く前から、SNSで繋がっている人だ。どうして、今まで気がつかなかったの?同姓同名だったなんて。
SNSの最初の最初の写真は、メープルの葉っぱだった。葉っぱを持つ手が一緒に写っている。・・・これだけじゃ分からない。どんな人なのか、さっぱりだ。
私は、この人にメッセージを送ることにした。
Jean-Claude:『Did you remember? 』
コメントの言葉を、もう1度見返す。Did you remember?「 思い出した?」って、どうゆう意味?
Luna:『What does it mean?』どうゆう意味?
Luna:『what is your real name?』あなたの本当の名前は何?
Luna:『I have a friend with the same name as you.』私には、あなたと同じ名前の友人がいる。
ついつい、立て続けに質問攻めにしてしまう。
暫く待っても、返信が無かったので、とりあえず家に帰る。
お風呂に入って、ボーっとする。同姓同名の別人。そんなことは解っている。だけど、同じ名前だなんて、親近感しか湧かない。もっと、知りたい。もっと、話をしたい。
思い出した?ってどうゆう意味?
SNSは、知り合いしかフォロワーにしてない。この人とも会った事があるはずなんだ。うっすら記憶があるのは、カナダの祖母の家に行った時だ。確か・・・空港で?声をかけられたのだと思う。
よく知りもしない人と連絡先の交換なんてしない。だけど、この人とはSNSの交換をしたんだ。どうして?・・・わらかならい。そして、顔が思い出せない。
SNSの名前なんて見ていなかった。カメラのアイコンの人。そんなふうに思っていた。時々、素敵な写真をUPして、カメラマンを目指していて、最近カメラマンになったとSNSで報告していた人。
不思議だ。
どうして、同じ名前だと思うだけで、ジャンの生まれ変わりのような気持ちになってしまうのだろう?
その日、夜中まで待っていても、返信が無かった。
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