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62.現実は、想像もゲームも超えていく④
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ミアの疑問はもっともで。
でも、こんな、力強く振られたら、大人でも揺さぶられっこ症候群になりそうだ。
『ラブプラ』で、闇の教団と主人公及び主人公を救出しに来た攻略対象者は、メーティスト神殿で対峙する。
そして、闇の教団はたくさんの孤児の命を犠牲に大量の精霊力を得て、オルトロスの召喚に成功するのだ。
ゲームでは、ほんの数行で過ぎていく事実だけれど、現実にはそうはいかない。
「神災が起こるという噂。
あれは、闇の教団による、予言のようなものだったんだよ。予言にしたかった、というか」
おれは、むしろ、宣戦布告だととらえたけど。
おれがそう言えば、ミアはぴたりとその動きをとめた。
「……え?まさか……」
「救済院の子供たち……定期的に精霊力欠乏症を患ってる子がいたこと。救済院でも、同じように命にかかわらない程度の欠乏症の人が多発していた。
さらに、おれの作った精霊力の蓄積器の窃盗。
これが、意味するところは、一つだ」
ミアの顔から、さっと血の気が引いた。
「本来は、たくさんの命を引き換えにしなければ、オルトロスの召喚は不可能だけど……精霊力の蓄積器があれば、話は違う」
膨大な精霊力を溜めおくことができる。
「おれの発見したメーティスト神殿で、おれが作った精霊力の蓄積器を使って、彼らが神災を起こそうとしているとしたら……。
おれが、止めない理由はないよね?」
おれは、結局、シリル・フォレスターなのだ。
おれ自身は召喚に直接的には関与していないけれど、おれの作ったものが結局はオルトロスの召喚を可能にしてしまった。
10年前も、今も。
ようやく、目の前に現れた、記憶の中と寸分の違いも無い漆黒の神殿を見上げた。
無機質な構造物は、生き物を拒むような、排他的な気配がする。これはメーティストの精霊力によるものだ。
常に一定の法則を遵守する厳格さが、感情を宿す人の身に余るのだ。
この、誰にでも公平で、すべても迷いを掻き消すような精霊力が、いつもはとても心地いいのに。
今はなぜだか、酷く落ち着かない。
蔦も草木も、木の葉すらも一切落ちていない、全く無駄のない無彩色の床も壁も、暗いような、明るいような、不思議な光を放っていた。
真っ直ぐに続く廊下は、先が薄暗く、ひどく見通しが悪い。
前回ここへ来たときは、怪我をして引きずられていたため、こんな場所だったのかと、改めて観察する。
おれの腕にぴったりとくっついて、周囲を警戒しながら歩くミアは、ちゃんと可愛い女の子だな、と思った。
おれは、ミアと二人、あの忌まわしい記憶の残る、祭壇へと歩みを進める。
その祭壇は、まるで突然差し込んだ強い光のように、目の前に現れた。
そして、そこにいたのは。
「ふぅ……ほら、貴方が遅いから。シリル兄さんが来てしまったじゃない」
テオドールだった。
テオドールが、祭壇上で知らない男の後頭部を思いっきり踏みつけにしている。地べたを舐めているその男は、悲鳴にもならないうめき声をあげていた。
「何言ってやがるっ!最新の精霊力自走車をぶっ壊すくらい、とばしただろうがっ!!」
そして、近寄り難いのか、少し離れたところにダニエルが立っていて。
額に汗を浮かべながら、切々と「落ち着け」だとか、「そのくらいでいいだろう」とか、「他にやることがあるんだよ」などと、テオドールを制止しようと訴えている。
祭壇の周囲には、たくさんの教団員と思しき人々が、まるで屍のように累々と折り重なって倒れている。
ええ……っと。なんか、思ってたのと、違うんだけど。
でも、こんな、力強く振られたら、大人でも揺さぶられっこ症候群になりそうだ。
『ラブプラ』で、闇の教団と主人公及び主人公を救出しに来た攻略対象者は、メーティスト神殿で対峙する。
そして、闇の教団はたくさんの孤児の命を犠牲に大量の精霊力を得て、オルトロスの召喚に成功するのだ。
ゲームでは、ほんの数行で過ぎていく事実だけれど、現実にはそうはいかない。
「神災が起こるという噂。
あれは、闇の教団による、予言のようなものだったんだよ。予言にしたかった、というか」
おれは、むしろ、宣戦布告だととらえたけど。
おれがそう言えば、ミアはぴたりとその動きをとめた。
「……え?まさか……」
「救済院の子供たち……定期的に精霊力欠乏症を患ってる子がいたこと。救済院でも、同じように命にかかわらない程度の欠乏症の人が多発していた。
さらに、おれの作った精霊力の蓄積器の窃盗。
これが、意味するところは、一つだ」
ミアの顔から、さっと血の気が引いた。
「本来は、たくさんの命を引き換えにしなければ、オルトロスの召喚は不可能だけど……精霊力の蓄積器があれば、話は違う」
膨大な精霊力を溜めおくことができる。
「おれの発見したメーティスト神殿で、おれが作った精霊力の蓄積器を使って、彼らが神災を起こそうとしているとしたら……。
おれが、止めない理由はないよね?」
おれは、結局、シリル・フォレスターなのだ。
おれ自身は召喚に直接的には関与していないけれど、おれの作ったものが結局はオルトロスの召喚を可能にしてしまった。
10年前も、今も。
ようやく、目の前に現れた、記憶の中と寸分の違いも無い漆黒の神殿を見上げた。
無機質な構造物は、生き物を拒むような、排他的な気配がする。これはメーティストの精霊力によるものだ。
常に一定の法則を遵守する厳格さが、感情を宿す人の身に余るのだ。
この、誰にでも公平で、すべても迷いを掻き消すような精霊力が、いつもはとても心地いいのに。
今はなぜだか、酷く落ち着かない。
蔦も草木も、木の葉すらも一切落ちていない、全く無駄のない無彩色の床も壁も、暗いような、明るいような、不思議な光を放っていた。
真っ直ぐに続く廊下は、先が薄暗く、ひどく見通しが悪い。
前回ここへ来たときは、怪我をして引きずられていたため、こんな場所だったのかと、改めて観察する。
おれの腕にぴったりとくっついて、周囲を警戒しながら歩くミアは、ちゃんと可愛い女の子だな、と思った。
おれは、ミアと二人、あの忌まわしい記憶の残る、祭壇へと歩みを進める。
その祭壇は、まるで突然差し込んだ強い光のように、目の前に現れた。
そして、そこにいたのは。
「ふぅ……ほら、貴方が遅いから。シリル兄さんが来てしまったじゃない」
テオドールだった。
テオドールが、祭壇上で知らない男の後頭部を思いっきり踏みつけにしている。地べたを舐めているその男は、悲鳴にもならないうめき声をあげていた。
「何言ってやがるっ!最新の精霊力自走車をぶっ壊すくらい、とばしただろうがっ!!」
そして、近寄り難いのか、少し離れたところにダニエルが立っていて。
額に汗を浮かべながら、切々と「落ち着け」だとか、「そのくらいでいいだろう」とか、「他にやることがあるんだよ」などと、テオドールを制止しようと訴えている。
祭壇の周囲には、たくさんの教団員と思しき人々が、まるで屍のように累々と折り重なって倒れている。
ええ……っと。なんか、思ってたのと、違うんだけど。
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