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15.重大な有害事象① ※

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「シリル兄さん、ちゃんと布団に入って寝ないと風邪をひくよ」

 んー……?なに?

「………あれ?テオ……どうしたんだ?」

 ここ、おれの寝室だよ?部屋間違ってるじゃん?

「ごめんね。遅くなって」
「んー……?」

 ああ、そういえば今日から一緒に寝るとかなんとか言ってたっけ。

 なんだよ、遅くなっても、疲れててもテオは本当にきれいな顔してるなぁ。

 こんなに近くでテオをまじまじ見たの久しぶり。頬っぺたすべすべじゃん。毛穴なくない?
 こんな完璧な造形はまさに神業だよ。

「神様って、すごいなぁ」
「………シリル兄さん、もしかしてお酒飲んだ?」
「ん……少しだけ、な」
「はぁ……なるほど、それでこんなに寝ぼけてるのか」

 テオが仕事で頑張ってたのにお酒飲んで寝てるなんて、なんか悪いことしたな。

「ごめんな、テオ」
「別に怒ってないよ……ただ僕が耐えられるかな、て」
「んー?……いま、なんじ?」
「ちょうど0時だよ」

 そんなに遅い時間なのか。
 寝れない寝れないと思ってたけど、知らない間にがっつり眠ってたみたいだ。

「おつかれさま。テオは……いつも、こんなにおそいのか?」
「昨日の今日だからね。各部署への対応に追われて、忙しかったんだ。あとは、少し処理することがあって」
「そうかぁ……テオは、いつも頑張ってるなぁ」

 おれの上に覆いかぶさるように覗き込んでいるテオドールに手を伸ばす。

「えらい、えらい」

 おれが頭を撫でるのを無防備に受け入れてくれるテオは、どうみてもおれの可愛い弟だ。

「はあ…テオのかみ、さらさらできもちいい」

 テオの頭にこんなにしっかり触るのも久しぶりだな。
 この手触り、病みつきになるんだよね。

 小さい頃は良く撫でてたんだけど、身長が追い付いてきて、あっと言う間に越されちゃったから、撫でるのも難しくなって。

 指に通しても全然絡まなくて、しっとりのさらさらのつるつる。
 へへ、両手で撫でちゃうもんね。よしよし~なでなで~……テオも気持ちよさそうだなぁ。
 目を細めてうっとりされると、おれもうれしくなっちゃうよ。

「もうすぐ業務が落ち着けば、もっとシリル兄さんと一緒にいれるから」
「そうなの?それは嬉しいけど……無理するなよ?」

 ただでさえ忙しいのに、働き過ぎたら身体壊しちゃうから。それは絶対にダメだ。

「無理なんてしてないよ」
「テオもしたいこと、たくさんしていいからな」

 おれは、テオのお陰でたくさんしたいこと、させてもらってるから。

「おれもテオのために何かしてあげられたらいいんだけど……」

 撫でていたテオドールの頭がゆっくりと降りてきて、おれの胸元に顔を沈めた。そこで、大きく1回深呼吸をされたから、息がかかってくすぐったくて仕方がない。

「ひぁっ……テオ、くすぐったいって……」
「シリル兄さん、いい匂い」
「ああ…おふろ、はいったから」

 この世界では毎日入浴するのは一般的じゃないけど、元日本人としては譲り難い習慣だ。

「ドミール草の香り?」
「そう。今、薬草園でそだててんの。これ……あたらしい、せっけんで」

 ドミール草は日当たりのいい乾燥した場所を好む薬草の一種で、鎮静作用などがある。香草として料理にも使われることがある、比較的一般にもメジャーな薬草だ。

 前世でいうところのラベンダーのようなものを想像してもらうといい。
 爽やかな果実のような甘い香りは、緊張をとり不安を和らげたり安眠をもたらす効果があるので、おれは好きな香りなのだけど……テオが嫌いじゃなくてよかった。

 ふわふわと眠気の中で夢心地でいると、テオドールがぎゅっと抱き着いてきた。のっしりと圧し掛かる体重が心地いい。

「なんだぁ?今日は、なんだか、あまえんぼうだなぁ……ふふ」

 よしよしと片手で頭を撫でながら、もう片方で背をさする。

 ……なんか、丈夫そうな背筋だな。ちょっとやそっとじゃ倒せなそう、ってテオ倒すことなんて無いけどさ。

 もぞもぞとテオドールが動く気配がして、手が寝間着の上を腹から胸元までさわさわと撫でていく。

「んっ……テオ…くすぐんないで…」

 おれがくすぐったがりなの、知ってるよな?

 テオを見るとこちらを見上げた銀色の瞳と目が合って、真剣な眼差しの奥がちらちらと何かが揺れているような気がした。

 あ、橙色の照明が反射して、べっこう飴みたいで甘くて美味しそう。

 うっすら開いたテオの唇がとても艶めかしくて、色っぽい。その唇が触れるか触れないかの距離でおれの胸をなぞっていって、息がかかってくすぐったい。

 ぶるっとする。

 そして、テオドールは突起を見つけてそのまま服ごと口に含んだ。

「ふはっ…テオ……あかちゃんみたい……あ、あぁっ…ん、なにっ」

 服の上から強く吸い付かれて、テオドールの温かい口の中で生地と乳首が擦れて、覚えたての感覚にぐっと腹の奥から何かが湧き上がってきた。
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