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Ⅲ.大好きな卵編

80.僕、プロポーズしちゃいました①

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 リッキーってば、そんなことまで話してたっけ?

 …………ていうか、ヴァル。
 今、リッキーの真似したよね?え?今の確かにモノマネだったよね?

 似てなかった。

 ものすー……っごく似てなかった。似てな過ぎてびっくりした。
 へへへ。器用なヴァルにも苦手なものがあったんだね。

 ちょっと照れてるとことか、ホント可愛いんだから!

「隠して何の意味があんだよ」
『むう……。
 だって……僕、ただでさえアレなのに、さらにアレだって知られたら、アレじゃない』
「ただでさえ“迷い星”が混じって普通じゃないのに、さらに竜気の吸収が下手だって知られたら、ガッカリされる、か?」
『そうそう。それだよ、それ!
 でもでもっ……僕、確かにちょっと不完全で、意識してないと黒い竜気が吸収できない……けど。
 でもっ!ちゃんと気を付けてれば、吸収できるから!問題ないし!』
「そんな必死に弁明しなくてもよ。
 別に今更!お前が多少ぽんこつだって、ガッカリしねーよ」
『ぽ……ぽんこつ……』
「それよりもな。ルルド、お前、竜のくせに俺より黒い竜気を引き寄せる力が弱いんだよ」

 え。

『ホントに?……あっ!……そっか。だから…』
「そうだよ。黒い竜気は常に俺からお前に向かって流れてる。
 それをたどれば、俺はいくらでもお前にたどり着けるんだよ」

 な……なんてことだっ!

 これってつまり、僕がどこにいてもヴァルにはわかっちゃうってことじゃない。

 ええぇぇぇ……っ……じゃあ、じゃあ……僕が、こっそりこそこそ、誰にも見つからないように遠くに来たのも、全部意味がなかったってこと!?

 もうっ!もう!!ヴァルってば、どんだけ黒い竜気に好かれちゃってるわけ!?

 まぁ、竜気は竜をつくる源で、竜は竜気の結晶だから。
 つまり僕は黒い竜気の塊ってことで、黒い竜気はつまり、僕そのものと言ってもいいわけで……。

 うん。なるほど。
 そりゃあ、いくらでもヴァルに寄っていっちゃうよね!

 わかる、わかる。納得しかない!

 ああ……でもまさか、こんなことになるなんて。
 ただでさえ普通じゃなかった僕は、さらに竜としてもかなりぽんこつなのかも。

 でも、あの時、ヴァルを助けるために、本来より早くリッキーに竜気をもらったことは絶対に後悔しないよ。これからも絶対に後悔することなんてない。

 だって僕、何度だって、ああする自信があるから。絶対に、間違いなく。

「わざと、だからな」
『……わざとって……何が?』
「お前が前倒しで成熟したのも、そうなるよう俺が謀ったっつー意味だよ」
『へ……?』
「だから。またお前が迷子にならないように……なってもすぐに見つけられるように、俺がお前に鎖をつけておいたっつってんだよ」

 え?ええ?鎖……?どういうこと?僕、そんなのついて無いよ?

「俺はな。今みたいな事態を……お前がうだうだとくだらねぇこと考えて、俺の前から消えるっつーのも、まぁ、ある程度の確率で起こるだろうと予想してたんだよ。
 ルルドが赤銅竜の竜気を受け取ったタイミングで、うじうじと訳分かんねぇこと考えて、迷走するかもなってな。最も危惧してたと言ってもいい」

『ええー!?』

「だから、俺はあえて、あのタイミングで……まだ『その時』じゃない時点で、ユーリの出す“澱み”を受けて、お前がさっさと一人前にならなきゃならねぇようにした。
 お前が、俺を助けるために、絶対にそうするだろうと踏んで。
 お前を『その時』に先んじて成熟させれば、黒い竜気が俺らを繋ぐ。今みたいにな。
 そうすれば、お前がどこに行っても、俺はお前を捕まえることができるってな」

『っ!!……そんなことのために、あんな危ないことしたの!?』

「そんなことのため、だと?ふざけんなよ。
 お前が完全にまともな竜になってたら、俺は絶対にお前を探せないじゃねぇか。
 十分な理由だ。大正解だろ。こうして鎖でもつけとかなきゃ、俺はもう二度とお前に会うことすら叶わなかったんだぞ。違うか?」

『そ……それは……』

「俺は自分のこの“澱み”を……ルルドの黒い竜気を溜め込む性質に、散々辛酸を舐めたのも事実だし、勝手に人につまんねぇもん押し付けやがって、ってそう思ってきたよ。
だから、開き直った。俺の性質もんなんだ。多少、俺のいいように使ったって問題ねぇよな?」
「多少どころか、じゃんじゃん好きに使っちゃって!」

 ………って、違う!違うから!!

 ああ、もう。なんで……?

 なんで、そこまでしてヴァルは……。
 僕なんかのために……。
 僕は……、だって僕はこれまでずっと……。

「ルルド。お前、俺の将来の夢、覚えてるか」 
『………え?』 
「覚えてるかって、聞いてんだよ」 
  
 そんなの。忘れるはず無いじゃない。 
  
『田舎でのんびり白い犬でも飼って、手作りのものに囲まれて細々とでも長生きすること』
  
 ヴァルのことなら、些細なことでも全部、覚えてるよ。
  
「ルルドがいれば、俺の将来の夢は完璧に叶うんだよ」 
『………そんなの……』 
「言っただろうが。拾ったら最後まで責任を持つもんだって」 
  
 言ってたけど……。

 だけど……。
  
「だから、お前が責任取るつもりがあるんなら、俺に教えろよ。お前のちゃんとした名前」 
  
 僕のちゃんとした名前……?

「ルルドの真名。俺に教えろ」 
『……っ』

 僕の真名。

 竜の真名は、竜が生まれた時から定まっている、竜本人しか知り得ない名だ。
強い力を伴うが故に、口にするだけで、知るだけで、互いの存在を縛る盟約になる。

「ずっと、一緒にいてやるよ。いや、いさせろ。最期まで」 
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