199 / 238
Ⅲ.大好きな卵編
79.僕、迷子のお知らせ希望してませんけど……?⑤
しおりを挟むえーっと………ヴァルはどうして、僕がヴァルを好きだってわかったんだろう。
好きって、好きってそういう好きだよね……?
僕が自覚したのだって、最近なのに。
うーん……………。
ま、いっか!どうせホントのコトだし!
「それでも、どうしてだかくだんねぇ疑いが捨てきれなかったんだよ。
お前が黒い竜気のために……それだけのために、俺にたかってんじゃねぇかって。ずっと疑ってた。
これって予言のせいで……回帰するたびに、繰り返し黒き竜にいいように使い捨てにされてたから、だよな?」
『っ!』
「違うか?」
『…………ちがわ……ない。その通りだよ』
そうだよ。
ヴァルが覚えてなくても、無かったことにはならないから。
ヴァルが繰り返し傷つけられてきたことは、ずっと、ずっと……ヴァルの魂に記憶されている。
『それがわかってるなら……っ!』
「だから、俺が今、救済の予言に物申すことは、一つだけだよ。
あんだけわかりやすかったルルドの言動に、無駄に懐疑的になって、時間を無駄にしたじゃねぇかって。それだけだ」
それだけって……。
「あれが無けりゃあ、俺は……もっと正しく、早く、お前の感情を理解できたのになって、ムカつくよ」
いやぁ……おかしいよ。あるでしょ。もっと、こう………他にたくさんあるでしょ。
恨み、とか。つらみ、とか。
僕の心情とは裏腹に、ヴァルはすっきりとした顔をしていて。
ヴァルの手が僕の頬を解放し、乱れた毛並みを整えて、僕の首にかかった首飾りに触れて、じっと僕の瞳を覗き込む。
「お前は、お前だろ。ルルド」
『ヴァル……』
「行き先もアテも無く彷徨ったあげく、腹ぺこで死にかけて、土も食っちまうような、自分のことも何もわかってねぇ、鈍くさい上に、食い意地が張ってて、その癖、訳わかんねぇこといつまでもうだうだもだもだ考えてる、駄竜だよ」
『………うっ』
「で、真っ白でふわふわの手触り最高の極上の毛並みがあって、俺が死にかけるたびに腹をならしては、俺を見つけてくれて、温めてくれて、救ってくれた。
俺がヤバイときに思い浮かぶのは、いつだってお前だ」
ヴァルの指の背に鼻先を撫でられて、ふわりと優しいイイ匂いに擽ったくて。
僕の鼻が勝手にスピスピと鳴った。
うう……ダメだぁ……。僕のしっぽが……しっぽが、正直すぎる。
勝手にぶんぶん揺れちゃうっ。
「俺にとっては、お前はお前だけだよ。ルルド。
他のお前なんて知らねぇし、要らねぇよ」
『ヴァル……』
「それがすべてだ。それでいいじゃねーか」
それでいい。
そう……なのかな。
でも……僕は……やっぱり……。
ぶんぶん振れていたしっぽが、徐々にゆっくりとなって。また、くったりとうなだれた。
考え込む僕の頭の上から、はぁ……と聞きなれた大きなため息して、ふわふわと白い毛を揺らした。
「あのな、ルルド。お前、俺が偶然ここにたどり着いたと思ってんのか?」
へ……?どういう意味?
「こんな森の中、どうやってたまたま来んだよ。馬鹿」
『え?だって、……だから……院長のもってる土地だから……でしょ?』
見回りとか、整備とかそういうのでヴァルは来たんでしょ。
さっき、自分で言ってたじゃない。もう忘れちゃったの?
うーん。でも、ここって、この森でもかなり奥深いとこなんだよね。誰も見回りなんて来たこと無いし。
……………さては、ヴァルの方こそ迷子だね?
「なんだ。その仕方ないなぁ、みたいな微笑みは。
…………まぁ、実際、カーリー家には言い伝えがあるらしいけどよ。
この地には他の侵害を許さない白い守り神がいるってな」
ふーん。
「何を他人事みたいな顔してんだ。お前のことじゃねーか」
『えー?』
心当たりがないんだけど。だって、こんな何もないところで何を守るの?
『僕は、今も昔もぼーっとごろごろしてただけだし!』
そりゃあ、ヴァルのご飯とかなら、何がなんでも死守するけどさ。
「んなこと胸張んなよ。
はぁ……今は言い伝えはどうでもいいんだよ。
俺がここがわかったのは……お前のいる場所がわかったのは、お前の竜気をたどったからだよ」
『へ?』
ええっと……竜気をたどるって、どういうこと??
「竜は意識せずとも、流れるように自分の竜気が集まってくるって言うが。
お前、予定より早く赤銅竜の竜気をもらったせいで、自分の竜気の取り込みが自然とできないんだろ?」
ギクリッ
『…………えー……?なんのこと?』
僕、全然わからないなぁ。
「んな毛を逆立てて、尻尾ゆらゆら自信なさそうにしてとぼけても、バレバレだっつーの。
赤銅竜の長も、言ってただろう。
竜気を早めにもらった場合、『黒い竜気の取り込みに、何かしらの支障をきたすだろうな。通常竜は、意識せずとも己の竜気がおのずと流れてくるものだが……意識せねば、取り込めぬこととなるだろうよ』って」
「え。」
0
お気に入りに追加
1,446
あなたにおすすめの小説
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
転生先がハードモードで笑ってます。
夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。
目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。
人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。
しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで…
色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。
R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる