上 下
178 / 238
Ⅲ.大好きな卵編

58.僕、おかしなことに気づいてしまいました③

しおりを挟む
 え。……れんじょうって……もしかして、恋情?

「本来ならば、竜の根幹を揺るがす危険極まりない感情だろうに──」
「え?ええー!?ちょっと待って!!」
「なんだ?」
「えーっと………それって……僕が、ヴァルを……そういう意味で、好きってこと?」
「そういう意味とは?」
「だから、その……恋愛的な……そういう意味ってこと!」
「違うのか?ルルドは、あの者を好いているのだろう?」
「そりゃあ……好きだよ。好きに決まってる。……だけどっ」
「あの者がルルドの以外の他者へ、興味関心を持つことに心が乱される。
 それを、人の感情では嫉妬、やきもち、ジェラシーなどと言うのではないのか?」
「へ?」

 嫉妬?やきもち?ジェラシー……?

「ルルドは、あの者に己のみを見てほしいと、一番でありたいと思っているのだろう?
 独占と所有、執着を募らせる強い恋慕の情の表れではないか」
「えーっと……」

 独占、所有……執着。

『ヴァルが僕のお世話だけしてくれて、僕のご飯だけ作ってくれたらいいのにって思っちゃって……』

『僕の方が、ずっとずっとヴァルのこと見てるし、いっぱいいっぱい知ってるし、誰よりも一番わかってるって、あの人たちにわからせたかったんだもん!!!』

『僕……イヤだったんだもん。仕方ないじゃない。どうしても、イヤだったの。
 ヴァルが、僕以外の誰かにご飯作るのも、僕以外の誰かのお世話するのも……イヤでイヤで仕方なかったんだから』

「何より、ルルドはあの者にのみ、愛欲を抱くのではないか?」

 愛欲……。

「色欲、肉欲、淫欲……劣情、肉体的欲望もしくは──」
「いや!言葉の意味はわかるから!!」

 僕がぽかんとしてるのは、ただびっくりし過ぎて理解できないだけで。

「あの者だけに刺激され、自慰に耽ることが何よりの──」
「えええええぇぇぇぇっっっ!!???」

 はぁ!?………はぁ!?!?!ええ!!ええええ!!??
 何言ってんの、この竜ってば!!

「え?…………まさか……。まさかだけど、リッキー……あの時、見てたの?」

 まさか、僕が久しぶりに見たヴァルにきゅんきゅんして、こっそりと一人で気持ち良くなってたのを、見てたってこと……?

「先ほども言ったであろう。竜には伝わってくるものを遮るすべはない」

 あ。そう。

 いやいや、違うでしょ!
 見えたから仕方ないだろうってそういう問題じゃないから!!
 うーん、確かにあんな場所で、あんなことしてた僕も悪いかもしれないけどさ!

 でもさ。それを相手に伝えずに黙って秘めておくっていう配慮もあると思うんだよ。
 ていうか、世の中の多くは、その見て見ぬふりで成り立ってると思うんだけど!?

 いやね。僕が言うのもおかしいのかもだけど。僕が言うなって感じかもだけど。

 竜って、やっぱり変。

 えーっと………うん。

 つまり……………なんというか。

 僕、ヴァルのことが、好きってこと……?
 その、愛しいとか、恋しいとか……恋人になりたいとか……性的なものを含んだ意味で好きってこと?

 え。ホントに?

 あ……う………わあぁぁぁぁぁぁ………っ。

 あ。あー……うわぁ……うわあぁっ……うわぁぁ……何これ。
 なんだか、すごく恥ずかしい。恥ずかしくて、ドキドキする。ドキドキして、胸が苦しくて。

 今、僕、ものすごく、ヴァルに抱き着きたい。
 僕、ヴァルのあのイイ匂いが嗅ぎたい。
 僕、全部全部、ヴァルに包まれたい。

 うん。
 うんうん。
 そっか……そうなんだ。

 そうなんだね、僕。

「僕、ヴァルが……ヴァルだけが、好き。大好き」

 口に出して、言葉にして。自分の声が言語として耳へと届き、心に刻まれる。

 すとんと僕の中にキレイに収まった。

 僕…………ヴァルが、好きなんだ。そういう意味で。

 僕、ヴァルを愛してるんだ。

 はぁ。もう。

 僕がヴァルを好きだなんて。

 そうか。ヴァルを見てドキドキするのも、ヴァルにくっつきたいと思うのも。ヴァルとずっと一緒にいたいと思うのも。

 ヴァルといるだけで、身体も心もポカポカして、全部全部満たされた感じがして……とっても、幸せな気持ちになるのも、僕がヴァルを好きだからなんだ。


 僕はやっと理解した。

 そして、理解できなかった。


 だって……。


 こんなおかしなことある??

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の兄になったなんて知らない

さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を レインは知らない自分が神に愛されている事を 表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346

転生先がハードモードで笑ってます。

夏里黒絵
BL
周りに劣等感を抱く春乃は事故に会いテンプレな転生を果たす。 目を開けると転生と言えばいかにも!な、剣と魔法の世界に飛ばされていた。とりあえず容姿を確認しようと鏡を見て絶句、丸々と肉ずいたその幼体。白豚と言われても否定できないほど醜い姿だった。それに横腹を始めとした全身が痛い、痣だらけなのだ。その痣を見て幼体の7年間の記憶が蘇ってきた。どうやら公爵家の横暴訳アリ白豚令息に転生したようだ。 人間として底辺なリンシャに強い精神的ショックを受け、春乃改めリンシャ アルマディカは引きこもりになってしまう。 しかしとあるきっかけで前世の思い出せていなかった記憶を思い出し、ここはBLゲームの世界で自分は主人公を虐める言わば悪役令息だと思い出し、ストーリーを終わらせれば望み薄だが元の世界に戻れる可能性を感じ動き出す。しかし動くのが遅かったようで… 色々と無自覚な主人公が、最悪な悪役令息として(いるつもりで)ストーリーのエンディングを目指すも、気づくのが遅く、手遅れだったので思うようにストーリーが進まないお話。 R15は保険です。不定期更新。小説なんて書くの初めてな作者の行き当たりばったりなご都合主義ストーリーになりそうです。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

処理中です...