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Ⅲ.大好きな卵編
35.僕、奇跡を起こすかもしれません③
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そんなこんなで、波乱の幕開けとなったヴァルとの旅路。
僕とヴァルが合流して5日が過ぎた。特に大きな騒動もなく日程も、着々と旅は進行する。
ヴァルはやっぱり先頭を進んで、道を開きつつ、あたりを警戒してる。
「お前、大丈夫なのかよ」
「大丈夫だよ!」
不味い臭いはとりあえず、周りの竜気に紛れてあんまり臭わないからね!
「でもお前……ちょくちょくあいつらに……竜の神子とカインとメイナードに絡まれてんじゃねぇか」
「ええ?…………えー……?カ……メ………?」
「カメってなんだ。竜の神子は、分かるよな?」
「うん。真っ黒な人だね」
「……で、カインは、背が高くてがっしりとしたいかにも騎士、て感じの金髪のやつで――」
「ああ、黄色い人だね!」
「………メイナードは、スラっと細身の……赤髪のやつだよ」
「ああ………無能な赤い人」
「無能……?……とにかく、お前あいつらと何かと言い合ってんだろ?」
「え?いつ?」
うーん……?僕、誰かと言い合ったっけ?
「………………はぁ、俺の心臓、毛でも生えねぇかな」
何それ。ヴァル、毛が欲しいの?別に薄くないよ?むしろ、最近前にも増してサラサラのキラキラだよ?
「毛なんてあってもなくても、ヴァルはかっこいいよ!!」
「………………はぁ」
ヴァルは、ため息とともに眉をぎゅっと寄せ、しゅっと切れ長の目を半分に細めると、流し目に僕を見下ろした。
何、その顔。
「ヴァル、不味いのに美味しいものでも食べたの?」
「は?」
「だって、不味いのに癖になっちゃってまた食べたくて仕方ない、みたいな葛藤してる顔してるよ?」
「………その鋭さを、どうして他で発揮しねぇんだよ」
え?他って何?
「僕、ヴァルとヴァルのくれる美味しいもののことばっかり考えてるだけだよ?」
「…………………」
何か美味しいもの隠してるなら、僕にもわけてほしいな、なんて。
あれ?いよいよ無言で顔を両手で覆っちゃった。ヴァル、どうしたの?
「あいつとは……」
「ん?」
「いや、いい」
ええー?何?今、ヴァルなんて言ったの?聞こえなかったじゃない。
「まだ、日程の半分も終わってねぇからなぁ……はぁ、にしたって、どうなんだろうな。この巡礼は」
そっかぁ。まだ、半分も終わってないんだ。
つまり、これまでの倍以上、ヴァルのお外ご飯が食べられるってことだよね!えへへ。楽しみだなぁ。
「ねぇ、ところでヴァル。今、どこに向かってるの?」
この先に何があるんだろうね?というか、一体何のためにここにいるの?ていうか、ここってそもそもどこ??
「…………」
わぁ……すごく厳しい眼差し。
鋭い目がさらに半眼で鋭くなって、蔑むように見下されてる。わかるよ。これ、「お前、やっぱり聞いてなかったんねぇじゃねーか。この5日間、何聞いてたんだ」ていう顔でしょ。
うん。僕たちの目と目の会話、今日も絶好調だね!
「………この先に、竜が建てたらしい祠と、石碑がある。今日あたり到着するはずだ。伝承通りならな」
竜って祠や石碑を建てる趣味があるの?ご飯も食べないのに?
…………やっぱり、竜って意味わかんないや。
「伝承ってなんだかふわっとしてんね」
「ああ。200年前にこの巡礼が行われたのが最後で。それ以降、降誕の地を訪れた者はいないからな」
「………じゅんれい……こうたんのち」
聞いたことがあるような、無いような……。
うーん………えーっと………。
「降誕の地は、竜の生まれる場所で――」
「ああー!!ええ!!?……じゃあ、じゃあ……もしかして、ここって、あの竜の卵があるって場所!?」
ここって、あの場所だったの!?
なんてことだ!
つまり………あわよくば、ヒクイドリの卵と、竜の卵……ダブルゲットできるってこと!?
うそでしょ。僕、知らぬ間にそんなミラクルを起こしてたの?
………え。これってもう、竜の卵をゲットせよっていうお告げじゃない?そうでしょ。そうに決まってる!
僕の驚いた顔と声に、ヴァルの方がぎょっとしてる。
大きく目を見開いて、すっと左斜め上をみて「知らなかったのかよ……つーか、竜の卵、だと?………まさかこいつ、」なんてぶつぶつ考え込んでいる。
「…………とにかく。その石碑にたどり着いて、折り返して無事に帰れれば、降誕の地への巡礼は終わりだ」
「ふーん……」
行って帰ってくるだけなの?何が楽しいの?
「…………はっ!もしかしてみんな、道中ヴァルが作ってくれるお弁当狙いで……?」
それしか考えられない。お外で食べるヴァルのご飯、ホントに美味しいからね!
なんてことだ。そのためにわざわざヴァルを連れてきたってわけ!?
うーん………ムカつくけど、お目が高い!わかる、わかるよ!だって、僕だって間違いなくそうするから!
「ちげーよ。竜の名を穢したものがこの地を訪れ、石碑にたどり着くことができれば、おのずと石碑に名が刻まれて、罪が許される。そう伝えられてるんだよ」
「どうしてそれで罪が許されるの?」
それなんか意味ある?行って帰ってきて、許される程度の罪って何?
僕とヴァルが合流して5日が過ぎた。特に大きな騒動もなく日程も、着々と旅は進行する。
ヴァルはやっぱり先頭を進んで、道を開きつつ、あたりを警戒してる。
「お前、大丈夫なのかよ」
「大丈夫だよ!」
不味い臭いはとりあえず、周りの竜気に紛れてあんまり臭わないからね!
「でもお前……ちょくちょくあいつらに……竜の神子とカインとメイナードに絡まれてんじゃねぇか」
「ええ?…………えー……?カ……メ………?」
「カメってなんだ。竜の神子は、分かるよな?」
「うん。真っ黒な人だね」
「……で、カインは、背が高くてがっしりとしたいかにも騎士、て感じの金髪のやつで――」
「ああ、黄色い人だね!」
「………メイナードは、スラっと細身の……赤髪のやつだよ」
「ああ………無能な赤い人」
「無能……?……とにかく、お前あいつらと何かと言い合ってんだろ?」
「え?いつ?」
うーん……?僕、誰かと言い合ったっけ?
「………………はぁ、俺の心臓、毛でも生えねぇかな」
何それ。ヴァル、毛が欲しいの?別に薄くないよ?むしろ、最近前にも増してサラサラのキラキラだよ?
「毛なんてあってもなくても、ヴァルはかっこいいよ!!」
「………………はぁ」
ヴァルは、ため息とともに眉をぎゅっと寄せ、しゅっと切れ長の目を半分に細めると、流し目に僕を見下ろした。
何、その顔。
「ヴァル、不味いのに美味しいものでも食べたの?」
「は?」
「だって、不味いのに癖になっちゃってまた食べたくて仕方ない、みたいな葛藤してる顔してるよ?」
「………その鋭さを、どうして他で発揮しねぇんだよ」
え?他って何?
「僕、ヴァルとヴァルのくれる美味しいもののことばっかり考えてるだけだよ?」
「…………………」
何か美味しいもの隠してるなら、僕にもわけてほしいな、なんて。
あれ?いよいよ無言で顔を両手で覆っちゃった。ヴァル、どうしたの?
「あいつとは……」
「ん?」
「いや、いい」
ええー?何?今、ヴァルなんて言ったの?聞こえなかったじゃない。
「まだ、日程の半分も終わってねぇからなぁ……はぁ、にしたって、どうなんだろうな。この巡礼は」
そっかぁ。まだ、半分も終わってないんだ。
つまり、これまでの倍以上、ヴァルのお外ご飯が食べられるってことだよね!えへへ。楽しみだなぁ。
「ねぇ、ところでヴァル。今、どこに向かってるの?」
この先に何があるんだろうね?というか、一体何のためにここにいるの?ていうか、ここってそもそもどこ??
「…………」
わぁ……すごく厳しい眼差し。
鋭い目がさらに半眼で鋭くなって、蔑むように見下されてる。わかるよ。これ、「お前、やっぱり聞いてなかったんねぇじゃねーか。この5日間、何聞いてたんだ」ていう顔でしょ。
うん。僕たちの目と目の会話、今日も絶好調だね!
「………この先に、竜が建てたらしい祠と、石碑がある。今日あたり到着するはずだ。伝承通りならな」
竜って祠や石碑を建てる趣味があるの?ご飯も食べないのに?
…………やっぱり、竜って意味わかんないや。
「伝承ってなんだかふわっとしてんね」
「ああ。200年前にこの巡礼が行われたのが最後で。それ以降、降誕の地を訪れた者はいないからな」
「………じゅんれい……こうたんのち」
聞いたことがあるような、無いような……。
うーん………えーっと………。
「降誕の地は、竜の生まれる場所で――」
「ああー!!ええ!!?……じゃあ、じゃあ……もしかして、ここって、あの竜の卵があるって場所!?」
ここって、あの場所だったの!?
なんてことだ!
つまり………あわよくば、ヒクイドリの卵と、竜の卵……ダブルゲットできるってこと!?
うそでしょ。僕、知らぬ間にそんなミラクルを起こしてたの?
………え。これってもう、竜の卵をゲットせよっていうお告げじゃない?そうでしょ。そうに決まってる!
僕の驚いた顔と声に、ヴァルの方がぎょっとしてる。
大きく目を見開いて、すっと左斜め上をみて「知らなかったのかよ……つーか、竜の卵、だと?………まさかこいつ、」なんてぶつぶつ考え込んでいる。
「…………とにかく。その石碑にたどり着いて、折り返して無事に帰れれば、降誕の地への巡礼は終わりだ」
「ふーん……」
行って帰ってくるだけなの?何が楽しいの?
「…………はっ!もしかしてみんな、道中ヴァルが作ってくれるお弁当狙いで……?」
それしか考えられない。お外で食べるヴァルのご飯、ホントに美味しいからね!
なんてことだ。そのためにわざわざヴァルを連れてきたってわけ!?
うーん………ムカつくけど、お目が高い!わかる、わかるよ!だって、僕だって間違いなくそうするから!
「ちげーよ。竜の名を穢したものがこの地を訪れ、石碑にたどり着くことができれば、おのずと石碑に名が刻まれて、罪が許される。そう伝えられてるんだよ」
「どうしてそれで罪が許されるの?」
それなんか意味ある?行って帰ってきて、許される程度の罪って何?
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