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Ⅱ.体に優しいお野菜編

76.僕、わかってるから怖いんです③ ※

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 わからないよ、ヴァル。僕、今、ヴァルのことしか、考えられないよ。
 ヴァルのくれる甘い痺れで、僕、いっぱいだもの。

「胸と、尻だったか?どうせあいつのことだ。耳元でなんか卑猥な言葉を浴びせたんじゃないのか」

 そう言うヴァルが、耳元でささやいて、息がかかって、ぞわぞわっと全身が粟立つ。

「あっ!ん、んんっ……みみ、やっ……あ」

 もう、ヴァルの声、お腹に響くんだから。
 気をつけてくれないと、ダメでしょ。耳、ダメ。甘くて、むずむずして、じっとしとけない。

 刺激から逃げたくて、首を振るけど、ヴァルは逃げる僕の耳にかぷり、と甘くかみつく。
 首と同じぬるりとした感触と一緒に、ぴちゃぴちゃと濡れた音が響いた。

「ひぅっ……あ、ヴァルまって……」
「逃げんな。あんなのに触らせてんじゃねぇよ。どこ触らせたか、全部教えろ。で、全部俺が上書きする」

 直接耳に吹き込まれる声はちょっと怒った声色で。
 胸の突起をいじっていた片方の手が、腰をたどり、そしてお尻へとたどり着く。

「あっ!あっ……あ、んっそんなとこ……さわられてないっ」

 何の話!?僕、そんなとこ触られたり、してないよっ!

「ヴァルだけっ……ぜんぶ、ヴァルだけだからっ」

 ヴァルにしか、触られたことない!

 それでもヴァルの手は止まらなくて、膝を割り開かれて足を閉じられないまま、無防備な尻たぶをやわやわと揉まれた。

 変だ。僕、変だよ。だって、僕、お腹いっぱいのはずなのに。
 それなのに、なんだか下のお口がひくひくしてる。
 まるで、ものたりないよ、て言ってるみたい。まるで、いつものをちょうだい、て言ってるみたい。

「あっ……ヴァル、もう……やだ、なんか……へんっ」
「へん、ねぇ。……じゃあ、これは?」
「へ?……ぁんっ!」

 うそ、ヴァルが僕の乳首食べてる!
 だめ、だめだよ。食べないで。さっきまでいじられて、じんじんして、赤い実みたいにぷっくりしてるけど、そこは食べ物じゃないから。

「それにしても、ちっせーな」
「んあっ……しゃべったら、くすぐったい……あっや、それ……ん、あっ」

 そうだよ。僕の乳首なんて、お豆よりも小さくて、食べ応えないよ。美味しくないよ。
 だから、やめて。だめ、だめ。食べないで。

 ああ、何これ。ぬるっとして、あったかくて、指より柔らかくて。びっくりするほど気持ちよくて、ぞくぞくする。

「ま、そのうち、大きくなるだろ」

 え、待って。そうなの?乳首って育つものなの?

 初めて知った。
 え?これって常識?人の常識なの?

「大きくなるの?」

 大きくなった後は、どうなるの?

「もっと、よくなる。楽しみだな?」

 よくなる?何が?なんか実がなるの?

「んんっ……は、あっ……あぁっ」

 僕の背筋が、ヴァルの唇が舌が動くたびに、びくっと反る。
 薄く形の良い唇に食まれ、舌先で転がされ弾かれるたび、僕はただ合わせて声を上げるしかできなくなった。
 その間も、ヴァルの手は僕の反対の乳首と、お尻をもんで、僕の中心がどくどくと脈を打って張りつめて、そして下のお口がひくついて、もうじっとしていられなくて。

 僕は涙でにじんだままの視界で、ヴァルをじっと見つめた。
 ヴァルと視線が合って、ふっと紫色が細められた。

「ルルドが嫌ならやめるぞ」

 そんな言い方。ズルい。

 嫌じゃない。ホントは全然、嫌じゃない。だから、困ってるんだよ。
 嫌じゃないから……ホントはもっとして欲しいから、怖いんだよ。

 嫌悪感も不快感も全くない。
 ただ、むずむずして、じんじんとした疼きが体の中に溜まって、行き場もなく燻っている。

 ヴァルのくれる刺激に、身体はどんどん敏感になって、びくびくと勝手に震える体を持て余して。
 僕はただ、ヴァルがくれる気持ちいいものを受け取るだけ。

 もう僕はたまらなくて、ヴァルの頭を抱き込むように腕を回し、ぎゅっと抱きついた。

 すりすりとヴァルの頭に頬を摺り寄せる。そこからも甘くて美味しいものがじんわりと流れ込んでくる。

 このままずっと離れたくないな、て思った。



 これまで、僕の前をたくさんの人が通り過ぎていった。
 僕にとって、吹きすさぶ風や、流れる雲、そして咲いては枯れる花と同じで。それを当然として疑いもしない……当たり前すぎて意識したこともない、時間と空間の流れの一部そのものだった。

 それなのに、僕は……普通の竜でも人でも無い僕は。
 ヴァルがいないと、ご飯も食べれなくて、寝ることもできないなんて。

 僕は、僕にとって一番大切なことがわかってしまった。

 だから、とっても怖くなった。

 僕は、普通じゃなくても竜だから。
 僕そのものが、悠久の中を流れるこの世の一部なのに。

 でも、ヴァルは違う。ヴァルは、人だから。この地に足をついて、しっかりと立ってる。
 院長や、子供たち、そしてお友達とかかわりのある人々の中で、一緒に歩んでる。

 ヴァルは、歩んでる。
 漂い流れるただそこに在る、僕とは違う。

 僕とは違う。全然違う。

 僕とヴァルは違う。

 それなのに。

 もっとヴァルが欲しい。お腹はいっぱいのはずなのに。いくらでも欲しくなる。ねえ、もっとして。

 でも、これ以上、受け入れたら、僕はどうなっちゃうんだろう。わからない。だから、もうやめてほしい。

 僕の中で、もっと、と、もうやめて、の両方の気持ちが強くせめぎ合う。

 ヴァル、僕、怖いよ。とっても怖いんだ。

 温かい手が僕の背を優しく撫でる。あやすみたいな手つきなのに、僕はやっぱりむずむずして、甘く溶かされるようにほっとする。

 触れてるところから伝わってくるヴァルの鼓動は、僕のと同じくらい、ドキドキしてる。
 こうしてヴァルに触れてる僕は、ヴァルと同じようにあったかいよね?

 だから、今は。

「ヴァル……もっと、して」

 同じように温かい体温に触れて、ドキドキして一緒に温めさせて。
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