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Ⅱ.体に優しいお野菜編
61.僕、頑張っておねだりします①
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えーっと……どのくらい、時間がたったかな。
1000年くらいたった?え?もっと?
僕には、無限に感じられるよ。この沈黙の時間、あまりにも耐えられない。
これまで生きてきた200年より、ずっとずっと長く感じるんだけど。
うーん……どうして、ヴァルは何も言わないの?
静かな空気が、耳にジージーと響く。心臓の音が、どくどく聞こえる。
ヴァルの足を掴んだままで、顔は上げずに、上目にそっとヴァルを盗み見た。
えっとー……。それ、どういう顔?
ヴァルは目をこれでもかって見開いて、なんだかびっくりしてるみたいだった。
へぇ……ヴァルの目って、こんなに大きくなったんだね。
そっか。驚いてるのか。驚きすぎて、声も出ないんだ。
当然だよね。だって僕、今までまともに正気の状態でヴァルにおねだりしたことないから。一度も。
ううっ。それにしても、恥ずかしいな。何これ。ものすごく恥ずかしい。わかってたけど、思ってたのよりも、100倍くらいは恥ずかしい。
僕、今燃えてない?顔から火が出てない?大丈夫?お家、火事になってない?
あと、なんか揺れてない?地震でも起こってない?あ、違った。僕の心臓がどっくんどっくんいってるんだ。どうしようこれ。このまま飛びてできそうなんだけど。
でも、もうあとには引けないから。
だって僕、もうヴァルの美味しいののお口になってる。
「ヴァル………僕に食べさせて。ねぇ。美味しいの、僕、全部ほしい。全部ちょうだい」
ヴァルの膝に額をぐりぐり押し付けて、こもった熱を吐息と共に吐き出して願いを告げる。しがみつく手にもギュッと力がもこった。
「ちゃんと、おねだり出来るじゃねぇか」
ヴァルの手が僕の頬に触れて、ぐっと強い力で顎を持ち上げられて、強制的に目が合った。
ちょっと、ヴァル力が強すぎる。僕の頬っぺた、むにってなってる。首がぐきってなったじゃない。
……うわっ……うわ、うわぁっ……何、その顔。
ヴァルは、満足そうに、嬉しそうに笑っていた。
ヴァルが強くつかむからほっぺたが、むにってなっちゃって、リンゴみたいに真っ赤な顔で、面白くない変顔になってるんじゃない。
そんな変顔な僕を、ヴァルはなんで、とろけそうに甘い顔で見てるの。
「お前、すっげぇ真っ赤」
「うう……だって、だってっ」
「物欲しそうな顔しやがって」
ヴァルのせいでしょ。
そうだよ。今僕、絶対に物欲しそうで、ものすっごく欲しそうな顔、してる。
僕、なんだか胸がきゅうっと苦しくなっちゃう。
胸の高鳴りに言葉を失っているうちに、僕をぐっと引きあげられた。
「いい子には、ご褒美あげような」
「──んんっ」
僕とヴァルの唇が重なる。僕より大きな口に覆われて、目を見開くと近くに意地悪な笑みを浮かべたヴァルの瞳が見えた。
ヴァルの唇は少しかさついてて、冷たかった。だけど、すぐに僕の体温と混じって、湿って、溶け合ってわからなくなる。
唇を舌で舐められてつつかれて、僕はぞくぞくと甘い痺れにたまらず唇を開いた。
その隙間からぬるりと容赦なく舌が入り込んでくる。いつもなら、その舌を絡めとるように、啜るように縋るのだけど。今日は違った。
とろり、と流れ込んできた濃厚な何かに僕の全身がびくりっと震えた。
「んぅっ……!?!」
はわあぁぁぁっ……何、これ。何、これ……!?
甘くて、熱くて……すごい。僕、力が入らなくなっちゃう!
かっと喉が焼けつくような感覚は、まるでからからに乾いたのどに蜂蜜を流し込まれたような。度数の高いアルコールを飲み下したような。
それでいて、熟れた果実の果汁をのんだように、甘く濃厚な潤いが僕を急速に満たしていく。
「ふぁ……ん、すごい……あ」
僕はヴァルの胸に縋り付いて、夢中でヴァルの口内を貪った。こくこくと喉がなる。
この唇を、舌を、唾液を、全部少しも残らず、すべてを僕のものにしたい。全部、全部、全部。
この甘くて美味しいの、全部、僕のだから。わずかもヴァルの中に残さないで。
濃密なそれはとくとくと、僕へ惜しみなく流し込まれた。
「……ぷはぁっ……あ……ああ…」
唇が離れるのが名残惜しい。唾液が互いを結ぶ。
ぞくぞくと、全身が震える。これは、悪寒じゃなくて……あまりにも甘い快感に似た熱い感覚。
ヴァルは満足そうに不敵に笑って、僕の唇をぬぐった。その指についた唾液さえも……僕のかヴァルのかわからないものさえも、もったいなくて、僕はぱくりと口に含み舐め取った。
ふわぁ……甘い。甘すぎて、僕、ぶるぶるしちゃう。甘くて、とろけちゃう。
「美味かったか?ルルド」
「あ、……ヴァル、これ何……?」
ヴァル、何したの?
僕、たったこれだけで、身体がぽかぽかで、お腹いっぱいになったんだけど。
とろとろに溶けちゃうくらい、美味しくて甘いのがいっぱい入ってきたよ。
「どうやら、俺の中の黒い竜気を、操作できるようになったらしくてな。
さすがに触れただけじゃあ、俺からは難しいな……。
口移しなら、いけんじゃねぇかと思ったんだが。うまくいったな」
え。何それ。ヴァルが黒い竜気を操作できるの?
えー……もしや、ヴァルも成長期なの?もっとすごくなるの?
ヴァルが僕の頬に手を伸ばして撫でる。ヴァルの指が髪を梳く。
あー、気持ちがいい。ヴァルの手、冷たくて……耳くすぐったい。くすぐったくて、気持ちいい。
指先の繊細な動きも、手のひらの絶妙な力加減も。
「はぁ……好き。大好き」
「…………」
「きもちー、ヴァルになでなでされるの、大好き。もっと撫でて」
「………………はぁ、そうか、そうくるか。まぁ、そうだよな」
「んー?なに?…あぁ……そこ、もっとぉ」
ぞくぞくふわふわして、あー、気持ちいい。
んふぅ……ヴァルって、本当にテクニシャンだなぁ。
「はいはい。………あー…こういうとこだよ、くそっ」
どういうとこ?僕、何言ってるかわかんない。
うっとりと目を細めて、その手にすり寄っていると、
「で、ケビン。お前は、いつまで寝たふりをしてるつもりだ?」
ヴァルの目つきが鋭いものに変わり、低い声で唸った。
1000年くらいたった?え?もっと?
僕には、無限に感じられるよ。この沈黙の時間、あまりにも耐えられない。
これまで生きてきた200年より、ずっとずっと長く感じるんだけど。
うーん……どうして、ヴァルは何も言わないの?
静かな空気が、耳にジージーと響く。心臓の音が、どくどく聞こえる。
ヴァルの足を掴んだままで、顔は上げずに、上目にそっとヴァルを盗み見た。
えっとー……。それ、どういう顔?
ヴァルは目をこれでもかって見開いて、なんだかびっくりしてるみたいだった。
へぇ……ヴァルの目って、こんなに大きくなったんだね。
そっか。驚いてるのか。驚きすぎて、声も出ないんだ。
当然だよね。だって僕、今までまともに正気の状態でヴァルにおねだりしたことないから。一度も。
ううっ。それにしても、恥ずかしいな。何これ。ものすごく恥ずかしい。わかってたけど、思ってたのよりも、100倍くらいは恥ずかしい。
僕、今燃えてない?顔から火が出てない?大丈夫?お家、火事になってない?
あと、なんか揺れてない?地震でも起こってない?あ、違った。僕の心臓がどっくんどっくんいってるんだ。どうしようこれ。このまま飛びてできそうなんだけど。
でも、もうあとには引けないから。
だって僕、もうヴァルの美味しいののお口になってる。
「ヴァル………僕に食べさせて。ねぇ。美味しいの、僕、全部ほしい。全部ちょうだい」
ヴァルの膝に額をぐりぐり押し付けて、こもった熱を吐息と共に吐き出して願いを告げる。しがみつく手にもギュッと力がもこった。
「ちゃんと、おねだり出来るじゃねぇか」
ヴァルの手が僕の頬に触れて、ぐっと強い力で顎を持ち上げられて、強制的に目が合った。
ちょっと、ヴァル力が強すぎる。僕の頬っぺた、むにってなってる。首がぐきってなったじゃない。
……うわっ……うわ、うわぁっ……何、その顔。
ヴァルは、満足そうに、嬉しそうに笑っていた。
ヴァルが強くつかむからほっぺたが、むにってなっちゃって、リンゴみたいに真っ赤な顔で、面白くない変顔になってるんじゃない。
そんな変顔な僕を、ヴァルはなんで、とろけそうに甘い顔で見てるの。
「お前、すっげぇ真っ赤」
「うう……だって、だってっ」
「物欲しそうな顔しやがって」
ヴァルのせいでしょ。
そうだよ。今僕、絶対に物欲しそうで、ものすっごく欲しそうな顔、してる。
僕、なんだか胸がきゅうっと苦しくなっちゃう。
胸の高鳴りに言葉を失っているうちに、僕をぐっと引きあげられた。
「いい子には、ご褒美あげような」
「──んんっ」
僕とヴァルの唇が重なる。僕より大きな口に覆われて、目を見開くと近くに意地悪な笑みを浮かべたヴァルの瞳が見えた。
ヴァルの唇は少しかさついてて、冷たかった。だけど、すぐに僕の体温と混じって、湿って、溶け合ってわからなくなる。
唇を舌で舐められてつつかれて、僕はぞくぞくと甘い痺れにたまらず唇を開いた。
その隙間からぬるりと容赦なく舌が入り込んでくる。いつもなら、その舌を絡めとるように、啜るように縋るのだけど。今日は違った。
とろり、と流れ込んできた濃厚な何かに僕の全身がびくりっと震えた。
「んぅっ……!?!」
はわあぁぁぁっ……何、これ。何、これ……!?
甘くて、熱くて……すごい。僕、力が入らなくなっちゃう!
かっと喉が焼けつくような感覚は、まるでからからに乾いたのどに蜂蜜を流し込まれたような。度数の高いアルコールを飲み下したような。
それでいて、熟れた果実の果汁をのんだように、甘く濃厚な潤いが僕を急速に満たしていく。
「ふぁ……ん、すごい……あ」
僕はヴァルの胸に縋り付いて、夢中でヴァルの口内を貪った。こくこくと喉がなる。
この唇を、舌を、唾液を、全部少しも残らず、すべてを僕のものにしたい。全部、全部、全部。
この甘くて美味しいの、全部、僕のだから。わずかもヴァルの中に残さないで。
濃密なそれはとくとくと、僕へ惜しみなく流し込まれた。
「……ぷはぁっ……あ……ああ…」
唇が離れるのが名残惜しい。唾液が互いを結ぶ。
ぞくぞくと、全身が震える。これは、悪寒じゃなくて……あまりにも甘い快感に似た熱い感覚。
ヴァルは満足そうに不敵に笑って、僕の唇をぬぐった。その指についた唾液さえも……僕のかヴァルのかわからないものさえも、もったいなくて、僕はぱくりと口に含み舐め取った。
ふわぁ……甘い。甘すぎて、僕、ぶるぶるしちゃう。甘くて、とろけちゃう。
「美味かったか?ルルド」
「あ、……ヴァル、これ何……?」
ヴァル、何したの?
僕、たったこれだけで、身体がぽかぽかで、お腹いっぱいになったんだけど。
とろとろに溶けちゃうくらい、美味しくて甘いのがいっぱい入ってきたよ。
「どうやら、俺の中の黒い竜気を、操作できるようになったらしくてな。
さすがに触れただけじゃあ、俺からは難しいな……。
口移しなら、いけんじゃねぇかと思ったんだが。うまくいったな」
え。何それ。ヴァルが黒い竜気を操作できるの?
えー……もしや、ヴァルも成長期なの?もっとすごくなるの?
ヴァルが僕の頬に手を伸ばして撫でる。ヴァルの指が髪を梳く。
あー、気持ちがいい。ヴァルの手、冷たくて……耳くすぐったい。くすぐったくて、気持ちいい。
指先の繊細な動きも、手のひらの絶妙な力加減も。
「はぁ……好き。大好き」
「…………」
「きもちー、ヴァルになでなでされるの、大好き。もっと撫でて」
「………………はぁ、そうか、そうくるか。まぁ、そうだよな」
「んー?なに?…あぁ……そこ、もっとぉ」
ぞくぞくふわふわして、あー、気持ちいい。
んふぅ……ヴァルって、本当にテクニシャンだなぁ。
「はいはい。………あー…こういうとこだよ、くそっ」
どういうとこ?僕、何言ってるかわかんない。
うっとりと目を細めて、その手にすり寄っていると、
「で、ケビン。お前は、いつまで寝たふりをしてるつもりだ?」
ヴァルの目つきが鋭いものに変わり、低い声で唸った。
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